初めましての人は初めまして、猫又と申します。
気ままに作品作ってる暇人ですw
さて突然ですが、今回ここでやってみたい企画がありまして……。
それが『ノベルゲーム風小説』……です!
簡単に言うと、ノベルゲームのように物語が進むたびに選択肢を出して。
読者様にそれを選んでいただく、それに沿って私が物語を続ける。
……という作品ですw
正直、お試しというか『やってみよう!』感覚なので、上手くできるか分かりませんが、温かい目で見て下さる読者様、いましたら下の注意書きをよく読んで参加してみて下さいませ。
○注意書き (このスレッドのルール)
1 どの選択肢になるかは『1人・1票』の読者投票によって決まる。
2 分岐点(Q)に対してA・B・C……というような選択肢に投票してもらい、票数が多い選択肢が物語に反映される。
3 投票数が同じ(同票)の場合は投票(コメント)が早かった方が優先される。
4 投票は選択肢の記号(ABC等々)でOK。
5 投票受付時間は基本、私がコメに気付いて次を書き終わるまでです。
6 が、奇跡が起きて投票が殺到した場合は初めの投票(コメ)から1時間以内とし、それ以降の投票は無効とします。
7 意味が読み取れないコメントは無効。また、荒らし行為はやめて下さい。
8 選択肢しだいでエンドも分岐しますが、どのエンドでも種明かしはします。
それでは……続くか分からないけど、『校舎からの脱出編』スタートです!!
・チャプター 1
気が付くと私は冷たい床に寝そべっていた。
目の前に広がる高い天井には、数十個の電灯が整列している。
恐る恐る床に手を伸ばすと、ベタついたフローリングの感触が私の手のひらを包む。
どうやら私はどこかの体育館で横になっているようだった。
ナゼ? どうして? そもそも私は……ダレなんだろう?
必死に過去の記憶を辿るも、全く何も思い出せない。
私は答えを探すために、ゆっくりと体を起こした。
すると周囲から3つの視線を浴びていることに気付く。
1つは、近くで心配そうに私を見つめている女子から。
もう1つは体育館の端で腕を組み、メガネ越しにじーっとこちらを睨(にら)んで来る男子から。
そしてもう1つは他の2人とは違い私から距離をとって、こちらを威圧してくる屈強(くっきょう)そうな男子からだった。
それぞれ私に向ける視線の意味は違えど、皆、ひどく怯えているようにも思えた。
それを証明するように、私が起き上がっても誰も動こうとしないし、誰も、何も言わない。
現状を正しく把握(はあく)するためにも誰か1人……私から声をかける必要があるかもしれない。
そう思い、私は静寂に包まれた体育館で静かに立ち上がった。
Q さて、誰に声をかけようか。
A 近くに居る女子
B 隅っこで腕を組んでいるメガネ男子
C 遠い場所から威圧してくる男子
Cだ!
4:猫又◆Pw:2016/09/13(火) 23:24 ・チャプター2 〜ルートC〜
私は1人だけ距離をとっている男子が気になって、薄暗い体育館の反対側へ駆けた。
近くにいた女子も腕を組んで様子をうかがっていたメガネ男子も、ぎょっとした表情で私を見ていたがそれも気にせず、とりあえずそっぽを向いている彼の背に声をかけた。
「あの……」
とは言ったものの。こういう時、一体何を言っていいか分からず言葉に詰まる。
勢いを失った私に、彼のドスの効いた重低音が返って来た。
「……誰だよお前。近寄んな」
「ぇ? ……いや。その大丈夫かなって思――」「失せろや、女」
「な……」
「日本語も分かんねぇのか? 近寄んなって、ってんだよ。……あ゛ぁ!?」
「……っ」
私の言動に真っ向から食い掛かる彼の態度に、後ずさりする私。
するとそれで気が済んだのか、彼は「もう近寄るなよ……」と私を睨みつけると、またそっぽを向いてしまった。
行動が裏目に出てしまったな、とため息を吐く私。
おそらく怒鳴り声は他の2人にも聞こえているだろうし、これでますます場の空気が悪くなるなぁ……と途方に暮れ、元いた場所へと戻る。
すると私の予想とは反して、2人は苦笑いと失笑を浮かべながら私を迎えてくれた。
同情か、それとも今のやりとりでも不思議と2人の心が打ち解けたのか。
ともかく、この様子ならもう1人ぐらい私から声をかけることも可能だろう。
Q さて、誰に声をかけようか。
A 苦笑いを浮かべている女子
B 失笑を浮かべているメガネ男子
C 誰にも声をかけず、無言のまま元の位置に戻る
AやA
6:ゴリラ番!:2016/09/14(水) 00:34私も選択肢書く。
7:猫又◆Pw:2016/09/14(水) 22:14 ・チャプター3 〜ルートA〜
私は苦笑いを浮かべている女子へと歩み寄った。
「災難だったね……」
私が元いた場所に戻ると彼女は苦笑いではなく、温かい笑顔で迎えてくれた。
「あの……私、如月春花(きさらぎ はるか)。……私も、何でこんなことになってるのか分かんないけど……と、とりあえずよろしくね……!」
茶色がかったショートカットの髪の毛を揺らしながら、窓の外から降り注ぐ月光を背にどこか申し訳なさそうに笑う彼女はそう言うと私の奥、さっき私を追いやった彼を見ながら続ける。
「きっと川端君、錯乱してるんじゃないかな……そっとしておいて、あげて」
カワバタ、というのはおそらく彼の名だろう。
名前を知っているということはお互い顔見知りなのかな……。
そう思った瞬間――。
「………!?」
私の脳裏にある単語が浮かび上がってきた。
ただの偶然、もしくは勝手な妄想。
何の根拠もないその情報を、しかし私は確信をもって口にする。
「もしかして。川端……堅蔵(けんぞう)君?」
「え……。あ、うん。川端君の名前ってたしか、ケンゾウだったと思う…けど」
私の剣幕に元々まんまるだった目をさらに見開き、ビクッと身を引く如月さん。
しかしすぐに何か納得したのか、呼吸を整え続ける。
「あ、やっぱり……知り合いなの? 私達追い越して真っ先に駆けつけるぐらいだもんね……」
「いや、その。実は記憶が無くて……知り合いかどうかも分からなかったんだけど。でもなんとなく1人でいるから声かけたくなったっていうか……名前はなんというか偶然、頭の中に、ポンって浮かんできただけなんだ……」
「そ…そっか。でも名前を知ってるってことは彼とクラスメイトだったり……するのかな。……だったら、私ともクラスメイトだったりして……」
「え?」
どういうこと? と彼女に向き直ると、その反応にまたしても体をビクつかせながら如月春花は矢継早(やつぎばや)に答え始めた。
「え、えっと。あの、私と川端君は、その……クラスメイト、で。話したことは無いんだけど、でも一緒のクラス……だった気がする、みたいな……。だ、だから! あなたも川端君を知ってるなら、もしかして一緒のクラスだったのかな……なんて、思って。あ、勝手に決めつけてごめんなさい……私もあんまり記憶……なくて……でも、なんかそんな気がして……その、決めつけるつもりじゃ……」
どうやら緊張のあまり暴走しているようだ。
何か話題を振って話を変えよう。
Q 何について聞こうか……。
A 隅に陣取っている、真面目そうなメガネ男子について
B 私の名前について
C 川端堅蔵との関係について、さらに聞く
男子について。
9:猫又◆Pw:2016/09/15(木) 20:41 ・チャプター4 〜ルートA〜
「ところで、あの隅にいる子も……知り合いなの?」
わたわたと身振り手振りを交えて力説する如月さんからそっと目を逸らし、私は体育館の端に居る男子へと話題を移す。
すると案の定、如月さんは「え?」としばらくきょろきょろしたあと、私の視線を追ってやっと質問の意味を理解したのかぼそぼそと続ける。
「恵崎(えざき)君のこと……? うん、私と恵崎君は友達なんだ」
相変わらず声は小さかったものの、そう語る彼女の顔はどこか嬉しそうだった。
「……今、ここにいる人達の中で一緒に居た記憶が一番あるし、たぶんなかよしだと……思うんだけど……」
そう尻すぼみになりながら、如月さんは恵崎と呼ばれた少年へと視線で訴えかける。
すると、いままでずっとこちらを傍観していたり、空中を眺めて何か考える素振りを見せていたメガネ男子がやっと口を開いた。
「恵崎です。よろしく」
「よ。よろしくお願いします……」
「…………」
如月さんの話に乗っかるでもなく、フレンドリーに話しかけるでもなく、彼は簡潔な自己紹介を終えると、またこの体育館を眺めながら黙り込んでしまった。
あぁ。また話の通じないタイプか……。
私のあいさつに何の反応も示さない彼を見て、私は顔をしかめた。
「ねぇ。君」「え、はい」
が、それは勘違いだったようで数秒の沈黙を経て、彼はまた口を開く。
「どう思う? この体育館の構造……そして僕達の体躯(たいく)から考えて、ここは中学校ということで間違えなさそうだね」
「中学校……ですか」
言われてみればそんな感じだ。
簡素な作り。小学校にしては高い位置にあるバスケットのゴール。
なにより自分も、他の3人も中学3年〜高校1年といった感じの装いだった。
まぁ。改めて言わなくても大体そんなことは察していたんだけど……。
彼はなぜか名探偵のような口調で、得意げに続ける。
「つまり、僕達には何らかの関連性があると考えられるわけだ」
「……はぁ。そうですか」
「僕の予想ではおそらくクラスメイト……。僕とハル……如月君は友人であるし? 先ほど君は川端君を知っていると発言していた。つまりは身内で起きた事件ということに――」
「いえ。私は別に川端さんのことは知りませんけど……」
「…………え?」
彼の雄弁な推理が止まる。
問題点を指摘され、素で驚いている彼を見ながら私はなんというか、いたたまれない気持ちになった。
というかさっき如月さんに言った情報だよね……?。
一体何を聞いていたんだと彼を睨むと、彼はコホンとわざとらしく咳ばらいをして、まるで何事もなかったかのように仕切り直した。
「いや。実はクラスメイトということも……えー。有り得るのではないかな? じ、自慢じゃないが僕……友人が多くてね。交友が広いから同じクラスになった人間はもちろん、同学年の女子は大体名前を把握(はあく)しているのだよ。……名前を教えてくれればすぐに関係性なんて――」
「あの……。私、名前も思い出せないんです……」
「……えぇ…」
なんというか彼が途方に暮れた顔をしている。
なんか早くも燃え尽きてしまった顔をしている。
……どうやらこっちもダメそうだ。
見ると如月さんが何か言いたげにこっちを見ている。
Q どうしようか……マジで
A 「どうしたの?」と如月さんに声をかける
B 「何? ジロジロ見ないでよ」と威嚇する。
C とりあえず恵崎君をホメて、しばらく彼の自己満足な推理を聞く
C とりあえず恵崎君をホメて、しばらく彼の自己満足な推理を聞くC とりあえず恵崎君をホメて、しばらく彼の自己満足な推理を聞く
11:猫又◆Pw:2016/09/16(金) 19:20 ・チャプター5 〜 ルート C 〜
「そ、それにしても同級生の名前を全部記憶してるってすごいですねー。……私はともかく、他の3人は友達なんですか?」
結果、多少無理やり気味に彼をホメつつ、さらに情報を引き出すことにした。
すると恵崎勉はそれだけで調子を取り戻したのか、「ま。全員ではなく女子限定ではあるけどね」と、謎のどや顔をキメながら私の質問に答えてくれた。
「先ほど言ったように僕と如月君は親友だよ。けれど彼は……」
そう言うと彼は暗がりであぐらをかく川端君をチラッと見てから続ける。
「見ての通りだ。まるで人を寄せ付けない性格だからね……。一応クラスメイトで、僕もハルカも知っているけど、知っているだけ。それ以上でもそれ以下でもない」
「そうですか……」
円満な関係ではないと暗に告げられ、私は少し気を落とす。
どうやら4人で協力、というのも難しそうだった。
そんな私を見かねてか、それともやはり威張り散らしたいだけか、恵崎君はパンっと手を叩くと私達2人に語りかけてきた。
「さて。こんなところで自己紹介はもういいんじゃないかな」
「理由はなんであれ今、僕達はこの体育館に閉じ込められている。いつまでもこうしているわけにはいかないだろう。ドアなり窓なりを調べて一刻も早くここから出るべきだと僕は思うね」
彼の提案に如月さんもコクコクとうなずく。
しかし……。
Q この奇怪な状況で安易に脱出を決行すべきだろうか?
A 留まっていても仕方ない! 早く脱出手段を探すべきだ
B 下手に動くと何が起きるか分からない。せめてこの体育館を探索して情報を集めよう
情報集め。
13:珱り:2016/09/16(金) 20:02A!
14:珱り:2016/09/16(金) 20:03A!
15:匿名:2016/09/16(金) 20:03ごめんなさい……2回書いてしまいました
16:猫又◆Pw:2016/09/17(土) 20:43 ・チャプター6 〜ルートA〜
「ちょっと待って」
私の声が体育館にこだまする。
ノリノリで話していた恵崎勉も、驚いて身を引く如月ちゃんも顔を引きつらせる中、私は2人に向けてこう続けた。
「その前にこの体育館をもっと探索すべきじゃない? まだどこかに人が居るかもしれないし……何か手掛かりになるようなものがあるかもしれない」
安易に行動すべきではないのでは? と訴えかける私。
そんな私に対して恵崎君は……。
「……は?」
軽蔑の視線を返した。
「探索って……あのね、探偵ごっこなら帰ってやってくれよ!!」
その瞳は揺れ、焦点が定まっていない。
踏ん張っている足が小刻みに震えている。
突然の豹変に「さっきまで探偵ごっこやってたくせに」と突っ込むことすらできず、呆然と立ち尽くす私を尻目に、彼はひどく早口で捲し立てる。
「行こう、ハルカ! ……周りに人の気配は無いし、ここから出ればかくまってくれる民家なんて山ほどある。もしかしたらもう失踪事件として警察さえ動いているかも知れないんだ。……こんな好機を逃すような馬鹿は放っておこうよ」
もう喋る時間すら惜しいとばかりに、如月ちゃんの手をとって歩き出そうとする恵崎。
しかし如月ちゃんはぷるぷると首を横に振ると、恵崎から一歩距離をとった。
「こめん……やっぱりもう少し様子を見た方がいいと思う」
「――――」
そう言われた瞬間の恵崎は、まるで山火事を見た類人猿(サル)のような顔をしていた。
「あぁ! もう、勝手にしてよ! ……僕はドアを調べて外に出るからね!」
それでも意見を変える気はないらしく恵崎は1人、体育館の入口へと速足で駆けて行く。
運よく。と言うべきか、体育館の入口は開いていなかったらしく、押したり引いたりと試行錯誤する彼を背に私達は体育館の奥、ステージ側へと歩き出す。
さて探索とは言ったものの、人やモノが隠れていそうな場所はステージ、ステージ下の体育館倉庫……と、よく見ればステージの2階部分にも小部屋があるようだが、そのくらいだ。特に大切なものがあるとも思えないが……。
Q とりあえずどこを探索する?
A 体育館倉庫
B ステージ
C 2階の小部屋
cがいいです!
18:猫又◆Pw:2016/09/22(木) 09:03 「とりあえずあそこに行ってみようか」
私はステージ上の小部屋を指差しながら、そう言う。
ステージも体育倉庫も入口から大体中の様子が見えているし、今のところボール避けの鉄格子がかけられた窓しか見えないあの小部屋が怪しそうだったからだ。……しかし。
「え? ……ぁ。うん、ごめんなさい。ちょっとその場所には行きたく……ないな」
如月ちゃんは私の指さす小部屋の窓を見た瞬間、ビクンッ! と今までで一番大きく痙攣(けいれん)したかと思えば震えながら私と目を合わせ、必死に「行きたくない」と懇願(こんがん)してきた。
その様子に私はあることを察した。
「この場所、知ってるの……?」
見たことがある。
もっと言えばこの場所に何かあることを知っているらしい如月ちゃんにそう尋ねると、彼女は唇を震わせながらこう答えた。
「うん……。最初はここがどこか分からなかったけど今、分かったよ」
「やっぱりここは私達の学校なんだ……」
私達。ということは同級生である恵崎勉、川端堅蔵、そしてもしかしたら私の学校ということだろうか……?
その割にはこの学校のことが一切頭に浮かんでこない私をよそに、如月ちゃんは続ける。
「あの場所はね、放送器具室。行事がある時に体育館のスピーカーを調整したりする場所なんだ……」
「あぁ。マイクとか音楽のボリュームを調整する場所なんだ……でもなんでそんな場所が怖いの?」
「それは……その、1回あそこの覗き窓から落ちそうになって……それ以来あんまり……」
尻すぼみになりながら放送器具室の窓を指差す如月ちゃん。
たしかにステージ天井近くの高さにあるあの場所から落ちそうになったのなら、それはトラウマだろう……でも。
「あんなに鉄格子がはまってるのに?」
見たところ覗き窓にはガッチリと鉄格子がはまっている。
とても落ちるようなスキマでは……と言いかけた私に横から補足が入る。
「私が落ちてから、危ない。って設置されたんだ。以前は無かったから……」
だから落ちたの。とまで言えずに黙る如月ちゃん。
これは悪いことをしたな……と内心深く反省しつつ、私はあえて明るく彼女に提案した。
「そっか……うん、じゃあ如月ちゃんはステージ周辺に何かないか探してくれない?」
「え?」
一瞬、自分が呼ばれたことが分からなかったのだろう。フリーズする如月ちゃん。
それでもすぐに困ったような、照れたような笑顔で言葉を返す。
「そんなかしこまって呼ばなくても……。ハルカでいいよ。私なんか」
モジモジと恥ずかしそうにそっぽを向く彼女に、私は口角を上げて答える。
「じゃ……ハルカ、ステージ周辺探してて。放送器具室を見たら合流するから」
「うん」
そう言い残してステージの方向へ駆けていくハルカ。
それを笑顔で見送ったあと、私はステージ横にあった階段から上へ登って行った。
「うわぁ……」
そこはハルカの言った通り放送機材やブラウン管テレビ、放送原稿などなどが所狭しと詰め込まれた、ミニ放送室のような場所だった。
しばらく使っていないのかかなりホコリっぽかったものの、この場所なら何か重要な情報があるかもしれない。
Q さて、どこを詳しく見る?
A ブラウン管テレビ
B 放送機材
C 放送原稿
A
20:猫又◆Pw:2016/09/25(日) 22:04 チャプター8 〜ルートA〜
私はなんとなく私はブラウン管テレビが気になって、電源を付けてみた。
「…………」
当然というかなんというか、テレビはザーっと雑音を吐くだけで何も映らない。
興味本位で押したものの、無駄だったなぁ……と後悔しつつ、私はテレビを消そうと再びスイッチに手を伸ばした。
――その時だった。
『タス……ケ、て……』
「…え?」
ブラウン管から聞き覚えがある声が響いた。
いやそれは聞き覚えがあるというよりは……。
『助けて……っ。もう。しないから……ッ!』
「ハル……カ?」
先ほど別れたハルカの声だった。
私は急いでもう1つの、ステージ内側に設置された覗き窓からステージを覗き込む。
そこにはテトテトとステージ上を探索しているハルカの姿があった。
特に困った様子ではないし、ましてやこんなブラウン管テレビに声だけ届くはずがない。
「じゃぁ。一体……これは」
突然の怪奇現象に困惑する私。
それに発破をかけるように、付けっぱなしだったテレビからドスの効いた大声が響いた。
『うるせぇぞクソアマがァ!!』
「!?」
そのドスの効いた声。独特の口調。
そこから私は、その声の主が川端堅蔵であることに気が付いた。
急いでブラウン管テレビの前に戻ると、ザザッ・ザザッツとノイズが走る画面にうっすらと、何か映像が映し出されていた。
まず認識できたのは大量の台本と放送機材。
どうやら今、私が居る放送器具室の様子が映し出されているようだった。
次に、学ランを着た大きな男子学生が映し出される。
そしてその学生の手が伸びている先には……セーラー服を着た女子学生が居た。
「なに……これ……」
片手で首を捕まれ。壁際に押さえつけられている女子学生。その口元がわずかに動く。
『やめてよ……川端君……痛いよぉ……っ』
すると男子学生のこぶしが、ハルカの首を握っていない方の手が大きく振り上げられ……そして。
『ガッ!!』――プツン。
大きな打撃音を残して、突然テレビは消えた。
「…………」
あまりのことに、私はブラウン管テレビから1歩、2歩と距離を取り。
そのまま階段を駆け下りて、放送器具室を後にした。
「どうだった?」
「……ッツ!!?」
階段を下りた先には如月春花がいた。
「あ…うん。大丈夫だったよ」
心配そうに見つめる彼女の顔に、先ほど見た映像が重なる……。
『ごめんなさい。ちょっとその場所には行きたく……ないな』
そう言った理由……。今なら痛いほど分かる気がした。
少なくともさっき見た映像と無関係だとは思えない。
どうしよう。何と答えるべきだろうか?
正直に言うか? しかし彼女を傷つけることになるかもしれない。
Q どう答えようか。
A 彼女にとってトラウマだとしても、詳しい話を聞き出す。
B 「ハルカはどうだった!?」と、適当に話を流す。
Bで
22:猫又◆Pw:2016/10/29(土) 20:27 チャプター9 〜ルートB〜
「ハ、ハルカはどうだった?」
やはり人の過去にズカズカと入り込むのは気が引ける。
少々強引だけど、話題を変えた私にハルカは少し自慢げに答える。
「それがね! ステージのスピーチ台を調べてたらこんな物拾ったんだ!」
そう言って差し出した彼女の手には小さなカギが握られていた。
「これは……!」
「たぶんこの校舎内どこかのカギだと思う。小さいし南京錠のカギかな……って、そういえばほかの2人がやけに静……へ?」
自慢げに説明を続けていたハルカの顔が突然曇る。
一体何事かと私も体育館の入口を見て、そしてソレに気が付いた。
「え……」
先ほどまでいた恵崎君が、いない。
開かなかったはずの入口は開け放たれ、不気味な闇が覗いている。
それどころか体育館のどこを見渡しても……。
「川端君もいない……っ!?」
「取り残された……ってことみたいね」
「ど……どうしよ、どうすれば、でも……出ても、だけどこのままじゃ……っ」
ハルカがまたあたふたし始めている。
どうしよう。仲が悪くともせめて全員一緒に動こうと考えていたのに……。
2人を追うべきだろうか? いや、女子2人でむやみに動くのは危険か?
Q どうしよう……。
A すぐさま体育館を出て合流すべきだ。
B もしかしたら助けを呼んでくれるかもしれない。ここで待とう。
Aで
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