第一章「わたし達、双子なんです!」きなこside
「ん……」
朝、わたしはスズメの鳴き声で目を覚ました。
ベッドから体を起こして、クローゼットを開ける。
と、その時。
「きなこちゃん?」
聞きなれた声がした。
振り返って見てみると、そこにはわたしと同じ外見の女の子が。
この子はわたしの双子の妹のあんこちゃん。
わたしとあんこちゃんは見た目も性格も全く同じ。
さすが双子って感じだよね。
「あんこちゃん、おはよ」
「おはよー。早いね」
「あんこちゃんもね」
そんな短い会話の後、あんこちゃんは着替えを済ませたのかさっさと部屋から出て行った。
わたしも急がなくちゃ。
着替えを済ませ、洗顔と歯磨きもしたわたしはのれんをそっとくぐりました。
「おはよう、パパ、ママ」
「おはよう……ん?」
「おはよう、きなこ」
ママはわたしだってすぐに分かったみたいだけど、パパはちょっと迷ってるみたい。
パパったら、わたしとあんこちゃんくらい見分けてよね。
でも、ここは意地悪をせず、パパをフォロー。
「パパ、わたしはきなこ」
「お、おぉ、そうか……。早く朝ごはん食べなさい」
「はーい」
障子を開けると、あんこちゃんはもうすでに朝ごはんを食べてたみたい。
「きなこちゃん、早く食べな」
「うん。いただきまーす」
そんな調子で二人で食事。
チラリとあんこちゃんを見ると、お味噌汁をすすっている様子が目に入った。
もう!可愛いなぁ。あんこちゃんは。
でも、みんなの前であんこちゃんをほめると、自分もほめているってことになっちゃうから気を付けないとね。
「ごちそうさま」
朝食を食べ終わったわたしとあんこちゃんは、同じエプロンを身に着けて、三角巾で頭を縛って……。
今日の家事はあんこちゃん。
だからわたしは、おもちづくり。
あ、今更だけど、うち、おもち屋さんなんだ。
「桃玉」っていう、お店なんだよ?
ちなみに桃玉って、わたしんちの苗字ね。
桃玉きなこ、桃玉あんこ。わたし達の名前って、どう考えてもおもちを意識したものだよねぇ。
ま、気に入ってるからいいんだけどさ。
「きなこ」
「何?ママ」
わたしがひょこっと顔を上げると、ママは自分のエプロンでわたしの頬をやさしくこすった。
「粉、ついてるわよ。可愛いわね」
お母さんの笑顔、とっても優しい。
いつまでも、これが続くといいな。