作品ごとにスレ立てていると、他の文豪たちに迷惑をかけてしまうので、ここでだけ書きます笑
2:ひの:2017/05/25(木) 01:56 虹の写生文
「ちょっくら、ライフを削ってくるか……」
とお父様は、いつものように言われました。いつものような格好で、出て行くので、てっきり私は、いつものように夜になったら帰ってくるのかと思っていました。しかしそれきり、帰ってこなかったのです。
ライフを削る……私の村からは、猫捨て山、と呼ばれている大きな山(なんで猫捨て山、と呼ばれているのかは、また後で触れます)が東の方に見えるのですが、そこに住んでいるアラキメロという精霊に魂を齧らせると、お金をくれる。お父様は、そのお金を持って帰ってくる……このことを、私たちの村では、「ライフを削る」という言い方をするのでした。
「お母様、お父様はいつ帰ってくるのですか」
と、夕ご飯の粥を食べながら、私は聞いてみました。
ところが、お母様は無視をするのです。お母様は、私の言うことを、無視したことは今までに一度もありませんでした。しかし、一番無視されたくない質問に限って、お母様は聞こえてないかのように、ただ粥をすするだけなのです。
私は質問をするのをやめました。あきらめたのではなく、ただ、その場の「空気」が、恐喝のように私の口を押さえつけました。
虹の写生文は挫折しました。
↓新作
さきだれ
指は、マハーポーシャを買いにいく。いいお天気。
ユックリスが来て言いました。
「優しいカニバリズム。パクパク」
指はにっこり笑って、ユックリスから逃げ始めます。
ふわふわさんが言いました。
「おやおや、マハーポーシャはどうしたんだい?」
「ふわふわさん。それどころじゃないんだよ」
指の通った後から、ぽん、ぽん、と、スッタカタッタカが産まれて、目を探し始めます。
スッタカタッタカの群れは、ユックリスを邪魔します。
とうとうユックリスは、スッタカタッタカに飲み込まれて、消化されてしまいました。
さらに、消化されて、スッタカタッタカたちの目になりました。
だから、もう、スッタカタッタカは、ユックリスを邪魔しません。
ふわふわさんが言いました。
「よかったね。もふもふ〜」
「もふもふ〜」
さあて、指は、いよいよマハーポーシャを買いに行きます。指は、
「ちょんちょんちょんちょん。三拍子。はっ!はっ!三拍子。サンビョウシソロッテマス」
と、言いました。
電気屋さんで、ウナギの見見見見見さんが、大きな口を開けて、
「この中に、マハーポーシャがあるよ」
と言いました。
指はお礼を言って、その中に入りました。のどに抱きつくと、それがロープのようにぐいいいいいいんんと下に降りて行きます。
どんどん下りていくと、下から上がってくる自分が見えました。
「鏡を見ているみたいだ」
と指は言いました。
指が、下から上がってくる自分にタッチをすると、何かがぽんっと弾け、気がつけば自分の家にいて、マハーポーシャが机の上に置いてあるのでした。
マハーポーシャを起動すると、
「ポップコーンを食べてください」
というのが出たので、いう通りにすると、指はマハーポーシャの中に吸い込まれてしまいました。
静かになった、だれもいない、指の部屋。
しばらくして、その部屋の中に、ウナギの見見見見見さんがきて、マハーポーシャをあの大きな口で飲み込んで、
それから帰って行きました。
再び、静かになった、だれもいない、指の部屋。
一年後、この部屋に、ヒュッヒュヒュッヒュさんが住み始めました。
ふわふわさんが、ヒュッヒュヒュッヒュさんに何か言いました。
だけど、ヒュッヒュヒュッヒュさんは、耳に粘土を詰めていたので、聞こえませんでした。
次は、ショパンの「雨だれ」のように
小説を書いてみたい。
雨を写生するのではない。
ぽぽぽぽぽぽぽ……とロゴスを降らすように。
愛の季節。
夜も遅いのだ、アイデアだけメモ。
メモ的な小説
音楽泥棒
音楽泥棒が考える。
音楽において、電話の音をぷるぷるぷるぷる挿入することで、独自の効果を引き出すことができる。ピンク・フロイドや、ビートルズが、生活音をたくみに曲の中に融合している。
小説で使いたい技術だが、小説に音を挿入することはできない。
(ここで、ベートーベンの「運命」を聞きなさい、みたいな指示を、書いておく、ということをしないかぎり)
表題音楽ーーームソルグスキーの「展覧会の絵」のように、表題文学もあるのではないか。
ドストエフスキーの「罪と罰」を、「はじめてのおつかい」というタイトルに変えたらどうなるだろう?
絶対音楽ーーー交響曲第N番、みたいに、作品第一番、みたいに書いてはいけないのか?そこには精神だけが、騒いでいる(宮沢賢治がやっている)。
注意。これはデカルトでなければできない。
音楽泥棒が考えるのを、やめた。
むぱ 〜幼女が語る
むぱは、ウーパールーパーの中に入って(食べられたわけじゃないよ!車みたいに一回入っただけ)、
ウーパールーパーに、川を渡ってもらったの。スイースイーって。
順調だった。だけど、途中から、「Smoke On The Water」が聞こえてきてね、それから、
あたりが煙まみれになっちゃった。何も見えない。しかも、
「けほっ!けほっ!」
てね、ウーパールーパーは、咳をしちゃうの。もう、大変!
むぱは、ウーパールーパーの中から出て、逆にウーパールーパーを飲み込んだ(これも、食べたわけじゃないのよ。だって、
二人は仲良しさんなんだから)。
そして、川の中に潜った。
むぱは、川の中を、泳いだ。そのまま、川の向こう側まで泳いだの。
なんとか、煙の外まで来られたけど、もう大変。川の上が、煙で真っ白
それから、二人は、この煙がどこからくるのか、探ることにしたのよ。
見ると、遠くのお山の方からだった。
むぱは空を飛んで、ウーパールーパーを連れて、その山のてっぺんまで行った。ひとっ飛び。
その山のてっぺんには、大きな目がついていた。そこから、白い煙が出ている。山は、煙が涙なのかもしれない。あまりにも悲しそうな目をしていたから、どこからかショパンのノクターン(遺作)が
聞こえて来たのお。
「お山さん、どうしてそんなに悲しそうなの?」
とむぱは聞いたわ。
だけどお山は答えない。だって、目はあっても、口はない山だったから。悲しいことが伝えられなくて、余計に悲しい目になってしまう。それが繰り返される。
だからショパンのノクターン(遺作)はだんだん壊れて、とうとう聞き取れなくなった。ただの
「むおーん」
という音になった。それと同時に、お山のお目目はブラックホールになって、むぱとウーパールーパーは吸い込まれてしまった。
ブラックホールに吸い込まれたら、そこはお山の心の中につながっていた。
そこは悲しいことでいっぱいだった。
だけど、すべての悲しいことは、たった一本のお線香から始まっているようだった。そのお線香から、悲しそうな人間たちがビニョンビニョンと分裂していくのだった。
むぱたちは、悲しい人混みをかき分けて(結構大変だったのよ)、ついにそのお線香のところにたどり着いた。
むぱは、
「ふうううう!」
っと、そのお線香に息を吹きかけたけど、消えなかった。
今度は、ウーパールーパーが
「ふううううううう」
と吹いたけど、消えなかった。
それで、二人で力を合わせて、
「びゅうううううううううううううう!!」
ってやったら、お線香は消えたわ。
同時に、悲しい人たちも消えた。むぱも、ウーパールーパーの家族も、消えた。お山の目玉も消えた。白い煙も消えた。
その代わり、川でポリリンが悲しんだ。おしまい。
ぽりぽり
アクロバティックな不老不死人間ぽりぽりは、本当に不老不死なのか?
彼を殺すことができたものには、賞金として、1億円が送られる。
それだけ、不老不死であることに自信があるのだ。
金髪の少女クリスティーナは、挑戦した。ある日、ぽりぽりに、熱いアイロンを当てた。ぽりぽりは悲鳴をあげた。
不老不死でも、痛みはあるのだ。
それでも死なない。
ぽりぽりは、勝ち誇ったように笑った。クリスティーナは、ぽりぽりが憎らしいと思った。
スーパーフラット
にゅいっ。にゅいっ。と、中国旅行の時に、美人の占い師さんが、占竹を弄んだ。
不自然に、しかし美しく濡れた唇から、いちごジュースのシャボン玉見たいなこえで、言った。
「バナナの皮に気をつけなさい」
金髪の少女クリスティーナは鼻で笑った。私が、バナナの皮で滑って転んで死ぬとでも?漫画の読みすぎよ……。
クリスティーナはバナナの皮に警戒して上海の街を歩いた。そんなものどこにも落ちていない。ふと、クリスティーナは巨大な穴に落ちて死んでしまった。
え?バナナの皮と関係ないって?いいえ。クリスティーナの頭の中のバナナに気を取られて、クリスティーナは哀れ穴に落ちてしまったのです。
ちん凸ハム太郎
今、ネットでちん凸ハム太郎というのが流行っている。
検索してみると、ただ、誰かの【自主規制】の画像が出てくる。
そのバリエーションの量が半端ではないのだ。
そそり立つ【自主規制】。萎えた【自主規制】。湿った【自主規制】。青い絵の具が塗られた【自主規制】。
そんな画像が、同じちん凸ハム太郎というネット・ユーザーによって、推定一万枚もアップされているのだ。
一万枚も【自主規制】の画像をあげていれば、いやでも話題になる。
ある評論家が、ツイッターで、「アウト・サイダー・アートだ」と評した。ある主婦が、「犯罪だ」と評した。ある変態が、ちん凸ハム太郎になりすまして、自身の【自主規制】をアップした。
「一体、ちん凸ハム太郎とは誰なのか?」
という疑問を持った数人のネットユーザーが、ちん凸ハム太郎の正体を特定しようと頑張った。しかしそれは叶わなかった。
【機種規制】の画像は増殖し、インターネットを埋め尽くし、ついにはどう検索しても【自主規制】が現れる始末。インターネットは使い物にならなくなった。
そして誰一人、インターネットを使うものがいなくなってしまった。それでも、噂によれば、ちん凸ハム太郎は未だに着々と【自主規制】をアップしているのだという。
cruel sisters
ドアを開けると、女の子がいた。よくみると、狐みたいな尻尾がついている。指摘すると、
慌てて隠した。
「これは、その、あの、そう!コスプレですよ。じゃあん!」
と行って、今度は見せびらかしてきた。
僕はよくできると思ったので、その尻尾を掴んで、なんとなく黄色い毛を引っ張って見た。
「痛いいいいいいいいいっ!」
「へ?」
痛覚がある。ということは、コスプレなんかじゃなく、本当の尻尾である。つまりこれは化け狐だ。
狐の恩返しか……この前、僕は一匹の狐を助けたのだった。
静かな昼下がり、僕は散歩をしていた。
狐が川で溺れていた。大雨が降った後なので、かなり水流が激しかった。
だから、泳いで行っても、僕まで溺れてしまうに違いないのだ。首およく、泥でドロドロのロープが落ちていたので、
狐に向かって投げた。
溺れる者は藁をも掴む、これは狐においてもそうなのだ。狐はガブっと、ロープに噛み付いて、僕はそれをするする
引っ張った。狐は上陸し、嬉しそうに走って何処かへ行ってしまった。
さっきの痛いいいいいいいいいいいいいいいいっ!を、そこの道路を通った車を指差して、
「ほら、イタ車ですよ。いたーい」
なんて言ってごまかしているが、もう見破ってしまっている。
「あのう」と狐が言った。「もう気づいているんでしょ」
「ああ」
「ああ、悔しいわ。間抜けだわ。バレた時に、美しく去っていくつもりだったのに。もう消えなくちゃ。本当は、お金持ちにしてあげたかった」
「いいんだよ。ありのままで……」
「悟った風なこと言って」
女の子はお辞儀をして去って言った。階段を降りていった。
部屋に戻って、窓を見ると、狐がちょろちょろ走って行った。
革命
「私は革命を求めている」
「私たちは誰も皆世界を変えたいのだ」
「それが進化なのだ」
「私たちは誰も皆世界を変えたいのだ。しかし破壊について語る時は、私はその話から除外してもらいたい」
「ALL RIGHT!」
opening
ミニマムモ、ミニマム
と、子供たちが歌っているが、キリカは、この歌がわからなかった。
キリカは異邦人である。しかも、自ら好んで、ここクィンフの土地に移り住んだのだ。
知らぬが仏、というが、何も知らなくなれる一番簡単な方法は、自ら異邦人になることだ、と考えたのである。
ここに住んでおれば、一生幸福である。誰の悪口も、ここまでは聞こえてこない。
しかも、クィンフ人はとても温厚なので、キリカも人並みに生きていけそうだ。形式的なクィンフ語さえ知っていれば、必要なことだけを聞いておれば、あとは人生において、何も面倒なことはないのである。安らかな心で、キリカは昼寝をした。
忙しい人のための「弱い青虫」
口づけを待つ日の青い弱虫は一週間の時代にみえる
短歌自動作成プログラム
昔むかは、はあ?
弱い青虫は健気に入る。
秋だ。
弱い青虫は食べられました。
偶然性の文学
1 方法論
適当な小説を手に取る。
適当に開き、適当な一文を書く。
それを繰り返す。(この時、矛盾のおこらないように名詞などを捻じ曲げる)
タイトルも適当に決める。
2 本編
パイナップル・チューイングガム
「カジノでひとやすみしたら?」と二グロは言った。
二グロは自分が住んでいるブロックの角まで来ると、ビールを一杯引っ掛け、葉巻を一本買った。
そこで、二グロを安心させるために、俺は承知した。
午後3時になって、俺はトールバット少佐の書斎のドアを叩いた。だから一回りして、私服刑事に頼むことにした。
ハロルド・ファリントンがきた次の日、晩餐を済ませて食堂を済ませて食堂から出る時、
だめだ。
カフカ忌
「ねえ、お兄ちゃん」
ヒナは、三時のおやつのとき、二つ目の木の葉パンを半分頬ほおばりながら、レンにいいました。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なあに、ヒナ」
「あのね、お兄ちゃん。もうじきに、カフカ忌でしょ」
「ええ、もうじきね」
「どれだけ?」
「ヒナの年ほど、ねむったら」
「ヒナの年ほど?」
「そうだよ」
「じゃあ、お兄ちゃん、一つ二つ三つ……」とヒナは、自分の年の数ほど、テーブルの上に手をあげて、指を折りながら、勘定をはじめました。
「ひとつ、ふたあつ、みっつ、そいから、ね、お兄ちゃん。いつつ、ね、むっつ。ほら、むっつねたらなの? ね、お兄ちゃん」
「そうだよ。むっつねたら、カフカ忌だよ」
「ねえ、お兄ちゃん」
「ああ、ヒナ、お茶がこぼれるよ」
「ねえ、お兄ちゃん」
「あいよ」
「カフカ忌にはねえ。ええと、わたしなにがほしいだろう」
「ああ、ヒナは、カフカ忌の贈物のことを考えていたのか」
「ねえ、お兄ちゃん、何でしょう」
「ヒナのことだもの。ヒナが、ほしいとおもうものなら、何でも下さるだろうよ。フランツ・カフカの幽霊は」
「そう? お兄ちゃん」
「ほら、お口からお茶がこぼれるよ。さ、ハンカチでおふき。えエえエ、なんでも下さるよ。ヒナ、何がほしいの」
「わたしね。金の服をきたフランスの女王様とね、そいから赤い頬ほっぺをした白いジョーカーと、そいから、お伽とぎばなしの御本と、そいから、なんだっけそいから、ピアノ、そいから、キュピー、そいから……」
「まあ、ずいぶんたくさんだね」
「ええ、お兄ちゃん、もっとたくさんでもいい?」
「えエ、えエ、よござんすとも。だけどぼくはそんなにたくさんとてもおぼえきれないよ」
「でも、お兄ちゃん、幽霊のカフカさんが持ってきて下さるのでしょう」
「そりゃあ、そうだけれどもさ、カフカさんも、そんなにたくさんじゃ、お忘れなさるよ」
「じゃ、かお兄ちゃん、書いて頂戴ちょうだいな。そして、幽霊のカフカさんに手紙だして、ね」
「はい、はい、さあ書くよ、ヒナ、いってちょうだい」
「ピアノよ、キュピーよ、クレヨンね、スケッチ帖ちょうね、きりぬきに、手袋に、リボンに……ねえお兄ちゃん、お家なんかくださらないの」
「そうだね、お家なんかおもいからねえ。カフカさんは、お年寄りだから、とても持てないでしょうよ」
「では、ピアノも駄目かしら」
「そうだね。そんなおもいものは駄目でしょ」
「じゃピアノもお家もよすわ、ああ、ハーモニカ! ハーモニカならかるいわね。そいからサーベルにピストルに……」
「ピストルなんかいるの、ヒナ」
「だって、おとなりのじろうさんが、わるものになるとき、いるんだっていったんですもの」
「ああ悪漢だって。あのね、ヒナ、悪漢なんかになるのはよくないのよ。それにね、もし二郎さんが悪漢になるのに、どうしてもピストルがいるのだったら、きっとカフカさんが二郎さんにももってきて下さるよ」
「二郎さんとこへも、カフカさんくるの」
「二郎さんのお家へも来るよ」
「でも二郎さんとこに、煙突がないのよ」
「煙突がないとこは、天窓からはいれるでしょう」
「そうお、じゃ、ピストルはよすわ」
「さ、もう、お茶もいいでしょ。お庭へいってお遊んでおいで」
ヒナはすぐにお庭へいって、二郎さんを呼びました。
「二郎さん、カフカさんにお手紙かいて?」
「ぼく知らないや」
「あら、お手紙出さないの。あたしお兄ちゃんがね、お手紙だしたわよ。ハーモニカだの、お人形だの、リボンだの、ナイフだの、人形だの、持ってきて下さいって出したわ」
「カフカさんが、持ってきてくれるの?」
「あら、二郎さん知らないの」
「カフカさんて、どこのお爺さん?」
「天からくるんだわ。カフカ忌にくるのよ」
「ぼくんとこは来ないや」
「あら、どうして? じゃきっと煙突がないからだわ。でも、お兄ちゃんいったわ、煙突のないとこは天窓からくるって」
「ほう、じゃくるかなあ、何もってくる?」
「なんでもよ」
「ピストルでも?」
「ピストルでもサーベルでも」
「じゃ、ぼく手紙をかこうや」
二郎さんは、大急ぎで家うちへ飛んで帰りました。二郎さんの綿入をぬっていらした母さんにいいました。
「カフカさんに手紙をかいてよ、かあさん」
「なんですって、この子は」
「ピストルと、靴と、洋服と、ほしいや」
「まあ、何を言っているの」
「ヒナちゃんとこのお兄ちゃんも手紙をかいて、カフカさんにやったって、人形だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……」
「それはね二郎さん、お隣のお家には煙突があるからカフカさんが来るのです」
「でもいったよ、ヒナちゃんのお兄さんがね、煙突がないとこは天窓がいいんだって」
「まあ。それじゃお手紙をかいてみましょうね。坊や」
「嬉うれしいな。ぼくピストルにラッパもほしいや」
「そんなにたくさん、よくばる子には、下さらないかも知れませんよ」
「だってぼく、ラッパもほしいんだもの」
「でもね、カフカ様は、世界中の子供に贈物をなさるんだから、一人の子供が欲ばったら貰もらえない子供ができると悪いでしょう」
「じゃあぼく一つでいいや、ラッパ。ねえかあさん」
「そうそう二郎さんはよい子ね」
「赤い房のついたラッパよ、かあさん」
「えエえエ、赤い房のついたのをね」
「うれしいな」
カフカ忌の夜があけて、眼めをさますと、二郎さんの枕まくらもとには、立派な黄色く光って赤い房のついたラッパが、ちゃんと二郎さんを待っていました。二郎さんは大喜びでかあさんを呼びました。
「かあさん、ぼく吹いてみますよ。チッテ、チッテタ、トッテッ、チッチッ、トッテッチ」
ところが、ヒナの方は、朝、目をさまして見ると、リボンと鉛筆とナイフとだけしかありませんでした。
ヒナはストーブの煙突をのぞいて見ましたが、外には何も出てきませんでした。ヒナは泣き出しました。いくらたくさん贈物があっても、ヒナを喜ばせることが出来ないのでした。ヒナはいくらでもほしい子でしたから。
やっとまともな話が生まれた
シェルターの前で
君ほどの男でも、誰かを門前払いするんだな!ああ、世も末だ。世も末だ。全くだ。君でさえこうなってしまうもの、他の人はもう悪魔か何かだろうよ。初めて僕が、隕石のことをニュースで知ったのは、昨日になるけれど、僕はあまりテレビを見ないもんだから、その情報を一日遅れて知ったわけだ。
皆は僕よりも一日早く、シェルターを持っている人を回って、入れてもらうかどうかした。だけど僕はその間、部屋に引きこもって、小説を読んでたわけだ。
すると、慌てはじめた時にはもう遅い。昨日君のところへ来てから、ずっとこうして頼んでいるけれど、君はもう誰も入れないと言って、僕を入れてくれない。
だけど、僕は知ってるよ、君は行方不明のくるるちゃんを待っているんだろう。一人分、残して。その様子じゃ、図星だね。
ねえ、君ももう、心のどこかでは気づいているんじゃないのか。くるるちゃんはどっかの変態ジジイにやられてしまった……ああ、ごめんよ。まだそうとは限らないよね。でも、もう三年も行方不明なんだぜ。気持ちはわかるけどよ。
ともかく、最後の瞬間まで、くるるちゃんが来なかったら、そこに僕を入れて欲しいんだ。親友だろう?な?な?
ああ、まるで、太陽が二つあるかのようだ。あの、右側のが、隕石だね。もうあんなに大きくなっている。予想だと、今晩、落ちるんだね。
ああ、君んとこに幸福にも入ることができた30人、いや、29人の人たちの、喧嘩をしているのが聞こえるけれど、一体何を喧嘩しているのだろう。僕は、不思議に思うよ。だって、シェルターの中だぜ?
何十億の人が地上に野ざらしになっていて、地下シェルターに行ける人は全体の1%にも満たないという。
父も母も、自殺した。だって、もし自分たちが生きていたら、僕がここに
「父さんと母さんを入れてくれ!」
って、頼むだろうと予想してさ。僕が、僕自身を救う気になるために、自分たちは死んじまった。バカだよなあ。僕はそんなにお人よしの人間じゃないのによ。
ああ、日が暮れて来た。隕石は、空を覆い尽くしているかのようだ。こんなこというのもあれだけど、綺麗だなあ。よく浮世絵にさあ、デフォルメされた、巨大な月が描かれるけど、まさにあんな感じだよ。
なあ……もう、いいんじゃないか。ああ、ああ。ああ。やっぱり君は親友だ。ありがとう。狭いシェルターの中で、助けあおうな。
おい、どうした、急に顔色を変えて。え?くるるちゃん?くるるちゃんがいる?
いや、僕には見えないが。君は、幻覚を、みているんじゃないのか。
おい!行くな!無理もないが、君は気が狂ったんだ。おい!待て!待て!行くなあ!!!