夢スレで話した方きてくださいー!
2:未明:2015/10/19(月) 20:42 ID:ETkこんばんは〜(*´∇`*) 皆が顔出したら、お話はじめましょう
3:猫又◆Pw:2015/10/19(月) 21:42 ID:ji2こんばんは。来ましたよー。順番どうなってます?
4:匿名:2015/10/20(火) 06:14 ID:ItU 順番どうでしたっけ…?
スレは一番最初の人が作るって言ってたような気がしたので、私が最初かもしれません
こんにちは!
>>翔乃星 悪天
ではお願いします!
話がズレてたらすみません;;
ここは何処だろう。暖かい何処かの中。ガシャンガシャンという音が聞こえる。薄暗い空間の中……
『もしかして、オオカミにたべられた…?』
タイトルは最後に決めようか?
8:*翔乃星 悪天:2015/10/20(火) 17:40 ID:ItUそうだねー。次って誰?
9:未明:2015/10/20(火) 18:51 ID:ETk時間があるので私が書こうか
10:*翔乃星 悪天:2015/10/20(火) 19:54 ID:ItU 1、私 2、未明 3、猫又 4、薄嫁 でいいですかね?だったら、
>>9お願いします
はーい。お願いします。
12:未明:2015/10/20(火) 20:15 ID:ETk 狼の口元に獲物をしとめた後がある。ぜえはあ、と荒い呼吸を落ち着かせようとじっとしているものの、口内の鉄臭さが気になったのかブルリと頭を振った。
余計に興奮してしまう。
先程の死闘を思い出してしまう。
口元からヨダレのように垂れた血塊を拭おうと舌を滑らせるものの、少し遅かった。その血塊は赤黒い燐光を放ち、飛沫となって傷ついたフローリングを汚した。
――いや、傷だけとは限らない。
先程の血塊はほんの一部だ。
ヨロ、と弾丸で傷付いた前足を引き摺りながら、狼は雪の積もる外へ目指した。
狼の背後にはふたつの血溜まりがある。ふたつとも目を背けたくなるような痛々しいものだ。
ひとつは猟師のもの、ひとつは幼女のもの。そして暖炉の手前には、踏まれて原型のない老眼鏡が。暖炉の中は火は消えているものの、煙が立ち上っている。
「行くか……」
狼は重たいお腹を抱えながら、雇い主の女のところへ向かった。
辺り一面に広がる銀世界。溜め息をつきながら、人間の心も白く美しいものであれば良いのにと思った。雲ひとつない空のように、隠すところがなく堂々と生きられれば良いのにと思った。
雇い主の女は、メラニーといって町一番の煙草好きと言われていた。家の窓をのぞけば、朝昼晩と煙で中の様子が見えないからだ。旦那に離婚を求められて今はひとりらしいが、ちらほら家に男の影があった。
*
犬に化けて町に入る。家に行くと城からきた兵隊がふたり、メラニーと話している所が見えた。家からは煙がもくもくと出て耐えられない臭いがしており、兵隊はそそくさと城のある方へ戻っていった。
舞踏会の招待状を――、と兵隊のひとりから聴こえた気がするが、メラニーは興味もなさそうな目をしている。招待状を扇子がわりにしているくらいだ。俺は可哀想な兵隊ふたりの後ろ姿を見送った。
「おや、スインキーじゃないかい。どうしたのさ」
「ここではまずい。中に入れてくれ」
煙草の煙を満足そうに吐いたメラニーは、頬を厭らしく、でも嬉しそうに緩ませて見せた。浮き出た頬骨が一瞬見えなくなる。
誰にも言えない願い事が叶った顔だ。
黒のドレスをひらりと舞わせると、町の様子を伺いながらゆっくりとドアを閉めた。
「メラニー。約束通り、お前の娘を……」
言う前から、この母親はなんとも残酷な顔をしていた。この母親にとっては瞠目すべき成果を俺はしたのだろう。
死神に雇われた気分で気が滅入ってしまう。
次の人は、猫又さんかな。
バトンパス(´▽`;)ゞ
「適当な場所に座りな」
メラニーは最低限度の言葉を吐くと、散らかった部屋に俺を招き入れた。
とはいっても部屋中に煙が充満していてはっきりとは分からなかったが、彼女が身の回りを片付ける性分でないことは誰の目にも明白だろう。
俺は視界が悪い中、器用に散乱している物を避けつつ自分の居場所を確保する。
人でもオオカミでもなくバケモノである俺だが、ここら辺の習性はオオカミに類似しているらしい。
俺が居場所を確保したことを確認するとメラニーは「それで?」と話を切り出した。
「たしかに“あの子を食べた”んだろうね?」
「……あぁ。あまり腹の足しにはならなかったが味はよかった。さすがお前の子だ」
「そうかい……そうだろうねぇ」
俺の腹が膨れていることを確認するとメラニーは目を細め、どこか恍惚とした様子で嗤った。
「私の子だ。質は上等だろう……」
「…………本当によかったのか? 食べて」
わずかばかり、罪悪感があったのかもしれない。
こんな身の上である以上、汚い殺しはゴマンとやってきた。むろん良心などカケラもない俺だがさすがに今回の殺しには畏怖を抱かずにはいられなかった。
だからというわけではないが俺はつい依頼主にいらぬ質問を投げかけてしまった。
「……」
気まずい沈黙。メラニーは俺の言葉を聞いてしばらく顔をしかめていたが、「ふん」と鼻から煙を吹き出すと続けた。
「あの子は私を捨てたクソの子だ、出来損ないも同然さ……だのに」
その場にあったテーブルにメラニーがダンッと両腕を叩きつける。
「私の母親ときたらあの出来損ないをあろうことかアタシから守ろうとしやがった……。だから数ヶ月前に殺してやったのさ、私が! この手でねぇ!!」
もはやバケモノよりバケモノらしい笑い声を上げるメラニーを見ないよう、俺は獣の姿のままこう告げた。
「あぁ。暖炉の前に老眼鏡があったよ……あのままで大丈夫なのか?」
「ハッ。あんな山奥にある小屋にこの季節、お前みたいな獣以外、誰が足を踏み入れるってんだい? 発見される頃には私はこの街から出て行ってるよ」
そこまで話し終えるとメラニーは台所らしい場所へと乱雑に置かれた椅子をかき分け進み始めた。
「ともかく。よくやってくれたよ……今晩は泊まっていきな。殺人祝いに1杯やろうじゃないか」
「あぁ、ありがとう。残念ながら一杯やる気分じゃないが……」
黒いドレスを翻しながら嗤うメアリーを見て。俺はまた同じ結論に回帰する。
あぁ。人間の心も白く美しいものであれば良いのになぁ……。
「それにしてもやっぱりあの子はマヌケな出来損ないだ!」
あぁ。なぜ人間は俺達すら恐怖を覚えるほどの悪になりえるのだろう……。
「ずっと私を警戒していたくせに、あの老いぼれの小屋に行けると聞いて喜んで飛び出した! あはははははははは!! その先でお前が待っていることも知らずにねぇ!!」
なぜ彼女はバケモノよりもバケモノらしい、歪な心を持っているのだろうか。
しかしそんなことを考えている最中でさえ、死神のように残酷で魔女のようにイビツな彼女を見て、俺は素直に美しいと思えた。
真っ黒なドレスを煙草のケムリでかき消すように。
彼女の黒い本心を知りながら、白い煙に巻かれた俺には彼女が……白く見えたのだった。
次は、薄嫁さんかな?
16:薄(嫁)◆Mg:2015/10/21(水) 18:50 ID:BTk 「あ、また動いた」
私はお腹をさすりながら隣の夫に聞こえるように呟いた。
「ほんっと、そいつは赤ずきんが好きだなぁ」
「ねぇ」
そう、顔を見合わせて笑う。
妊娠して約7ヶ月にもなるとお腹の中の赤ちゃんは動きが激しくなる。初めは自分のお腹でぽこぽこ動く感触になかなか慣れなかったものの今では習慣のようなもので逆になくなってしまえば冷静さを欠いてしまうほどにある。
そんな私の、赤ちゃんが始めて動いたのは赤ずきんを読み聞かせたときだ。調子に乗って他の物語も読み聞かせてみたが、結局この子が反応したのは赤ずきんだけだった。
テレビなどでたまにお腹の中の思い出を持っている子供の話を聞くけれどこの子はどうなのだろう。
「ちょっ。タバコやめてよ。せめて家の外でして?」
主人は近所でも屈強のスモーカーだ。何度やめるやめないで口論したことか。結局やめてないというのは私の敗北の証である。
「いいだろ〜」
「だーめ。ほら外行って! タバコは赤ちゃんに害なんだから」
「うーん」
夫は不満ありげにタバコの先を灰皿にグリグリと押し付けた。
「あれ、今日はやけにすぐやめたわね」
「いやぁさっき見たドラマあるじゃん。妻が夫の身勝手さに堪えられなくなって最終的に殺すやつ。あれが怖くて怖くて。自分も気を付けなきゃなぁとか思ってさ」
私は呆れ顔で「ふーん」と返し、冷蔵庫から持ってきた棒アイスの袋を開けた。
「アイスは体が冷えて良くないぞ」
「んー。食欲ないから食べられるのこれくらいなのよね」
「じゃあ一袋だけにしとけよ」
「うん……」
と、答えると同時に急にめまいがして視界が反転しだした。クラァっとよろめいたかと思うとその場に音をたてて倒れてしまった。さっきから我慢していたつわりがだんだんひどくなる。予定日はまだまだのはずなのに。
「おい、大丈夫か? そうだなとりあえず病院に行こう」
夫はでたらめに私を抱えると車庫に向かった。
つわりのせいで息も絶え絶えの私は黙って夫に身を預けるしかなかった。
そこから車に乗った先はよく覚えていない。
目が覚めるとベッドに寝かされていた。
横には重々しい表情の夫と担当の医者が立っていて。
「難産に、なるかもしれません」
まぁ、それはこの雰囲気に察することが出来るだろう。
「どうもあなたの赤ちゃんは早く生まれたがりますね。成長が早く、出産時期をずらしてしまうなんて。まあそんな事ザラにありますが、それよりもやはりいささか早い。言い方は悪いですが、まるでお腹の中にいることを拒んでいるような……」
「不思議ですねぇ。そんな事があるんですか」
「あ、いえいえ。あくまでも例えですので」
頭の悪い夫は医者の言葉を鵜呑みにしたようだった。呆けたような顔をして説明を聞いている。
「まぁ、予定が早まるだけですし。どうなるかは私にもまだよく分かりませんので入院という事で」
そう言って医者は出ていった。その背中を二人で見送りながら、
「そんな焦らなくていいのにね。もしかしてあなたの馬鹿の遺伝子を受け継いじゃったのかしら?」
「馬鹿はねーだろ。いやでも早く出てくるならそれでいいよ。俺、早く会いたいし」
夫は私のお腹をさすった。
そんな夫の手に自分の手を重ねて私は
「そうね」とだけ返した。
ただ、私は今から生まれてくるこの子が暗い性格をしていないか不安だった。
何せ私がこの子に聞かせていた赤ずきんは最終的に赤ずきんはも猟師もおばあさん助からないバッドエンドのお話なのだから。
「そうでしょ。メラニー」
私は夫にも聞こえない声で空気に向かって、狼に食べられこの世から消えてしまった昔の友の名を呼んだ。
お待たせいたしました!
なんか他のお三方に比べてまだまだ駄文な感じになってしまいましたが、これでよろしければ頑張りました!
すいませんでした!
>17
お疲れ様でした!☆
駄文の話は、即興だから仕方のないこと……。
難産という言葉にもショックを受けず、旦那にお前に殺されるかもしれない、と言われながらも反抗もせず。
腹の底が読めない妊婦だったなぁと。
童話は人の形をした化け物のキャラクター多いので普通に溶け込んでた。
赤ちゃん視点
何処かの空洞の中で、ある話を聞かされた。
確か赤ずきん?とかの話。結局はオオカミに食べられてしまう話
まさに、今の自分だ。どうしよう。すごく怖い…。そう思った瞬間だった。
この空洞が倒れた…。オオカミが倒れたのかも。誰か…誰か助けて…。
そう思っていた。。何かに運ばれ揺らされる…。私も死んじゃうのかな。
数分後。何処かに着いた様子だった。そして、声が聞こえた。
『メラニー』と。何処かで聞いたことがある。それは、きっと。
オオカミから、聞いた赤ずきんの話だった。
>>18
そう言っていただけると本当に助かります。なんて心優しいフォローなんだ!
とある診察室にて。黒髪を黒のゴムでひとつに縛り、眼鏡をかけた白衣の女がひとり。洒落っ気のないメイクをし――リップクリームを塗っただけのシンプルなもの――、メンズかと思うような青いトレーナーを着ている。
ファッションにもスイーツにも興味がなく、趣味と仕事が表裏一体化してしまっているタイプだ。
ただ、赤子を取り上げた時、「無事に生まれて良かった」と歓喜する暖かい家庭をみると自分もああなりたいと切望してしまう。
でも、自分が結婚なんて! と思う気持ちの方が強かった。男へ満足にアピールも出来ず、合コンにも誘ってもらえない自分が惨めだ。結婚なんて無理!
(なに考えてるんだ、私は……。そんなことより、仕事しなくっちゃ)
私は仕事に生きるんだ! と、新たに強い決意をする。スタッフが持ってきた診察記録カードを受け取る。
(……どうなってんだ、これ?)
湯気のたつ珈琲をデスクに置いて、1枚の紙をじっと凝視している。
「赤坂さん、診察室へお入り下さい」
*
分からない。どうしてこの赤ちゃんは8ヶ月という短い間でこの世に生まれて来ようとしているのだろう?
助産師を務めて10年目になるが、本当に奇っ怪なことである。今までこういったケースがなく、どういった解決策があるのかも不明だ。妊娠8ヶ月目、という記録をみるほど頭が痛くなってくる。
確かに胎児の知能が発達し、感情も芽生えてくる頃合いではあるのだが、十月十日はまだお腹の中にいてもらわないと困る。胎児にとって子宮はふわふわで居心地の良い場所のはずだし、どうして出たがるんだ?
――そういえば。
いぶかしい思いで妊婦の顔を見上げた。
「赤坂さん、お腹を殴ったりとかは?」
「全くそういうことは」
「見たところ、痩せてますよね。皮膚が伸びなくてお腹が張るなんてことは?」
「ダイエットはしてませんけど」
あ、いきなりの白目である。心に直接刺してくるような痛さ。仕事に生きようと決めたのに自信がなくなる。
妊婦さんの後ろにいる、付き添いで来ていた旦那さんが、「あの」と言った。スーツと汗が似合う旦那さんだ。此処に来るまで仕事中だったんだろうか?
「他にも病院回ってて。母体の環境が悪いと早く出たがるんですよね」
「はい。そうなんです。他に煙草を吸う方がいたりとか、胎児が苦しむ要因です」
「あ、それはもう……」
そのまま白目を横に流して、旦那をガンつける妊婦。ヘコヘコと頭を下げる旦那にもっと謝れと催促までしている。
この鬼嫁、とんでもない。
次お願いします!
23:猫又◆Pw:2015/10/22(木) 18:59 ID:ji2 気まずい雰囲気の中、私の横に居る先生が夫婦の間に割って入る。
「と、とにかく旦那さんは煙草を控えてもらうとして。エコー検査をしてみましょうか……」
「あ。はい」
母親は年を押すように旦那にガンを飛ばしていたが、先生の声を聞くと素直に検査室へと移った。
私は父親に対して営業スマイルを浮かべながら、その後を追うようにして診察室へと入った。
○
「これは……かなり元気の良い赤ん坊ですな」
診察を初めてしばらく経った頃、先生がそう呟く。
すると診察台に寝そべっている母親は少しうんざりした様子でこう答えた。
「えぇ。嫌になるくらいこの子は動くんです……それも早産の原因じゃないんですか看護師さん?」
さっきの当てつけだろうか。母親は皮肉っぽく私にそう問いかける。
「え……いや。それは……」
その態度が若干癪に障ったものの、笑顔のまま適当にはぐらかそうとする私の影から先生がまた答える。
「早産に直接関係しているとは断定できません。が、これだけ動かれていてはお辛いでしょうな」
そう言って先生が指し示すエコー画像を私は思わず凝視した。
「あぁ……。これはたしかに――」
皆までは言わなかったが私にも分かった。
エコーに映しだされた赤ん坊が必死に手足をバタつかせているのだ。
とはいってもそれは特筆すべき現象ではない。
どんな赤ん坊もこの子と同じ位に成長すれば動きまわるのは当たり前だ。が、
「ひっきりなしに動いてるでしょう?」
母親の言葉通り、この子はそれこそひっきりなしに「休む暇など無い」とばかりに四方八方に手足をぶつけていた。
幸いその力は他の胎児と比べても弱く、母体に影響が出るほどではないのだが……。
「まるで……」
まるで、何かの意思を持って行動しているみたい。
寝ぼけているとか、気まぐれとは到底思えないその動きを白黒の画面越しに見つめながら。
私はこの奇妙な胎児に、いつのまにか見とれてしまっていた。
次お願いしますー!
25:薄(嫁)◆Mg:2015/10/25(日) 02:40 ID:BTk 私は思わず悔し涙を流した。
どうして狼をおばあさんと信じこんでしまったのだろう、と。
大好きなおばあさんと狼の区別もつかないなんて、お母さんの言う通り私はでき損ないだ。
ってあれ?食われるときに噛み砕かれたのにどうしてお腹のなかで意識があるんだろう。
それに、なんだかここ快適だ。一緒に食べられたはずの猟師さんはいないけど、なんだか私、生きてるみたい……
どうして、こんなに早く産まれたがるの?何かあったのか?
「この子は無事ですよね?」心配で、心配で。聞いた
「はい。無事です。ですが___」
その言葉を聞いて私は、辛かった。
赤ずきんの、話をしてから赤子は動くようになった。
赤ずきんの話が好きになったのかな?なんて思ってた。なのに、
赤子は、何かの意思を持って恐れているように、動いていた。
そのせいか、お腹がズキズキするときもあり、吐き気も多くあった。
「どうしたのっ。」
私は、叫んで聞いたが動くばかりだった。
「早く出たいのね。元気な子」
私は、お腹をそっと撫でた
お腹の中の赤ちゃんが無事に育っているか、定期検診を受けに産婦人科へ向かっている。大きくなったお腹を抱えながら歩くのは流石にシビアだ。
電車は満員だったし、ヘッドフォンをした金髪の高校生は席を譲ってくれない。マナーというものがないのか!
旦那に体を冷やすなと言われてコートを3枚も着て外出、真冬とは思えぬ暑さに襲われて蒸れてしまう。今もテラテラと降り注いでいる日光が容赦なく水分を奪っていく。
旦那に風邪をひくなと言われてつけたマスクが、異質な蒸気を口元に閉じ込めておくだけのアイテムと化す。汗だらけのひどい妊婦だ。
同じ駅で降りた老人や親子はもう見えず、私ひとりだけが取り残されている。
「ちっくしょう……」
まるで重戦車のような出で立ちで駅を出る。
そのままトボトボというよりズシン、ズシンと地鳴りしそうな足で道路を踏みしめているとお腹の子がグルンと回ったのが分かった。
「…………」
まるで今まで蹴り上げてきたお腹を労るような行為に私は無言のままに足を止め、優しくお腹をなでた。
「大丈夫よ……大丈夫……」
まだ言葉も分からぬ赤子に向けて。
「きちんと対策もとってる。もしものときはあの人もいるじゃない……」
なにより自分自身に向けて私はそう囁きかける。
マタニティブルーにはまだほど遠いと思っていた11月。
出生日は年をまたぐと思って何とも思っていなかった11月。
枯れ木の葉すら消えたこの何も無い季節に、私はお腹の中のぬくもりだけをたよりに先を急いだ。
筋肉質の男に、頭と股をずっと殴られているような感覚に陥った。
生きているのもいやなくらいの吐き気に襲われた。
いっそのこと、死んだ方が楽なのかもしれない。と、思う度に夫が頭をよぎる。そうだ。幸せは目の前なのだ。
生きなければ。
なんて。思っても痛みは止まない。
いや、「痛み」なんて表現は語弊がある。痛いんじゃなくて、もはや熱い。と言っても焼けつくような感覚ではなく、ギュウっと圧縮されて……
とはいえ、いままでに無い痛みとかではなく、生理痛の延長戦のような……
「ほらー。ひーひーふーですよ」
何とか言うようにしようとするがしゃべるときすら吐きそうだからやってられない。
「ひーひーふー。ひーひーふー」
ここで、気絶とかしたら楽なのに……出来ない……これも、子供のためか。仕方ない。
もう出たい!助けて!という思いで、小さな穴から出ていこうとした。
けど、中々でていけない。
オオカミめっ…。
外では、ひーひーふーって声が聞こえる。
呪文?私に何かするための呪文?なんて考えながら出ようとする。
穴は開いたり、縮んだりと。めんどくさい。
いっけー!って思いで、突っ込んだら外に出た。
あれ、ここどこ?
赤ずきんのよく似合うひとりの女の子がいました。
その女の子の母親が、「おばあちゃん家にお見舞いに行ってきて。森の狼には気をつけてね」と言い、籠に入ったワインとワンホールのケーキを渡します。赤ずきんは森を歩き、おばあちゃん家へ。道中、優しい狼さんに出会ってお話をしました。
「何処にいくの?」
「おばあちゃんのところ。お見舞いにね」
「それなら、お花を持っていくと喜ぶ。向こうに綺麗な花畑がある」
狼の助言通り、指した方角へ歩いていくと蜜の良い匂いがします。真朱色、中黄色、白藍色――、宝石を散りばめたような鮮やかな色の花畑。赤ずきんはおばあちゃんの喜ぶ顔を想って花束を作り、またお見舞いへと出発。
ですが、おばあちゃんの居所を聞いた狼は先回りしていました。おばあちゃん家に行って、美味しく丸呑みしてしまいました。後に赤ずきんが来ると、おばあちゃんに扮した狼がベッドで寝ています。
「いらっしゃい。赤ずきん」
「おばあちゃん、声がいつもと違うわ」
「風邪をひいたから」
「大丈夫? それに口がいつもよりとんがって、とても大きい」
「それはお前を食べるためさ」
*
赤ずきんはアッという間に食べられてしまう。満腹で動けなくなった狼は、通りかかった猟師さんにナイフでお腹を開けられて、食べられたおばあちゃんと赤ずきんを救出。狼のお腹には石が詰められて、その重みで動けなくなる。
放課後、私は図書館へ来て赤ずきんの本を読んだ。
小さい頃、私にこの本を読み聞かせしようとすると、母の持っている本を叩き落とす、ページを破るなどの抵抗を見せたらしい。母が最後まで読めなかった、つまり娘である私はこのお話を知らないのだ。
高校生にもなって、赤ずきんのお話を知らないなんて言えなかった。ピノキオ、人魚姫、白雪姫、眠れる森の美女、シンデレラ、ラプンツェル、裸の王様――。他のお話は知っているのに、唯一知らないお話。
皆は知っている“当たり前”の事を、馬鹿にされそうで聞けなかった。だから、ひとりで図書館にやってきた。
文化祭の演劇で赤ずきんをすることに決まった時、内心焦りがあった。友達から、「主役はアンタがぴったり」と言われたのだが、焦りを余計に煽っているようなものだ。
私は赤ずきんを知らなくて、どんな主人公なのかも知らないので、適当に頷いてしまったが。確かに私はお遣いをよく頼まれるし、家の庭にはお花が植わっているし、騙されやすい。ピッタリ、かもしれない。
私は、ベッドに寝転がる狼の挿絵を凝視した。赤ずきんがベッドの傍に立って心配そうに顔を覗き込きこむ、その挿絵の次が――。
「おかしい」
このお話は、おかしい。童話は時代と共に改竄されて子供に読まれ、受け継がれているものだが、どうも腑に落ちない。
「私、食べられなかった」
狼に威嚇はされたが、食べられなかった。
私は赤ずきんの生まれ変わりだから分かる。左腕に走る20cmの細い傷は、狼にひかかれたもの。前世の記憶がそう訴える。そこから出血して、見るのも恐ろしい血溜まりを作ったのだ。
「途中で、狼が食べるのを辞めたから」
今はどんな風に語り継がれているのか、童話短編集を読んでみたが、あまりにも事実と違うことに1割愕然とし、4割呆れ、5割、「何故あの時食べられなかったのか」という疑問がわいた。
「メラニーの元に帰るんじゃないぞ」
傷に手をあてがい、痛みに悶絶する私に狼はそう言った。冷たく、暖かい一言に私は激しく頭を振った。
「良い子だ」
スインキーは狼男である。
いや彼自身からすれば狼男であった、と言った方が適切だろう。
物心付いた時から人狼。人間に化けることのできる狼とも、狼に化けることができる人間とも分からぬ集団に属し、その中で幼少時代を過ごした。
スインキーの居た村は四方を深い森に囲まれ、当時の人間たちには到底発見できない雪山の中にあった。
また。彼の母親は人狼たちを束ねるリーダーだった。
男女隔てない社会だったこともあってか彼女は誰からも真の意味で信頼されるリーダーとして君臨していたのだ。
だからこそスインキー達人狼はその楽園を謳歌するように平和でつつましやかな生活を送っていたのだ。
そんなある日。山の麓にある人間達の計画で、スインキー達の住む山が焼き払われることが村に伝わった。
今まで自分たちを守ってくれていた山の険しさが、逆に人間たちの目の敵にされたためであった。
スインキーの母親はすぐに村を出るよう村民全員に指令を出した。
だれも逆らう者はいなかった。――たった1人を除いては。
「嫌だ! 僕はここを離れたくない!!」
たった1人。スインキーだけが母親の前でダダをこねた。
母はスインキーに対して厳しい言葉を何度も何度も発した。
それは一族をまとめる長(おさ)としての立場がそうさせたのか、それともスインキーへの愛がそうさせたのか……それは今となっては分からないが、それでもスインキーは首を振り続け、母はありったけの呪いと罵声を吐き、スインキーを置いて村を出た。
その結果は悲惨なものだった。
一方からだけだと思っていた火の手はすでに山中を取り囲んでおり。逃げようとしていた多くの人狼達は人間たちにその存在を知られぬまま、物言わぬ焼け跡となったのだ。
そして、皮肉なことに一人村に残ったスインキーだけが、森の中にポッカリと空いた村のおかげで火の手を逃れ、生き残ってしまったのである。
ほどなくして焼け跡をかき分け、人間が村に来た。
野生動物の焼けた肉片を貪っていたスインキーは驚き、身を隠す。
20人近くの人間たちは村の跡を見てなにやら話し込んでいたが、スインキーはすぐにその集団のリーダーを見つけた。
立派な装いをした男性だった。そばにはその妻とみられるメス人間も居たが、当時のスインキーにはそんな関係など分かるはずもなく、ただ初めて見る人間に怯え、倒れた大木に身を寄せていた。
……それからどれくらいの時間が過ぎただろうか、スインキーはそのメス人間に銃火器を突き付けられていた。
夜に入って気が緩んだことが原因かも知れない。緊張が途切れついうたた寝をしていたところを見つけられてしまった。
むろん、スインキーの力は人間の倍近くあった。その気になれば銃をへし折り、逃げることも可能だったかもしれない。しかしその当時のスインキーは戦いを知らない。平和な村で育ったために自分の力がどの程度か分からずにいた。
そんなスインキーに彼女は、メラニーは言ったのだ。
「ねぇ。生きたい?」
○
「なぁ。お前は生きたいか」
「……」
ふたたび自分の祖母の亡骸を見て、枯れ果てた涙を頬で枯らしながらゆっくりと頷く。
「生きたいか?」
「…………うん」
今度ははっきりと頷いた。
「メラニーの元に帰るんじゃないぞ」
あいつさえいなければ。……母親さえいなければ。
スインキーはそう思う事がある。
母が自分の意見を聞いていればあの村で幸せに暮らせたのではないか。
メラニー……母親に瓜二つのメス人間の醜さを知って、ますますそう思うようになった。
「良い子だ」
今までの記憶を、自分への疑惑を振り払うように何度も頭を振る子を瞳に映しながら、スインキーは優しく目を閉じ黙って歩き出す。
お前はまだ何か成したいことがあるんだな。それならできるだけ遠くに逃げろよ。俺のようにまた縛られることのなようにな。
届かぬ思いを念じながら。
スインキーは小屋の外へと、未だ自分を縛る飼い主のもとへと駆け出した。
メラニーの生まれた年はちょうど、凶作の年だった。
村の者が明日への不安と絶望にうちひしがれている中、彼女は何も知らずに生まれた。
「あんたなんか生まれなくてもよかったのにね」
その年に生まれたのはメラニーだけだったためか、大人たちの憎しみの矢はたった一人、彼女に向けられた。大人げなくも小さな小さな何も知らない小娘をいじめる村人達に、彼女の母親は何も言い返すことは出来ずに、ただ謝っているだけだった。
次第に彼女は気づく。
自分の存在は母親にすら求められていないことを。
堪えきれなくなるのは案外早かった。
彼女は誰に居場所を告げることもなくある日突然生まれ故郷から姿を消した。それ以来、村人の中に彼女の姿を見た者は母親を除いて一人もいない。
とはいえ、もともと見た目のよかった彼女は生い立ちを知る者さえいなければ、出世は早いもので、ほぼトントン拍子に新しい町の町長の息子との縁組みが決定した。
子宝にも恵まれ新しい生活を順調に歩みだしたようにも見えたのだが、それは町長、義理の父による、
「北の山に人狼の待ちがあるらしい」
という一言にかきけされることとなる。
そんな町長や義理の父一言により、メラニーは北の山につれてかれたのだった。
「嫌、話せ!」
何度も、何度も抵抗するか歯もたたず、引きずられる。
『ここに、いろ。』
そういい放たれ独りぼっち。メラニーは夜まで過ごしていた。
「怖いよ…誰か…」
メラニーは必死で助けを求めたが人が誰も通らずメラニーは悲しかった。
「産まれるんじゃなかった。」
いよいよ、真っ暗な夜空になり、
『ウォォォォォン』
という、鳴き声も聞こえた。メラニーはぶるっと身をぶるつかせ、いすくまっていた。
ガサガサと聞こえ、メラニーは目をつぶった
メラニーは自宅に帰って、しばらくベッドに突っ伏していた。ガチガチとなる歯の音を聞くだけで、彼女が経験した恐怖がひしひしと伝わってきそうだ。
「自分は悪くない。
自分を苛めてきた奴等に復讐してやる」
夜、掠れた声でそう部屋に響いた。
「まずは私をこんなに怖がらせた……、あの叫び声……狼から復讐よ」
数日後、復讐を切望した彼女の元に運良く、いいニュースが転がり込んできた。山を焼いて立ち入りがしやすくなる、というニュースだ。
あの狼たちを抹消するのであれば、軽く小躍りしてもいいくらいだ。私の手で火をつけよう。あの狼たちを苦しめるために、私があの山を焼こう。町長に仕事を協力したいと相談すれば、ついでに私を見る目も変わって……苛めもなくなるかもしれないわ。
*
「ここ、平らでいいとこだな」
「家が建てられそうだ」
木が燃える瞬間は私にどれだけの幸福を見せてくれたのだろう? 満足でいっぱいになった感情の器。思わず微笑みが漏れる。
あの禍々しい生物も炭と化したか?
「ふふっ」
おかしくてたまらない。カチャ、と耳に高い金属音が入る。音の方角に視線を転じると――禍々しい生物が一匹。
でも。
殺してしまうより、すごくいいアイディアを考えてしまった。あの狼を利用することができたら、どれだけの幸福がもたらされるだろう?
「ねえ。生きたい〜?」