■ご案内
☆深夜更新が多いです。亀さんなのでご注意ください。
☆作者は誤字脱字しまくりです。訂正の仕様がないのですが、こそこそっと教えていただけると有り難いです。
☆この作品はフィクションです。特定の個人、団体とは関係ありません。
■ご挨拶
はじめまして、立葵です。
多分殆どの方がお初だと思います。よろしくお願いします。
今回描かせていただくお話は分野でいうと、ファンタジー小説です。
超能力者の方々の物語の予定です。
文才がこれっぽっちもない人間ですが少しでも得られるよう練習したいと思います。
至らない点も多々あるでしょうが、応援していただけると嬉しいです。
少しでも共感や感動をしていただけるよう頑張ります。
これからよろしくお願いします٩(ˊᗜˋ*)و
一輪目[センテッドゼラニウム]
「1年3組の麻実凛です。Y市立S中学校出身で、元帰宅部です。頑張りたいと思っているので、よろしくお願いします。」
「よろしくー」
ちらほら掛かる挨拶に浅く一礼して、そのままその場に正座した。
私の左隣の人もそれに倣って立ち上がり、似たような言葉を述べ出す。
ここ、県立M高校には多くも少なくもない部活があり、この春この高校に入学した私も多くの高校生がそうであるように適当な部活に入った。
私が選んだのは担任が顧問を務めている弓道部だ。
「じゃあ、2年生は射込み、1年生は外で徒手練。2年生は手が空いてる人、1年生指導をしてください。これから今日の部活をはじめます」
「よろしくお願いします」道場内に大きな声が響き全員が一斉に動き出した。
私も他の1年生を追うようにして道場内を出て、道場前の少し開けた場所でそれぞれ練習を始めた。
因みに「徒手練」というのは、弓道の基本である射法八節を弓や矢、ゴム弓などを持たず素手で行うことである。
体験入部で一度教えて貰ったが、初心者には結構難しかったりする。
「麻実、弓構えはもう少し円相を意識して……うん、そう。それくらい肘を張って……はい、次、『打起し』」
三年生は各自大会に向けて自主練、となっているらしく、二年生に混じり射込みをし、記録を一緒にとっていたりするのだが、今日は一年生指導に加わっている。
射法八節を各自先輩と一対一で見てもらっているのだが、まず弓と矢を持ち手を腰に当てる基礎の執り弓の姿勢で注意され、重心を少し前にし安定させる胴造りでも注意され、弓を体の前で持つ弓構えで注意を受けた。
唯一注意を受けなかった肩幅より少し足を開く足踏みも、ただ先輩が見てなかっただけだったりする。
手厚い指導を受けながら、的の方をみるという顔向けはそのままに凛はちらりと先輩を覗き見た。
その姿に映り込むのは、キラキラとした濃紺のオーラ。
それは先輩に絡みつき、濃くも薄くもない異様な存在感と威圧感を放っていて、先輩の雰囲気とよくマッチしていた。
つまり、凛は所謂「超能力者」だったりするのだ。
超能力、と聞いて思い起こされるものは何だろうか。
スプーン曲げ、瞬間移動、物を宙に浮かせたり、相手の心を読んだり……並外れた、人には不可能なものを人はそう呼ぶ。
凛もまた、それらを扱う者の一人であり、そしてそれらに縛られる人間の一人であった。
凛はその濃紺に吸い込まれるような思いだった。
冷んやりとした空気。灯りのない岩肌。聞こえてくる祝詞。孤独にくれる子供。
引き込まれるような感覚で、自分がどこか遠くに来てしまったような気がした。迷子のような不安感や、途方に暮れたような感覚に掴まれる。
「麻実!次は『大三』だよ」
その声に我に帰り、体を動かす。
体に纏わりつくような冷たさの感触はそう簡単に忘れられるようなものではなかった。指先の体温は失われ、どこか体の動かしにくさを感じる。
『引き分け』、『会』、『残心』、『弓倒し』。全てを終え、反省点を早口に述べると先輩は的前で引いてくると凛に言い残し道場に戻って行った。
取り残された凛はというと、近くの石段にしゃがみ込み小さく息を吐く。まだ肌寒くピリリとした空気があるものの、日向になったそこは凛を暖めた。
「麻実さん、休憩ですか?」
物腰柔らかに凛に掛けられた言葉は、温かく、透き通ったよく通るものだった。
「菊矢先生……」
菊矢はこの弓道部の顧問であり、また、凛の担任でもあった。
日本人とは全く違った、彫りの深い顔立ちは女子の噂ではどこかの国とのクウォーターらしい。この高校では若い男性の先生であるため女子生徒からの人気も厚かった。
化学を教えていることもあり、白衣をいつも着ている彼は、その裾を翻しながら凛に歩み寄った。
「……えっと……はい、そうです。少し、疲れてしまったので」
そうですか、と微笑んだ彼に、凛は"ナニジン"なのだろうかという不躾な質問が頭をよぎった。
凛自身、自分の親戚全員を把握しているわけではないのだ。先代の先代のそのまた先代の先代が"ガイジン"という可能性が無くはないのであり、今時自分が純日本人かなんて分からないのだ。
ただでさえ国際社会である。今必要なことは血筋ではなく国籍で、外見は関係ないとも言えるだろう。
そう思考を巡らせていると、菊矢はいつの間にか凛の隣まで来ていた。
「今日は寒いですからね。寒いと筋肉も硬くなってしまって動かしずらい。良ければカイロをどうぞ。冬の残り物ですが」
そういって小さなカイロを凛に手渡した。
未開封のそれは小さいものの、よい防寒にはなりそうだった。
「……ありがとうございます」
口早にそういうと凛は立ち上がった。菊矢もまた、それを見届けると道場内に入っていく。
明らかにそこに合っていない出で立ちの男は、複数の挨拶に迎えられ、中へと姿を消した。