「私に誇れることって、何でしょう」
ふと頭の中に浮かんだ何気ない疑問を、ぽつりと口に出してみた。
人は、思春期になると自分の存在意義だか生きる意味やらを求めてむしゃくしゃしたり悩んだりするらしい。
いや、『ブスつらい』とか言ってキメ顔自撮り画像をつえったーにアップする痛いJKじゃあるまいし、私にそんなことはないだろう、と、少女…藤篠 カナリは思っていた。
そう。つい先ほどまでは。
「いやあ……こういうことって考え出すとなかなか答えが見つからないものだね」
「なに?『ブス辛い』とか言ってキメ顔自撮り画像をつえったーにアップする痛いJKに感化でもされた?」
「……」
思わず頬張っていた揚げ団子を喉にかからせるところだった。危なかった。本当に危なかった。
やっとの思いで吐き出した団子を再びゆっくりと咀嚼し、飲み込む。
そして、咳き込みと共に言葉を繋いだ。
「沙々、君エスパーだったりする?」
「その発言はつまり、アンタが『ブスJK』の影響を受けたということを認めるということね?」
「認めるやらなんやらって……まあそうなんだけど。ていうかブスって言いきらないであげてよ。可哀想でしょ。」
二人の女子高生の何気ない会話。
まるでいつでもそこにあるような、ごく日常的な一場面である。
「長いので省略しただけですー」
「……‥」
いけしゃあしゃあと言ってのける彼女に、カナリは小さく溜息をついた。
(絶っっっ対に悪意あるわコイツ。ありありだわ。)
ガンッ!!
刹那、カナリの頭に強い衝撃が走った。
カナリの目は、きちんと膝の上にあった筈の沙々の右手の残像だけを捉えていた。
(……なんで口に出してないのに悪口って分かったんだろう。)
やっぱエスパーかな、と思いかけて、おっといけない、これも聞かれてたら私の頭に雪だるまができてまう、と思い直した。
カナリの脳天に、煙をあげる拳大の夏みかん。見ている者もおもわず「うっ」と顔を顰めたくなるような一級品(?)である。
そこを痛い痛いと摩りながら、ふと、動きを止めたカナリは暫く廊下の方を眺めていた。
が、それも束の間。すぐに視線を元に戻すと、カナリは最後の揚げ団子を口に放り込んだ。
「……うん、やっぱ世の中不公平だよ」