天使の前世は善人
悪魔の前世は罪人
だからこそ天使と悪魔の立場は逆転する
知っていましたか――……?
この世の悪は天使、善は悪魔という事を……
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神無月 甘楽 Kannaduki Kanra(かんなづき かんら) ♀
DATA
中学2年生。学校では特進のSクラスに所属
成績はいつも1,2をキープしている。
運動能力は皆無で、校庭2周でヘバる程体力は無い。
レライエ 天使族
DATA
ソロモン72柱の魔神の1柱とされた悪魔の名前より拝借
一定の条件を満たした体質出ないと人間の目には見えない。
天使族に所属するが、性格は極悪で平気で人を殺害しようとする
甘楽と共にいる時は殺気を抑えることが出来る
ラファエル 悪魔族
DATA
四大天使の一人。癒しを司る天使のラファエルより。
一定の条件を満たした体質でないと人間の目には見えない。
気弱で正義感が強い性格で、天界では悪魔族という事で差別を受けている。
甘楽といつも行動を共にしている。
速峰 或斗 Hayamine Aruto(はやみね あると) ♂
甘楽の幼馴染でクラスメート
整った容姿から女性のファンが多く、かなりモテる。
運動神経も良く、特進Sクラスでも上位の成績
天使の前世は善人
だから天界では天使が裕福で、また残酷な殺しをしても構わない
悪魔の前世は罪人
だから天界では悪魔が貧困で、また天使の罪を着せられる。
悪魔は汚名を着せられ
天使は永遠の免罪符を
T章
人影が疎らな夕方の図書室の一角。
オレンジ色の暑い光がカーテンを透して差し込む。
「レライエ……ソロモン72柱の1柱……地獄の辞典に載っていないのね」
ギリシャ神話などの本が並んだ棚の机で一人静かに読書をしていた。
机には本が重ねられ、山積みになっている。
古く汚れて黄ばんだそのページを食い入る様に見つめた。
何故そのページに執着したのか、自分でも分からない。
「おい、帰るぞ」
背後から低い男性の声がしたかと思うと、見覚えのある姿だった。
「あ……或斗君!」
或斗はポケットに手を突っ込み、気だるそうに言った。
「今度は何調べてんだ?お前いっつも部活終わったらここに来るよなぁ」
「だって……或斗君こそ、部活終わったら先生に説教されてるじゃん」
或斗は成績は良いが、授業中良くふざけるので説教も日常茶飯事だ。
「俺が説教終わるの待ってた?」
或斗は申し訳なさそうに甘楽から顔を背けながら言った。
「別に……」
甘楽はしれっとして答えた。
これは本当のことだ。ただ図書館で本を読みたかっただけである。
「まぁいいや、さっさと帰ろうぜー、俺腹減ったぁー」
或斗はサッカー部所属で結構外周とかもするから当然だろう。
甘楽は美術部所属なので大して疲れたりはしない。
「もう購買閉まってるし……帰りにコンビニ寄って行く?」
「あぁそうするー」
2人はいつも通り帰路についた。
コンビニに寄って帰ると、オレンジ色だった空は薄暗くなっていた。
帰路につく頃には電灯の灯りのみとなってしまった。
「ほんじゃーなぁー」
甘楽の隣に住む或斗は、コンビニのレジ袋を下げながらドアを開けた。
「うん、じゃあね」
それに釣られて甘楽もドアを開ける。
「あぁ疲れたぁーっ!」
ただいまーと言う相手も無く、帰った第一声がこれだ。
ゾンビの様にのしのしと階段を上り、自室へ入る。
重い教科書が入った鞄を放り投げ、ベッドへ転がり込んだ。
両親は共働きで夜遅くまで帰って来ない。
時計の短針はもう7を指していて、もう7時をまわっていた。
「今日は疲れたから久しぶりにカップ麺にしよ……」
普段は自分で料理を作るのだが、今日はやけにだるい。
フライパンを握る気にもなれず、カップ麺で済ませる事にした。
孤食が社会問題となっている今、自身も一人だ。
賑やかなトーク番組とかをぼーっと見ながらスープを啜った。
一人暮らしの大学生とかOLって、こんな感じなんだろーなぁ。
『次の怪奇現象はドッペルゲンガー!自分の幻影を見た人は死ぬ……』
テレビではミステリーコーナーに切り替わり、信じるか信じないかは……
とか良く聞くフレーズがまた流れた。
「憧れるよなぁ……ある日突然天使が舞い降りた……とかアニメみたいなの」
自分は至って普通で平凡な世の中が嫌いだ。
何か、ビビッと脳が痺れる様な、ちょっと刺激的な日常を欲していた。
『そんなに普通が嫌いなのか――……?』
「……えっ?何……テレビ?」
妖しげな声が聞こえたかと思ったが、相変わらずテレビは笑い声の渦。
空耳だろ、と無視しようとした時だった。
片付けようと立ち上がった瞬間、何かに押しつぶされた。
「ぎゃぁーっ!?何なにナニ……っ!?助けてぇ、死ぬ!?」
上から何かに押しつぶされ、フローリングに伸びてしまった。
見事に大の字になってくたばっている。
「……ったぁー、ここ、どこだよ」
背が低く、金髪で青い目をした外国人風の幼い男の子。
ヨーロッパんの貴族が着ていた様な感じのスーツを纏っていた。
日本語に違和感はなく、声も女性と聞き間違えるくらい高い。
そしてもう一人、幼い少女が仰向けに倒れていた。
黒髪のツインテールで、背丈は少年より低い。
黒いワンピースを身に纏い、十字架のネックレスをつけていた。
「うわぁ、不審者っ!?てかどっから!?」
混乱が抑えきれず、思わずモップを二人に向け、警戒した。
天井に穴は開いておらず、突然降ってきたのだ。
「ったくこれだから人間は厄介だなー、説明が面倒だ。どっちが見えてるんだ?こいつ」
「あの……っどうしましょう?私達の滞在先はここで宜しいのでしょうか?」
少年は指をパチンと鳴らすと、白い羽を生やした天使に変幻した。
同じく少女も指を鳴らすと、黒い羽を持つ悪魔に変幻した。
「…………は?」
私は彼らに、何も言い返す言葉が見つからなかった。