____君という存在から開放されることが、
僕にとっての、最後の手段なんだ。
* Prologue *
「さよならなの?」
そう聞く彼女の珊瑚色の頬に、つぅー……と涙が流れた。
それは、優しい月の光に反射して、悲しいくらいに輝いた。
「うん」
僕は短く返事をして、周りを囲むビル群を見つめた。
航空障害灯が、じっと僕らを照らしている。
「ばいばい……」
彼女が、僕の手をすっと振りほどく。
僕は、彼女を見ることもできなかった。
ただただ、お互いに、泣いていた。
1 mail
伶那から、初メールが来た。
『悠、部活お疲れ。次の試合、絶対見に行くから練習頑張って!』
僕は直ぐ様返信を打とうと自分の部屋に直行した。
伶那はガラケーなので、ラインのようにスタンプを使えないのが不便だけれど、それはそれでいいと思う。
「あ、り、が、と、う、 れ、な、も、ぶ、か、つ、」
ハッ!
僕はメールを打つ手を止めた。
何をしている。たかが彼女。僕ももう中3じゃないか。
愛してるの一つや二つ、言えなくてどうするんだ。
僕は必死に書いた文章を消し、代わりに
『伶那、愛してるよ。お互い部活がんばろう。』
と書いた。
そ、そ、そおおおしn……。
無理だ。
僕は恥ずかしさのあまり、クッションを顔に押し付けた。
中3のまだ子供な僕に、こんなキザなセリフは似合わない。
書いては消し、書いては消し、……。
結局、送ったのはこれだ。
『ありがとう。伶那も部活頑張れ(^O^)』
最初書こうとしてたのと同じ。