ねぇ、大人になったら…
あのとき、まだ小さな手と手を握りあって、小さな約束をしたこと。小さなことだけど、私には大きな約束だったんだ。ねぇ、なのにキミの思い出の中に私はもういないんだよね…
やっと、キミの事忘れられたから…
本当は…あのときの約束、覚えてたんだよ。忘れられるわけないだろ?でも、ごめんな。あんな方法でしか、お前を守れない。まだ、思い出にできていないんだよ…
まだ、キミの事忘れられないんだ…
10年の時を経て、また恋をする
「だったらさ、忘れてよ…。私のこと なんか。そして、また。
はじめましてをしよう?」
下田 未来 mirai simoda
「忘れられねーんだよ。10年も待っ てたんだ。あの日のこと、謝らせてくれないか…」
結城 陸夜 rikuya yuuki
複雑に絡まりあう運命の糸。
止まってしまった歯車。
バラバラに砕かれたパズルのピース。
すべてがあの日に戻れば、キミがあの時、何を思ってウソをついたのか。
1つひとつ、謎が解けていく…
【寒空はキミのウソを笑ってた】
No,0 『始まりの予感』
中学3年の春。進級したはずだけれど、特には変わりない毎日を過ごす私は、下田未来。
平凡で、キラキラな人達とは別世界。暗く生きているわけでもないどこにでもいる普通女子。身長は低めの155cmで低めだったり、髪の毛が地毛で明るい茶色なのがコンプレックスだったりもする。
普通じゃないのはなんだろう?
大切な幼馴染みがいて、優しい家族もいて、勉強はちょっぴり苦手だけど、運動は自信があったりして。
普通で平凡な毎日を過ごすのが当たり前で、それが何気ない幸せで。
その時の私は、まだ知らなかったの。これから、運命を変える人と出会うなんて。その人が…
私の記憶の空白にいる、あなただったなんて…
No,1 『時が止まったようで』
「みぃ、こんな短時間でよく迷子にな れたね?」
今日は進級でクラス替えの日。中学3年生になったから、すっごく大人になって身長も伸びた気分!だったんだけど…
「えへへ、ごめんね、空ちゃん。着いていってたはずだったんだけど…」
私の幼馴染みで頼れる親友の、
北条 空音 (ほうじょう そらね)ちゃんは、絶賛私に飽きれ中です…
「来年は高校生なのよ?いつまで小学生気分なの?いや、みぃは一応中学生だったっけ…、それならもっとダメじゃないの!」
少し呆れ顔で、怒りながら言う空ちゃん。確かに、身長も頭脳だって小学生なんだけれどね…
「今度は迷子にならないから…ね?
そ、そうだ!教室行かないと先生に
怒られちゃうな〜?」
話をそらそうと必死に訴える。私が悪いんだけどね?…空ちゃんと仲良くお話したいし…
「…もう。目が泳ぎすぎだって。仕方ないなぁ。じゃあ、教室行こっか。3-5って、春人の隣のクラスじゃないの。」
少し呆れて、そして笑顔になって、名簿を見ながらいう雪ちゃん。め…女神に見えるぅ…。
春人とは、進藤 春人(しんどう はると)のこと。
私は春君ってよんでるの。雪ちゃんと、春君。2人は大切な幼馴染みなんだ。
「そうなんだ〜!これからも、いっぱい3人でお話出来るね!幼馴染み3人で!」
そう、笑顔で私は言った。だって嬉しいんだから!大好きな2人と一緒にいられるんだもん。
「…そうね。3人で、話、せるわね。幼馴染み3人で。嬉しいよね。」
……雪ちゃん、少し顔が雲って見えたのは何で?“3人“の単語を言う度に、苦しそうに笑うのはどうしてなの?
「うん…、そうだね。席に着こっか…
また、後でね!」
その理由が聞けないのは…何故か、酷い頭痛がしてきたから。どうしたのかなぁ…。
頭をおさえながら、席につく。雪ちゃんもそんな私に気づいたようで、
“だいじょうぶ?”と口パクで心配そうにいった。
”だいじょうぶだよ”そう口パクで私もいった時、丁度先生が扉から入ってきた。
去年と同じ先生で、なんだか新鮮ではないけれど、落ち着くなぁ…
まだ、頭を押さえながらだけど、HRをちゃんと聞く事が出来た。
先生の話が終わって30秒後、少し痛みの収まった頭に、もっと酷い痛みが襲うことになる。
「と、いうことで。やっぱり、ずっと同じメンバーじゃつまらないだろ?だからってわけでもないけど…いいぞー!結城、入ってこーい!」
ガラッ…
そして入って来た男子は、すごくカッコイイ人だった。でも、それ以上に頭痛が激しくなっていく…
「…はじめまして。結城 陸夜です。 色々あって、この場所を離れていましたが、今回戻ってくることになりました。そのときの知り合いはもういないだろうけ…ど…」
そう結城君が言った瞬間目が合った。
なんでかな…、目がそらせないのは。
時が止まったように、私達の間にゆっくりと時間が流れる。
「結城、どうした?緊張で固まったかー?」
そんな茶化すような先生の声で、教室中が爆笑の渦に包まれる。その声で、結城君も我に戻って、
「え、あ。よろしくおねがいします」
少し挙動不審になりながら、挨拶を済ませていた。
この時の私は、頭痛と早くなる鼓動の意味を探していて、知らなかったんだ。
雪ちゃんが、悲しい表情を浮かべて
「陸夜…、なんで帰ってきたの?もうこれ以上、みぃを傷つけないでよ…?」
そう、呟いていたことを。
No,2 『変わらないはずなのに』
結城君が転校してきて、1ヵ月が経った。たまに挨拶くらいはするけれど、ただのクラスメイトの関係。
結城君は、女子からも男子からも人気であっという間に、学年の中心グループとも仲良しになっている。
勉強も運動もなんでも出来るし…すごいなぁ。
あの謎の頭痛も段々しなくなってきて、結城君とは本当に別世界になってきた5月のこと。
「じゃ、お前ら帰っていいぞー」
という、担任の声を合図に部活に皆行き始める。いつも思うんだけど、帰る人ってあんまりいないよね…
ちなみに私は美術部に入っている。雪ちゃんが絵を書くのが好きで、私も頑張りたいなって、ただそれだけだけどね。
「みぃ、そういえば今日は九条先生出張で部活なかったよね?」
部室に向かおうと準備していた私に、慌てたように雪ちゃんが言った。確かに、昨日言われたかも…
「そうだったね!じゃあ、今日は暇になっちゃうなぁ…」
どうしよう。暇だからお勉強なんて選択肢、私用意しようともしてないんだよねぇ。……私ダメじゃん。
なんて、頭の中で悶々と自問自答を繰り返していた私に、雪ちゃんが女神のお言葉を一言。
「だからさ、今日3人でショッピングモール行かない?私と、みぃと、春人と3人で」
雪ちゃんが笑顔で私に言う。最近あんまり話せてないじゃん?と付け足して。
「いいね!うん、いこういこう!時間が惜しいよ、急いで春君呼びにいって、駆け足いきましょうっ!」
そして元気になる私を、単純ではなく素直と呼んでほしいな。
あれから急いで、春君を呼びに行き、バスに乗ってショッピングモールに着いた。
春君には、「急いで!」としか伝えておらず、「え?何があるの?」といいながらも、しっかりと着いてきてくれたのには感謝します。ありがとう。
「よし!まずは、パフェ食べよう!」
大きい声で、私がモールの中の店であるカフェを指差して宣言する。甘いもの食べたいんだよねぇ…
「もう、みぃったら。私はいいけど、春人は甘いもの苦手でしょ?ねぇ、春人はいいの?」
雪ちゃんが春君の方を見て首をかしげて聞いている。そうだった、春君は甘いの無理だったんだった!
「ごめん、春君!甘いのは無しでいいから…ねぇ、春君。怒っちゃったの?」
慌てながら謝るけれど、一方を見つめたまま動かない。温厚な春君を怒らせちゃった!?
「ね…ねぇ、春人。みぃも謝ってるし、許した…ら……、なんで…」
雪ちゃんも、春君と同じ方向を見て固まってしまった。何がどうなってるの?メデューサでもいるの?
「あ、あのさ、本当にごめんね?どっ、土下座かな?ねぇ「…許さないよ。」
私の言葉を遮り春君がそういう。やっぱりすごく怒ってるんじゃん!?
あわあわなりはじめた時、春君と雪ちゃんの言葉で私は混乱することになる。
「許さない…陸夜。なんで帰ってきたんだよ。」
「もう、みぃには近づけさせない。これ以上、苦しめないでよ…」
2人が見ていた方向には、こちらを見つめる結城君がいた。何を言っているの、2人は。
変わらないはずの日常がかわり始める、それの合図のように、私に再び頭痛が襲い始めたんだ…
とても面白いですね!(*´∀` *)
続き楽しみにしています!
>>5
ああありがとうございます、ひつまぶし、(げふん)暇潰し程度のお話ですのに…
これからも、頑張りますね♪
(やっべー、私絶対に今ニヤケてるよ……)
No,3 『隠してしまえば』
あれから変わらず3人の間に黒い空気が流れている。
そして私の頭痛も変わらず酷い。
時間にして、2分もたっていない。なのに、なんでだろうね。何時間もたったように思えるの。
若干空気をよむのが苦手な私でさえも感じる威圧感。相当なにらみ合いでもしているのだろうか。
喧嘩でも、したのかな…
痛む頭で、ゆっくりとさっきの事を思い出すと、不思議な事がある。今だ、勇気を振り絞って聞かないと後悔しそうな気がする…
「あ…のさ?私、な…にも苦しんでない、よ…?」
そう、さっき雪ちゃんの言ったこと。
だって、結城君と何の接点もない私がどうやって苦しんでいるのだろうか…
私が聞いた事でさえも消えてしまいそうな重たく黒い空気の中、ようやく1人が口を開いた。
「あのさ…」
雪ちゃんだ。
「あのさ、私から誘っておいて何だけど、みぃ、今日は帰ってくれない?
みぃを、守る為だから…」
ど…ういうこと…?真っ白になる頭の中で必死に考える。ズキズキと痛んでいるけれど、今は関係無い。
何か、私と結城君の間であった……?
「なに、なにがあったの…?教えてよっ!雪ちゃん、春君!私ももう、中3なんだから、あの頃とは違うっ!!あの頃……あの頃……?」
あれ、あの頃っていつだっけ?確か、すごく辛い事があって……
思い出せない…。思い出そうとすれば、頭痛の痛みは激しさを増す。
「ほら。今苦しんでるだろ?何かとは言えないけど…みぃは、僕と雪に守られてれば良いよ。」
春君もそう言い出す。なんで、なんでなのっ!?
思い出せないのは、なんで。
2人が私を守ろうとするのはなんで。
なんで…なんで…?
「思い出したいよ…、どうしてぇ…」
だんだん溢れ出す涙。みんなに見られたくなくて、思わず走り出す。モールから外に飛び出し、思いきり…
「ふ…… ぇ、え、ふぇ」
涙を流した。2人は何かと戦っているはずなのに、私を守ろうとしてくれているはずなのに…
何も出来ない無力な自分が情けない。
「……も、どるしかない…」
泣いて腫らした目なんて関係無い。今は、逃げちゃダメだ。
さっきいた場所にもどる。カフェの前あたりだ。
「ここらへんだった…はず。…………………えっ」
そこにいたのは、結城君の胸ぐらを掴む、春君だった。
No,4 『意味か分からなくて』
春君はそんな人じゃないよね…!?優しくって頼りになる、春君だよね?
なんで、雪ちゃんはいないの?
色んな考えが頭をめぐる。当然頭痛はするけれど、今はそんなこと言ってられない。ゆっくりと2人を見てみる。すると…結城君が話しはじめていた。
「俺…は、守りたかった。絶望なんて、…みぃに…未来にみてほしくなかった。俺だけ、苦しんでればいいと…」
少しうつむきながら結城君はそう言った。……みぃって呼びかけたよね?私のこと、未来じゃなくてみぃって呼ぶのは雪ちゃんと、春君と、…………あとの一人は 誰?
俺だけ苦しむって?何なの…?
戻ってきたのはいいものの、さらに混乱することになる。いまだに春君は、結城君の胸ぐらを掴んだままだし。
どうしよう…私が一人、デジャウな気もするけれど、悩んでいた。誰のことも助けられていない…「みぃ!」
え?この声…、
「雪ちゃん!なんで?春君たちと…」
「心配したのよ…帰ってとは言ったけど…あんなこと言うんじゃなかった…また迷子かと…」
息を切らして走ってきた様子の雪ちゃん。気になることは教えてもらってないけれど、それでも雪ちゃんといると安心する。
「ごめんねっ!それでさ、春君と結城君は「ふざけんなっっ!!」
春君と結城君がどうして、喧嘩のようになっていたのか。それを聞きたかったけど… 怒らないはずの春君の怒鳴り声が聞こえて、雪ちゃんと二人で思わず固まる。
「なんでだよ!?だったらなんで、ウソなんてついた!?まだやり直せたじゃねーかよ!?なんで…なんで…
「もうやめてよっ!!」
気づいたら、春君と結城君を止めようとしていて。何がしたいのかわからなかったけれど。
「私、そんなの嬉しくない!!私だって気づいてるよ!?私と結城君の間で何かあったんでしょ…?あったとすれば、記憶の空白の…5歳のころ。」
ハッとした表情で、春君は私を見る。
結城君も少し驚いたように、私をじっと見つめた。
「みぃ、気づいてたのか?」
春君が傷ついたように、悲しそうに聞く。
「結城君といたら、頭がズキズキするの。それが、証拠なんでしょ?」
少しの静寂が訪れる。後ろからゆっくり歩いてきた雪ちゃんが言った。
「4人で…話しましょう。そうしないと、解決しないんじゃない?」
運命の歯車は周りはじめた。
……君とまた出会うために
今日は、運動会の代休でお休みの日なので小説かきます!ズル休みじゃないので(笑)
10:空ラビ◆mU:2015/10/05(月) 11:38 ID:xlg No,5 『その日までには』
無言のまま4人でカフェに移動する。この空気は好きではないけれど、このままじゃ……絶対にダメだ。
4人席について、ドリンクを頼む。いつもだったら、楽しい話が始まる頃。
でも、今は……3人と向き合うよ。
ゆっくりと私は話始めた。なんとなく気づいてた。気づいてないフリをしていたの。
守られていたとも知らずに、なんて卑怯な人間なんだろう。私は。
「私ね、記憶の無い1年間があるの。5歳のころだよ。その1年間は全く記憶がないの。私が存在してなかったみたいに。あと…、その前の記憶に一人だけ思い出せない人がいるみたいで。」
私がうつむいて話して、話終わったあとにゆっくり顔をあげた。皆、すごく驚いていた。
「それって…、思い出したのか…?」
結城君が声を絞り出すように、私に聞いた。思い出してはないよ、思い出してないの。でも…
「結城君…なんでしょ?私たちは、4人で幼馴染みだった。仲良しだった。きっとそう。」
私は確信したようにいった。いいや、きっと確信してる。結城君といると、何故か最近初めて会ったように思えないから…
「そう…ね。そうよ、私達はあるときまで、4人でいたの。でも、まだみぃはその時を思い出してないのよね?」 雪ちゃんが少し動揺しながらも、頷いて答えてくれた。やっぱり…。
「あるとき?…記憶にないや…」
私がそう言うと、再び訪れる静けさ。周りはにぎやかで、たくさんの声が聞こえるはずなのに今の世界は4人だけしかいないみたいだ。
次に口を開いたのは、春君。春君は何か決心したように、話をはじめる。
「みぃはさ、忘れてるじゃん。僕らは覚えてるけど、言うんじゃ意味ないよな。正直、陸夜の事を許したいんだ、だからまた、4人で過ごしてみないか?皆で、あの日から解放される為に。」
春君が私達の目もまっすぐに見てそう言った。春君も悩んできていたんだ。
「私は良いと思うわ。また、4人で過ごしたい…」
「俺も、許されるとは思ってないけど、償いたい。また、一緒にいたい。」
春君、雪ちゃん、陸夜君、…
「私も…、10年前の私を見つけたい…明日から、みんなではじめましてだね?」
皆でゆっくりと笑いあった。
10年前の私を見つけるには、時間がかかりそうだけど、今の私を楽しんで、いつかは、あの日の事を思い出すから……
それから、4人で歩いた帰り道。4人で過ごして、今年が終わるまでに、あの日の事を、空白の一年間を思い出す。それが条件だと決めた。
タイムリミットまで、8ヵ月です。
No,6 『新しい日々』
4人で話し合った日の次の日。今日からは、雪ちゃんと春君の他に陸君もいるんだよね…
昨日話した中で、距離を縮めようって事で私は結城君の事を陸君。陸君は、私のことを未来と呼ぶことにした。
前は私の事を「みぃ」と呼んでいたらしいけど、昔を思いだしかけて頭痛がすると話したら未来って呼んでくれることになったんだ。これから焦らずにゆっくり思い出していこうかな。
そして、決まった事はもう1つある。
ガチャッ…
「陸君、おはよう!」
「あぁ、おはよ。」
なんと、陸君と私の家は隣どうしだったらしいの。確かに、何か建ってるなーとは思っていたけど、それが陸君の家だったなんて、聞いた時は凄く驚いちゃった!
それで、陸君が朝迎えに来てくれる事になったんだ〜!誰かと一緒に行けるって嬉しいね。雪ちゃんと春君とは間逆の方向だもん…
「陸君、待っててくれてありがとう!行こっか〜!」
ニコニコの笑顔でそう言った私。嬉しいんだもん♪寂しくないない〜
「ちょっと、思ったんだけどさ。」
陸君が少し無愛想に言う。どうしたのかな?
「うん?何〜?」
「さっき、未来が出てきた時、玄関の扉の隙間から女の人が凄いニヤニヤ…いや、笑顔で俺らの事見てたんだけど。」
……………!?ま、まさか…
シュバッ!急いで玄関の方にふりかえって見てみると…やっ…やっぱり…
「うふふ…、未来にも彼氏が出来たのねぇ。長かったわー!未来、ちゃんとやるのよー!お母さーんっ!未来にもやっと彼氏がぁー!」ガチャンッ!
……………お、お姉さま!?何やってんの、まったく…
「あのね、今のはお姉ちゃんで…」
頭を抱えながら説明しようとする私。恥ずかしくて恥ずかしくて…彼氏じゃないよー…すると、
「知ってるよ。若菜(わかな)だろ?俺は若菜姉(わかなねぇ)ってよんでたけど…」
あれ?なんで陸君、私のお姉ちゃんのこと知ってるんだ?教えたことない…
「俺と未来は幼馴染みだってば。2コ違いの若菜姉とも遊んでたんだよ。忘れているとはいえ、ちゃんと覚えてよ?」
少し悪戯に笑う陸君。だって、ちょっと前まで知らなかったんだもん!あのクレイジー若菜と呼ばれるお姉ちゃんのことも教えてないと思うじゃん?
「だって…、陸君だって私だったら忘れてるよっ!」
「いいから、歩いて。俺、記憶力はいいんで。未来とは違うから。」
澄ました顔で言う陸君。ムッキィーーーーー……
「何それ!私だって覚えようとすれば出来るし〜!」
「覚えようとしなくても出来るのが俺かな。」
本性さらけだしてるよね!?もう!たしかに、陸君頭いいけどさ!なんでも出来ちゃうけどさぁ……あれ?涙が出てくるよ…
「やっと、未来が俺の素晴らしさに気づいたか。」
ハッと嘲笑うように言った陸君。コノヤローー…ゲスキャラじゃんかよ!
「ナルシスト!ナルシスト!バーカバーカ!」
そんな事を言っては、陸君に一枚上手のことを言われてしょんぼりなって、陸君が結果的に少々投げやりだけど謝って。それが何故か居心地良い私は、とうとうドMにでもなってしまったのでしょうか、神様。
でも1つわかることがあります。
「あ、雪ちゃんと春君だ!おっはよ〜♪」
「おはよう。陸夜、みぃの事いじめてないかしら…?」
「みぃと、陸夜。おはよう。
「少しいじめたかもしんねぇ。おはよ。」
「そうなの!聞いて?陸君がね〜…」
新しい日々は、これまでよりも楽しくなりそうなんです。
No,7 『風邪引きさん家へ1』
みなさんおはようございます!
だんだん陸君と打ち解けてきて、あの日の記憶さえあれば普通の幼馴染みの関係になった未来です。
ただいま私は家の前にいます。
それは何ででしょうか?……
朝、一緒に行くはずの陸君が来ないからです。怒ってます。これまで私より遅く来たことないのになぁ…
あ、そうだ!だったら………
「陸君の家に行けば良いんだ!」
お隣さんだもんね〜!
ピンポーン…
ピンポーン…………
ピンポーン…………………
何で誰も出てこないの?な…泣きそう……
私が涙目になり始めた時、ようやく陸君の家の扉が開いた。
「ゴホッゴホ、うるせーな…病人だってのに…何のよう?」
そこには、少し寝癖のついた髪でマスクをしている陸君がいた。か…風邪だったのね。何てことしちゃったの私…
「ご、ごめん陸君!ほら、陸君いなかったからさ…」
あわてて謝り、少し言い訳をしてみる。でも流石に風邪引いてる人来させるなんてダメだったよね…
「ゴホッ…い、や。良いけどさ。携帯見なかったの?」
へ?携帯…?頭の中はハテナマークでいっぱいだけど、とりあえずスマホを確認。…………………………。
「…はい、読んでみな。」
陸君が少しキツそうに、でも余裕そうに笑って見せて言った。
そして、携帯にかいてあったのは…
「風邪引いたから、学校休む。
ごめんけど、朝一緒に行けない。
明日は行けると思うから、今日は一人で行って。…というメールです。」
思いっきりメール来てました、見てませんでした。
「ゲホッ、じゃ、罰として今日見舞いに来い。親いねぇから、買ってきてほしいものも頼めない。じゃ、行ってこい。」
そういって閉まる扉。いや、今回のはね?私が悪いんだけどさぁ…
仕方ない。学校終わったら急いで陸君の家に来てあげようかなぁ?
………今日、陸君いないのかぁ。
別に寂しくは無いけど…、あー、陸君の事ばっかり…
そう考えているうちに、あることに気づく。あれ?今何時だ…?
ゆっくりスマホの時刻を見る。現在
8:32
「ち、遅刻だぁぁぁぁぁあああ!」
急いで学校へ向かう。遅刻は決定してしまったけど、何とか全力疾走して着いた時刻は 8;58 早いじゃんね。
それでも起こられるのが遅刻の宿命。きっちり怒られました。怖かったよ、担任やぁ……
何故未来が、上の空だったのか、遅刻したせいではないと気づいている雪音と春人だけの秘密なんです。
No,8 『風邪引きさん家へ2』
キーンコーンカーンコーン…
「はーい、また明日なー!ほい、帰れ帰れー、今日は会議があるんだよなー」
いつも適当に済ませる担任の挨拶。みんなそれを合図に、部活へ行く。
会議あるんだ…私も美術部行こっーと!
ん?何か忘れてる気もしなくもないけど、まぁ、何もないよね〜!
気をとりなおして!部活の準備をしている雪ちゃんの方へ行き、ぴょんっと飛びつく。
「きゃ!…何よ、みぃじゃない…」
「ゆーきちゃんっ!さぁ、今日も美術部行きましょー♪」
思いきり飛び付いてぎゅう…と抱き締める。雪ちゃんは、驚いてから少し照れていた。こういうのに慣れていないらしい。
なんて可愛い親友なの……!
私が雪ちゃんに感動していると、雪ちゃんが一言。
「あれ?今日放課後に何かあるんじゃなかったのね。ほら、春人とも話してたけど、上の空だったし。
陸夜にお見舞いでも行くんじゃない?って話してたんだけどなぁ…」
私は、雪ちゃんの背中に飛び付いたから当然雪ちゃんは私と目をあわせて喋れないけど、横を見る形で話してくれた。うん?放課後…、お見舞い…
「あ。」
「やっぱりじゃないの。」
そういって、雪ちゃんは笑うけど私はそうもいかない。だって、さっき携帯にメールがきてた気が…
「雪ちゃん、きてるメールよんで…」
ぷるぷる震えながら携帯を雪ちゃんに渡す。自分じゃ怖くてよめないよ…
不思議そうな顔をしながらも読み始めた雪ちゃん。
「えっと…、
まさか、忘れてるんじゃないだろう な。
部活なんて良いから、見舞いにこい。」
(途中で終わってました!)
「えっと…、
まさか、忘れてるんじゃないだろうな。
部活なんていいから、見舞いにこい。」
不思議そうにしながらも、メールの内容を読み、また私のほうを向いて
読んだけど…行かないの?と、首をかしげて言う。だって…このメールはメールは……
「絶対怒ってるよーーー!!どうしようどうしよ…部活とか、部活とか、部活とかぁ……」
半分涙目でそう叫ぶ。
廊下を通ってたチャラい男子も「元気だなぁー」って驚…いてはないけど。ないけどさ。
雪ちゃんは、呆れたように笑って
「別に陸夜も怒ってないでしょ。部活は私が何とかするから、行ってきな。」
そういって、「ほら」と私のカバンを渡してくれる。昔から、ずっと変わらない優しさのある雪ちゃんが大好きだよ…
「ありがとう、雪ちゃん!しっかり、お見舞いにいって陸君をハイテンションにしてくるから!じゃあね、また明日!雪ちゃんっ、
大好きだよぉぉぉおおお!!」
カバンを受け取って雪ちゃんの目を見て、笑って、そして、…
大好きの意味をこめて、叫びながら廊下を走る。雪ちゃん愛してるよっ、私が男子になったら結婚しようね!
私がうおぉぉぉおおお!と言って廊下を爆走している頃、雪ちゃんが微笑んで
「もう、これだからついつい世話焼いちゃうのよ。みぃと、一番仲良いのは私だよ。陸夜には渡さないんだからね?」
と、呟いていたなんて。
「ふぅ、ぜぇ…はぁ、ぜ…げほ。ふ…う…」
ただいま、陸君の家の前。あれから全力で30分ほどの道のりを朝同様走り抜けてきた私は、多分今、世界の誰よりもイケメンだと信じてるから。
それにしても、苦じぃ…
少し前にもたれかかったとき、
ピンポーン…
「はーい」
あ。心の準備出来てないのにチャイム押しちゃった…ま、いっか。最後は押しちゃうんだし。
でも、はーいの声、陸君じゃない男の人だったような…
ガチャ
そうこう考えているうちに、玄関は開いた。出てきたのは長身のメガネをかけたイケメンさん。あれ、この人どこかで…
「いらっしゃい、陸夜の友達かな?
……っ!!もしかして、未来!?でも、引っ越して…」
イケメンさんは私を見るなり、急に笑顔になって私に気づいた。あれ、頭がズキズキして…あぁ、この人にあったことあるんだ…だから…
空ラビだー!小説うまいね!もっと書いて!
16:空ラビ◆mU:2015/10/10(土) 16:41 ID:xlg >>15
うわっふ、わっふ、ななじゃん!
うまいだなんて……(´∀`*)照
頑張れるだけ頑張らせていただきます(笑)
読んでくれてありがとーね♪
(またまた途中でした、ごめんなさい!)
ズキズキとする頭を少し撫でるようにおさえ、笑顔で私はいう。
「はい、下田未来です。陸君のお見舞いに来ました。」
イケメンさんの目を見ていった私、やっぱり…と呟いて、イケメンさんは喜びながらも、少し不思議そうに
「やっぱり、未来ちゃんだったんだ。久しぶりだね……って、そういえば覚えてなかったか。俺は、陸夜の3コ上の兄、雅夜(まさや)です。
どうぞ、陸夜の為に来てくれてありがとう。さ、入って」
雅夜さんは、少し寂しそうに笑って、本当の初対面のように話してくれた。どんどん痛む頭、あれ、あれ……
思わずしゃがみこむ、私に背を向けて玄関を開けようとしていた雅夜さんは急いで振り返って私に駆け寄る。
「どうしたの、未来ちゃん!?走りすぎて疲れた…?とにかく、家に入ろう…」
慌てて、私の顔をのぞきこみ、すごく心配したように家を指差しそういった。
「待って、………ちょっと待って」
私が絞り出すように声を出し、必死にそう告げると
「……分かったよ」
何かを察したように、雅夜さんは頷いた。あと、もう少しで……
…………………あっ、…
………………っ!!!
「雅君…雅君なんだね…?思いだしたよ、ごめんね。忘れちゃってた…」
何故か忘れていたはずの1ピースを思いだした。そうだ、たしかお兄ちゃんみたいだなって思ってて…
「まさか、俺のこと…思い出したのか…。でも、陸夜の事は思い出せてないんだろ?もしかしたら、この家がヒントになるのかもしれないよ。今度こそ、陸夜に会ってやってよ。」
すごく、嬉しそうに笑う雅君。でも、少し悲しそうにも笑う。ごめんね、雅君も陸君も、皆を傷つけてる…
だからこそ、思い出したい。
陸君のいる家に入って、靴を脱ぐ。
何となく陸君の香りがする。
「あれ、陸夜の靴なんで出してあるんだろ。あー、あれだな。風邪なのに買い物行こうとして、結局無理だったパターンだよね。」
そういって、笑って陸君の靴を靴箱に入れた。陸君のバーカ。風邪の時に出ようとするんじゃないよ。まったく。
もっとひどくなっちゃうじゃんね…
「じゃ、陸夜の部屋まで案内するよ。」
「うん、ありがとう。」
私はこの時知らなかったんだ。まさか、陸君が家の前の私達の会話を聞いていたなんて。
そして…
「ゲホッ、な、んで。兄貴の方を先に思い出してんだよ…、早くお、れの事、ゴホッ、思い出せバカ…約束も忘れてんだろ…?」
そう苦しそうに天井にむかって呟いていたことを。
~陸夜~
No,9 『』
未来にメールを送ってから何十分かがたち、家のチャイムがなった。兄貴が返事をする声が2階である俺の部屋まで聞こえる。
「そ…ろそろか、未来がくるの」
自分でいって、少しだけ頬を緩ませる。……ダメだ、普通の俺でいないと。
あれからかれこれ、5分はたった。
何か、あった…?
兄貴と未来に”何か”あったんじゃないか…
昔の俺みたいに…
そんな考えが頭をめぐる。
「ゴホッゲホッ、行くか…」
フラつきながらも、ゆっくりと壁をつたって歩く。髪は少し寝癖ついてるけど、まぁいいよな。
ゆっくりゆっくり歩いて、ようやく玄関付近につく。……話してる?
少し話し声が聞こえた気がした。
気になって、靴を出し静かに玄関を開いて顔をのぞいてみる。
………そこには、しゃがんでいる二人。兄貴が未来をのぞきこんでいる形で……すごく、 近いじゃねーかよ…
そして、次に未来の話した言葉は、驚くべきものだった。
「雅君…雅君なんだね…?思い出したよ、ごめんね。忘れちゃってた…」
……!?
音をたてないように、ゆっくりとドアを閉め急いで靴を脱ぎ散らし、階段をかけ上がって俺の部屋へ急ぐ。
「ハァ…ハァ、ゴホッ、ハァ…」
未来が、兄貴の事、思い出した…?
喜ばしい事だけど、黒い感情が俺を襲う。この感情の名前は…嫉妬。
この感情を知った途端、俺が最低な人間に思えてくる。何考えてんだよ。俺の大切な兄貴の事を、未来が思い出しただけだろ?兄貴は良いやつなのに…
呼吸を整えてから、天井を見て呟いた言葉は、お前に届かないのに…。