短編で書いたのを結構
アレンジしました。
毎日出来るかはわかりませんが
感想いただけたら幸いです。
では、どうぞ。
しんしんと積もる雪。
寒空の下で私はーーーーーー
一輝を待つ。
「まだかな・・・」
私の初恋は確か小学一年生だったと
記憶している。
宇野くん。
今どこで何してるかな。
美冬とデートとか?
いやいや。
「ふぅ・・・」
宇野くん。
かっこよくて、頭が良くて、
もし、彼氏だったら理想の彼氏。
そんな人に失恋したのは
二年生の時だっけ。
覚えてすらいない。
だって・・・
私の初恋ではなかったから。
え?じゃあ誰かって?
ふふふ、
じゃあ教えてあげるね。
あれは、今日みたいな
雪の積もった日だったな・・・
「うっわー!すっげー雪積もってる!!」
教室で一番初めに雪に気付いたのは
一輝だった。
(それくらい雪が好きなのかな・・・)
隣の席ではしゃぐ一輝を見ながら
私はくすっと笑ってしまう。
一年生の時から同じクラスの一輝。
名字の関係で隣の席になるのは
毎年恒例。
まぁそれを私は嫌だとは
思わないけど。
正直、宇野くんみたいに
もうちょっと大人っぽくしてほしい。
「そんなに雪好きなの?」と
苦笑しながら聞いてみる。
「うん!」
輝くような笑顔に
思わずドキッとしてしまう。
え?この時気付いたのって?
いやいや、まだまだ。
えっと、
その日はちょうど担任の
阿久先生がいなくって。
臨時で家庭科の坂本先生が
来ていたから六時間目だっけ。
『はーい、皆さんクレープは
焼けましたかー?』
坂本先生の声で我にかえる。
今日は調理実習。
宇野くんクレープ、
受け取ってくれるかな・・・
「おっチョコバナナ?
一口ちょーだい」
いつのまにいたのか、
一輝が手を伸ばして私のクレープを
奪おうとしている。
「ちょっと!!」
思わず どんっ と
突き飛ばす。
「いってー、ちぇっ、ケチだよなー」
幼稚園児のように頬をふくらませて
一輝が抗議する。
まぁ、今のは私が悪かったし・・・
「はい」
と手をさしのべる。
一輝がその手を取り立ち上がる。
そして口を開く。
その言葉は『ありがとう』でもなく、
『いい加減にしろよな』
でもなかった。
「・・・好きだ。ずっと前から・・・」
・・・この一輝の一言が
私の運命を180°変えてしまった。
・・・好きだ。ずっと前から・・・
その言葉は、私が
何千回と繰り返した告白。
・・・されたい言葉。
もちろん、宇野くんが
告白してくれる妄想なんだけど。
でも、それを今言ったのは
宇野くんじゃない。
「一輝・・・?」
ふりしぼって出した声は
かすれていた。
「ずっと、好きだったんだ。
お前が、隣の席に
なった時から・・・」
一輝の顔、真っ赤だ。
(あぁ・・・)
「・・・いいよ」
「えっ・・・?」
一輝がうつ向いていた顔を
上げ、信じられないといった表情で
私を見つめる。
「わ、私は・・・
宇野くんが、初恋だと思ってた。
でも、でも・・・
今、私、気付いたんだ」
すっと顔を上げ、私も見つめ返す。
「私の本当の初恋は、
一輝なんだって。」
うおぉぉぉーーーーーーーッ!
男子数人が声を上げる。
「嘘、じゃないよな、
あっでも・・・」
と、何やら一輝は呟きつつ
自分の頬をつねり始めた。
「い、いてててて!」
「もぅ、当たり前じゃんか・・・」
くすっと私は笑うとそっと一輝の
頬に触れる。
「これからも、よろしくね。」
あれから1年。
実は一輝、あの後、
引っ越してっちゃったんだよね。
だから、みんなのいる前で
告白したらしくって。
なんかちょっと、可愛いなぁって
思っちゃったりして、ね。
「・・・あ、一輝だ」
おーい、と一輝が手を振っている。
それじゃあそろそろ、
行きますか。
「今行くよー」
私は軽い足取りで一輝のもとへ
走った。
【終わり】
【あとがき】
ここまで見てくれた人、
ありがとうございます!
いやー、正直ここまでくるとは
思わなかった『今日はじ』!
大物っぽく語ってすみません(><)
良かったらまた1話から
読んで頂けたら光栄です!
ハイテンションな朱音でした!
【番外編今日はじ・俺の隣】
「うっわー、待ち合わせ10分
過ぎてるっ!」
ちらちらと雪が舞う今日この頃。
俺、一輝は走っている。
(朱音、元気かなーーー・・・)
遅れているのにいい度胸。
それが俺だ。っていっても
遅れているのは考えもんか。
ん?朱音が誰かって?
じゃあ、教えてやる。
えーっと、あれは4年前だっけ?
春。
俺が2年生の時。
俺は親友の陽とクラスが離れて
落ち込んでいた。
「・・・くっそー」
陽。幼馴染みのお前とは
絶対別れたくなかったのに。
「ううう・・・」
で、そんな時に朱音の隣に
なったんだよな。
朱音の名字は
『胡桃原(くるみはら)』。
俺、一輝の名字は
『弧村井(こむらい)』。
隣の席になるのはどう考えても
当たり前・・・って事で。
初めて隣の席に座った時、
あいつ何て言ったと思う?
「邪魔。どいて。」だよ。
本当に可愛げがないよなぁ・・・。
まぁ、そんな朱音にも可愛いところはあるよ。
始業式の帰り道、うちの学校には
ハナミズキがおいてあってさ。
それ見て朱音が
「私、ハナミズキの花言葉が
一番好きなんだ」
って言ったんだ。
で、
「へぇ、なんなの?」
って聞いたら
「『私の想いを受け止めてください』
だよ」
って。すごい可愛い笑顔で。
俺、その瞬間から朱音のこと、
好きになったんだよなぁ・・・
「・・・あ、朱音だ」
朱音が手を振って
ここだよー、と言っている。
じゃあ、今日一日楽しむか。
俺は坂道を
全力ダッシュで駆け抜けた。
【今日が始まり明日で終わり】
〜宇野の好きな人〜
僕は春が好きだ。
だって、自分の誕生日があるし。
誰と同じクラスになるとか、
楽しみなこともたくさんあるし。
でも・・・
今、僕 優斗は
夏が好きになりつつある。
「おはようございます」
担任の梅谷先生と廊下ですれちがう。
「おはよう!今日も暑いなぁ」
先生が、手をうちわのようにパタパタといかにも暑そうな仕草で、
挨拶をかえす。
ぺこりと会釈し、教室へ向かう。
6年生の教室は3階。
正直、急な階段はキツい。
しかし、階段を登りながら
ふと、すれちがった人物を振り返る。
隣のクラスの松浦美冬さんだ。
僕より少し小さい背。
ふわりと広がったスカート。
くくっていない長い髪からは
甘い花の香りがする。
・・・って、僕、変態かな。
さっと視線を前に戻す・・・時に、
一瞬だけ、目があった。
・・・おはようくらい
言えば良かったかな。
僕は少し、後悔した。
教室では、夏祭りの話題が
飛び交っていた。
「誰と行くー?」
「堀内くんかなー」
・・・どうやら、女子たちは
夏祭りで告白するらしい。
「おーい、宇野ぉ」
ムードメーカー、トモアキが
僕に話し掛ける。
「夏祭りさぁ、女子誘って肝試し
やんねぇ?ここんとこ暑いしさぁ、
人数集めといてよ」
いやまだ行くとは・・・と言っても
トモアキはそんな事聞く訳ない・・・
よな。
「わかったよ・・・」
「うっしゃ」
トモアキはニコニコしながら
同じクラスの堀内陽にも
声を掛けに行った。
女子かぁ・・・
美冬さん、誘ってみようかな。
キーンコーンカーンコーン・・・
や、やっと授業終わったぁ。
い、急いで美冬さん誘わなきゃ。
早く!
あっ!
「美冬さん!」
美冬さんが振り返る。
「う、宇野くん?どうしたの?」
少し、同様してる。
まぁ、当たり前だよね・・・
「あ、あの・・・夏祭り、行かない?」
僕がやっと出せた言葉は、
それしかない・・・よね。
「夏祭り、行かない?」
・・・たった7文字の言葉だけど、
好きな人を誘うのなら
どれだけの勇気がいるだろう。
「夏祭り?一緒に・・・ってこと?」
美冬さんが目をパチパチさせる。
「え?う・・・ううん!
あ、あの、
と、トモアキ、と、か・・・」
声が震える。
まあ、トモアキを言い訳に使っている
僕も僕だけど。
「あっそれならいいよ。
何なら、朱音とか加奈とかも
誘っておくね」
突然声を弾ませた美冬さんに呆然と
している僕にあ、あと・・・と
美冬さんが付け足す。
「私のこと、美冬でいいよ。
私も、優斗って呼んでいい?」
え・・・えぇ?!
「うううううううん」
「じゃあOKだね。当日よろしくね、
優斗!」
花のように綺麗で可愛らしい笑顔。
この笑顔にキュンとしない男子は
いませんよ、ね?
僕は帰り道、少し引っ掛かる部分に
気付いた。
『あっそれならいいよ』
あれって・・・
僕と二人きりは、嫌・・・って
事なのかな・・・
少し胸の辺りがモヤモヤする。
「あれ?これって・・・」
恋。
なのかな。
思考回路はもうスリープ気味だ。
よ・・・よし、
これは当日までに解決させよう!
自分で自分に言い聞かせても
僕のモヤモヤは晴れなかった。
美冬を誘ってから10日。
ついに、夏祭りが来てしまった。
だ、だだだ大丈夫、だよ、ね。
DJなみのカミカミが
心の中で炸裂する。
結局、僕のモヤモヤは
解決しなかった。
お姉ーーー桜ーーーに相談しても
「あ、うん。それは恋だわ。」と
たった一文字で片付けられ、
母に相談(!)しても、
同じような答えだった(一応、僕では
なくトモアキの名前で相談した)。
・・・うん。
これを恋と言うのなら、
今日の内に終わらせてしまおう。
今日の内に告白して、失恋して、
明日から新しい日々を送るんだ。
うんうん。
自分で自分に言い聞かせる。
って言うか・・・
僕、失恋しか考えていない?
恋が叶うことは考えていない?
ま、まあ、当たり前だよね。
きっと美冬さん(も、戻ってる!)は、
イケメンの陽と結ばれるんだ。
うんうん。
・・・ちょっと嫌だけど。
僕は一人、頭をブンブンふりながら
今日初めて着る浴衣に袖を通した。
午後、5:00。
いよいよ、夏祭りが始まった。
今回行われる夏祭りの場所は、
えーと、『しろおか』?
あ、ふりがながふってあった。
えっと、『城丘』でしたか。
すいません。
僕の家から城丘は少し遠い。
だから、自転車で行こう!と
考えていたが、お姉(桜)に
『浴衣で自転車?似合わない!』
と言われたので、歩き。
じゅ、十五分前に出たのに
始まってるぅ・・・
ぜぇぜぇと息切れする中、
ようやくたどり着いた。
「あ・・・」
美冬だ。
綺麗だ。とても・・・
浴衣は夜空を染めたかのような
黒、いや青?をベースにしていて。
散りばめられた蝶の刺繍。
・・・美冬のお母さんって、
着物屋さんだっけ?
思わず見とれてしまう。
その内、僕の視線に気付いたのか、
美冬が手を振っている。
・・・うん。
やっぱり、失恋なんかしたくない。
陽なんかに渡したくない。
あ・・・
これ、恋、だ。
やっと結論の出た僕のモヤモヤは
焼きそばの煙と共に空へ上った。
「美冬」
僕は声を掛けた。
恋だとわかった以上、
声を掛けない訳にはいかない。
「あっ優斗」
にっこりと美冬が微笑む。
「早速だけど、すぐに完売しちゃう
クレープのお店に行こう。
多分、優斗も食べられるよ」
きっと、予め
予定を立てていたのだろう。
美冬は僕に早口で目的を伝えると、
僕の手を握って、
小走りでクレープの屋台へ向かう。
・・・あ。
・・・手。繋いでる。
前を行く美冬の表情は見えないけど、
僕はそれでいいと思った。
だって・・・
僕の顔を見たら、
絶対、わかってしまうから。
・・・赤くなっているのが。
ちらりと周りを見ると
クラスメイトが何人かじゃがバターの
屋台に集まっていた。
・・・良かった。
クレープのお店が見えてきた頃、
僕は今日、後で言おうと思う
告白の言葉を、
口の中で繰り返す。
『好きです。付き合ってください。』
・・・聞こえないように、
言ったつもりだった。
でも、美冬は振り返った。
立ち止まった。
「・・・よ。」
美冬が呟いた言葉は、ガヤガヤとした
声でかきけされた。
「・・・よ。」
・・・?何て言ったんだ・・・?
「クレープ。食べるよ?
何味が良いの?」
ほっとした。
・・・良かった。
「えっと、じゃあチョコバナナ。
あ、生クリーム多目で。」
「オッケー」
振り袖をルンルンと揺らしながら、
美冬が駆けていく。
・・・って!
「ちょっと待って!!」
ん?と美冬が振り返る。
「こう言う時は男が行くものでしょ」
んー、と少し美冬はうなると
「じゃあ、お言葉に甘えて、
ごちそうになろうかな」と、
案外、すぐに言ってくれた。
「あ、苺カスタードで。」
「了解」
と言うわけで、クレープ屋の
お兄さん(大学生?)に2つクレープを
注文する。
あー、なんか、
カレカノっぽいな。
少し期待を膨らませつつ、
美冬のもとへ戻ると、
何やら誰かと会話していた。
・・・?
「陽・・・?」
僕はしばらく声をかけれなかった。
だって、あの陽と
美冬が会話なんて、
思いもしなかったからだ。
あ・・・
消えかけていたモヤモヤが
再び僕を襲った。
陽。クラスのリーダー的存在。
陽に着いていけば大丈夫…って言う程
陽はみんなに信頼されている。
「陽…?」
なんで?なんで、美冬さんと
話してるの?
手に抱えたクレープは
今にもクリームが
溶けてしまいそうだ。
「…美冬」
なんにもなかった、と言う雰囲気(の
つもり)で話しかける。
「あ…」
美冬はじゃあね、と陽に手を振り
どうしたって感じで駆け寄った。
「はい」「ありがとー」
まるで花だ。可愛い笑顔だ。
「あのさ」「うん?」
クレープにパクつきつつ、
ん?とこっちに顔を向ける。
「美冬は、さ、好きな人とかいる?」
「うん」
即答かい。
「誰?」「それは、秘密」
くすっと笑う。
「付き合ってはないの?」「うん」
…伝えよう。
陽とどんな関係であっても、
伝えるんだ。
「じゃあさ、」「うん」
「僕と付き合ってくれない?」
「僕と付き合ってくれない?」
美冬のクレープを持つ手が
ぴたり、と静止する。
「え…?」
う。やっぱりダメ、か。
「…ご、ごめんね、急に言って
びっくりしたよね」
「え?ち、違うよ」
美冬が少し慌てる。
…僕は君の好きな人でもないのに。
慌てなくたっていいのに。
「今の、忘れて」
あはは、と笑い飛ばす。
これが正しいフラれた時の
リアクションだ。うん。
「…待って!」
あはは…と違う方向を向こうとした
僕の浴衣の袖を、
きゅっと、美冬が握り締める。
「…まだ、優斗に返事してないよ」
…返事?
美冬はふぅ、と一呼吸おき、口を開く。
「私を優斗の彼女にしてくれない?」
『私を優斗の彼女にしてくれない?』
・・・え?
ちょっと待って、夢?
だって、美冬って、え?
言葉になんか、ならなかった。
「だめ、かな」
きゅ、と袖をつかむ手に力が入るのが
よくわかった。
「嘘、じゃない?」
ぽつり、と口からこぼれた。
ずっと、ずっと、抑えていたはずの
気持ち。本音。
「僕は・・・陽よりも頼りないし、
かっこよくもないけど・・・」
頬をつぅっと涙が伝う。
「僕の・・・彼女になってくれる・・・?」
うん、うん、と美冬が笑う。
「ありがとう・・・」
きゅ、と僕らは手を繋いだ。
とても温かくて、ひんやりしていた。
あれから数日。
あの後、肝試しなんかすっかり
忘れちゃって、二人で
射的したり(ことごとく完敗)、
ボールすくいしたり(これは勝てた)
デートっぽいことをいろいろとして。
トモアキに泣かれました。
ま、おかげで二人の時間が出来たなら
別に良い!って言われたんだけど。
「優斗ー!」
美冬が手をふっている。
もう2学期。あと少しで6年生も
終わりを告げる日がくる。
「行こー」
きゅ、と僕たちは手を繋ぐ。
明日も、来年も、ずっと。
君の隣にいるから。