私の限られた少しの時間の中で
いちばんキラキラした日々をくれたキミ。
後ろばかり向いてた私に前を向かせてくれたキミ。
そんなキミのために今日も綺麗な青空を描く。
「もうすぐ着くよ」
車に揺られて何時間経っただろうか。
ビルばかりだった外の景色はいつのまにか
建物1つない自然に包まれた景色へ姿を変えていた。
「体調は大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
お母さんに問われ笑顔で答える。
「着いたよ、ここだよ」
小さな家の前に車が止まった。
「ここが今日から住む家?」
「そうだよ、今日からここがお父さん達の家だよ」
車から降りて1通り荷物を運び終わると
もう夜だった。
自分の部屋で気付いたら眠りについていた。
翌朝、朝日の眩しさで目が覚める。
「おはよう」
「葉月おはよう」
リビングへ行くとお母さんが朝食を作っていた。
「早いけど今日から新しい学校だよ」
「うん、知ってる」
「転校早々遅刻しないように早く準備しなさい」
そう言われて私は着替えて肩したくらいの栗色の髪にアイロンをあててうっすらメイクをした。
「葉月、制服似合ってるじゃないか」
「お父さんも作業着似合ってる」
私はお父さんの見慣れない作業着姿に
フッと笑いをこぼした。
「お父さんも葉月も早くご飯食べて行っておいで」
家族で揃ってご飯を食べたあと学校へ向かった。
前の学校は自転車で行ってたから徒歩通学って新鮮。
少し歩いていると子猫を見つけた。
「可愛いかよ…」
やばい、可愛すぎる。
ウルウルとした大きな瞳で私を見つめてくる。
私はついつい近くにあった猫じゃらしを使って子猫と遊んでいた。
「…あ、やばい学校!」
携帯で時間を確認すると
先生との約束の時間を30分も過ぎていた。
私は急いで学校へと向かった。
「すみません、遅くなりました」
「もうとっくにホームルーム終わってしもたよ」
クセのあるイントネーションの方言で叱られた。
「とりあえず教室行こな」
そして先生の後ろをついていった。
ガラガラーと年季の入った木製の扉を開けると
想像していたより少し多い生徒が休み時間だからか
走り回ったり雑談していたりした。
「みんな、転校生きたよ!」
先生がそう言うと騒がしかった今日が静かになった。
「この子が転校生、はい自己紹介は?」
「河西葉月です」
私がそう言うと何人かの生徒が言った。
「転校早々遅刻するしどんなおてんば娘か思たらヤンキーやん!」
「金髪やしけばいしスカート短くない?!」
それに便乗した生徒がどんどん騒ぎ立てだした。
「河西さんと仲良くしてあげてな!」
先生がそう言って教室を出ていく。
えっと、私はどうすればいいのかな?
迷っていると何人かの女の子が近寄ってきた。
「葉月ちゃんの席はあそこやよ!」
「あ、ありがとうございます」
指を指された席に座ると居心地が悪くてとりあえず携帯を取り出した。
そうこうしているとトントンと肩を叩かれた。
「どっから来たん?」
「え、神奈川です」
「ほうなんや、はむきちゃんよろしくな!」
…え、いまなんて言った?
「は?」
「ん?どしたん?」
「えっと葉月です!」
「え、さっきはむきって聞こえたんやけど!」
すごい驚いたように言う姿に思わず笑ってしまう。
「笑わんでや!」
「すみません、だってはむって」
「ほなら、俺これからはむって呼ぶけん!
俺の名前は 関口光太やけん光太って呼んでな!」
これが光太との出会いだった。