かけもっちゃった。完全フィクション、てか勝手な想像
花最 純菜 カサイ ジュンナ (26)
教師3年目。今年薊(あざみ)中学校へ赴任してきた。理科担当。独身。
中島 望 ナカジマ ノゾミ (29)
教師5年目。二年前薊中学校へきた。国語担当。独身。
赤城 優 アカギ ユウ (24)
新任教師。社会担当。独身。
高見 賢人 タカミ ケント (44)
ベテラン。薊中学校に8年程勤めている。数学担当。既婚。
野田 桜子 ノダ サクラコ (34)
4年前薊中学校へきた。英語担当。既婚。
高須 龍雅 タカス リュウガ (29)
教師5年目。昨年薊中学校へきた。体育担当。独身。
全員教室に戻ってもまだ時間はかなりあり。掃除をし、帰りの会をし、先生の話。はもういいだろう。…でも15分もあるので、少ししゃべらせてもらう。
「改めて、体育祭お疲れ様でした。初めてで色々大変だったけど、楽しかったかな。…先生はすごくすごく楽しい時間を過ごせました。で、まぁ結果も大事かもしれないけど、1番大事なのは、皆がどれだけ頑張って、成長できたかだと思います。…それで今日、各クラスで3人、すごく頑張ってた、成長した人を選ぶんですよ」
そう、学年でのきまりごと。もともとはさらっと説明するだけのつもりだったが暇という理由だけでながめにとった。
皆は疲れたからか、もうあまり話を聞いていない様子だ。
「…それで、先生が思うに皆の中でも特に頑張ってたのが、、ゆめかさん、大成くん、ひなたさんなんだけど……皆どうかな?」
すると、ひなたの親友の美穂やゆめかの親友の唯奈を中心に、拍手が起こる。
当の本人たちの様子はというと、ゆめかとひなたは嬉しそうに泣いているが、大成は周りの男子たちにいじられて笑っている。まったくこんな呑気でも学級委員やるんだから、大したもんだ。
「それではその3人は、挨拶のあと先生のところに来てください。…もう言うことないわ、、
はいじゃあ帰りまーす」
「起立、気を付け、帰りの挨拶をします」
「「「「はい」」」」
「さようなら!!」
「「「「さようなら!!!」」」」
「はいさようなら〜!」
体育祭良かったですね〜♪
素晴らしいです!
>>46
ありがとうございます。!
体育祭も終わり、一段落。
…かと思いきや、1年生は部活の本入部。
スッと入って続けばいいが、辞められたり転部されると、諸々の手続きがかなり面倒。
そして私は「吹奏楽部の副顧問」であるにも関わらず、ほとんど部活に顔を出していなかった。理由は特にないけど、顧問の高橋先生も特に嫌な顔はしないので、その気になったら行く、そいうスタイルだ。まぁ、呼ばれたらその気にならなくても行くんだけど。
「花最先生、来週から1年生の教育係、よろしくお願いします」
「は、はぁ。教育係…ですか。了解です」
薊中吹奏楽部に来て約1ヶ月半。やっと、気分で欠席やら遅刻やらできない立場になったようだ。
高橋先生にもらった、1年生にやらせるという呼吸法のメモをできるだけ丁寧にたたんでポケットにしまった。そしてフッと息を吸い込む。真っ青な空の色と爽やかな空気が体に溶けこんでいく。
「あ〜、いい天気」
そつ呟きながら、職員室へ戻った。
「今日の午後練、2,3年は合奏の用意、1年は第二理科室、花最先生と練習します。それぞれ必要な準備をしてください」
「「「ハイ!!」」」
てきぱきと指示を出していく高橋先生。薊中の吹部は高橋先生が7年間守り続けてきたという。
しかし来年あたり異動になるのではという噂も飛んでいる。そしたら次は花最先生ね、と野田先生には言われたが、幽霊顧問になりかけの私にそんな大役は、とてもじゃないけど務められないと思う。
「花最先生」
「はい」
「今日の午後は第二理科室でこの前渡した呼吸を全員でやるのと、腹筋30。終わった人から楽器で個人練お願いします」
「わかりました」
教育係初仕事を任された。ちょっとドキドキ。でも楽しみ。早く授業終わらないかしら、、
「お願いします!」
「「「お願いします!!」」」
吹奏楽部に入った1年生は16人。3組では、美穂、ひなた、菜々子の3人がいる。
「じゃあまず呼吸の練習しまーす、寝転が……」
ザワザワ…
きっとみんなん?と思っただろう。
理科室の机は動かせないのだから。
「れませんね、はい!んー、、どうしようねぇ〜…」
しょっぱなからミス。てかこれ、理科室とか言った高橋先生が悪くない!?と心の奥で思いながら、渋々合奏中の高橋先生のもとへいく。
♪〜〜
「高橋先生〜…」
ピタッと演奏がとまり、こちらに視線が集まる。
「理科室机動かないんで、被服でも大丈夫ですかね」
………
「ん〜…、今日は被服は家庭科部がいるから、2階の渡り廊下で」
こんな急な質問にも一瞬で対応する高橋先生が、だんだんかっこよくみえてくる。
「みなさーん、2階の渡り廊下集合〜」
「「「ハイ」」」
………
なかなか全員揃わない。どうしたのかと理科室を覗きにいくと、理科室の奥の方から声が聞こえてきた。
「……よね、うん、………」
「あー…………も………よね」
「あなたたち何してんの」
この子たちは…1組の莉佳さんと実有さん、そして2組の晴菜さん、だと思う。記憶は曖昧なんだけど。
「あ…なんか、ささの譜面台が閉じなくなっちゃって」
ささ…は、佐々木実有か?…それはさておき、とりあえず譜面台を見てみる。
ガチャガチャ
「う〜ん、動かんね。とりあえずそこ2人は向こうにいっといで」
これはなかなか難しい。。上げ下げの途中にも色々ひっかかってまったく動かない。
「実有さん。これって先輩の?」
恐る恐る聞いてみる。
「いや、昔おねえちゃんが使ってたやつです」
ホッ。それならまだマシ。
「じゃ、それは家か後で直して、とりあえず上行こう」
♪________________
1年リーダーの中根亜心がやってくれていた。
「ありがとね。自分のほう戻っていいよ」
「はい」
やっと始められるよ。…という頃には皆もう疲れた顔をしていた。
亜心が、ちょっと厳しめに見ておいてくれたのだろう。非常に助かる。
「それでは〜、さっきの続き〜吸うーーー……せーの」
♪________________
やばい。こーゆーときちょっと苦しそうな誰かをいじめたくなる。Sの習性だ。
「松井ひなた目が死んでる!!w」
ちょっとひなたをいじめてみる。
フルートになった彼女はその可愛らしいルックスと天然な性格で、先輩から好かれているとの噂だ。だが今は、死んだ魚のような目をしている。
「みっほーりーん!!元気かぁ!?」
もう見るからに元気ではない美穂だが、私に小さく笑ってくれた。ちなみにトロンボーンになったらしい。
「菜々ちゃん音聞こえんわ〜!!」
大嘘。誰の音よりも聞こえるトランペット。でもいじりたいからいじる。
♪________________
「ふぅー。お疲れ様でーす。最後、腹筋30回した人から個人練習です、片付けは20分から」
「今日はどうも」
部活が終わるといつも口数が減ってクールな高橋先生に声をかけられる。
「個人メモあります?」
「あーはい」
個人メモというのは、合奏に参加しない、つまり高橋先生の目が届かないところで練習する生徒がいるときに、副顧問が一人ひとりの取り組みや新発見した性格などを書き込むものだ。全員分はかなり大変だったが、もちろん書き終えている。
「ありがとうございます…………中根亜心が仕切ったのね…ふんふん…了解です」
その個人メモを見てどうしているのかは知らないが、書き方に誤りがないと分かり、とりあえずひと安心。
2回目以降はきっとスムーズにやれるという、自信が湧いてきた。
そして何度か練習を重ねるうちに、吹奏楽部1年生との謎の絆が生まれてしまった。
別にいやという訳ではないが、若干めんどくさい。
「花最先生〜ちょっと…」
「え、はいぃ〜」
最近これ多すぎ、ガチな相談。
私に心を許してくれた証拠なのだろうけど、どうにもならない相談をしてくるのは、本当にやめてほしい。
解決できなかったとき、悪者になるのは私だから。
「う〜ん、それは向こうが…………」
「ウゥッ…ですね………そうですよね」
あーもう!また泣かせてしまった!!
励ましてるつもりだが、解決するつもりだが、よく泣かせてしまう。
「ウッありがとうございましたズズッ…ちょっとスッキリしました」
「うん!じゃあ明日から部活来れそう?」
「…はい」
あーら。ならよかった。
時々なぜ泣いてたのか分からない子、すごく不安になるから言ってくれると助かる。
下校前の謎の相談タイムを終え、職員室に戻ると、高橋先生から声がかかる。
「花最先生、最近大変そうですね〜」
「あ、まぁ…はい」
「そんなとこ申し訳ないけど、個人メモお願いします」
「あ、あぁ、これです」
なんだ、個人メモの取り立てかい。
珍しく同情する感じな雰囲気だったから、驚いたではないか。
私が驚いたのには気づかず、高橋先生は3年部の自席へ戻っていった。
7月も半ば。
運動部は夏の大会、終わったところは1、2年での新体制が始まったようだ。
そんなこんなでもうすぐ夏休み。
課題出したりしおり作ったり…2学期制だから、期末テストの範囲も出す。教師にとってはとても大変な時期。
生徒の下校後も、職員室は人で溢れている。
「花最先生、3組の課題チェックカード置いときますね」
「あ、はいありがとうございます」
うっかり者の私にとって親切で頼れる先生方はまさに救世主。
忘れてたことを思い出させてくれる。
「明日の集会何話します〜?」
う。こちらもまた救世主。だが…
「、集会のこと忘れてました…え、何話そ…………」
やはり大切なところが抜けている。
とか思いながら頭を抱えて黙りこむ私を笑いながら見ている中島先生。
それでも優しい中島先生は、笑いながらも私にヒントをくれた。
「私は課題ネタとテキトーに赤城先生でもいじっときますよ!」
「え!僕ですか?えぇ?」
予想通り、隣でパソコンとにらめっこしていた赤城先生が反応する。
このゆるっとした職員室の雰囲気、好き。
よくわからないけど謎の安心感。
そんなことを思いながら夏休み前の学級通信をかきはじめる。
「お疲れ様でしたー」
職員室を出る頃には、空は暗く染まり、時計の針は9時を指していた。
「ただいまぁ〜」
家につくともう9時半をまわり、両親はリビングでテレビを見ていた。
「あらおかえり〜、ご飯そっちね」
「はーい、そういえば凜菜は?」
凜菜は私の妹。ピチピチの21歳。
「あの子ならお昼、彼氏の家に住むって出てったわ」
「えええっ!!!」
よくやったぞ、我が妹。ついに独身実家暮らし卒業か!
でもさ………
26年生きてきて男と同棲なんて私、したことないし、妹に先越されるとかありえない!!!
妹を祝福する気持ちと姉としてのプライドが混ざりあって何とも複雑な気分。
「いただきます」
食事中もお風呂の中も、凜菜のことばかり考えていてもう何をしたかあまり覚えていない。
気づいたら眠りについていた。
「今から学年集会を始めまーす」
「「「ハイ」」」
「お願いします!」
「「「お願いします」」」
ついに夏休み前日の学年集会。
我が妹のことばかり考えていたら話のネタを考えるのを忘れていた。
課題等の説明を終えたあと、私たちはくじ引きで順番を決め、一人ずつ話す。
「せーのっ」
わ。やった。3番。ちょうど中間とはなんと言う幸運。
隣を見ると1番になった高須先生が「くそー!」と悔しがっている。ふふ。
「それでは1番高須先生お願いします」
高見先生の進行に合わせ次々進んでいく。
「続いて〜3番…花最先生お願いします」
おー。ついに私の番ですか!マイクを受け取り前にたつ。この緊張はなかなか慣れない。
「えっっっと、もうすぐ夏休みですね、うん」
アホ丸出しの第一声に笑いが。。ここで笑いが起きるのは悔しい。
「真面目な話してもみんな眠くなると思うから〜…何話そ」
あ。妹の話しよ。素晴らしいネタじゃん!
「私、実は姉と妹がいるんですけど…………
…なんですよ!兄弟がいる皆さん、気をつけてくださいね〜」
で、時計を見るとあと2分くらい余る。これは名言コーナーしかない。
「ちょっと時間余ったんで、私が大好きな○○○○くんの名言。『逃げることは簡単だよ。大切なのは逃げないこと。』つまり!この夏休み、部活とか課題とか、逃げたくなることたくさんあると思います。でも、そこで逃げないのが大切ってことなんです、多分。私の大好きな○○○○くんが言ってるんだから、間違いないです!!…では良い夏休みを!」
強引ですが。無事終わった。
これ、私にとっては一大イベントだったけど、他の先生方は高須先生を除いてはみんな結構普通にしゃべってて驚く。私もトーク力を磨かねば。
なんて思ってるうちに集会は終了。教室に帰り給食を食べ、生徒は下校。
これからしばらくこの子たちと会えないのか…と思うと、静まり帰った教室が少し寂しく感じた。
ちなみに、>>55で登場した名言はHey!Say!JUMPの伊野尾慧くんのです!
57:和菜◆h.:2017/08/23(水) 22:29 そして夏休みが始まった。
最初吹部はコンクールに向けて1日練が多かったが、私は出張や日直でほぼ欠席。唯一参加したのはコンクール前日練習。の、最後。
日直だったが、高橋先生が「前日くらい一緒に…」
といってくださったおかげで、一応最後だけいられることになった。
(そして中島先生が犠牲になったのは申し訳ないと思っている)
「絶対県大会いくぞおー!」
「おーー!!」
部長さんのかけ声に合わせて円陣。
明日私は一緒にステージには出られないので、舞台袖で静かに参戦。でもとても楽しみ!!
そしてコンクール当日。
私は会場で仕事があるので学校には行かない。
ホールの受付へ行き、係員の腕章を受け取りつけていると、誰かに声をかけられた。
「すいません、薊中の花最先生ですよね?」
「…はい」
「ですよね!純菜先生!!中田美優ですよ!覚えてますか…?」
あ、あぁ。中田先生。思い出した。
「あー!お久しぶりです〜、今は瀬野中でしたっけ?」
「そうですそうです!よかった覚えてくれてて!」
何て話していたら「進行係の先生こちらに〜」と呼ばれていたので軽く挨拶をし別れた。
そして順調にコンクールは進み、ついに午後の部、出演順19番。薊中学校の番だ。
舞台袖から椅子の過不足を確かめていると、
見慣れた顔がたくさんあってなぜか少し安心した。
高橋先生がokの合図をして、こっちまで緊張してきた。
「出演順、19番、薊中学校。課題曲……………」
パチパチパチ
この機械的なアナウンスの声とまばらな拍手がまた、緊張を高める。
高橋先生が指揮棒をあげ、皆が構える。
そして奏でられたその音は、今までに聞いたことのないくらい綺麗な音だった。
聞き覚えのあるメロディ。でもそれは私が最後に聞いたときよりずっと綺麗で繊細で、ありえないくらい鳥肌がたった。
課題曲が終わり、自由曲。その頃には最初のような緊張はなく、皆楽しそうな表情を浮かべていた。
そして自由曲も最後、楽しく元気にという高橋先生の指示をしっかり守り、演奏は終わった。
パチパチパチパチ
盛大な拍手に見守られ、礼をする高橋先生は、とてもかっこよかった。
そして演奏を終えた生徒たちが舞台袖へ向かってくる。
「お疲れ様」と声をかけながらも次の学校のため椅子と譜面台を減らしたり増やしたり。
中には涙を流す子もいて、もっとしっかり声をかけたかったが、それはできなかった。
それからあっという間にすべての演奏が終わり、結果発表。
私はというと、特にもう仕事もないので生徒たちと観客席に座っている。
腕章がなければそこらへんの保護者のようだ。
「それでは、結果発表に移りたいとおもいます。」
司会者のそのひと声で会場が静まりかえる。
「出演順1番、瀬野中学校、A、金……」
「「「「「キャーー!!!」」」」」
おっ。中田先生の学校、金だったみたい。
「………………………出演順19番、薊中学校、B、銀………」
終わり。そう、これで終わり。
3年生はもちろん泣いている。
そして2年生は焦った様子で先輩をチラチラ見ている。
それを私は慰めるわけでもなく、励ますでもなく、ただただ見ている。
そんなこんなで結果発表も終わり、閉会式も終わり。
薊中はロビーの端に集まり、話をしていた。
「お疲れ様でした、この結果は正直私も満足いかなくて、…………」
高橋先生の話す姿はいつでも活気と自信に満ちている。しかし今日は少し悲しそうだった。
「でも、本当にお疲れ様でした。先生はとても楽しかったです、ありがとうございました」
パチパチパチパチ
深く頭を下げた高橋先生に拍手が起こる。
少し照れた高橋先生は私のほうを見てきた。
「じゃあ、花最先生、何かあります?」
いやー、ここで話しちゃうと、明日のネタ、なくなるんだよねぇ。うーん。
「とりあえずお疲れ様でした。私は舞台袖で聴かしてもらったんですけど、もう、めっちゃ感動しました!最高でした!最高の演奏ありがとうございました!もう、言いたいことは色々あるんで、明日言わせてもらいます!では」
うわー逃げた私。まぁいいけど。
てか、私は明日の自分をいじめたかったのか…?
何て思っていたら、高橋先生からありえないことを聞かされた。
「花最先生、、あの……………」
「え、はい、わかりました………」
え。嘘やん。てかなんで今このタイミング?!
今日はほんっと、心の落ち着くときがない。
それからすぐに解散し、私は会場の片付けをしたあと学校へ行くか少し迷ったが、そのまま家に帰った。
高橋先生には悪いけど、その件については少しひとりで考えたかった。
家につくと8時。思ったより早く帰れた。
「ただいまぁ〜」
「おかえり、あんた疲れてんねw」
声だけで疲れていると分かってしまうお母さんはすごい、なんて思いながら生ぬるくなったごはんと味噌汁をレンジで温める。
そして静かに食べ、静かにお風呂へ向かう。
「ふあぁー、気持ちぃ〜」
疲れた身体にあつーいお湯は最高。
しかもぬるめのシャワーで洗ってからのあつーいお湯ね。
でもそんな疲れた身体と脳に私はさらに色々考えさせてみる。
「んー…どうしよ」
いきなり『指揮やってみない?』なんて言われてもねぇ…………
しかも次の舞台9月とか早すぎ!
なんせ私には黒歴史もあるし?………
とか考えてたら、のぼせてしまった。ふらふらする体を無理やり起こし、浴室から出る。
着替えてリビングに出ると、母が扇風機をこちらに向けてくれた。
お母さん、私のこと全部わかってんじゃん、すご。
でも今の私はそれどころではない。
早急に何とかしなければならないことがある。
扇風機を向けてくれたのに申し訳ないが、私は自室へいきベッドに潜り込んだ。
読ませていただきました!
教師目線なのが新しい‼
3組みんないい子ですね。
みんなの成長が丁寧に描かれていて、とても良いです‼
>>60
いやぁ。ありがとうございますッ
文才のなさには我ながら毎回驚きます、汗
生徒だけど教師目線でこれからも頑張ります。
指揮のこと考えてたら、もう日が昇り始めていた。
、というのはさすがに言いすぎたが、かなりの間そのことを考えていた。
「おはよーございまーす」
「おはようございます〜」
学校につくと、高橋先生がまだ来ていないことを確認して、机に突っ伏す。
高橋先生がいたらきっと、話しかけてくるから。
「ア”ア”ア”ア”ア”ッ」
ここが職員室なのも忘れて叫んでしまった。すると、
「き花最先生どうしたんですか?」
恐れていた人物だ。。。
「あ、もしかして…指揮のこt「「違いますッ!大丈夫です!ほんと、何もないです!!!!」
何事かと思うほど不自然な行動をしてしまった。あらま。
これはまずい、と思っていると時計は7:55を指していた。
部活は8時からなので、渋々高橋先生と共に職員室を出る。
…………
「花最先生」
その沈黙を最初に破ったのは高橋先生のほうで、やはりさっきのことを言われるだろうと覚悟したそのとき。
「今日何話します?」
えっ。しょーーーもな。悪いけど、そんなことこの私でも考えてきましたよ?!
意外にも無計画な高橋先生に思わず笑ってしまう。
「んまぁ、てきとーに」
「いやテキトーとかいって考えてきたんでしょ!!」
なんて話しているうち、到着。
部屋に入ると皆いつもと変わらない笑顔で挨拶をしてくれた。
なんか「花最先生」の前に「き」が入ってるごめんなさい
64:和菜◆h.:2017/08/29(火) 23:46 諸々の片付けや引き継ぎ等が終わり、3年生の挨拶も終わり。
「じゃあ次、花最先生お願いします」
「はい〜」
うわー。慣れないね。このメンバーのまえで話すのは。
「えっとまず…コンクールお疲れ様でした!」
なるべく明るく話してる。つもり。
3年生は自分の挨拶の時点で感極まってる子多数だし。
「今年いきなりやって来た私が『あぁ、すごい!』って思えたってことは、きっと誰が見てもすごいんです。あなたたちは。だから……………」
ふえぇ〜、もう疲れた!
終わっていいですか?と高橋先生に目で合図すると、小さく頷いてくれたので、終わることにした。
「じゃ、次はお待ちかね、高橋先生お願いしま〜す」
おお。やっぱ高橋先生はオーラが違う。なんか、ね?
そして高橋先生の話が終わると、3年生からプレゼントをもらった。
そして掃除、点呼、さようなら。
これで3年生は引退。
で、プレゼントの話に戻ると。
某キャラクターのぬいぐるみに寄せ書きしてあるんだけど……
私、絶対書くことなかったよねw
3年生なんて、全然関わってないし!
でも、みんな色々書いてくれてて嬉しい。。
なんて思ってたら高橋先生が、
「花最先生〜、指揮の…………」
今?!何で今?!
「あ、はい…まぁ、せっかくなんでやらせていただきます………」
…バカ?え?嘘!!!!
言ってから口元を抑えるも、もう遅い。
「そっかー!じゃ、曲はまた決まったら言いますね〜」
高橋先生はルンルンで去っていった。
が、私は今、死んだ魚のような目をしているだろう。
案の定、近くにいた菜々子と亜子がこちらをチラチラと見ていた。
「あ、どうした?」
「どうした?って、先生が呼んだんじゃないですか!!」
…あ、そうだった。
曲の候補を1年生からも出してって高橋先生に頼まれて、とりあえず学年代表の亜子に話しておこうと思って呼んだんだった。
「ごめんごめん!あの、文化祭の曲のことなんだけど…………」
「了解です!じゃ、菜々子、いこー」
「うん!」
え、このふたりってなかなか見ないペアだけど、仲良さげ?
「菜々ちゃんと亜子さんってそんな仲良かった?」
「まぁ、最近です!てか、菜々ちゃんって、w」
「ほぉー、あ、菜々ちゃんいじめたら許さないからね!ww」
「いやいや、先生こそいじめないでくださいよ?!」
私と騒ぐ亜子と、それを静かに見てる菜々子。
やっぱ菜々子と亜子って、正反対ね。
「はいはーい、もうかえりましょーうw」
「わ!先生逃げるんですか!!w」
「いやいや、帰らせるのが仕事w」
「えぇ!wまぁいいや、さようなら〜w
じゃ、菜々子いこー!w」
「うんw、、さようならw」
自由奔放亜子に振り回されながらも、楽しそうな菜々子の顔を見て、すこしほっとした。
…のもつかの間。職員室に戻ると、高橋先生が話しかけてきた。
「花最先生〜!」
そう話しかけてきた高橋先生は……
妙にテンション高いんだけど…?
「はい」
「もーっ、またクールですね!!w
あの〜文化祭の曲、他にもイベントあるから4曲やろうと思ってるんですけど〜、そのうち1つ、ポ○モンの曲にしてもいいですか〜?ニヤニヤ」
やっぱ、いつもよりテンション高い?何?え?
えへへと笑う高橋先生を不思議に思っていたが、すぐに謎は解けた。
そういえば高橋先生は、ポケモン大好きだった。
職員室の机にも自分の車にも、高橋先生のまわりはポ○モンだらけ。
で、文化祭も自分色に染めたい、と( なんか嫌味みたいかw
「あー、いいんじゃないですか?」
「おー!!ありがとうございます!じゃあどの楽譜買おうかな〜♪」
何この温度差。。まぁいいや。
他3曲はみんなで決めるらしいし。別にポ○モン嫌いじゃないし。w
…
グウウウッ
腹時計が鳴ったので時計を見るともう1時。いったい何をしていたのだろう。
「お先に失礼しまーす、お疲れ様でしたー」
そして私はコンビニに寄っておにぎりを食べながら家に帰った。
夏休みもあと少し。
お盆明け最初の部活が終わり、職員室に戻ると緊張感満載の空気。
何事かと職員室を見渡してみると、どうやら3年生の副担の三田先生と、2年2組の担任の田中先生がにらみあって(?)いる。
二人の共通点がなさすぎることとか、謎が多すぎて、首をかしげていると、中島先生がこっそり教えてくれた。
「部活の予定表に間違いがあったらしくて、田中先生が出したのに、三田先生が責任押し付けられてんの」
お気の毒にね〜、とか言いながらもそれを静かに眺める中島先生はどこか嬉しそうだ。
っていうか、お二人は同じ部活の顧問だったのね?!初耳!!何部?
これまで関わりを持たなさすぎて何も記憶に入っていなかった。。
「あの…お二人は何部の顧問…でしたっけ?」
恐る恐る聞くと、中島先生は何も知らない私に驚きを隠せないようだったが、「弓道ですよ〜」と教えてくれた。
確かに、ここの弓道部は強いし、いろんな大会出てるみたいだし、予定間違えたらかなり大変ね。
なんて私がひとりで納得してる間も、なかなか話は進まず。
そしてどちらも口を開かないまま5分経過。
最初は面白そうに見ていた中島先生ももう飽きたらしく、仕事を始めている。
私も仕事しよ、そう思ったとき_
「…先…が…………いですかッ」
三田先生が職員室の沈黙をやぶった。
「は?」
しかしその声は小さすぎて田中先生に届かず、田中先生は三田先生を睨んだまま聞き返す。
「た、田中先生がッ……予定表つくったじゃないですか…」
お!!よくいった!!、と思うのと同時に、田中先生の表情が鬼のように……
は、ならなかった。
いつの間にか中島先生も見ていたらしく、少しがっかりしている。
「ふはっw」
突然の笑い声に、三田先生は、というか私も、中島先生も、驚く。
「いや〜、よく言ったよね。三田先生すごいよ!」
「……え?」
「ドッキリだよドッキリ!お疲れ様」
そう田中先生が声をかけ、周りの先生が笑い出すと、えーっ!と頭を抱え、その場に座り込む三田先生。
そして誰より驚いてるのが私と中島先生。
「え?え?中島先生知ってました?」
「いや全然!」
「でも他の先生方知ってるみたいですよね?!」
「んー私が来たときにはもう始まってたから…」
「え!」
なぜかここだけテレビにありがちな『もし修羅場に遭遇したらどうする?!』みたいな雰囲気になってしまった。
が三田先生と田中先生はもう笑いあっている。
まぁ何もなかったなら良かった良かった。
今日も仲良く平和(?)な職員室でした。
「……………ってことだから、明日から合奏お願いしますねッ!」
…はい?
高橋先生は鬼ですか。
今は午後7時。お盆1週間前というわけでためた仕事をやってたら、まさかこんな悲劇が起こるとは。
「はぁ〜、、」
明日午前10時までに、35億の(笑)楽譜を全パート分譜読みし、明日やる範囲を決め、注意する点を決め………………
そして、35億というと莫大な量の楽譜が思い出されるので、きちんとDirty Workと言うことにする。
ってそれはどうでもいいんだけど!
譜読みとか何年ぶりでト音とかへ音とか音楽の記号とかさっぱり。
分からないところはいちいちggってメモして、とやっているうちにもう学校閉める時間。
こんな最後まで残ったことなければ、それでいて仕事が終わらなかったことなんて、絶対ない。
週番の先生に軽く挨拶して急いで帰り、家でも譜読みを進める。
そして明日の範囲とか、色々決めて、全て終わるともう日付が変わっていた。
それでもまだクラスの仕事が残っている自分の仕事の効率の悪さに驚き、落ち込んでいると妹が部屋に入ってきた。
「ほぉ〜教師に夏休みはないのか!そりゃ大変!!!」
「ふぇっ、凜菜!久しぶり〜」
「うん、久しぶり〜」
なんて普通にいってるが確か凜菜、ちょっと前から彼氏と同棲したとか言ってなかった?
「そいうえば、あの彼s「別れた!」
そんな食いぎみって、絶対振ったでしょw
「なぜ!」
「まー、合わねーなって思って!」
めっちゃ冷めてる。w
これが私の妹か。。。。
過去を引きずりまくる姉とは大違いやな。
「お姉ちゃんは?」
「はぁっ?私に男、ねぇ…………」
「なに、その顔、いるの?」
「残念ながら、いない」
そ。なかなか男できないんだ。私。
ちょっと切なくなって凜菜と一緒に色々話し、風呂と歯磨きをすませ、布団に入ると3時。
明日、6時半に起きれるだろうか。
鳴っても爆睡中の私の耳には届かないであろうアラームを、一応セットしてから眠りについた。
>>67 訂正
お盆1週間前→お盆明け
1週間前じゃこの前のお話と矛盾するのねw
ピピピピピピピピピピピ
「ん………………」
起きれ、た……………………zzZ
いや、寝てはいかん!!
慌てて頬を叩き、アラームを止める。
やっぱり眠い。普段わりと寝てるから。
目を覚ますため、顔を洗いにいくと、もう凜菜も起きていた。
「…はよ」
「おはよ〜ん」
「何、朝からテンション高いね」
「まぁね〜、お兄ちゃんに聞けばわかるんじゃない?」
「ふーん」
大して興味ない。が、顔洗ったら兄ちゃんにメールしてみるか。仕事中だろうけど。
『今日凜菜と何かあるの?』
ピロン
『俺の友達の弟が同じ年ばっかで、合コンするとか』
『合コン?もう準備してるけどw』
『はえーな 笑』
『うん、私も合コンしたかったw』
『お、おう。帰ったら顔見せたるわ』
『どーも』
こんなやりとりをしてたらもう時間。
凜菜や兄ちゃんのことも大事だが、一番は仕事だ。
急いで荷物を持って、車に乗り込む。
思ったより道が混んでいる。コンビニになんて寄ったら抜けれないだろう。
仕方ない、学校の近くのとこによってくか。
「……………ない」
店が違うからか、いつも買ってるゼリーがない。
これもまた仕方ないので別のものを買い、食べながら学校へ。
「おふぁよございま〜す」
は。あくびが重なってしまった。
もー!今日は朝からとことんついてない。
こんなんで大丈夫か、と不安になりながらも点呼へと向かった。
「「「おはようございます」」」
「おはようございま〜す」
はぁ。朝から疲れた疲れた。
仕事する気にもならないし、今日はパート練習ぐるっと見回りますか。
まずは点呼の部屋がある3階、第二音楽室で練習しているクラリネット。
〜〜♪♪
「のばしの音程が悪いと思います」
「「はい」」
そろーっと入ると誰もこちらには気づかず、思う存分練習を聞けた。
クラは人数も多くバスクラもいるのでパート練でも吹きやすそう。
そして、普段はリーダーしててなかなか見れない、亜子のレアな後輩顔も見れた。w
次は一旦下に降り被服室のフルート・オーボエ。
松井ひなたはちゃんとやってるだろうか。w
中をチラッと覗いてみると
「ふふっw」
「花最先生だw」
何がそんなにおもしろい!先輩!!
「何笑ってんの〜ねぇ〜」
「い、いや別になにも…ねぇ!ひなたちゃんww」
「そ、そうですよ〜みく先輩何もしてないですよ?w」
きっと先輩はひなたのこの笑顔とちょうどいい緩さが気に入ってるんだろう。なんとなく分かる。
クラとは違い緩みきったフルート・オーボエの部屋を出て渡り廊下に行くと、ホルンが練習中。
「おー。桜〜ちょっと見てていい?」
「いいですよー!」
ホルンには、珍しく私とかな〜り仲のいい2年生がいる。
たまたま桜のお姉ちゃんと私が仲よくて、私がここに来る前から知ってた、それだけなんだけど。
…うんうん、ホルンみんな上手いな!
まぁこれぞパート練習!!って感じのホルンを見終え、次は1階へ。
第一理科室ではトロンボーン・ユーフォが練習してる。はず。
ガチャガチャ
「あ〜!いいね」
「うま!!」
一体何をしているのだろうか…
「失礼しま〜す」
「「わぁっっ」」
「休憩中?」
「ですね!タイミング悪いです!w」
本当に休憩中だったかはさておき、うちのクラスの美穂はとにかく静か。
先輩が話しかけると笑顔で答えるものの、それ以外ずっと黙ってる。
教室ではわりと話す方なんだけど。
そんな美穂を気にしながらも隣の第二理科室へ。
((next 第二理科室 トランペット ななこ
音楽準備室 サックス
多目的室 打楽器
さぁ、私の推しメン菜々子ちゃんは元気にやってるかな?
ちらりと見ると真面目に個人練習(?)していた。
相変わらずおとなしい。
おとなしい菜々子と優しそうな先輩を見届け次はまた上のサックス。
サックスの1年生は……………
忘れてしまったが、まぁいい。
めっちゃ普通。。。
なんとも言えない。w
ノーコメントのまま逃げるように準備室を出て、合奏の多目的室に戻って打楽器を眺めていた。
そしてしばらく見たあと、私は暑さによって溶けかけた体を自分でも分かるほどのろのろとゆっくり動かし、職員室に戻った。
そして涼しい職員室でつい眠ってしまい合奏に遅刻したなんて誰にも言えない。
「かさいせんせーぃ」
出校日も終わり、夏休み終盤。聞き慣れない声に呼び止められた。
「あ、あの、理科の……………」
同じ吹奏楽部にいるのに久しぶりに見た。川合結菜さん、だっけ。?
「あー、…………ってことだから、明日持ってくるね」
「分かりました!すいません、ありがとうございます!さようなら!!」
要件を終えると元気に挨拶して亜子と菜々子のもとへ駆けていった。
さっそく学職に行き、結菜さんが言ってた紙を探してみる。
えーっと、、結菜さん確か5組、だね?
お、あったぞ。
忘れないように部活用のファイルに挟んで学職を出る。
それにしても結菜はとても賢い。そして真面目。
その結菜がプリントをなくすなんて珍しい。まぁ、なくしたプリントをまたとりにきてくれる生徒の方もなかなか珍しいのだが。
そしてまた時は流れ、9月。
夏休み最後の週の部活中、結菜のことを少し気にかけてみたが、特に何もなかったのであまりもう気にしてはいなかった。
まぁ、プリント1枚なくしただけで、いつもとちがうなんて、気にしすぎだな、うん。(笑)
はぁ。またいつもの日常が始まる。
嬉しいようなめんどくさいような…
始業式やら認証式やらを終え、学級活動。今日の欠席は未唯だけ。
出欠確認をして、教壇から前を見ると少し成長したような子供たち。
ねむ。。寝不足でした、さよなら
「皆さん!!お久しぶりです!!!」
シーーーーーン。
いや、こんな寂しいことあるかい。
うん、もういい!
「えーーっと、夏休み終わって………………………………ことなので、まぁ合唱頑張っていきましょーう。
次に〜、……………」
そろそろ11月始めの合唱コンクールに向けて練習が始まる。
夏休み前に、曲は決まってCDも配ったが…どうだろう
ちなみに曲は「未来へのステップ」
まぁまぁ有名どころといった感じ。
、というわけでとりあえず合唱コンの目標を書いてもらうことにした。
もちろん、学級全体の目標は「最優秀賞」なので、個人の目標を書く。もちろん私も。
様子を見ながらまわっていると、皆
みんな結構イイこと書いてる。
「練習をサボらない」とか基本的なことから始める子もいれば「笑顔で楽しむ!」など歌うときの目標を書く子もいて、個性が出ておもしろい。
ちなみに私は「1-3の全員と全力で楽しむ!!」
全員と。
………叶うだろうか
キーンコーンカーンコーン♪
あぁ、鳴っちゃった
「じゃあまだの人は今週中にだしてくださーい、終わりまーす」
「夏休み明け初日ぐらいは全員揃ってほしかったですねぇ…」
「はい…すいません…」
「まー、花最先生だけが悪い訳じゃないけどね……」
私、いま結構落ち込んでる。
そして今からは、落ち込む気持ちを抑え込んで未唯の家に行く。
ピンポーン♪
『はーい』
「薊中の花最です」
『ちょっと待ってくださーいね』
家庭訪問をぬいて、2度目の未唯の家。
ねむっっっ。。。
言葉通り少し待っていると、ドアが開いた。
「お久しぶりです」
「うん、久しぶり〜、お母さんは?」
「まだ仕事です、もう帰ってくると思いますけど」
何て話していたら、未唯のお母さんが帰ってきた。
「すいません、こちらが呼んだのに遅れちゃって、どうぞ」
「いえいえこちらこそ…失礼します」
今日は今までと違い、未唯の部屋に通された。どうやら未唯が二人で話したいと望んだようで。
そしてやはり、部屋もリビングと同じくきれいでまとまった感じで…私の部屋とは大違い。
「今日はどうしたの?」
「あ、はい…あの、部活をやめたいんです………」
「んえぇ!?」
かなり一大事なことを言ったな。。
そんなに色々抱えてたんか。
「…それは、、どうして?」
そう訊ねると、未唯はゆっくりとそこまでに至った経緯を話してくれた。
まず、自分のいるテニス部はペアを組むため、自分が休む度にペアの子に迷惑をかけているということ。
そしてそのことでテニス部の人からあまりよく思われていないということ。
そのペアの子も迷惑と言っていたという噂も聞いたらしい。
この先も状況が変わらなければ部活に行くようになることはないから、やめると決意したんだと。
その話を聞いて、一応やめる理由として認められるか考えてみた。
担任の私は認めるとして、まず学年主任の高見先生は、かなり首を突っ込んでくるだろう。きっとそう簡単には認めてくれない。そして次にテニス部主顧問の大野先生……も、これまた手強そう。
でもここ二人に認めてもらえたら、話は早い。校務主任、教頭先生、校長先生なんて、説明さえすれば、一瞬で終わるだろう。
という私のテキトーな予想を未唯に話すと、「大変だけど、まぁ何とかします」と強気だったので、万が一を考えて念のため持ってきていた退部届けを未唯に渡した。
「あとね、未唯は今大変なときだと思うんだけどね、そろそろ合唱コンがあるんだわ…」
「あ〜、未来へのステップでしたっけ?」
「そうそう、それでさー 」
部活をやめるところまで追い詰められている未唯にこの話はよくなかっただろうか。
やはり、表情が暗くなっている未唯。
「……私、というか3組としては、全員で出たいっていう気持ちがあるの」
「やっぱそうですよね〜……」
「うん、その気持ちはずっと変わらない。
でも、最後に決めるのは未唯だからね?合唱コンまではまだ時間あるから、ゆっくり考えて」
すると、なぜか未唯の顔が少し明るくなったような気がした。
「はい!」
この会話の中で何か心に刺さるものがあったのだろうか。
だとしたら、これで明日から何か変わるといいんだけど…
それから未唯と未唯のお母さんに挨拶をし学校に戻ると高見先生が待っていた。
「未唯さん?」
「あ、はい…部活やめたいみたいです」
早めに報告すべきだと思っていたところだったので、一応言っておく。
すると、案の定
「え?なんで?やめさせなくてもなんとか…」
予想通り。まぁ、生徒思いなのが高見先生の最大の長所なんだけど。
「…………わかった、」
高見先生の口からその言葉が出るまでには、とても苦労した。
未唯に対して過保護になりすぎないように気をつけて話すのは意外と大変で、
やっぱり自分は無意識のうちに未唯を贔屓してたのかなぁ、と反省。
しかし、あの高見先生が頷いたんだから、ゴールは目の前だ。顧問の大野先生も、うまくやれば、すぐ終わるはず。
「大野先生、」
「はい」
……………
「あーー、部員減るのはしんどいけど…純菜先生怒ったらぶっ飛ばされそうだしな。いいですよ別にw」
「そんなことしないけどありがとうございます〜」
これはこれは。思ってたよりだいぶすんなりと。
ありがとう大野先生!
それからはあっという間にお偉いさん方のハンコを集めることができた。
まー、校長先生とかそもそも生徒ひとりひとりの事情なんて知らないのに文句言われても困るよね。よしよし。
明日 未唯に連絡、、
と机にメモを貼って、学校を出た。
そして翌日の授業後。
未唯に電話し、退部の準備が整った旨を伝えると「ありがとうございます!」ととても嬉しそうな声が返ってきた。
「そしたらさ…合唱コンのことだけど……」
切り出しにくい内容だったが今だ!と思いいってみた。すると
「あぁ、多分明日から学校行くんで」
んええええ!?
今、何て? 学校行くんでって?
嬉しいの極みだ…!!!!!!!!!!!!
……という心の声は電話越しにも漏れていたらしく
未唯の笑い声にハッとした。
「色々考えたんですけど、やっぱ部活さえなければ嫌なことなさそうだし
先生が私のために色々してくれた、それにこたえたいって思って」
胸がジーンとなりますね。
未唯、すごくいい子。
「……グスッ ありがとーね」
「ははっw では、ありがとうございました」
「うん、はーい」
ガチャッ
電話を切ると私の涙腺は限界を迎えたようで。
26歳、職員室にて泣き出しました。
まわりなんて何も見えてません。
とにかく嬉しい。
自分の、いや、クラスみんなの思いが未唯に届いた。
そう思うと本当に本当に嬉しい。
「かさい先生?どうしたんですか?」
お姉さまのような優しい野田先生にさっきの出来事を伝えた。
「………っで、未唯さんが来るんですっ……って!!!!」
すると野田先生、自分のことのように喜んでくれた。
「やったね!!私も未唯ちゃん会いたかったです!」
ああぁ野田先生やさしーいなぁ。
と。
それから野田先生と少し話すとだいぶ心も落ち着いたので帰ることにした。
「お疲れ様でした〜」
そしてこの嬉しいふわふわした気持ちのまま家に帰り、
ルンルンで愛する妹のもとへ。
「凜菜〜♡ただいま〜!!」
「え、ねぇキモい。大丈夫?」
秒で振られましたが。
さっきの出来事を話したくて凜菜聞いてよ!と。
「どーぞお話になって」
携帯をいじりながら返事をする凜菜。
絶対聞く気ねーだろ!と思いつつも私が話したいだけなので話を続ける。
「……それでさ!未唯が明日から来てくれるつって」
私は今とにかくハイテンション。
でも凜菜は相変わらず携帯とにらめっこ。
またスルーか生返事かな、と思っていたら意外な返答が来た。
「その、みゆちゃん?ってさ、名字、何?」
え?は?なぜ?知り合い?
「え?個人情報?いっていいのか?」
「あー、個人情報か…でも一応…佐々木みゆ?その子」
ビンゴ。佐々木未唯ですね。
荷物を片付けながら詳細を聞いてみる。
「なんでしってんの?」
「えとねー、同級生に佐々木未佳っているの。未佳からも話聞いてたから妹かなって」
「え?未唯さんってお姉ちゃんいたのね!」
そこの衝撃よ。長女感溢れてたからさ。
でも凜菜と同級生ってことはもう21でしょ?まーまー年離れてるのね。
「って!焦点ずれてるよ!」
はっっ。心の声が漏れた。
振り返ると案の定、凜菜が笑っている。
「それ、学校でもいってんの?」
「いや、気を付けてるつもり」
「ふーん。まぁ出てるだろうけど」
なんちゅう不毛なやり取り。
私も凜菜も飽きてきたので、静かになった凜菜の部屋を出てお風呂場へとむかった。
翌日。
なぜかめちゃくちゃ早く目が覚めた。
どうしようか…と少し迷ったが、久しぶりに朝練に行くことにする。
「おはようございまーす」
朝早いからか、いつもより少し静かな職員室。
昨日私が泣いたところを見ていたと思われる先生とはなるべく目を合わせないように、素早く荷物をおいて多目的室へ。
結局点呼ギリギリになってしまったがまぁいい。
「おはようございまーす」
「「「おはようございます」」」
あーこの空気、いつぶり。
朝の点呼とか片手で数えられるほどしか居たことないし。
私どんだけ朝練サボってたんだ。
朝はパート練習だから、どこに見に行こう。。と。選べるわけでもなく
高橋先生が今日はクラを見るので、フルートにまわってほしいと。
でも個人的にフルートの音は好きなので、ルンルンで被服室へ。
階段を降りたあたりから、きれいな音がよく聞こえる。
チラッ。
ドアのそばから少し覗くと、松井ひなたが気づいた様子。
続いて先輩たちもみんな気づき始め。
結局一瞬で全員に私の存在がばれた。
いつも通りのパート習を見るのが私の仕事なのにさと…
結局にぎやかなフルート&オーボエガールズに囲まれ
「先生ここのリズム教えてください!」
から始まったのに、いつの間にか話題はアニメとか。
「ほらー、もう終わりだし、全然練習しとらんやん!」
「先生が話しかけてくるからですよ!」
そんなことないわー。とか反論してササッと被服室を出る。
そろそろ終わりの点呼なので、多目的室へ戻る。
「ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
朝からにぎやかで何だかんだいいスタート。
朝打ちもスムーズに終わったし今日はいい日ね、
なんて思いながら未唯の姿があるかな、と期待しながら教室へ戻った。
「おはようございま〜す」
窓側の一番後ろを見ると、荷物が置いてある。
おっ、と思い教室を見渡すと……
いた。!!!!!!!!!!!!!!!
一応声をかけときましょうか。
「未唯おはようー、大丈夫そう?」
「おはようございます、大丈夫です!ありがとうございます!」
あー、何ていい子よ。これで学職の黒板の3組連続欠席者の欄が “なし” になる。
今日はもう本当にいい日。まだ朝だけど。
朝の会をすませてから未唯と少し話し、1時間目のため理科室へ。
ガチャ、、、開かない。
鍵忘れた。悲劇。
急ぎ足で職員室へ鍵を取りに行く。
キーンコーンカーンコーン♪
あー。間に合わなかった、
しかも1時間目はうるさい4組。これからどうなるかは想像がつく。
とりあえず急いで理科室に戻ると4組の人たちが廊下で待っていて。
「先生遅い!!」
「遅刻ですか〜!w」
って。やっぱりな、めんどくさ
わぁ、いけない。最近よく黒い感情がすぐ出てきてしまう。
教師になってから、忙しすぎて病み期はずいぶん減った。
それでも突然訪れる病み期は教師になってから…3回目かな。そして1回1回が長い。
「はぁ、、むり……」
何とか授業を終えてもそんな呟きばかり。
ボーッとすることも増えて普通に迷惑、だね。。
「せ…せい……先生!」
「はいっ?!なんでしょう!」
「あー、、疲れてます?大丈夫ですか??」
たまにはこんな優しい子もいるけど(未唯です、はい)
教師はそんなとこで弱音を吐くもんじゃない。
「ううん!めっちゃ元気〜!それで、どうした?」
そう。こうするしかないんだ。…
「花最先生〜」
「花最先生ちょっと」
「じゅんな先生〜!」
あーもう。呼ばれるたび、顔は笑顔で振り向くが心ではろくなこと考えていない。9割が、またかよとかうるせーなとか、マイナスな感情
「花最先生」
「はーい」
あーほらまただ。顔と心がずれすぎてて頭がおかしくなりそう。
「今時間ある?」
めんどくさい、いくら優しい野田先生でもめんどくさい。
がしかし、口はやはり心と反対に動く。
「はい!大丈夫ですよ!!」
「あのー、明日の研究授業の〜………………」
「あー。ですよね、私もそうします!」
「ほんと?ありがとう!純菜パイセンは若いのに頼れるねぇ」
「いややめてくださいよ頼れませんからww」
はー。普段は自分にも他人にもすごく正直で嘘なんてつけないのに、変だ。
やっぱり、我慢はよくない……ってことかな。
最近すごーく我慢してるもの。買い物。
今までは月1、いやそれ以上何か買ってたけど最近は忙しくなかなか時間がとれないので、即決が苦手ということもあってずいぶん買い物は減っていた。
あっ。。今週日曜日部活ない。一日空いてる。
ネットショッピングで服買い漁ろう…!!
よし、今日からは日曜日を楽しみに頑張るだけ。
なんて考えていると、また怖い顔でもしていたのか、赤城先生に「何かあったんですか!!」と言われてしまった。
それからの数日間は一瞬で過ぎていった。
授業もすごくスムーズに進むし、部活も絶好調で、指揮者になってから早1ヶ月、指示出しもうまくなったねと高橋先生が誉めてくださった。
やっぱり自分が明るいと何でもうまくいく。
そして余裕ができてまわりが見やすくなる、つまり教師としてのレベルがあがる、、?
「花最先生」
「はい」
「文化祭の運営、生徒会の先生だけじゃ足りないから手伝ってもらえますか?」
驚いた。そういうお誘いは高見先生ならきっと、高須先生とかにするかなと。1年部は文化祭の分担はフリーか必要以上にいる装飾係が多いから。私も装飾係担当だったし。
まぁ、謎は残るが、喜んで返事をさせていただく。
「はい!やらせてもらいます」
「おー!よかった!少し前は元気なかったけど最近また急に調子出てきましたね」
「そうですか?」
「うん、だからお願いしましたね」
ほお。すごーい。元気ってすごい。
中学校の教師なんて初めてなのに、いきなり生徒会がやる文化祭の運営に関わってしまうとは、私ついてる。
そして高見先生は生徒だけじゃなくて私たちのこともちゃんと見てくださってる、まさに教師の鑑だね。
先週とは真逆のポジティブ思考で仕事がはかどる。
そして今日は金曜日。明日が終われば日曜日。
突然舞い込んだ大役ともう目の前の日曜日にルンルンしながら帰る帰り道は、気のせいか信号待ちもいつもより少ないように感じた。