「初めまして。」
そう言って、そいつは私の前に現れた。
「………はい?」
「私は貴方の心の中の天使、エリーゼ。」
「……いや、意味分かんないから。天使……?はぁ?」
「エリーゼ!勝手に出ていくな!クズ天使!」
「……今度は何…っ!」
可愛い。こいつは悪魔なんだろうか?
黒く長い髪に赤い目。頭と背中から生えた黒い羽。黒いドレス。いかにもな
服装だが、それを言ったらエリーゼだってそうだ。金髪のショートヘアに緑色の目。黄色い輪っかが頭の上で浮いていて、白のワンピース。ちなみに私は茶髪に青い目。服は今、学校から帰ってきたため、高校のブレザー服。あと私は高二、17歳。
「あら、マリー。クズは酷いじゃないですか!」
「あ?クズはクズだろうが。」
「え…と、話が読めないんだけど…?」
「……僕はお前の中の悪魔、マリーだ。」
「あ…楽井由加里(らくいゆかり)です…。」
「あぁ!?知ってんだよそんなこと!」
なるほど、さすが悪魔。怖いわー。
「ちょっとマリー!ご主人に向かってその口の聞き方はないんじゃないかしら?」
「うっせーよ!僕は僕だ!由加里に仕えてるつもりはねーんだよ!」
「でも…っ!」
エリーゼが何か言おうとしたとき、マリーが目で黙らせた。
「……あーもうっ!僕ら出てきたらもう戻れねーじゃねーか!!」
「………えっ?」
〜続く〜
「………えっ?」
「だからー、僕ら、一回外に出たらもう戻れないんだよ!」
「…え、それすごい困ります。私学校もあるんで。」
「大丈夫。私達の姿はご主人にしか見えませんわ。」
「……あっそ。好きにすれば?」
あーもう。マリーは常識あるけど、エリーゼ常識ないじゃん!ったくもー。
「………な、何か悪いな。」
「いいよ。マリーは謝らなくて。でも、全ての元凶はー……。」
「「お前だろうがーーーーっ!!」」
「あうっ!?」
マリーと私、二人で声を合わせ、二人で同時にエリーゼをフルボッコ。
「はぁ、はぁ………ったくクズ天使!由加里も迷惑してんのが、分かんねーのか!?」
「うぅ………。ご主人、怒ってない…ですよね?」
「んー?何か言ったー?」
「はぅぅ……。マリー…………。」
「寄んな、殺すぞクズ。」
「はいーーーっ!!!」
あぁ、今日は厄日か?でも、ちょっと楽しいかも。
こうして由加里の毎日は、天使エリーゼ、悪魔マリーと出会うことで、面白おかしい毎日となっていくー…。
〜続く〜
「ふぁああ………。」
「おはようございます!ご主人!」
「もー…朝から元気だね、エリーゼ。」
「うふふ。早く支度をなさっては?ご主人。」
「………?」
おかしい。昨日までこいつはこんなお嬢様口調じゃなかったはずだ。ごく普通の敬語口調だったはず…。
「………あんた、何か変なキノコでも食べた?……って!話聞けよ!」
「マリー!起きたらどうなんですの〜?」
すでにこいつは話を聞いておらず、マリーを起こすことに夢中だった。ていうか、悪魔のくせに寝顔は天使じゃないか、マリー。
「………?〜あ〜〜……お前変なキノコでも食ったのか?…てかそのムカつく口調で起こすな!ウゼぇ!!」
ゴッ!マリーが全力でエリーゼを蹴った。
「………〜〜〜〜〜った〜〜。あれ?私はさっきまで何を…。」
なんだ、ショックを与えたら治るのか。つまらん。
「なんだ?由加里、学校行くのか?じゃあついていかなきゃな。」
「え?何で?」
「あー…。僕達みたいな輩は、主人と一定の距離離れると消滅するんだ。もちろん由加里、お前も死ぬ。なんならここでお前を殺して自由になろっかな…?」
「ひっ……!悪魔…あんた悪魔よ!」
「今頃気付いたのか?馬ァァ鹿。てか、もともと僕は悪魔っていう種族じゃないか。」
「……それもそうか。」
「馬ァァ鹿。」
マリーが小声で言った。ちょっとツンなところもあるし僕っ娘(こ)。口は悪いが、なかなかかわいいとこもあるじゃないか。
「それじゃ、行こうか。」
ー学校ー
「おーほっほっ!あら、由加里さん。ごきげんよう。」
「………おはよう。」
「由加里、なんだあいつは。朝のエリーゼくらいウゼぇぞ。」
「あぁ、あの人は瀬良さん…瀬良愛乃(せらあいの)さん。お金持ちで、何かしら気にくわないことがあると、お金で解決しようとする人。」
「あいつの方こそ気にくわねー……。」
〜続く〜
ガッ。
「!?マリー!?何してるの!?」
「あぁ?気にくわねーから蹴っ飛ばしただけだよ。文句あんのか?」
「いや、文句って訳じゃないけど…。」
どうして私は、本気でマリーを怒れないんだろう。
〜続く〜
あぁ、そうか。なぜ本気で怒れないのか、分かった。
私は瀬良さんが……いや、瀬良愛乃が、大嫌いだからだ。それにクラス………ううん、学校中に嫌われてる奴。だから怒れないんだ。
「…………フフ……。」
「……ご主人?…ご主人!!」
目が覚めた。目の前に広がるのは、白い天井。横になっているということは、ここは保健室。なぜここで眠っていたのだろうか。
「……あ、気がついた?」
この声は……、そうか、保健室の先生の声……。
「楽井さん、教室で急に倒れたのよ。」
「教室で…?」
何か…あったっけ?……あ。そういや、何故か急に頭が洗脳されたって感じになって……。
「チッ…。失敗か……。」
「マリー…?」
先生に気味悪がられないように小声で呼んだ。
「せっかくお前を悪に洗脳しようとしたのに……。」
悪に?洗脳?要するに、私が倒れた原因は、マリーだったってこと?
「はぁ…。ご主人、私、心配したんですからね!」
「エリーゼ…。」
これも小声。
「…ご主人、実は、マリーには秘密がありましてー……。」
〜続く〜
キャラクター
楽井由加理(らくいゆかり)
明るい性格。成績は普通、容姿も普通。普通の高校二年生。
エリーゼ
由加理の中の天使。
マリー
由加理の中の悪魔。謎多き存在。
瀬良愛乃
お金持ちの嫌われ者。
マリーの秘密……それは、マリーが悪魔の中で最強だということ。悪魔の中で最強というのは、この世界の全てを支配できるほどの能力を持った存在。
マリー自身もムカついている瀬良愛乃を消す為に、私にとりついたのだという。ちなみにエリーゼは天使の中で、比較的上でも下でもないらしい。
「マリーにそんな秘密があったなんて……。あれ?マリーは?」
「居ますよ、そこに。でも、今はご主人に見えないように姿を消していますね。」
「そう…。」
こんな秘密を知ってしまったら、何となくマリーと接するのもぎこちなくなってしまう……。
〜続く〜
【お詫び】
前回のキャラ紹介で瀬良愛乃の読みを書いていませんでした。すみません。なので今、改めて瀬良愛乃の分を書かせて頂きます。
瀬良愛乃(せらあいの)
お金持ちの嫌われ者。
「はっ…はぁ……。」
マリーが居ない。そろそろ暗くなるというのに。そのとき、マリーの言葉を思い出した。
「僕達みたいな輩は、主人と一定の距離離れると死ぬ。もちろん由加里、お前もだ。」
私は生きてる。てことは、まだマリーは近くに居る。
「エリーゼ!一定の距離ってどのくらい?」
「えぇと…二kmくらいです!」
二kmは少しキツいな。でも、マリーの為だ!
ー1時間後ー
「見つけた!マリー!!」
「……。」
「!」
振り向いたマリーは…………、
返り血を浴びて、絶望しきった顔で、
冷たい目をして…………、
泣いていた。
「マ…リー……?その血…どうしたの?」
口パクだったが、何を言っているかははっきりと分かった。
「人を殺した。食べた。」
「……………!」
私は、ゾッとした。次の言葉を聞いてから。
「次は由加里、お前の番だ。」
そう言って、マリーはこちらにゆっくりと近づいてくる。
「いや…来ないで……いやっ……!」
ー数日後ー
「次のニュースです。N県S市で、何かに少女が食べられるという事件が起きました。
えー、食べられたのは、市内の高校に通う、楽井由加里さん。17歳です。
警察では、猛獣に食べられたのではないかと、慎重に調査を進めー……。」
「次はお前、お前の番だ。」
〜bad end……〜
感想、よろしくお願いします。
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