私の憂鬱な日常を憂鬱な非日常に塗り替えた者がいる
それは、自称天使と名乗る死神だった――……
ジャンルはミステリーと言っても、大したトリックは無しです
殺人も起きません
定期更新では無いので更新が遅いです(完結しないかも)
>>02登場人物
割られていたのは生徒会長の安寅愛凛の石膏像だった。
割れた破片から見てもかなり繊細に彫ってあり、見事な作品だ。
「誰かが落としたんじゃねーの?」
群衆の中から森亜恭二がうんざりしながら適当に言った。
「それはないわ」
私が恭二の意見を否定し、恭二は私を軽く睨みつける。
「じゃあ、誰かがわざとやったのかよ?何のために?大体証拠がねぇよ」
恭二が意地悪そうに言う。
沢山の生徒の視線が一気に私に集中し、動悸が激しくなった。
「だって……っ作品は棚の奥に配置されてたし、ロープが張ってあった。簡単には落ない」
「えぇ……私もちゃんと棚の奥に入れました」
愛凛はやっと言葉を紡ぎ、掠れた声で言った。
「動機は何だよ……」
言葉に詰まった恭二はそわそわしながら動機を尋ねた。
「そんなの……知らないわよ」
「恐らく妬みだろう。それか彼女に恨みがあったか……」
ワトソンは割れた石膏像を睨みつけ、一人の女子生徒を見据えた。
ワトソンは私の肩を軽く突っつき、羽先で指差した。
「見たまえ璃香。あの女子生徒を」
羽先は怯えながら立ちすくんでいる女子生徒に向いている。
「あっ……スカートの裾に僅かだけど白い粉……でもそれだけじゃ……」
「あれだよ」
ワトソンは石膏像まで飛んでいくと、床にぶちまけられた粉を見た。
「あ……足跡!?」
白い粉の中央にハッキリ2つ並んだ足跡を見つけた。
「靴のサイズは約24cmだろう。彼女の上履きと重ねれば……」
「えぇ。分かってるわ」
「はい、皆さん自席に着くようにー」
先生が騒ぎを見て、着席を促した。
ワトソンと私はアイコンタクトをとり、女子生徒に歩み寄った。
殆どの生徒が自席に戻り、作品展示室は女子生徒と私だけになった。
彼女が自席に戻ろうとするところを私は引き止めた。
「ちょっと、話を聞かせてもらえる?」
璃香は出来るだけ優しく穏やかな口調で尋ねた。
それでも彼女は怯えたが、諦めたように笑ってみせた。
「えぇ。私がやりました」
案外あっさり白状したので、璃香達はかなり面喰った。
「あの石膏像の石鹸水の中に、私の大切な祖父の形見が入ってしまって」
ポケットから取り出してみせたのは、ラピスラズリが連なった腕輪。
「それで……割って腕輪を取り戻そうとしたのね」
璃香がその先を察して言う。
「はい……まぁ足跡を消すのを忘れてしまいましたし、すぐにバレるとは分かっていました」
彼女は溜息をつき、物悲しそうな瞳をしていた。
その後、彼女は自ら愛凛に謝罪し、理由も説明した。
「そうだったの……ごめんなさい、型に入れる前に気づいていれば……」
愛凛は憤りを見せず、彼女を快く許してあげた。
一方、彼女の名誉も考慮して、生徒の間では幽霊がやったと噂を流しておいた。
夜な夜な亡霊がやって来て、石膏像を壊していくとかいかないとか。
T章 fin
U章 〜悪魔の瞳〜
新キャラ登場★
有瀬 陸武 Aruse Rikumu ♂
2-Sにやって来た教育実習の先生
写真部の臨時顧問をしている
名前の由来は
『アルセーヌ・ルパン』より拝借
U章 〜悪魔の瞳〜
「教育実習生の、有瀬陸武と言います。短い間ですが宜しくお願いします」
突如2-Sのホームルームに現れた謎の先生。
教育実習生という事らしい。
「ほえー、教育実習ねぇー……」
頬杖をつきながら、私はぼんやり彼を眺めた。
「随分若いな。20代前半くらいじゃないか?」
ワトソンが机の上に降り立ち、羽をバッサバッサ上下させている。
「うわちょっと糞とかここでしないでよね!」
「失敬な!僕だってそれくらいは常識を考えてだな……」
ワトソンと口論している内にホームルームは終わり、休み時間に入った。
「ちょっとぉ!これどういう事!?森亜君っ」
大勢の女子に囲まれ、恭二は動揺していた。
「だぁーっかぁーっらぁーっ!俺じゃねぇって!」
「そんな訳無いでしょう!?森亜君の鞄から見つかったんだから!」
「へんたぁーい」
「さいてぇーっ」
恭二は2-Iなのに、なぜか2-Sクラスにいる。
そして大勢の女子が恭二を囲み、仁王立ちしていた。
「何、どうしたの恭二」
「あ、璃香。おい何か言ってくれよー、こいつら俺が盗撮したとか言ってんだぜ」
恭二が困ったように溜息をつき、半ば反論を諦めかけていた。
「森亜君の鞄からカメラが見つかったのよ!チャックが開いてて、そこから盗撮したんだと思う」
安寅愛凛は恭二を睨みつける。
他の女子達の視線も怖い。
「違うって……誰かが入れたんだよ、信じてくれよー」
恭二の叫び声が教室に虚しく響く。
こうして森亜は盗撮の罪を着せられ、女子から怖い視線を浴びていた。
面白いです!
こういう感じの小説かけるなんてすごいです!
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彩鈴さんありがとうございます!
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「君はどう思うかね?璃香君」
ワトソンはぽつんと更衣室前に残った恭二を見て、興味深そうに言う。
「恭二が盗撮……ねぇ。恭二の鞄から見つかったからといって恭二がやったとは限らないわ」
「大体、どうしてカメラが見つかったの?」
私は更衣室前に残った恭二と愛凛に問うと、彼女は溜息をついて言った。
「私が貸した本を返して欲しいって言ったら鞄の中にあるからって言って開けたらカメラが……」
「もし本当に恭二が犯人だったら……鞄にカメラが入っているのに開けさせないわよね?」
私は不敵に微笑み、恭二が頷き、愛凛がハッとする。
「そうか……確かに鞄に入れたなら私に鞄の中を見させないはず……」
愛凛は恭二の方を見ると、彼は愛凛を軽く睨みつけた。
「えぇ。きっと犯人はもし見つかっても良い様に他人の鞄にカメラを入れたのよ」
「それで俺らが体育館に移動してる間にカメラを俺の鞄から回収する伏線だったって訳か」
私は愛凛が持っていたカメラを取り上げ、動画のデータを消した。
「森亜さんごめんなさい……勘違いしてしまって。どうやら貴方は犯人ではないみたいね」」
愛凛は恭二の元に歩み寄り、罰が悪そうに謝罪した。
「もういいよ。お前一人が理解したところで何にもなんねー。他の女子の視線がこえーぜ」
恭二は溜息をつき、愛凛が申し訳なさそうに恭二を見る。
「こうなったら、真犯人を探すしかないわね。ワトソン」
「あぁ」
私はいつの間にか自称天使の死神とコンビを組んでいました。
「あの……さっきから気になっていたのだけれど……誰と話してるの?」
愛凛が不思議そうに璃香に尋ね、璃香は焦った。
「えぇっと……独り言!そ……っそれより!このカメラは誰の物?」
「あぁ、それは写真部の備品だぜ。カメラ忘れた時用に貸してるらしいぜ」
森亜がデジタルカメラの底を指すと、『写真部備品』と書かれたシールが貼ってあった。
「そうか……持ち主が分かれば一発だったのだが……」
ワトソンは溜息をつき、首を振る。
「SDカードが入ってる。これで本体ではなく、カードにデータを保存すれば抜き取るだけでいいのね」
私は中に入っていた16GBのSDカードを抜き取った。
「写真部の奴に聞いてみようぜ。何か分かるかもしれねーし」
森亜は溜息をつきながら苛立っている声で言った。
「うん」
私と愛凛、森亜は写真部の部室に急いだ。
私達は写真部を訪ね、昨日デジカメを借りた生徒を探すことにした。
部室には壁一面、額に収められた写真があり、棚にはカメラが並んでいる。
一眼レフや旧式でもう使わない物、最新型のカメラまで揃っていた。
「このデジタルカメラを借りた奴……?そうだな……」
写真部の部長は、貸出名簿を持ってきてページをめくった。
「有瀬先生と、松嶺、桜坂が借りていったな。時間までは記入してないが」
「そうか。じゃあ容疑者は3人ってことだな?」
森亜は名簿を眺めながら続けた。
「分かったわ。じゃあ昼休みもまだ20分あるし……その3人を訪ねてみましょう」
愛凛はメモ用紙に3人のクラス番号を控え、部室を出た。
彼女についていくように森亜と璃香も続いて退出する。
「3人とも男子か……しかも同じクラス……皆2-S」
「うん。確か体育の授業で…………」
ん、あれ?
どうして私、今まで単純な事に気付かなかったのかな?
「3人に話を聞かなくても……これはもうアイツしかいないよね?ワトソン」
「あぁ。盗撮をした犯人……マヌケだったな」
ワトソンは不敵な笑みを浮かべ、私は余裕のある態度で自信に満ちていた。
3人はそれぞれ愛凛は松嶺、恭二が桜坂、璃香が有瀬に話を聞くことにした。
「あのさ、2人に体育が始まってからロッカーに行ってないか聞いて欲しいんだ」
私は2人頼み、質問をしてもらうことにした。
「有瀬先生、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」
私はレポートを持った先生を呼び止め、質問をした。
「今日の1時限目、2-Sの女子生徒盗撮事件はご存知ですか?」
私は慎重にワトソンとアイコンタクトをとりながら言う。
「あぁ知っているよ。エライ騒ぎになってたからなぁ……」
「有瀬先生は写真部のデジカメを借りましたよね?」
私は彼を軽く睨みながら問い詰めた。
「あぁ。だからと言って僕がやったとは限らないじゃないか」
「えぇ。確かにこれだけでは証拠不十分ですが……」
私は腕時計を確認し、有瀬から視線を逸らすと愛凛と恭二が走ってくる。
「璃香……っ松嶺も……桜坂も体育が始まってからロッカーに行って……ないってよ」
息を切らしながら恭二が途切れ途切れで言う。
「ビンゴ!これでチェックメイトよ」
璃香は口角を釣り上げ、不敵に微笑んでみせた。
「どういう事……?」
愛凛は不審そうな表情で璃香の方に視線を向けた。
「つまり……1時限目、有瀬先生は恭二の鞄にカメラを入れた。更衣室とロッカーは向かい合っているからね。
そして授業が始まりその時間は授業が無かった有瀬先生はカメラを鞄から抜き取った……」
私は得意気に有瀬を追い詰め、彼は少し動揺していた。
「だからと言って……松嶺や桜坂の可能性も……」
「無理よ。忘れたの?彼らは体育の授業が始まってからロッカーに行っていないのよ」
愛凛は全てを理解したのか、璃香の先を読んで反論する。
「残念だったわね。わざと松嶺君の筆箱をロッカーに入れて、ロッカーに戻らせるつもりが
松嶺君は友達からペンを借りてしまったが為にロッカーに行かなかったのよ」
愛凛は恐ろしい口調で有瀬を追い詰める様に言った。
「あのデジカメを借りた奴の中で唯一、先生だけがカメラを女子より先に回収出来たんだよ」
恭二は彼にトドメを刺す様に、睨みつけながら言った。
廊下に差した夕日が、有瀬を犯人だと照らすように輝く。
そして4人の伸びた影が交錯する……
「ちっ……ネットにアップするつもりだったが……」
有瀬は力が抜け、フッと諦めたように笑ってみせた。
「俺がやったよ。俺は教師だから疑われないと思ってたのによー」
愛鈴はちゃっかりICレコーダーで有瀬の音声を録音していた。
「生徒会長の私が責任もって校長に告発するわ」
「勝手にしろ」
有瀬はぶっきらぼうに機嫌を悪くし、吐き捨てる様に言った。
愛凛はICレコーダーを持ったまま校長室に向かう。
恭二は溜息をつき、「疑いが晴れたな」としみじみ言った。
その後、有瀬先生が盗撮したと言う噂は広まり、恭二の疑いが晴れた。
有瀬先生が今どこでどうしているかは、誰も知らない――……
U章 〜悪魔の瞳〜 END
V章 〜宿命のノクターン〜
紺色のかかった夜空に、白くぼんやりした月が浮かび上がった。
淡い月光の輝きに照らされる漆黒の少女が屋上に立っている。
「これで今日の任務は終了か……おい、レストレード、急げ。時期に警察が来る」
変成器を使った、低くて不気味な声が響いた。
「おうよ」
黒いコウモリと、漆黒のハンググライダーで夜空を横切る少女。
「先祖の償いを……させてもらうぞ……ホームズ……」
静寂な夜に、一羽の黒い蝶が舞い降りた。
今回V章は怪盗マスカレードに関する話です
毎回奇数章は怪盗マスカレードの話にしようと思っています。
NEW character file
レストレード ♂♀
DATA
ワトソンと同じ、天才にしか見えない黒いコウモリ。
自称天使ではないが、ワトソン同様死神。
現在姿が見えるのは璃香と怪盗マスカレードのみ。
ちなみに名前はシャーロックホームズのG・レストレードより
授業が終了し、教室は騒めいてとてもうるさかった。
私は特にやることがなく、とても暇で退屈だ。
それほど綺麗でもない外の景色をぼんやり見据えた。
「おい、璃香!」
暇なのでパリーポッターを机に広げて眺めていた時だ。
唐突にワトソンが焦った声で叫んで、私の方に飛んできた。
「何よ、今丁度いいところなのに……」
私はブツクサ文句を言ったが、ワトソンは聞こうとせず、一方的に話始めた。
「さっき廊下で、僕と瓜二つの黒いコウモリを見つけたんだ!」
「ワトソンと瓜二つの……黒いコウモリ……?」
私はパリーポッターの表紙をパタンと閉じると、ワトソンはさらに私に近寄ってくる。
「同じ…………死神の気配がする……」
ワトソンは深刻そうな表情で、動揺を抑えきれない様子だった。
「なにか……まずいことでもあるの?」
「大アリだ!この世で死神は6匹いる。それぞれの世界の死神はその土地を護る使命がある。
僕の持ち場はアジア。どこか一匹死神が統治しないと、その土地の治安が悪くなる」
ワトソン曰く、治安の悪化(戦争や飢饉)は死神の統治の怠りによるモノらしい。
「な……っ!?じゃあその土地が危ない!」
私は大きな声で叫び立ち上がったため、周りが一斉に此方に視線を向けた。
「えっと……何でもないですっ」
私は恥ずかしさのあまり、教室から飛び出して行った。
一応ワトソンの言っていた職員室に行ってみると、確かに黒いコウモリが居た。
黒いコウモリの隣には少女が立っている。
「誰だろ……私みたいに、死神が見える子なのかな?」
「あぁ、多分そうだろうな」
ワトソンは警戒しながら黒いコウモリを軽く睨みつけた。
黒いコウモリも此方の視線に気づいたのか、少女と共に私達の方へ視線を向ける。
「何だお前。お前も死神か?」
(しゃべった……)
黒いコウモリは忌々しいモノを見るような目で私達を睨んだ。
「君は死神だろう?ココにいると他の場所の統治ができないじゃないか」
「安心しろ。ヨーロッパに式神を残してきた。俺の魂を半分に分離し、式神に移したのだ」
ワトソンはヒステリックに言い、黒いコウモリは言ってのけた。
「俺はレストレード。死神だ。お前だな?アジアを統治している最大の死神、ワトソンとは……」
ワトソンは返事をする代わりに小さく頷く。
「私はもう行っていいかしら?用事があるので」
レストレードの隣に居た少女は冷酷でゾッとする様な声で言った。
そして彼女はレストレードを引き連れて職員室をあとにした。
私は去っていく彼女の背中を見届け、暫く呆然としていた。
「……戻ろうか」
私は声をかけると、ワトソンは警戒した表情で考え込んでいる。
私はワトソンの邪魔をしない様、そっとワトソンの前を横切った。
教室に入ると、私の隣の席は人が集まってごった返していた。
「ねぇ、どこ住み?」
「どっから来たの?」
「部活は何入る?」
男女問わず、読書をしている彼女を邪魔するように取り囲んでいた。
「
うわぁ、なになにっ!?何の騒ぎ?」
私は自席に着こうと、人垣をかき分けて無理やり進む。
「知らないの?璃香。貴方の隣の席の子、転校生じゃない」
愛凛がふぅっと溜息をつき、私の隣の席に視線をやった。
「あ……あれっ?あなたは……」
そこに座っていた少女は、さっき職員室でレストレードを引き連れていた少女。
もちろんレストレードも机の上にいた。
転校生でしかも同じクラスだったんだ……
新character file
偉理 姫亜 Erari Himea ♀
DATA
レストレードを引き連れる謎の少女の転校生
愛凛と並んで学園の成績は優秀で、身体能力も高い。
肩にSの傷跡が残っている
璃香と同じく新聞部に所属した。
ちなみに偉理姫亜の名前の由来は探偵小説の
『エラリー・クイーン』より拝借
転校生の紹介のHRも終わり、放課後に入った。
いつもに増して新聞部は賑やかで、宴会状態だ。
「こんにちは」
元気の無い声で扉を開けると、机の上にお菓子が並んでいる。
「うっわ、なんですか、この騒ぎ」
「部長が留守だし取材もないから、偉理さんの入部祝いに宴会だ!」
副部長の秀真が紙コップに入ったコーラを乾杯しながら言った。
「……えっ?偉理さんが新聞部に?」
私はワトソンと顔を見合わせ、同時に部室を見回した。
姫亜は部室の隅の椅子に座って読書をしている。
レストレードも同じく読書をしていた。
結局、特に姫亜とレストレードと接触の無いまま宴会は終わってしまった。
帰宅してテレビをつけると、とんでもない騒ぎが起きていた。
「怪盗マスカレード・レディからの予告状!今夜0時論鈍宝石店のダイアを盗む!」
私はチャンネルを切り換える手を止め、画面を食い入るように見つめた。
「怪盗マスカレードが……予告を!?」
彼女は一体何のために怪盗業を……?
そして父とはどういう関係……?
謎が交錯する、父と怪盗のカンケイ
「今夜、また怪盗マスカレードを待ち伏せて、父さんとの関係を……ッ」
「やめなさい!」
鞄を持つ手を、ワトソンによって制止された。
「何で?そんなの私の勝手でしょう?」
「危険すぎる。それに…………君は知らなくていい真実だ」
その声は叱りつける様な声でもなく、ただただ虚しい声だった。
ワトソンは歪んだ表情で「任務が……」と微かに呟いた。
「やっぱり貴方は何か知っているのね?」
私が問い詰めると、ワトソンは首を大きく振った。
V章終了後、番外編を挟みますー
乞うご期待!(期待には答えられません)
character fileぷち
たまーに出てくる重要性のないキャラです
秀真 燕路 Hozuma Enji ♂
DATA
新聞部副部長2-Zクラス所属
陽気な性格で、締切間近でも大量の原稿を放ったらかし。(30枚ためてることも)
しかしなぜか締切までノルマはクリアしているという、ある意味謎な少年
ちなみに秀真燕路の名前の由来はは
シャーロックホームズの花婿失踪事件の登場人物『ホズマ・エンジェル』より拝借
さきほどは.ありがとうございます(''*
凄い大人っぽい小説書いてますね((感動
才能ぁりますね... 凄いです...((感動
氷華さん、コメントありがとうございます!嬉しいです♪
お……大人っぽい!?才能ある!?そんな、寝言は寝ていって下さ))殴
氷ちゃん。でも氷華でも良いので呼んで下さい(o'`o*
寝言などわざわざ思ってもないことを口にするの本当にたいぎぃので思ってもないことは言いませんよ((
本当ですか!?Σ(°д°)ありがとうございます!
では氷ちゃんって呼ばせて頂きます♪
ワトソンは暫くして溜息をつき、呆れた様に言った。
「もういい、好きにしろ。保証はしない」
「言われなくても、分かってる」
私は憤りを抑えながら冷酷な声で返した。
論鈍宝石店は警備員が隙間なく配置されていて、とても近づけない。
警備員の周りにはマスカレードのファンが大勢いて、ますます接近不可。
「心配するな。マスカレードは必ず冥桜ビルの屋上に来る」
ワトソンは冥桜ビルを見上げながら言った。
「なんで?」
「あそこはハンググライダーで逃走するには絶好の場所だからさ!」
ワトソンは宝石店をあとにし、冥桜ビルへ向かった。
冥桜ビル屋上の駐車場。
人影は疎らで、車の台数も少なく、風も弱い。
確かにパラグライダーなどで飛ぶには絶好だろう。
「誰かい……」
「何の用だ?」
璃香は背後からの低い声にハッとし、振り返ってみた。
すると、案の定、ワトソンの言った通り……
「怪盗……マスカレード……!」
「ご名答」
彼女はまるでこの時を待っていたかのように落ち着いている。
余裕の笑みまで浮かべて。
肌寒い冷酷な風が二人の頬を掠める。
対立する白(真実)と黒(偽り)――……
満月が雲に隠れ、天空は漆黒に閉ざされた。
「貴方……私と……私の父と……一体どういう関係?」
曖昧な答えを許さない、強い口調で問い詰めた。
「別に何も?貴方との接点も、君の父上との関わりは無い」
「何故あの時……」
「あれは譫言だ。気にするな」
あれだけ意味深長な発言だったのに、あっさり譫言で片付けた。
嘘……嘘よ……
「貴方、何のためにこんな事をしているの?」
「金に目が暗んだ……というような馬鹿馬鹿しい理由ではない」
彼女は帽子を深くかぶり直した。
「警察をからかって楽しんでいる愉快犯?」
「それも違う。一つだけ言っておこう……これは私の意思ではない、とね」
彼女は静かに言い残すと、マントを翻した。
「……っ」
「それではさようなら」
目を開けると、もうパラグライダーで彼女は飛んでいってしまった。
漆黒の闇夜に身を潜めて……
W章 〜heat up!〜
翌日、何も収穫が無いまま平穏な日々が続いた。
色々彼女に尋問したい事は沢山あるが、中々問い詰めることが出来ない。
学校のテストも刻々と近づいてくる。
「何かニュースやってないかなぁ」
適当にチャンネルを変えていると、異変に気づいた。
「うわ、どのチャンネルも同じニュースばっかり……!」
『今朝、ハリブッドスターの最須田芽亜さんが誘拐されました。
返して欲しければ身代金1億を出せ、とのこと。このことに関して警察は……』
「最須田芽亜が誘拐!?」
「どうやらそのようだな」
ワトソンは顔を顰め、テレビの画面を食い入るように見つめた。
NEW character file
最須田 芽亜 Mosuta Mea ♀
DATA
ハリブッド映画によく出演する中学生女子。
何者かに誘拐された。
名前はシャーロックホームズに登場する
『メアリー・モースタン』より
>>49
いぇいぇ('`*
考えてる小説が大人だね!!!!感動
れ-ちゃんって呼んでも良い??
これからも読ませてもらうね('-'*
タメで良いよ!!
じゃあれーちゃんで!>▽<ノ
ありがとう^^
学校ではそのニュースが大騒ぎになっていた。
愛凛は週刊誌を机に広げ、その周りに女子が集まっている。
「まじかぁ、芽亜ちゃん好きなのにぃーっ!無事でいてくれぇ!」
男子女子共にぎゃあぎゃあわめいている。
璃香は友達の広げた週刊誌をチラッと見た。
「……えっ……?」
そして食い入るように見入った。
「ねぇっ、この写真の背景、近くの廃工場の倉庫に似てない?」
「「「「ええぇっ!?」」」」
私は隣にいた愛凛に言ったつもりが、大勢の人が寄ってきた。
「確かに似てるけど……」
「廃工場の倉庫なんてどこも同じようなもんだし」
半ば男子は呆れたように言った。
「璃香、大体なんで君が廃工場倉庫の壁なんて知っているんだ?」
ワトソンが少し不審そうに聞いてきた。
「前、友達の猫がそこに迷い込んじゃって……その時に見たわ」
私は答えた。
「ともかく、もしその可能性がとすると……」
「えぇ、ちょっと確認するだけなら……」
私は放課後廃工場の倉庫へ足を運んだ。
廃工場の倉庫は施錠されていたが、簡単に針金でピッキング出来た。
「ふふ、私って天才ー!なんか怪盗みたい」
(※璃香が天才な訳ではなく、壊れかかっていたので案外誰でも出来る)
「でも前猫を探していた時は鍵なんて……」
重い鉄製の扉を開けると、中には鉄パイプや部品が散らばっていた。
殆ど埃をかぶっていて、長年放置されているようだ。
「誰もいないみたい……やっぱりここには……」
「んーっ!」
「「!?」」
背後から濁り曇った高い声が聴こえる。
「まさか……っ!?」
鉄パイプとドラム缶の後ろには――……
瑠香やっぱり天才ですよ!
60:レモンπ:2015/04/21(火) 00:34 ID:CS2 ミリーさんありがとうございます!
瑠香は一応天才なんですねw(死神見えてる時点で)
これからも瑠香とワトソンの活躍にご期待下さい!
「んーっ!」
茶色いガムテープで口を封じられ、呻いている少女。
ドラム缶の狭間に括りつけられていた。
縄できつく縛られ、身動きがとれない状態だ。
「やっぱりあの動画は……っ!」
「もたもたしている暇はないぞ、誘拐犯が戻ってくる前に縄を解け!」
ワトソンが璃香を促す。
「大丈夫?」
縄を解き、ゆっくりガムテープを剥がした。
彼女の口の周りに酷い跡が残っている。
かなり長時間ガムテープを貼られていたと思われた。
「はぁっ……はぁっ……ありがとう……あなたは一体何者?」
彼女は涙目になりながら瞬きし、璃香を見た。
この少女――只者ではない……?
「何者……って……普通の中学生、宝務璃香よ。さぁ、ここから早く出ないと!」
ドラム缶に座り込んだ芽亜に手を差し伸べ、立ち上がらせる。
璃香は芽亜の手を引いて、廃工場から駆け出した。
「と……とりあえず交番に行こう!」
2人は廃工場から400m程離れた交番に向かった。
「すみません、あの……!」
交番の担当者は警察かと疑うかのごとく、いびきをたてて熟睡している。
愛用のアイマスクとクッションを持ち込み、寝る前提での出勤だ。
「あの!」
「う……わ!」
璃香が怒鳴りつけると、鼻提灯が割れて飛び上がった。様に見えた。
「は……はいなんでしょう……って貴方は……!」
警官は眠い目をこすり、芽亜を凝視した。
「悪いな、どうやらまだ寝ぼけているようだ……」
「違います!本当に最須田芽亜です。監禁されていたのを助けてもらったんです」
芽亜は警官と璃香を交互に見ておどおどしながら言った。
「本当か!?すぐに警察庁と親族に連絡致します!」
その後、2人は事情聴収を受けた。
若い女性の刑事が2人に暖かいココアを差し出し、優しい口調で言った。
コトンとマグカップの置く音がした。
「では、本題に入るわね。まずは最須田さんから」
「はい」
「貴方は犯人の顔を見ましたか?体格などの特徴を覚えている限り言ってもらえないかしら?」
穏やかで、話しやすそうなトーンだ。
芽亜は躊躇う事なく全て言った。
「顔は……覆面をしていたのでよく分かりません。声も変声器かなんかで変な声で……
体格はガッシリした男の人です。背も高いです」
「ありがとう。次に、貴方はいつ、どんな風に監禁されたの?」
「撮影の帰り、車まで行こうとしたら背後から口を塞がれて……短い距離だったのでボディーガードをつけて いませんでした」
女性刑事は頷きながら手帳にメモをとっていた。
それと同時にワトソンも紙に何かを書き込んでいる。
「次に宝務さん」
「あっ……はい」
私は少し戸惑いがちにおどおどしていた。
堂々と、ハッキリ話せばいいものを……
「何故、貴方は廃工場に監禁されていることを知っていたのですか?」
「テレビで見た監禁動画の背景……壁にスプレーで『☆』の落書きがあったんです。それがここの廃工場と同じ落書きがあったので、ちょっと様子を見に……」
刑事は少し警戒した様に顔を顰めた。
中学生にしては、鋭い洞察力と行動力ね――……
「それで、案の定最須田さんが監禁されていました」
最後の方は小声になって掠れてしまっていた。
「ありがとう。他に変わったことは?」
「あ……私一度前に廃工場に行ったんです。その時は鍵なんてかかって
いなかったのに、今日来たら鍵がかかっていました。でも壊れかけていたので私でもピッキングできるくらいでしたけれど」
ピッキング――……!?
ますます刑事は璃香を不審に思った。
前回V章後に番外編の告知をしましたが
W章後に変更します
番外編は森亜恭二がメインの才能開花!
〜4.5章 教授の憂鬱〜
閲覧して頂ければ幸いです^_^
刑事は事情聴取を終え、自分のデスクに戻った。
「あの……本当にありがとう」
芽亜はおずおずと頭を下げて言った。
「別に、大丈夫だから」
私は頭を上げるようにはにかんだ笑顔で言った。
それから芽亜の元に数十人のボディーガードが来てリムジンに乗せられた。
「よければ宝務さんもご一緒に……」
「いえ、結構です。私は自分で」
これ以上芽亜と関わると厄介だ。
私は逃げる様にその場を立ち去った。
それから数日後、廃工場は閉鎖されて警察が立ち入っている。
テレビで私の事も放送され、学園でも騒ぎになっていた。
「ちょっと璃香!最須田芽亜を助けたって本当!?」
「あぁ……うん」
曖昧に頷きながら、群がる人集りを避けようとした。
「宝務が言ってた背景って、本当だったんだなー」
誰かが関心したように言う。
「でも璃香無事で良かったー」
「うん、でもまだ犯人は捕まっていないみたい」
現場には証拠もあまり残っておらず、捜査は困難なようだ。
「璃香、何か引っかかる事がある。もう一度あの廃工場に行こう」
ワトソンが警戒したように呟いた。
「無理よ、警察が封鎖して入れない。姿が見えないワトソン一人で行けば?」
「……あぁそうする」
ワトソンは璃香に背を向けて言った。
ワトソンは一人で例の廃工場へ向かった。
工場にはkeep outの黄色いテープで封鎖され、立ち入りが出来ない。
正面にはかなりの数のパトカーも停まっている。
即に何人かの刑事や鑑識が出入りしており、アメリカの警察も立ち入っていた。
「エライ騒ぎだな……ん?」
ワトソンは廃工場の正面玄関を見た。
砂で薄く今にも消されそうな、足の痕跡。
幸い警察の保護が適切だったので、足跡は消えずに残されていた。
「おかしい、足跡が一つしかない!工場に入った痕跡はあるのに出た足跡が無いなんて」
もしも彼女を監禁するなら、足跡は二つ残るはず。
しかしここには一つしか存在しない。
仮に担いで連れてきても、廃工場を出た時の足跡が残るはずだ。
璃香達が駆けつけた時には誰もいなかったため、後から廃工場を出たと考えるのが自然。
「つまり……廃工場には別の出口が有ると言うことか!」
ワトソンは廃工場へ入っていった。
事件当時からドラム缶やその他の配置は一切変えられていない。
ワトソンは睨みつけるように周りを見回した。
「怪しいところは……ここなんか……どうだ?」
羽を器用に使い、深緑色の煤けて潰れた古いドラム缶を押しのけた。
「ビンゴ!分かりやすいな」
ドラム缶の下に穴があり、かなり深く大きい。
大人一人は祐に入れそうだ。
ワトソンは口角を釣り上げ、ニヤッとした。
そして穴の中へ飛んでいった。
「なるほど……ここから廃工場へ出られるな」
穴は廃工場の下水道管に繋がっている。
下水道管からは泥の付いた足跡が残されていた。