今年の雪は、いつもより冷たかった。
あの人が、いないからかな。
「あれっ、無い……どこ……?」
私が学校で家の鍵をなくしたとき。
ぶっきらぼうな口調で、
「はい」
って鍵を渡してくれた。
「そこにあったんだ」
って図書室の前を指差してたけど、そこには今日、行ってないよ。
多分、頑張って探してくれたんだ。
きっと、照れてるんだと思って、私はそのことを言わなかった。
「ありがとう」
お礼だけ言って、その日は家に帰った。
『今年の冬は、例年より寒さが厳しくなる見込みです』
朝、手をこすり合わせながらリビングに向かうと、すでに私以外の家族は全員いた。
「寒〜」
去年はこたつがあったのに今年1回使ったらぶっ壊れて、そのまま……。
こたつがない冬は厳しい。
お母さんは気を使って、毎日スープを作ってくれる。
器を顔まで上げて、湯気で温まった。
ん〜、暖かい。
朝食を食べたあと寒い階段を上がって部屋に入り、急いで制服に着替えた。
冷えた生地が、私の肌に触れる。
ベッドに入って毛布の中にうずくまる。
あぁ〜、外行きたくないなぁ。