「____もしも、『あなた』の全てが『私』の全てを覆すのなら」
固く結ばれた紅が、呪いの言葉を紡ぐ。
何処までも何処までも冷たく、底冷えさえする様なその感情の無い音声に、私は思わず心を奪われそうになる。
幾度目だろうか。
何百万、何千万と繰り返されてきたこの光景を、否、これからも繰り返され続けるであろうこの悪夢を、私は只々観覧するだけ。そう、私は只其の為だけに生まれた、傍観者。
_____だったのに。だった筈なのに。
嗚呼、何故だ。
何故、私が選ばれてしまったのかしら。
造り物の様なその表情が、底無し沼の様に光の無い瞳が、尚も『私』に告げる。
「『わたし』は、『あなた』の全てを砕いて、割いて、破いて……
そう、壊してしまおう」
だんだんと意識が遠退く。
理不尽な、と呟く私の声は、きっと誰の耳にも届かない。
そう、それは私も。
酌量のざわめきの中にあるその声が聞こえる瞬きの間に、私の記憶は途絶えてしまったのだから。
ーーーーー
横たわる少女を見据え、その傍らに彼女は膝を抱えた。
無機質に伸ばされた両腕が、しっかりと少女の首元を捕らえる。
そして、彼女は静かに笑んだ。
細められた瞳に、温もりのある光が宿る。
「そして、一つになろう。」