――ああ、空なんて見上げたのなんていつぶりだろう。
白く立ち上る入道雲に澄んだ青空。周りは
深い緑に染まった山々に囲まれている。
そしてこの夏特有の蒸されているような暑さに目が眩んでいく。
私は少しの間眩しい空を見上げ、汗を拭い、
錆びた自転車のペダルを踏んだ。
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蕾と言います。前は名前違いましたが
ひょっこり来ては1ヶ月ぐらいで飽きてしまい
色々放置してしまう。おそらくこれもでしょう。
短い間ですが、できるだけ長く続くよう頑張ります。
その出会いはあまりにも突然であり、刺激的だった。
いつもの様に、登校し、頬杖をついて窓を眺めるだけの朝。
だがこの日は空気も違えば、一番端にある私の席の隣は誰もいないはずなのに席が作られている
次第に登校する生徒も妙な違和感の正体に気づき、ざわめきだす。
その数分後、ざわめきを押さえつけるように教師がやってくる。
大体何が起こるか察しているので妙に緊張した。
「えー……転入生を紹介する。入っていいぞ」
からからとドアが開き、皆の視線が一気に向く。
転入生は羽谷昴≠ニ丁寧な字で黒板に書いた後一言も喋らずに
彼は一礼して席に向かった。
隣に来ると顔がよく見える。すっと高い鼻に長い睫毛に二重の
大きな目がそれはまた長い前髪から覗けた。
見れば見るほど端正な顔立ちで引き込まれそうになる。
視線に気づいたのか横目で私の方を見て彼は軽く微笑み会釈をした。
仏頂面だったその仮面が剥がれ落ちたかのようにその表情は穏やかで、何だか見てるこちらが恥ずかしくなる。
挨拶をしないのも悪いのでちぎった紙につらつらと萩根夏帆≠ニ書き、彼に渡した。
彼は目を見張り、まじまじとそのメモを見て裏面に
「萩根さんありがとう」とすらすらと書いて私に返した。
あまりにも突然で、あまりにも刺激的な彼の存在に
私は何故かこの夏に希望を持った。
……どうやら私は彼に一目惚れをしたようだ。