___頭が真っ白になるって、こういうことだったんだ………
まるで水の中に沈められているような、首を絞められているような苦しさ。
パニック状態に陥りながらも、頭の中はどこか冷静で……
まるで、今苦しんでいる自分とは別の「自分」が、この状況を真顔で見つめ実況ているかのようだ。
_____息がしたい。
肺が、全身が酸素が欲して痙攣している。
けれど、思うように呼吸ができなくてもどかしい。
苦しい……苦しい、苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい…………
ただただその言葉が頭の中を埋め尽くしていくようで。
次々と考えや思いが霧の中へ消えていく。
掴もうとしても掴めない。そんな感じだ。
……だんだんと、何が起きているのか、何があったのかを考えられなくなってきた。
ただ、自分が寝そべっているのは分かる。そして、これからどうなるのかも。
____「死」、か。
薄れていく意識の中で、ぼんやりと考える。
死ぬって、この世から消えること。
人生を終えること。
大切な人とお別れすること。
じゃあ、私何すればいいのかな?
体ももうロクに動かないし、お別れって言ったって、誰に何をすればいいのか分からない。
……だんだん、じわじわと周りの騒音が聞こえなくなって来て………とうとう、何も聞こえなくなった。
自分の体に終わりが………タイムリミットが近づいているのを悟る。
今は…かろうじて景色が見える程度で。
もう時間が無いのだ、と自らに言い聞かせる。
______ならば、せめて今できることを、と。
最後に………ふと、しっかり前を見据えてみる。
(あれ………?)
この人、よく知ってる。
確か、私の大切な、大好きな人だ。
………でも私、ちゃんとその人に「大切だ」って……「好きだよ」って伝えられなくて……………?
____視界が全て覆われる寸前、私の目には見えた。
大粒の涙を零す、その人の姿が。
そして、次の瞬間呟いた私の言葉は、ちゃんと貴方に届いただろうか………
「___________」
ブレーカーが落ちるかのように、私の意識は途絶えた。
私は世界一不幸な女だと思う。
生まれついた時から「運」だとか「福」だとか、そういうものと全くかけ離れた生活をしてきた。
走れば転ぶし、好きになった人にはどんどん可愛い彼女が出来ていくし。じゃんけんで勝った回数なんて数える程にしかない。
酷い時には、一生懸命書いて自画自賛できるほどの美しい出来栄えだった数学のノート。それが実は社会のノートだったり。
挙げ句の果てに母から「福引きマシーン」ならぬ「不幸引きマシーン」という微塵も嬉しくない仇名を頂戴された程だ。最悪だ。
「私の人生、アンラッキーすぎないか?」
そんなことを考えていた齢15の春。
当時淡い恋心を抱いていた男子に屋上に呼び出され、高鳴る胸を押さえつつ向かった先で待っていた彼の口から放たれた言葉は「お前が好きなの」ではなく「お前は老け顔」だった。
そうして面と向かって罵られたときに時に気づいた。私は世界一不幸な女だと。
何をとってもいまひとつで、地味。
おまけにアンラッキーガール。
そんな私の、人生最大の『不幸』
それは__________
『ごめんね、フチカ』