みんなはさ、自分にとっての正義が何だか、考えたことってある?
私はないかな。
だって、自分の考えを持たなくてもみんなに合わせていれば、それでOKなんだもの。
第一話「美里奈ちゃん」
私の友達の美里奈ちゃんは、とっても正義感が強い女の子。
悪いことをしている人が居たら、ガツンと注意できるし、自分の意見もしっかり持っている。
それに、芯が強いから、こうと言ったら絶対に曲げないし、なんだかとってもかっこいい。
私の名前は、紗那、と言います。
私は、自分の意見はずっと心に中で押し込めておくタイプで、自分からは絶対に言わない。
だから、私は美里奈ちゃんが羨ましい。
あーあ。私のあんなふうになれたらなぁ……。
でも、いいんだ!
下には下が居るものだから。
宮本莉愛ちゃん。
彼女は、私以上に意見を言わない、物静かな女の子で、私以上に無口だ。
そう言えば、5年生になってから一緒にクラスになって、もう半年たつけれど、莉愛ちゃんがしゃべっているところはあんまり見たことないかも。
けれど……その方がいいな。
だって、莉愛ちゃんが下にいてくれたら、その分私が引き立つからね!
そんなことを帰り道に考えながら、一人でニヤニヤしていると、いきなり肩をたたかれた。
「よっ!」
「あ、美里奈ちゃん!」
「なーに、ニヤニヤしてんの?」
「う、ううん!何でも……、それよりさ、今日の宿題って算数のプリント一枚だけだったよね?」
「うん……」
危ない危ない。
あんなことを考えていたと知られたら、きっと美里奈ちゃんはすごく怒っちゃう。
美里奈ちゃんと居て楽しいけれど、こういう時はちょっと大変。