1「執着」ねねside
「ウザい」「キモイ」「死ね」
今までどれほどの罵声を浴びせられてきたんだろう。
そんな私に、唯一見方をしてくれた女の子がいました。
それは、私の双子の妹でした。
双子の妹、ももちゃんはとってもかわいい女の子。
かわいいだけでなく、性格は明るく、有名私立学園幼稚部に合格するほど頭もよく、おまけにスポーツ万能。
そしてその外見ゆえに、有名な芸能プロダクションにスカウトされ、天才子役として名が知られています。
両親ともに、皆ももちゃんが大好きです。
そんな妹をうらやましく思っていたのが、私です。
私はももちゃんの双子の姉で、名前はねねと言います。
双子と言っても二卵性のため、外見は似ていません。
いえ、似ていないというか、真逆なのです。全てが。
わたしは、色は黒く、そばかすがひどくて、分厚いメガネをかけています。
そして、髪はぼさぼさで成績も運動神経も悪く、性格も暗いため、皆から毛嫌いされています。
時に、いじめられることだってあります。
でも、そんなときは、ももちゃんが必ず相談にのってくれるのです。
そうして冷静に対処法を考えてくれ、親にそのことを話してくれたりもします。
ももちゃんは、小さいころから私のヒーローみたいなものでした。
今は夏休み。
ももちゃんはお仕事で渋谷へ。
高2の姉のななちゃんはバイトでコンビニに出かけていて、中1の姉のののちゃんはテニス部で学校に行っています。
お医者さんのお父さんは主治医っていうなんだかすごそうなお仕事をしていてなかなか家に帰ってきません。
でも、そのおかげでうちはお金持ちのお家です。
夕方の4時になったころ、パートに行っていたお母さんが帰ってきました。
「あ……、おかえりなさい……」
「……ただいま」
お母さんは辺りを見回してから、
「お姉ちゃんたちはまだなの?」
と聞きます。
「うん、まだだよ」
そう答えると、お母さんはため息をつきます。
「ハァ……。ねね、あんた宿題は?」
宿題……。
「あ……まだ……」
「まだ終わってないの?ももはもうとっくに終わっているっていうのに、あんたは……」
ブツブツとつぶやきながらお母さんは私に買い物袋とお金を渡します。
「はい、お使い行ってきて。買うものは袋の中に入ってるから」
「……はい」
お母さんにそう言われ、私はしぶしぶスーパーへ出かけました。
まぁ、私はももちゃんみたいにかわいくないし、頭もよくないから仕方ないんだけど……。
「重っ!」
たくさんの食べ物が入っている買い物かごを持ちながら、私は思わずつぶやいた。
お野菜とお肉しか入ってないから、大人がもつと重くないと思うけど、小学4年生の私にとっては重くて重くて仕方がない。
それでも何とか公園を通り過ぎ、家までもうちょっとというとき……。
「あれぇ?ねねちゃん?」
聞きなれた声に私は振り返りました。
すると、そこにはももちゃんが。
「もっ、ももちゃん……。お仕事終わったの?」
ももちゃんはかわいい顔でにっこり笑いながらうなずきました。
「で、ねねちゃんはお使いの帰り?」
「うん……」
「じゃあ、もも、手伝うよ!」