恋に落ちたんだ、多分。
春_____
別れと出会いが交差して目まぐるしく色を変える。
僕はこんな春が好きだ。
別れもそれなりに寂しかったりする。
最高の思い出があったら別れもどうってことない。
強がってるだけかな、なんて。
そんなことを考えながらフラフラ歩いていた。
実は朝から微熱。
でも入学式だし行かなくちゃ、って家から飛び出してきた。
顔が熱い、多分真っ赤。
正直辛かったりする。
けど、それさえも思い出。
桜が目の前で散っていく。
儚くて綺麗で……
何かを思い出しそうになった。
「……大丈夫?十和?」
「あぁ、ごめん大丈夫だよ、乃和」
双子の妹が心配そうに顔を覗いた。
僕は心配ないと微笑む。
それなら良かった、と妹も笑う。
新入生を呼ぶアナウンスが聞こえる。
体育館にはやく行かなければ。
初日から遅刻なんて笑えない、それは乃和も同じはず。
乃和の腕を掴み、走り出す。
入学式、出会いの場。
楽しみだ!!
人、多いな……
苦笑しつつ、所定の場所に座り溜め息をつく。
思えば、知っている人少ないんだよなぁ……
中学校は元住んでいた場所の小学校から持ち上がりの学校で友達もそれなりにいた。
しかし、高校生となった今、県外へ引っ越ししたため知っている顔なんて乃和だけなのだ。
乃和の方をちらっと見ると近くの女子と意気投合している。
僕も誰かに話しかけようと思ったけど座っている人はまばらでほとんどの人は立って話している。
人見知りって訳じゃないけど、なんか話し掛けにくいな……
手元のスマホを見ると入学式まであと10分__
10分って長いんだよなぁ、それに誰とも話せてないから退屈。
周りをくるりと見渡した。
体育館新しいのかな……
やけに綺麗な体育館。
そして前を向く。
真新しい制服が動きにくい。
何もかも新鮮だ。
「あ、もしかして十和くん?」
見慣れない女子に声を掛けられ思わず顔をあげる。
どうして僕の名前……
「あ……」
懐かしい声がする。
君は_____
「えっと……?」
誰だろう、この人。
知ってるような知らないような……
「あ、人違いかな?ごめんねっ、ハハッ……」
彼女は気まずそうに頬をひきつらせてこの場から離れようとした。
いや、名前はあってるけど、さ?
なんだろう……
「待って!!」
気付くと僕は彼女を呼びためていた。
いや、呼び止めてどうすんだ。
「……」
彼女は黙ったまま。
まぁ、そりゃそうだ。
僕だってこんな状況困る。
「……あのっ!!」