・佐々木 裕太(ササキ ユウタ)
(王子様系男子。だけど感が鋭く、物事を冷静に見る)
・長谷川 流星(ハセガワ リュウセイ)
(クールで口数が少ない。でも照れたら顔に出るタイプ)
・坂下 ハル(サカシタ ハル)
(天然だけど、前向きで優しい。でもいじけやすい。)
〜ぷろろーぐ〜
三人、ずっと一緒だった。
そして、
俺と親友は同じやつを好きになった。
でも、
“ 告白はしない ”
したら、壊れるから。
「二人ともだーい好き!」
無邪気に姫は笑う。
俺たち騎士は姫を守る。
そんな関係が続くはずもなくて……
【1、姫と騎士】
「おはよう、流星、ハル」
現在、学校に登校中。
俺は、佐々木裕太。
中学三年生だけどよく高校生に間違われる。
まあ、あと2ヵ月で卒業だけど。
そして、俺は来週に受験を向かえる身だ。
学校ではあまり人に強く当たらない性格のせいか王子様系男子で通っている。
そんな俺には幼稚園から一緒の幼馴染みがいる。
「…はよ」
一人はコイツ、長谷川流星。
冷静で無口な性格。それでも顔が良いからか “ クールなナイト ”って言われて騒がれてる。本人は気にしてないっぽいけどね。そして、俺の親友。
「おっはー」
…この子は坂下ハル。
天然でいじけやすく、鈍感。
それでも友達は多い。
ハルを好きなやつはいっぱいいるだろう。
俺と親友はその中の二人。
気づけば好きになってた。気づけば…親友も好きになってた。
それでもずっと告らなかったのは
この関係を壊したくないっていう願望が強かったからだと思う。
そして、俺たちは同じ高校を受験する。
「いよいよだねー受験。私全然勉強してないやー」
苦笑いで言う。
それは笑い事じゃないけどな。
そう思いながらクスクスと笑った。
「裕太と流星は頭良いから大丈夫だよね。私だけ不合格とか…やだー考えたくない!」
サーと青くなる愛しい顔。
笑ったり、怒ったり、青くなったり、赤くなったり。
度々変化する表情を可愛く思う。
俺はハルの頭にポンと手を置いて撫でた。
「大丈夫だよ。これから勉強して、要点さえ押さえれば受かるから。がんばろーな?」
お前と離れるとか俺が耐えられない。
必死に勉強したのもお前から離れることがないよーにするため。
そんなことが言えるはずもなくて、俺は頭を撫でた。
「アハハーありがとー。裕太に言われたらなんか自信ついたー」
……うわ。
そんなこと笑顔でサラっと言うなよ…
赤くなった顔を手で覆い隠した。
そんな様子を見ていた俺の親友は眉間にシワを寄せていた。
「…裕太、あそこ呼んでる」
チラッと見ると……
「げっ」
「王子〜♪一緒に学校いこぉー?」
「あ、ずるぅい。私も王子といくぅ」
「私も私もぉ」
あっと言う間に女子に囲まれた。
「りゅ、流星〜。お前っ」
ヤキモチの腹いせができたせいか満足そうにヒラヒラと手を振ってハルと並んで歩いていた。
このヤロー…
でもそれも束の間。
他の女子が流星の周りに集まり、キャーキャー言っているようだった。
そして、ハルは女友達と一緒に登校していた。
ほっとした俺はゆっくり登校することにした。
「ねぇ裕太ぁ受験終わったら私と付き合お?」
上目遣いで女は言った。
これで落とせるって思ってんのかと思うと腹が立つ。
そんなのが効果あるのはカレカノ限定だろ。
「ごめんね。俺、好きな人とじゃないと付き合えないから。」
「じゃー好きになってよぉ」
そんなムリな……
苦笑いをして適当にその場をあしらった。
俺はハルが好きなんだよ。
そういったらハルの耳に入ってしまう。逆に好きな人とって言ってハルに誤解させるのも嫌だ。
この関係は…いつまでも続くんだろうか…
そんなことを考えながら俺は学校の門をくぐった。
【2、二人のキョリ】
__ガラガラ
「「「キャー!王子ー!」」」
「「「ナイトもいるー!!」」」
三時間目の休み時間。
国語の辞書を借りにハルのいる1組に来ただけなのに騒がれる。
無視することができない俺はヒラヒラと手を振って笑顔を返した。
「「「きゃぁぁ!」」」
それがまた火をつけた原因となったのかまた群れができた。
流星といったらしれっと女子を払い、ハルのもとへ行っていた。
本当は会いたかっただけ。
流星の顔からそんな声が聞こえてきた。
あー…だからついてきたのか。
「裕太!はいどーぞ」
事情を聞いたのか、辞書持ってハルが来た。
165cmと長身なハルは優々と女子の群れから抜け出して俺の前に来る。
そしてニコニコ笑いながら辞書を手渡してくれた。
「ちょ、ちょとぉ!邪魔よぉ!!」
いきなりドンと押されてハルの体が前に倒れる。
スローモーションのように時間が流れた。
俺は手を広げ受け身の体勢をとる。
「わっ…」
ドサッと俺の胸に倒れてきた。
良かった。ケガはないみたいだ。
「はー…裕太ごめんね」
不意にハルは顔をあげた。
……ち、近い。
180という長身な俺だけど、顔を下に向けると長身なハルの唇はすぐ目と鼻の先だった。
俺はぐっとこらえて理性を押さえた。
「ハルっ大丈夫か?」
すかさず流星がハルに駆け寄った。
スッとハルが離れる。
暖かかったはずなのに急に冬風で寒さを感じた。
もし、あの時キスしてたら…なんか変わったのかな。
ハルの体温の余韻に浸り、そんなことを思った。
俺は辞書を拾って教室を出た。
続いて流星も出る。
「裕太…」
「流星、俺…もう我慢できないかもしれない」
「……俺も」
やけに長い廊下を二人並んで同じことを二人で考えていた。
【騎士達の想い】
「流星、飯食おーぜ」
「おー」
昼休み、俺は流星を誘った。
四時間目までぐっすり寝ていた流星は眠たそうな目でゆったりと体を起こした。
別にいつも一緒に食べてる訳ではないけど、ただ、話をしたかった。
ハルのことを。
屋上へ行く。外の空気はおいしい。
俺と流星はドカッと座り、弁当を開いた。
「なー…流星…」
しばらくたって俺はゆっくり話始めた。
「んー…?」
「お前さーハルのことどーすんの?」
単刀直入に聞いた。
その方が本音を聞けると思ったから。
「どーすんのって?」
流星は食べてた手を止めて聞き返した。
「告白だよ。するの?」
「そーゆうお前はどーすんだよ」
そうきたか…
俺は…俺は……どうすんだ?
ってか…どうしたいんだ?
直ぐに言葉が返せなかった。
「……俺もわかんねー」
流星は俺が考えてることを悟ったように言った。
「…お前エスパーか…?」
「別に。だてにお前の親友やってねーから」
「ははっ。嬉しいこと言ってくれんじゃん」
ずっと一緒だと分かるもんなんだな。
でも…あいつには届いてない。
鈍感だから気づいてないんだろうな。
「あー!王子だぁ!ナイトもいるぅ」
屋上のドアを開け、甘ったるい声で俺達に駆け寄ってきたのは上條皐月(カミジョウ サツキ)。
俺達と同じクラス。
言い寄ってくる女子の中で一番しつこい。
「あ、上條さん」
「えぇ!覚えててくれたのぉ?やっばーい、あたし今両手に花だぁ」
俺は苦笑いを向けた。
上條皐月は無理矢理俺と流星の間に入る。
そして、俺と流星の腕に自分の腕を巻き付けた。
「寒いよねぇ♪もっとくっついていい?」
「…やめろ」
流星が上條皐月の腕を払って冷たい声で言った。
ハル以外の女子とは仲良くできない。
そんなことを聞いたことがある。
そんな一途なとこがコイツの良いところなんだけどな。
「えぇ〜ナイトつめたぁい。いいもん、王子にあっためてもらうから♪」
より強くギュウと巻き付く。
ってかその言い方やめてくんないかな…。
「ねぇ〜王子ぃ、あたしずっと思ってたんだけどぉ…?」
「なに?」
「付き合ってほしぃなぁ?あたし、結構自信あるよ?」
なんのだよ。
ってかムリに決まってんじゃん。
俺の彼女はハルしかありえねーし。
「ごめんね。俺、今誰とも付き合う気ないから」
「え〜じゃあお試しでもいいからさぁ?」
「お試しとかそう言うの嫌いなんだ」
「それならぁ今度遊んでよぉ」
「うん、皆でね」
「二人きりがいいなぁ…」
ボソッと言っていたけど、聞いていないふりをした。
すると何を考えたのか制服のリボンをとって頬を赤らめて上目遣いで俺を見た。
執拗にご自慢の胸を押し付けてくる。
「はぁ〜なんか熱くなってきたぁ〜」
さっきより甘ったるい声で俺を誘うように言う。
普通の男ならここで理性がふっとんで襲うとこだろうけど…
むしろ俺は彼女の演技力に感心していた。
「王子ぃ…熱いの治してぇ…」
酔ったように俺の首に手を回す。
流星はいつの間にかベンチの上で寝ていた。
おい…助けるだろ、普通…。
恋敵(ライバル)が減るんなら何でもいいって思ってんだろうな…。
「王子ぃ早くぅ」
「ちょっ…」
上條皐月はあっという間に俺の股の間に入っていた。
なんか慣れてねーか…?
俺は冷静さを取り戻し彼女の脇に手を伸ばした。
「ひぁ〜…やっとシテくれるの?」
「え?なにを?」
俺は一、二を言わさず。
スッと彼女を抱えて俺から離れさせた。
「えぇ〜…?」
「だって熱いんでしょ?じゃあ離れても大丈夫だよね」
それからはなんとかその場をしのいで、俺は適当に言い訳をし、その場から離れた。
流星はやっと終わったのかとのそっと起きて俺の後ろについてきた。
「なんだ、何もなかったんだ」
「まーね。俺だって結構堅いですから」
そんなにもろくねーんだよ。
俺の愛は。
「ライバルが減ったと思ったのに」
「そうだ!お前、親友のピンチに何寝てんだよ」
「え、ピンチだったんだ」
「おい」
騒がしい廊下を二人で笑いながら歩いた。
新たに現れる恋敵の存在に気づかないまま…。
【姫のプリンス現る!?】
「終わった〜帰るか〜」
「お・う・じ〜♪一緒に帰ろぉ!」
帰りのチャイムがなると同時に逃げる間も与えず、同じクラスの女子が寄ってきた。
もちろん流星は無視。
やっぱり流星みたいにできない俺は女子に囲まれながら教室を出た。
はぁ…やっぱ一言言わないとやめねーよな。
「あ!流星!裕太!」
キャーキャー騒ぐ甲高い声の中に聞こえた愛しい声。
俺と流星が想いを寄せているハルは校門の前で俺らに向けて手を振っていた。
それを見た流星はフッと微笑んでいた。
本当に好きなんだな…
誰もがそう思うような顔をしていた。
愛しい…
辛い…
そんな感情。
俺らはそんな気持ちを隠してハルに駆け寄った。
他の女子は諦めたらしく散らばっていった、ある一人を除いては…
「今から帰るの?」
「…おう」
「ハルも一緒に帰ろうよ」
「う「私も一緒に帰りたいなぁ?」
上條皐月。
コイツだけは俺の腕から離れようとはしなかった。
ニコニコしながらどこかで何かを企んでいるような笑みを浮かべハルを見ていた。
まるで “ 邪魔 ” と言っているようだった。
そんな様子を流星は嫌な顔をして見ていた。
俺も嫌だった。
ハルは皐月に遠慮してるのかうつ向いたまま何も言わなかった。
「ハル、気にしない…」
「わ!私は……やっぱいいや!三人で帰って?」
俺の言葉を遮ってハルは言った。
ハルは優しすぎる。
「…じゃ俺はハルと帰るから、上條さんと裕太は」
「い、いいよ!一人で帰れるから…」
「ハ…」
「大丈夫、僕が送るよ」
ふと現れた一人の男。
高校生らしいその姿は大人っぽいと言われる俺とは天と地の差の大人だった。
しかもそれは俺と流星がよく知っていて、恨み、憎んだ人だった。
「あ、青葉センパイっ!?」
「うん、久しぶりハル」
青葉真人(アオバマサト)。
学生時代仲が良かった先輩。
俺らもよく相談にのってもらった。
そして…ハルが想いを寄せる人。
「な、なんでここに!?」
「ん?久しぶりにココに来たかったんだ。そしたらなんかハル達の声が聞こえたから」
頬を赤らめながら驚きを隠せないハル。
俺らにはそんな顔しないのに…っ
ハルは先輩の卒業の日に告白した。
そして振られた。
それでもまだ諦められずずっと想っていたんだと思う。
俺らに言えずに…
だから、ハルは俺らよりずっと苦しかったと思う。
会いたい人に会えない苦しみは俺らには味わえない。
でも好きな人に好きと言えない辛さは分かるから…。
ハルと先輩の様子をジッと見るしかなかったんだ。
「にしても流星と裕太も大きくなった。それに前よりかっこよくなってる」
「先輩…」
なんでハルを悲しませたんだ…
なんでハルを泣かせた…
なんでハルに…
言いたいことはいっぱい合ったのに甦るのはあの日の思い出だけで…。
大好きだった先輩。
苦しいこの思いはどうすることもできなかった。
流星もこんな思いしてんだろうな。
会えて嬉しい…
ハルがとられるかもしれない焦り…
そんな感情がグルグルと駆け巡ってる。
「青葉せーんパイ、先パイも一緒にかえりましょーよ?」
上條皐月は俺の腕からスルリと自分の腕を抜き、先輩の腕に絡める。
そして、上目遣いで先輩を誘う。
「えっと…君は?」
「上條皐月ですぅ。ちょうど先輩と帰りたいなぁって思ってたんですよぉ」
適当なごたくを並べて先輩に密着する。
ハルは悲しい顔をした。
「ごめんね。君がホントに一緒に帰りたかったのは僕じゃないでしょ?」
「ち、違いますよぉ」
「ハル、帰ろう?」
「は、はい!」
「じゃあまた今度ね。流星、裕太」
先輩は上條皐月を上手に抑えて、ハルの手を引き、連れだした。
そんな先輩は…まるで牢から姫を助け出した王子のようだった。
上條皐月は予想外の出来事に驚いたようだった。でもすぐにまた俺の腕に自分の腕を絡めた。
「むぅ〜ハルちゃんばっかりずるぅい!いーもん王子たちと帰るから!ね、かえ」
「…ごめん、俺、用事あるから」
そんな上條皐月を突きだし、俺は焦りを隠せずに先輩達のあとを追った。
そのあとを流星もついてきた。
「……ハルっ」
【5、悪魔は笑う】
皐月side
「はぁぁ…二人とも私を置いてくとかありえないでしょ!」
私、上條皐月。
ただいま絶賛イライラ中。
まっ、二人があの子のことを好きなのは大分前から知ってたけどね。
ずるいんだよ。あの子ばっか。
__だから壊したくなる…。
「…まー今日は収穫あったし…」
あの子が好きなのは青葉真人。
あの人が中学に居たときから私はあの人が嫌いだった。
一度顔が良いから近づいてみたことがある。
『せーんぱいっ!私ぃ上條皐月ですぅ』
『どうしたの?』
『今度ぉ一緒に良いことして遊びません?』
『…んー誘惑してるのかな?なら残念だね。僕そーゆーの効かないんだ』
『アハハッそんなの嘘ですよねぇ?』
『嘘?でも、そんなことする暇があったらちゃんと君のことを好きになってくれる人を探した方がいいんじゃない?』
『私はぁたくさんの人と遊びたいんですぅ』
『そうなんだ。じゃあ僕を誘っても無駄だよ。他の人誘ったら?』
『せんぱいがいいんですぅ』
『…僕のこと好きじゃないのに?』
『好きですよぉ?』
『どこが?言ってみて』
『顔がかっこいいですぅ』
『それは、外見でしょ?中身を答えられないとそれは好きじゃないよ。ご期待に添えられなくてごめんね。じゃあね』
『あ…』
悔しかった。
恥ずかしかった。
そんな思いをしたのは初めてだった。
その日から私は男遊びが激しくなった。私が落ち込めば慰めてくれる。
私を放った男はあの三人だけだ。
こんなにいい女を無視するなんてバカじゃないの?
でも、その答えはすぐに分かった。
三人ともあの子に惚れてたから。
あの子だけ……ズルい。
だから私はあの子から全てを奪う。
まずは、あの男達を手にする。
さーてっどうしよっかなぁ??
私はカバンから携帯を取り出した。
適当に街で捕まえた男に連絡する。
「…おっ!皐月!?どうした?」
「だいちゃぁんっ。今日ね嫌なことがあったのぉ!」
「まじで!?じゃー俺んち来いよ!」
「行くぅ!あ、その前にお願いがあるんだけどぉ」
「なに?皐月のためなら何でもするよ」
「ありがとー大好き♪えっとね…」
「………マジかよ!面白そーじゃん!ってか許さねーその女」
「ひどいでショー?じゃーお願い聞いてくれる?」
「当たり前!じゃ、家で待ってる!」
「すぐ行くぅ」
___ツー…ツー…
ま、最初は優しくねっ!
私って優しいー♪
許さないんだから…
……坂下ハル…ちゃん♪