若干ホラー、胸糞悪いエグい表現アリ。
いじめを題材にした、ミステリー小説です。
高鳴る心臓を押さえて、私は深く、深く深呼吸した。そして、震える右手で引き戸を開ける。
窓から入り込む朝日が眩しい。
逆光で見えない、クラスメイトたちの表情。
「お、おはよう!」
私は力いっぱい言った。
こんな一言に、何故こんなに疲れるんだろう。いつもはどうってことないのに……。
「あ、百合、おはよう!」
「百合〜、おはよう!」
「葉月おはよう!」
自然と返ってくる挨拶。
ほっと胸を撫で下ろすが、謎の不安感は残っていた。
葉月 百合。これが私の名前だ。
植物が大好きなのは、名前のせいだろうか。
花を見ていると、とっても元気が出て、自然と笑顔になれる。
こんなに小さいのに、懸命に生きる姿がかっこいい。なんて凛々しいんだろう。そう思うようになって、ますます花が好きになった!
花壇を荒らす子供たちが許せない。踏み潰されて萎れていく花を見もせずに走り去っていく子供に強い殺意を覚えることもある。
どんなに小さな命でも、重みは全て均等。
何よりも重いものは、「生命」なのだ。
私には植物を愛したことで、正義の心が生まれたのだ!
なんて素晴らしいんだろう。
「…り、ゆり!どうしたの?」
クラスメイトが私の顔を覗きこむ。
「ううん、何でもないわ」
「そう。なら良かった」
クラスメイトはにっこり笑って言った。
胸騒ぎの原因が分かるまで、そう時間はなかった。