ねぇ……
助けて……
言っても、聞こえない。
無駄な、儚い希望は捨てた。
___幼い少女の夢は、儚くも割れて、消えた。
*prologue*
男の膝の上に、女が頭を乗せている。
「貴方___忘れて。」
男は、驚いたように、女を凝視する。
女は、ちょっと笑いながら、
「貴方と私の子は、人間界にいます。何か、あってもあの子だけで、生きていけるように。
あら、____泣かないで。
必ず、此処にあの子は来るわ。多少時間がかかるけど、きっと来る…」
一息に告げた。
途端に、女は光に包まれる。
男が目を開けると、女の姿は無かった。
『イケの中』と、掛け持ちで書きます!
異世界系で、書き方を変えてみます!
つまらないものですが、読んでくださると嬉しいです。
新章 名前
黒色の、艶やかな髪の持ち主の少女は、その長いまつげを伏せた。
「ごめんなさい……」
「もうっ!役に立たないわね!」
声の主は、イライラと言った。
声の主は、茶髪を弄りながら、ネチネチと少女を苛める。
「そんなのだから、名前を与えられないのよ。」
この世界では、大きな働きをした者にだけ、名が与えられる。
少女は、この城の城主の娘の侍女だ。
「はぁ。もう、使えないんだから。せめて、私の髪をとかしなさい。」
「はい、お嬢様。」
少女は、娘のお気に入りのくしを取り出す。
「お嬢様、今夜のパーティー楽しんできてくださいね?」
「ありがとう。アンタに名が、必要ね。イアノで良いかしら。」
娘__アイリスは、歌うように告げた。
少女_____イアノはパアッと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!お嬢様!」
「止してよ、アイリスで良いわ。」
2人の間に、友情が芽生えた瞬間だった。
◆別れ◆
イアノは、ある日の午後、アイリスに呼ばれた。
「お嬢様、どうしたのですか?」
アイリスは、ニコッと笑った。
「私、イアノに手紙をしたためました、受け取ってください。」
イアノは、アイリスから手紙を受け取った。
アイリスが真面目な顔になって、
「今すぐ、この邸から逃げなさい。丘まで、走って、それから手紙を読んで。」
「お嬢様は…?」
アイリスはこう言った。
「私は、大丈夫ですから。」