恋愛物です
ハッピーエンドかバッドエンドかは決まっていません
感想などくれたら嬉しいです
実体験を少しだけもとにして書いてます
ポエム板で書いているポエムを使ったりします
(あなたが一言「付き合って」と言うだけで解ける呪いよ
あなたが一言「好きだよ」と言うだけで治る病気よ
私が少し勇気を出すだけで叶うかもしれない望みよ)
私はあなたが私を愛しているに違いないと信じていた。
あなたは素直じゃないだけだと信じていた。
あなたがいつか私に想いを告げるはずだと信じていた。
純粋に、すこしの疑いもなく。
これは呪いだった。病気だった。希望だった。
解けるかもしれないし、治るかもしれないし、叶うかもしれなかった。
あなたはモテないしオタクだしコミュ障だし理屈っぽいし、人気者でもないはずなのに、学ランのボタンは全て取れていた。
どうやら取ったのは全員男子のようだけど、私は許せなかった。
私が欲しいと頼んだときは、あげない、って言ったくせに。
私にはくれなかったくせに。
割と仲がいい友達だと思っていたのに、なんだか裏切られた気分だ。
あなたは楽しそうに周りの男子とおしゃべりをしている。
楽しそうだね、混ぜてよ。
そう言えたら良かったのだけど、卒業式に第二ボタンをあげようとすら思えないレベルの人間である私が割り込んでもあなたが可哀想だから、話しかけないことにした。
大親友だと私が思っている女の子は、さっさと帰ってしまったらしく、どこにも見当たらない。
結局、好きな人に限って私に冷たいなあ、と冷静に分析して、ため息をついた。
隣の友達がどうしたのかと声をかけてくる。
なんでもない。
そう答えて、またちらりとあなたのほうを見た。
結局、何も話せなかった。
友達皆と話せたらいいな、最後だし、なんてことを考えていたのだけど、男の子にはやっぱり話しかけづらい。
卒業アルバムを見てなんとなくあなたの写真を探した。
あった。奇跡の写真写りで、いつもより数倍イケメンに見える写真だ。
友達と、こいつ誰だよって盛り上がったっけ。
卒業した実感はまだ全然わかない。少し休んだらまた学校があるんじゃないかと思う。
ツイッターで皆と相変わらず会話していることもあって、離れたような印象は受けなかった。
勿論、あなたとも。
惚れた腫れたなんて話は3年間無縁だったな、誰にも恋することは出来なかった。
でもまあ高校でいい人が見つかるんだろうな、そんなことを考えていた。
皆やあなたに好きな人はいたのだろうか? 少し気になる。
まあいいや、とりあえず今日は寝よう。
ぱたんと卒業アルバムを閉じて、布団に入った。
クラゲ可愛い。
きっかけはそんなツイートだった。
じゃあ水族館に行こう、あいつも誘おうこいつも誘おう、話がどんどん広がっていって、あなたと私を含めて4人で遊びに行くことになった。
楽しみだ。とてもとても。皆に会える。実は今までずっと会ってなかったから、少し寂しかったのだ。
じゃあ待ち合わせは駅で1時にしよう、と誘ってきた奴と決めて、皆に連絡して、そのときを待った。
私は念のため10分程度余裕を持って家を出た。
案の定早くつきすぎた。まだ待ち合わせの15分前。
早くても10分前のはずだったんだけど、とケータイを睨みつける。
暇だ。暇すぎる。ケータイの充電はあまり消費したくないから、ゲームをしようとは思わなかった。
まあ15分ぐらいなら何もせずとも待てるだろう。皆が時間通りに来てくれるなら。
そう思い、顔を上げたとき。
きょろきょろとあたりを見渡すあなたがいた。
おお、と思わず声が漏れる。助かった。話す相手がいると言うのは本当にありがたい。
おーい、と呼びかける。気づいたようで、ゆっくりと歩いてきた。
「久しぶり」
「久しぶり」
そんな他愛ない会話だったけれど、なんだか懐かしくて。
もし早く来たのがあなたでなかったら、どう思ったのだろう?
きっとそれでも、嬉しかったのだろうな。
私は本気でそう思っていた。
「悪い、遅れた」
誘ってきた奴が15分遅刻をした。
私たちは半ば呆れ、計画通り、そいつをしばらく無視し続けることにた。
計画、とはそいつを除いた皆が集まったときにたてたものだ。
言いだしっぺのやつが遅れるのはなんだかむかつくから、とりあえずホームまで無視をしよう。
そんな簡単なものである。
「えっちょっ、何か言ってくれ。ごめん。遅れてごめん」
勿論私たちは何も答えない。
あえてゆっくり、それはもうゆっくりすぎるぐらいの速さで、階段を上る。
許せって、申し訳ない、ごめんなさい、すいませんでした。
どんどん口調が丁寧になっていく。
たん、という音を靴底で鳴らして階段をのぼりきり、くるりとまわってそいつを見る。
「遅いって」
皆も口々になじった。にやにやと笑いながら。
「ごめん、ごめん。ついつい……よかった、そんなに怒ってないみたいで」
気の抜けたその一言に、私たちはくすくすと笑った。
(ひとつ前のコテハン関係ないです申し訳ございません)
ふよふよと、透明な生き物が水に浮いていた。言わずもがな、クラゲである。
最初に見かけたのはクラゲの中でももっともポピュラーであろう、ミズクラゲだ。
海に近いそこらへんの川にも生息している。
「可愛いなあ」
「ですねえ」
水槽の前にへばりついて、愛らしい傘を見つめる。
ふわふわふよふよ、遊泳能力が低いからか、ただ水の流れに身体を任せているようなその様はなんともいえない。
みているとだんだん愛おしくなってくる。
「これ、なんていうんだっけ」
あなたが水槽の中を見つめてきいた。
「ミズクラゲだよ、ミズクラゲ」
私はあなたの横顔を見つめて答えた。
展示されているクラゲはすべて見終わってしまった。
もともとクラゲだけが目的だったので、やることがもうない。
どうする、と私を除き唯一の女子が問いかけた。
「私はクラゲ見れたし、皆好きなのみていいよ」
「じゃあ私、ペンギンみたい」
「俺マグロ」
「オットセイがいい」
見事に意見があわない。
とりあえず近いゾーンから順繰りに見ていこう、と決まったので、一番近いマグロのゾーンへ歩き出す。
途中にも水槽がいくつかあったので、それを少し眺めながら。
あなたは希望していたマグロのゾーンへ、他より少し足早に向かう。
待って、と3人であなたを追いかけた。
ペンギンも、オットセイも、勿論マグロもちゃんと見ることができた。
他の魚や海獣もだいたい見た。
だがしかし、だいぶ時間が余ってしまった。やることがない。
もう一周しよう、と言い出せるほど私たちは魚好きでもないし、動くことが好きでもなかった。
そういうわけで、長めのベンチに4人で腰掛けて談笑をする。
女子二人並んで座って、私の隣にはあなた。男子も勿論二人並んでいる。
「このあとどうする」
「ここにいようよ」
「何でもいい」
「飲み物買ってくる」
「お、おう。いってらっしゃい」
自分でもずいぶんマイペースな発言をしたなあ、と思いながら自販機まで歩く。
つめたいものからあったかいものまで並ぶ中で、私は一番上の段の冷たい緑茶を選んだ。
たしかあの子は、先ほど女子らしくキャラパッケージの紅茶を買っていたけど、まあ別にあわせなくてもいいだろう。
私紅茶苦手だし。
「ただいま」
あなたが私を見上げて、お帰り、と言った。
その隣にとすっと座り、くるっと皆を見渡す。
「どうしよっか」
「本当マイペースだな……」
何故だか呆れられてしまった。
楽しかった。その一言に尽きる。
家で今日のことを思い起こしながら、棚にしまってある、まだ綺麗な卒業アルバムをとりだした。
小学校を卒業したときは、見直したりなんてしなかったけど。
卒業アルバム特有の、重たいページをめくる。
1年、2年、3年の思い出のページ。
今日遊んだ皆の顔が飛び込んできて、胸の奥からぐわっと、何かがこみ上げた。
心臓が跳ねる。
いつもよりも速く脈打つ。
夢中になって、自分のクラス以外のクラスページまでじっくりと見つめる。
そこには当たり前のように、あなたがいた。
私と違うクラス、離れた場所で、私が仲良くない人間と笑っている写真があった。
当たり前なのに。全員そうだろうに。何故だろう。
私だってあなたと笑っていたのに。
あなたと沢山の思い出を作ったのに。
それはひとつも形として残っていない。
なんだか無性に寂しかった。
その当時は、どうせまた話すからと何も気にしないでいたのに。
本当に大切なものは失ってから気がつく、それはきっと真実だ。
これからは学校に行ってもあなたがいない。
これからは休み時間になってもあなたが来ない。
これからはテストの点数をくらべたりできない。
これからは、これからは、これからは、あれもこれもできやしない。
寂しい。
あなたがいないと、こんなにも寂しい。
卒業アルバムを抱きしめて、私は泣いた。
何もみたくなかった。
どくどくと、ダムから規則的に水が溢れ出して、止まらなかった。
心臓の規則的な動きとあわせて、涙が溢れ出していたのだった。
声は上げなかった。
喉の奥を絞め、強制的に押し殺した。
好きだ。あなたのことが好きだ。どうしようもなく好きだ。
どうして今まで気がつかなかった?
こんなにもこんなにも、想いは強いのに。
考えてみたらずっと昔から、あなたが好きだったような気がする。
期間なんてどうでもいいけれど。
今私があなたのことを好きである事実は変わらない。
次の日は、鏡を見るのが億劫だった。
絶対目、腫れてるよ……などとぶつぶつ呟きながら、習慣なので仕方なく覗き込む。
案の定まぶたは真っ赤に彩られ、お世辞にも普段どおりとは言えなかった。
よかった、今日学校休みで。
もう一度寝ようとは思えず、ソファーに深く腰掛ける。
まだ春休みだ。高校の宿題も終えた。何もやることがない。
昨日のことで疲れてしまったから、ありがたい。
一日中、ただ何もせず、ご飯すら食べずに、寝っ転がってすごした。
ツイッターを開いた。
昨日は一日中寝ていたから、皆と何も話していない。
いつの間にか春休みは最終日に差し掛かり、私は本当に高校1年生になろうとしていた。
期待がないと言えば嘘になるが、楽しみと言っても嘘になる。
だから今日ぐらいは、現実逃避をして、皆と中学時代のように話がしたかった。
皆のツイートをさかのぼると、水族館についての呟きがいくつかあった。
「水族館のマグロ美味しかった」
これはあなたのツイート。
ものすごい誤解されそうな文面だ。
そういえば昼ごはんに、水族館の中のお店でマグロカツなるものを食べていたっけ。
しかも、マグロの水槽を見た後に。
「遅れてごめんね、楽しかったです」
言わずもがな、遅れたあいつのツイート。
絶対許さない、一生恨んでやるぞ。
そんな内容のリプライが、あの子やあなたから飛んできていた。
勿論冗談だろうけど。
「めっちゃ楽しかった! 写真もこっそり撮っちゃった」
私たちの後姿をとった写真と一緒に、あの子のツイート。
なんか女子っぽい。すごく女子っぽい。
あの子を除いた3人が、あなたを中心にして並んでいる。
「すごくいい写真、保存したー」
そうやって、時間差でリプライを飛ばす。
保存した写真をしげしげと眺め、私があなたの隣にいた、という事実にちょっと安心した。
そして、私とあなたの思い出が形になったことにも。
昨日は、アルバムを見ても私とあなたが一緒に映っている写真がなかったから、いつか全ての思い出が忘れ去られてしまうんじゃないかと不安になった。
けれど、今はある。
ちゃんと、同じ場所で話している証拠がある。
二人きりではないにせよ、十分嬉しかった。
もうすぐ0時になろうとしていた。
私たちが高校生になる瞬間が、着々と近づいてきていた。
まだ中学生でいたかった。
というより、高校生になる、という実感がわかなかった。
またあなたやあの子やあいつと、同じ教室で楽しく話せるのだろう。
そんな考えが頭から離れなかった。
私たちは成長する。
どんなに嫌でも、生きてる限り成長しつづけて、いつかは大人になる。
あなたや皆と会えなくなるのなら、大人になどなりたくはない。
けれどこんな想いもいつかは消える、忘れる。
まだ視野の狭い15の子供が言うことなんて、そのときの感情ばかりに振り回されて、後で考えると支離滅裂だったりする。
そんなものだ。
そんな想いが、考えが、何より人間的で美しいと考えてしまうのは、私だけだろうか。
ああ、どんなに美しくても醜くても、その考えに世界の全てを決定できる権限はないことを、私は知っている。
どんなに希望を持ったって、叶わないのだから。
こんなことは忘れてしまおう。消してしまおう。
そのほうが楽に決まっている。
楽しみだな! と、一人で声をあげて、そのまま布団に倒れこんだ。
高校生になって数週間が過ぎた。
まるで鳴き声のように、「高校辛い」「中学校帰りたい」「辞めたい」などと呟く機械に、私はなってしまった。
わかっている。中学校が楽しすぎたのだ。
私はわがままを言っていると、わかっていた。
私と遊んでいるのにスマホばかり見て、しまいにはツイッターで皆と会話しだす人。
自分のトラウマを、出会って数日の私に語ってくる人。
自分の好きなことは相手も好きなことだと思い込んでいる人。
3人で一緒にいたのに、私をいつの間にか置いていっている2人組の友人。
解決した問題を掘り返して、またツイッター内で攻撃している人。
こんな人、きっと中学校にもいた。
私がそういう人たちと関わらなかっただけだ。
私が人間関係に恵まれすぎていただけなのだ。
現に、あいつらは楽しそうにしている。本気で、心の底から、楽しそうにしている。
私には理解ができなかった。
理解ができないし同じような人間になりたくなかった。
だから、スマホを持っていても友達と話すときは絶対いじらなかったし、重い話はまだ何もしてないし、好きなことの押し付けはしないし、2人組以上になったら全員が全員と話せるように配慮したし、まずトラブルを起こさないようにした。
だと言うのに、ここまで気を使ったというのに、私のほうが絶対正しいと思っているのに。
どうして、私は一人でご飯を食べているのだろう。
私の抱える人間関係なんて、他の友人に比べれば幾分マシだった。
もうすでに学校でいじめが起きている、なんて友人もいたのだから。
でも、私は辛かった。
どうしても好きになれなくて、どうしても合わなくて、別に何かされたわけでもないのにわがままだけど、馴染めなかった。
冷えた弁当箱を開く。
昨日の夜ご飯の残り物と、真っ白いご飯。
一人で、いただきます、と呟いて箸箱をあけた。
箸が入ってない。
頭の中でお母さんっ! と叫んだ。
箸箱があるのに箸が入ってないなどと、誰が想像するだろうか。
女子は皆グループになって食べている。それに多分私は嫌われている。話しかけることはできない。
でも箸がないと食べることができない。
ああどうしよう、購買でも割り箸売ってないらしいし。
考えていたら声が聞こえた。
「箸ないの?」
左隣の、同じく一人でご飯を食べている男子だ。
こくりと頷くと、ちょっと待ってて、と言って教室の外へ出て行ってしまった。
何がなんだかわからず、呆然とする。
戻ってきたその男子は、私に割り箸を手渡した。
「これ、ロッカーの中に常備してんだよね。はい」
「あ、ありがとう」
どうやら、わざわざ私のためにロッカーへ行ってくれたらしい。
こんなに優しいのに何故一人でご飯を食べているのだろう、と少し考えたが、このクラスの男子は女子と違って一人で食べる人も多いのだった。
きっとこんな優しい彼には、もう沢山友達ができているのだろう。
「いいよいいよ。まだ割り箸残っててよかった」
手渡された割り箸の袋を、ぺりぺりとあけて、私は考えた。
もし私が男子だったなら、こういう優しい人がいて、もっと楽しかったかもしれない。
だって彼は優しい。本当に優しい。
割り箸をくれただけなのに、普段ならたいした事ないはずなのに、涙が出そうだった。
それだけ私は高校生活にまいっていた。
初夏の風が吹いていた。5月のはじめ、大型連休のその日。
私はまた、あのメンバーで遊びにいけることになった。
今度はカラオケに行くんだそうだ。
あのときにあなたに会えたことで味を占めた私は、また15分前につくように出て、あなたを待つことにした。
(あなたが好きだから苦しくなったのかしら?
それとも、苦しくなったからあなたが好きだと判断したのかしら?
どちらが先でもいいから、助けてちょうだい
全部全部、あなたのせいでしょうが)
相変わらず、待ち合わせ場所は駅。
外は曇っていたけれど日焼け止めを塗って、透明なマニキュアで爪を輝かせ、腕によりをかけて選んだ服を着て、あなたを待っていようと思ったのに。
15分前についたのにすでにいるものだから、時計が壊れたんじゃないかと思ってしまった。
「もういたの? はやいね」
「30分前行動とか常識だろ。時間間違えた」
ああ、あなたは何も変わってない。何一つ変わってない。
まだ私の知ってるあなたでいる。
面白くてちょっと抜けてて、なのに几帳面なあなたのままだ。
くすりと笑えば、あなたは少しだけ首をかしげる。
「そんなに面白かった?」
「いや、変わってないなあって」
「いやいやそんなことないって。俺高校デビューしたつもりなんだけど」
「できてないよ」
えー!? と控えめに叫んであなたは頭を抱える。
私はそれをみて、また笑った。
(小説とは関係ないことで申し訳ございません
読み飛ばしてくださっても構いません
カクヨムにてこの話の連載を開始しました
ここで書いてあるものほぼそのままに、違和感があれば修正して出しております
感想などIDバレ嫌だから言いづらいな……と言う方はこちらに下さっても構いません、むしろ嬉しいです
URLです↓
https://kakuyomu.jp/works/1177354054881066572
私、ここの初心者なのでよくわかりませんが、何か問題がありましたらお伝えください)
前に遅れたあいつは、どうせまた遅刻するだろうな。
そう思っていたらスマートフォンにあいつからの連絡が来た。
「えっと……無理、遅れる、プラスマイナス10分待ってだって」
「マイナスいらないだろ」
「思った」
ということはしばらく二人だ。あの子がいつ来るかはわからないけど、だいたい時間ぴったりにくるからそれまではきっと。
あと10分で時間が来る。
10分なんてきっと短いだろうから、今のうちにあなたと色々話しておかなくちゃ。
「やっほー! 久しぶり〜」
「久しいな友よ」
「あっ、久しぶり」
あなたと話すことに集中していたからか、反応が遅れてしまった。
終わってしまったか、と残念な気持ちも大きいが、あの子だって私の大切な友人だから、また会えて嬉しいことに変わりない。
あの子は相変わらず女子らしくて可愛い。
私だって可愛い服を選んで着ているしそこには自信を持っているのだが、オーラが違う気がした。
なんというか、女子、という感じなのだ。
その点では私はあの子に勝てる気がしない。
幸いあの子には彼氏がいるので、ライバルになったりはしないだろう。
ああよかった、助かった。争うことになったら負けるに決まっている。
色々考えすぎていたのか、あいつはまだ来ないのか、という問にも答えるのが遅れてしまった。
「今度はどうする? カラオケまでダッシュする?」
「いいね」
そんな会話を経て、いま私たちは猛ダッシュしていた。
陸上選手顔負けの形相で走る。
前と同じく15分遅刻したあいつは、ええ!? と叫びながら必死に私たちを追いかけてきていた。
スタートが遅れたからか、なかなか追いつかない。
カラオケまでの距離はそう遠くない。きっと間に合わないだろう。
自動ドアの前で急ブレーキをかけて、ぎりぎり追いつかれなかった、と安堵のため息を吐いた。
最初の数分間は、部屋に入っても歌えなかった。
一番目が嫌だとかそんな理由ではなく、単純に体力の問題だ。
普段動いたりしない私たちが、ここまで必死に走るなんて、体育祭でもありえないことなのだから、当然だ。
「そろそろ歌おう。俺一番に歌う」
「歌えんの!? すご……私はまだ無理」
皆歌う曲のジャンルは違えども、なかなかに楽しかった。
空はすでに黒く染まっていて、これは怒られるかもしれないな、と考えた。
疲れた、とあなたが呟けば、私も、皆も、あー疲れたね、と返す。
ゆっくりと歩き出す。駅が近づいてくる。
私にはやりたいことがあった。
あなたの後姿は、あまり変わっていない。相変わらずの愛しい後姿。
告白が、したかった。
駅を過ぎれば、私とあなた、二人っきりで歩く道だ。
早く、もう他のやつらなんていいから、早く駅を通り過ぎてくれ。
そう願うのに、何故か皆は駅の前で止まった。
「俺今日こっちなんだ」
「……え?」
あなたはあの可愛い女の子の帰る道を指差して言った。
しばらく思考回路が停止する。
親友といえども、激しい嫉妬の念が身体を突き抜けた。
そして、いつも遅れてくるあいつも、あなたと同じ一言を。
私の帰る道を指差して。
「じゃあね〜!」
「そんじゃ」
あなたとあの子は手を振って、私たちとは違う道を歩いていった。
呆然と立ち尽くした後、私は何を考えたのか、その後を追った。
「ちょ、待てって」
あいつの一言なんか、聞こえないというふりをして。
「あのさ、」
あの子の声が聞こえる。
「私と付き合ってくれない?」
その一言はじつにさらりとしていて、発した本人も戸惑う様子がない。
どうせ受け入れてくれるだろう、そんな考えが透けている。
頬の紅潮も体のこわばりもない。何もない。私は二人で歩くだけで、あんなに緊張するのに。
あなたは、小さく頷いた。
「別にいいけど」
あなたもどこか適当に、返事しているように見えた。
全身の力が抜けた。さあ、と胸の内に冷たい風が吹いた。
そう、さながら今日のカラオケの空調のような。
ふらふらと戻る私をうけとめたのは、あいつだった。
全てが抜けたまさに抜け殻の私。
あのさ、とあいつは私に話しかける。
「俺と付き合って欲しい」