人生とは、実にイージーである

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1:ムクロ氏@太もも大神:2016/06/14(火) 22:53 ID:3uI

人生って、凄くイージーモード。簡単過ぎる、でも凄く楽しくて面白い人生。
みんなはよく、そんな人生ありえないと言う。
それに対して、私はちょっぴり「あれ?」って首をかしげる。
可笑しいなぁって、頭を捻る。
少したったら、ようやく意味が分かった。

そうか、みんな知らないんだな!

___って。






少しずつ更新……かと思いきや、暇があればじゃんじゃん更新します、はい、ムクロです。
今回はイージーな人生を送ってらっしゃる女の子の話(ギリィッ)を書こうかと思いまして。
なるべく失踪しません。じゃあノシ

2:ムクロ氏@太もも大神:2016/06/14(火) 23:31 ID:3uI

生ぬるくて、ねっとりとした風に髪を預けて、私はうーんっと言いながら伸びをする。
今日もいい朝だ。昨日の夜に雨が止んだばかりだというのに、アスファルトには水溜まりなどほとんどない。
蒸発したのね、と私は最近理科で習った語句を使って、心の中で呟いた。

空は昨日と違って青空だった。青空ほど心を爽やかにしてくれるものはないだろう。
私は学校への近道でもある、田んぼの畦道にへと足を踏み入れた。ぬるっとした、靴の裏から伝わってくる感触など、気にしない。

畦道でぴょこぴょこ跳ねる蛙の上を、私はぴょこっと跳ねて前へ進む。田んぼ近くの畑から、夏野菜の匂いがする。
……そろそろ、給食に夏野菜出てくるころだよな。
私は畦道から抜け出し、学校裏のアスファルトの灰色の道路に出た。靴に着いた泥を、道路に擦り付けて、なるたけ靴を綺麗にする。代わりに、道路は灰色ではなく、茶色になった。
これでよし、と呟いて、学校の正門に向かって歩き出す。
学校の裏にも正門をつけた方がいいのにな。___これは、私がめんどくさいから、そう思うだけなんだけどね。

正門が近くなり、あと数メートル……というところで、声をかけられた。

「おはよう、春樹ちゃん」

振り向くと、長い髪をおさげにした宮川さんが居た。宮川さんは小走りで私の隣に来た。

「おはよー。どうしたの、今日早いね」
「あたしがいつも遅いってこと……?」
宮川さんは、頬を膨らました。

「……酷くない、それ」

そう言いながら、顔は笑っている。ごめんごめんと繰り返して、私も同じように笑って返した。

「でも、本当に早いね。どうしたの?」

自慢じゃないけど、ううん、やっぱり自慢なんだけど、実は私、クラスで一番登校してくるのが速いんだ。
だから、宮川さんが同じくらいの時間帯に歩いてて、ちょっと悔しかったりする。

どうしてこんなに速いのか、突き止めてやる!
私は意気込んだ。___よく考えたら、どうでもいい意気込みだった、なんて、全然気づけてない……。

「今日、あたし、日直だからだよ」

そうなんだと、私は頷いた。
日直なら早いのも頷ける。……ん、でもまって。日直でも、花に水をあげたり、日誌を書いたりする程度で、こんなに早くくる必要はないはず___

「ちょっと可笑しくない?」
「あ、バレた?」

ニヒィとイタズっ子みたく宮川さんは笑った。

「ここだけの話ね、実は今日、不登校の相川ちゃんが珍しく登校してくるみたいだから、いつ来ても教室に入りやすいように、あたしは早く登校しなきゃいけないの。
誰もいない教室に、入りたくないでしょ?不登校の子なら尚更じゃない?」
「……なるほどねえ」

不登校、か。相川さんって確か、いじめが原因不登校になってしまったって聞いたけど、大丈夫なのかな?
逆に、教室に誰かいた方が入りづらいんじゃ……?

そこまで考えて、私はいけない、と首を振った。
ダメだよ、こんな風じゃ。
えぇっと……相川さんは、頑張って学校に来たんだ。それを、バカにする人なんているもんか。教室に誰かいてもいなくても、相川さんの勇気は変わらない。
入りづらい、なんて、私のただの想像なんだから、それを真実としてみちゃいけない。

校門をくぐり、私たちは次に校舎にへと向かう。昇降口に入ると、二人くらいの女の子たちがキャアキャアいいながら、靴を履き替えていた。
私はそれを横目に、宮川さんに声をかけた。

「相川さん、楽しんでくれるといいよね」

宮川さんの顔を見れば、驚いたような顔をしていた。
どうしてっていう、そんな顔。

「あの子、いじめられてたんだよ?」
「でも凄いじゃん。来てくれるなんて。……ほら行こう、相川さんの為にもね!」

靴を脱いで、それを下駄箱にしまった。シューズを出してそれを履く。最近買い替えたから、ちょっと緩めだ。

「ね、宮川さん」
「……ああ、うん、そーだねぇ……」

この子の人生、楽しいのかな、と私は宮川さんを見て思った。
彼女は楽しくなさそうだ。いじめをしてたし、何より、考え方が窮屈だから。

3:ムクロ氏@太もも大神:2016/06/16(木) 20:53 ID:3uI

宮川さんが駆け足で教室に入った。それに習うように教室に入ると、知らない子が居た。
……いや、その子のことを見てたら、だんだん思い出してきたぞ。確か、結構前から不登校だった、相川さんだ。あまり見ないから、誰だか分からなかった。
相川さんは眉を寄せて、いぶかしげに私を見た。ずっと顔を見ていたから、変なやつだと思われたのかも。

私はそそっと目線をそらして、相川さんから離れた、自分の席に向かった。
六年間使い続けている赤いランドセルを下ろして、席に座る。
チラッと相川さんを見ると、目が合った。

私は早々と朝の準備を終えると、相川さんのもとにへと向かった。
相川さんは、変わらず眉を寄せて、眉間にシワを作っている。
大変!シワだらけのお顔になっちゃうよ!これであなたもお婆さんの仲間入りだわね!……って、言えたらいいのだけれど。

「ねえねえ、相川さん。おはよう、そして久しぶり!」

ニコォッと、自負できるくらいの、輝かんばかりの笑顔で話しかける。
けれど、相川さんはブスゥとして、不機嫌な顔をさらにレベルアップさせて、私を睨んできた!

……どうしてだろう?何がいけなかったのかなあ……。
少し考えてみた。
相川さんはいじめが原因で不登校になってしまった。そして今日、頑張って学校に来た。けど、気まずくないようにと、先生に命じられて朝早くからやって来た宮川さんは、自分の席で漫画(持ってきちゃいけないのにね!)を読んでいる。
うーん、確かに不機嫌にもなるわよね。でも、それと私は関係ないし、私に当たっても、解決にはならない。より不快になるだけだ。
それに、悪いことだって、どんどん引き寄せちゃうし……。

私は「ねえ」と、また話しかけた。

「今日は道徳の授業があるね。話を聞いてるだけで、幸せな気分になるよね〜」
「……そうだね」

あ、シワが増えた。

相川さんの刺すような視線が怖い。もしかして、私を殺そうとしてる?(もちろん、これは冗談!)
……どうしよう。こういう負のオーラを出しまくる人って、そんなに居ないよね?
窮屈な考えをした宮川さんですら、もう少し正のオーラを出せるのに……。
あ、だめだめ。こんな風に思っちゃ。比べたりだなんて、とんでもないわ。私こそ、負のオーラを出しちゃう!

「あ、今日天気良いよね。昨日の雨が嘘みたい!」
「……そうだね」

同じ言葉ですよ、それ。

なかなか会話の進まない私達を見かねてか、宮川さんがやって来た。

三人での会話もいいよね!
そう思ったところで気づく。宮川さんの様子が可笑しいことに。相川さんも、より不機嫌になってる。
……あ、そうだった。相川さんをいじめてたのって、宮川さんがリーダーのグループだったんだ!
心の中でポンっと手を打った。

宮川さんが、相川さんを見下ろし、

「春樹ちゃんの優しさが分からないの?……これだからバカは困るなあ!」

と、ほぼ怒鳴っているような声で言った。相川さんはそれに怯まず、「はあ?」と返した。
宮川さんが相川さんの机の脚を蹴った。ガタンという音が響いた。

何これ、喧嘩?いじめ?
___止めないと!

私は、また怒鳴ろうとする宮川さんに向かって、冷静さを装って言った。

「ダメだよ、そんなことしちゃ。何も楽しくないよ、こんなの。ね、楽しくお喋りでもしよう?」

宮川さんは「ううん」と首を振った。

「ダメなの、コイツは。こうでもしなきゃダメ。コイツ、きょーちょーせーがないの」
「でも……」
「いいの。コイツを生かしておいてやってるだけ運が良いんだよ」

宮川さんが、相川さんを見てニタアと笑う。
相川さんは宮川さんを睨み、そしてため息を吐いて下を向いた。

「ゴミはゴミ箱に入ってればいいのに」

たっぷり十秒。相川さんの言葉を理解したらしい宮川さんが狂ったように怒鳴った。
狂ったようにガンガン相川さんの机の脚を蹴る。いや、蹴り飛ばす。
相川さんは席から立ち上がって、逃げるように、宮川さんと自身の机から離れた。

それを見た、宮川さんと言ったら。なんと表現すればいいか分からないほど、怒り狂っていた。
私は二人の喧嘩についていけてなかった。どうしてこうなってしまったのかも、分からない。
私は久しぶりに、暗い気持ちになった。


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