スレタイどおりです。
書ける方、よろしくおねがいします!((ワクワク
オリキャラでOKです!
3:ひの:2017/06/01(木) 21:25 百合って男が書くもの?女が書くもの?よくわかりませんね(筆者は男です)
星間格差 ひの作
ここは地球であるーーーというと、なんでそんな当たり前のことを、と思われるかもしれない。
しかし、ここが地球であるということは、この時代においては、特別のことなのだ。2030年以降、人類は月にも住み始めた。月に住むものは、リッチな階級のものばかりで、逆に地球に残されたものたちは、極端に貧しかった。いわば、地球と月との、星間格差である。
その差は年々拡大し、2053年の正月には、月ばかりが美しく飾られ、その代わり地球はほとんどスラムのようになってしまっていた。
月の住民は、地球人を差別し、地球人は月の住民にひどいコンプレックスを持っていた。
地球の少女ユナは、その両親を、月からやって来た観光客の家族に、殺されてしまって以来、月の住民を憎んでいた。
月の住民は地球人に何をしても良い、という暗黙の了解があって、その観光客は、裁かれず、エレベーターで、悠々と月に帰って言った。
それを悔しそうに、ユナは睨みつけていた。
ユナは決心した。復讐してやる。
地球人が月に行くには、何通りかの方法があった。とはいえ、どれも過酷な競争に勝ち抜かなければならないので、
とても困難である。
しかしユナは、どうしても月に行かなければならなかった。そこで、両親の仇を取らなければならなかった。
美しい地球人は娼婦になるとか、月の住民に気に入られる芸術家になるとか、いろんな選択肢の中から、ユナは、
「月語」を勉強して、通訳者になることで、月に行けるようになる、という方法を選んだ。
とびっきりの秀才でなければ通訳者にはなれないものと決まっていた。
ユナは最初、学校の成績でも、下から数えた方が早いくらいだった。
「月語を勉強して、通訳者になる」
というと、笑われるか、微笑ましいな、と言わんばかりににっこりされるかのどちらかだった。
ところがユナは、本気である。両親のいない悲しみが、そのまま勉強になった。
やがて成績はクラスでトップになり、学年でトップになり、ついには地球で一番になった。
惜しみない努力の成果である。この調子が続き、15歳になったユナは、史上最年少で月と地球を結ぶ通訳者の資格が得られた。
通訳の仕事を続けながら、暇があっては、月の町を歩き回り、記憶を頼りに、あのユナの両親を殺した犯人を探した。ある晩、
「そういえば、あの男は、酒臭かった」
とユナは思い出し、手当たり次第バーに入った。
キョロキョロしながら一杯飲んで、怪しい人が見つからなければ、勘定を払い、店を出て、また次のバーへ。
未成年だが、酒には強いのだった。
あるバーで、ユナはある少女を見つけて、驚いた。
犯人を見つけたのではない。とても美しい少女だから、驚いたのだった。
ユナと同い年くらいの少女は、一人ぼっちで、ウイスキーを飲んでいる。ユナは声をかけた。
「こんばんは。私たち、きっと同い年ね」
美しい少女は、ユナをしばらくじっと見て、
「多分そうだわ」
と言った。
「私はユナ」
と言って、美しい少女のすぐ横に座った。
「……私はレン」
と、顔を赤くして、恥ずかしそうに呟いた。
いいですねっ!
続きが楽しみ!!
ユナには、レンをからかうのが、たまらなく快感だった。もともと地球人であったユナにとって、月のお嬢様を夢中にさせるのは、
一種のサディスティックな復讐の快楽があった。この快感は、しばらく復讐を忘れるのに十分なほどであった。
レンも、ユナが地球人であることは知らないので、差別の感情はなしに、ユナの術にまんまとハマり、寝ても冷めてもユナのことが
頭から離れない、というような始末だった。
毎晩、レンは学校が終わって、ユナは通訳の仕事が終わって、バーで会い、酒のほんのりとした効果の中で、夢のように、夜の月の町を
デートするのだった。
ユナには仕事で得たお金がたくさんあったので、映画にも連れて行くことができた。アクセサリーも買ってやることができた。
しかし、ただであげるのではない。必ず、レンに
「大好きなユナちゃん。買ってください」
とおねだりをさせる。
「え?なに?声が小さいよ」
すると、顔を真っ赤にして、レンは
「大好きなユナちゃん!」
と叫ぶ。
これを聞くと、ユナの胸がキュンとする。そこで、初めて買ってやるのだ。
焦らし...!!
12:ひの:2017/06/01(木) 22:29 ある晩、レンの両親に連絡を入れて、ユナは、レンと高級なホテルに泊まることにした。
一晩中レンを満喫できる。そう思うと胸が高鳴った。もちろん電話というのは、
「レンと同じクラスのユナです。勉強会をしようと思うので……」
みたいな嘘をついたのである。
ベッドに寝転がって待っていると、ユナはつい眠ってしまった。
……やがて、レンがキスしたので、目が覚めた。
「あら、いらっしゃい。いま何時かしら」
「10時」
「時間がもったいないわ……脱いで」
「え?」レンは驚いて、しかも顔を真っ赤にして、言った。「そういうことなんですか。私てっきり、勉強会だと思って。いや、私、
いやじゃないんですよ。でも、そういうのって……」
ユナはレンのあまりにも純粋な性格になかばあきれた。本当に勉強会だと信じていたとは……。しかし、そこが可愛いところだ、と思った。
「明日、テストもあるし……」
と、困ったようにレンは言った。
「じゃあ、両方しましょう」とユナは提案した。
ユナは地球一の秀才でもあるので、レンに勉強を教えるのはわけもないことだった。
「本当にわかりやすい。ユナちゃんって、本当に頭がいいんですね」
と、言われると、純粋に、嬉しくなった。
ふと、ユナは、レンの筆箱の中にチラリと見える、一枚の写真に気がついた。それを見て、ユナは驚きのあまり、そのまま床に座り込んでしまった。
「ど、どうしたの……」
レンは心配する。震える声で、ユナは聞いた。
「ね、ねえレンちゃん。その、筆箱の中の写真……」
不思議そうに、レンは、その写真を取り出して、ユナに手渡した。
「私の家族の写真だけど……」
なんという運命の悪戯だろう!とユナは思った。レンの家族こそが、まさしく、ずっとユナが探してきた、親殺しの犯人、それに違いなかった。
ユナの中で、ただでさえ倒錯していたレンへの愛情が、このことでさらに爆発してしまった。
しかし、ユナは、それを隠すように、平静を装いつつ、
「ねえ、レンちゃん。聞いて」
と、静かに話しかけた。しかしそれでもユナは、動揺の震えを隠し切ることができずに、わなわなとしてしまっていた。
レンも、突然変わってしまったユナの表情に、ただならぬものを感じたらしく、おびえながら
「……どうしたの?」
ユナが、全てを話し終わった時には、レンの顔は、涙でびしょ濡れだった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
自然と地べたに座るようになって、ユナの足にしがみつき、土下座と一緒だった。
「ぶってください!蹴ってください!傷つけてください!嬲り殺してください!どうぞ、私に復讐してください!」
思いつく限りの酷い仕打ちを、レンは自らユナにねだった。レンは、ユナを愛していたのだ。
ユナはその晩、レンを殺さなかった。
そればかりか、やっと見つけたレンの家族も、殺すことはしなかった。
一見、真相が明らかになったことで、ユナとレンは、一層仲良くなったように見えるほどだ。
しかし、二人並んで、楽しそうに夜の月の町を歩いている時、実はユナはレンにおしっこやウンチを我慢させているし、
レンの美しい着物をはぎ取れば、そこにはおびただしいいくつものアザを発見することができるだろうし、
二人がキスをしているかと思えば、実はユナがレンの唇をものすごい力で噛んでいるのである。
ある意味、水入らずのカップルの誕生である。
おしまい
すれ主さんの期待に添えたかどうかは、はっきり言って自信ありません笑
勉強不足ですしね
受けと攻めを、そのままマゾとサドに置き換えていいのかしら
まあ、別の人がもっといいのを書いてくれるでしょう
僕はこれで……
ありがと!
おもしろかった!
まだ読みたい
20:ひの:2017/06/04(日) 00:37 うりゃあ!
わたしはぼくは
1
わたしは、ぼくは、果たして女なのか男なのか、微妙なところである。
10年前―――まだ四歳の時に、どういうわけかペニスに大怪我をして、それを切り取る手術をした(父が、カップラーメンを作ろうとして、その時のお湯がかかったとか、なんとか)。
その時、親がこうした。
「このまま、欠陥を持った男として、これから生きていかなければならないのは、かわいそうだ。いっそ、性転換を行なって、完全な女として生きていかせるのは、どうだろう」
手術は大成功。わたしの名前は、葉蔵ではなく葉子となった。二回の手術でわたしの体は傷み、その影響でこれまでずっと病院のベッドで過ごして来た。
しかし、今日、初めてわたしは学校に行く。鏡を見る。女の子の体だ。
ドアを開けようとして、立ち止まる。困った。
学校の中で、わたしはどう存在していれば?男の子だった時の記憶を、少し、覚えている。車のおもちゃを、ぶーぶー言って、遊んでいた。
そのあと、女の子になってからの記憶もある。かわいい人形で遊んでいた。だけど、それは親から突然与えられた人形だった。自分から欲しいと思ったことのない人形だったから、少し驚いたけど、遊んでいるいうちに馴染んできた。
その人形は、今も、ベッドの上に転がっている。
女の子と遊ぼうか?男の子と遊ぼうか?わたしは、ぼくは、どう存在して入ればいいのだろう。
2
わたしは、ぼくは、学校で、同時に二人のクラスメートに恋をした。
二人とも、初めて学校に来て、わからないことだらけのわたしを、真っ先に、同時に助けてくれたのである。
二人は幼馴染で、一人は男、もう一人は女である。
男の方は、光一と言って、クラス一背が高く、マンガに出てくるような美少年である。ちょっと間が抜けたところがあって、勉強も、できないわけではないが、ちょっと信じられないような勘違いをする。だけど、クラス一しっかり生きているのだった。光一に比べて、他の男は、ナメクジみたいになよなよしている。
女の方は、赤理と言って、クラス一髪が綺麗な女の子。わたしは、赤理と一緒の美術部に入ったが、とても美しい絵を描く。わたしは、赤理の絵を描く姿が好きだった。集中すると、アドレナリンが暴走し、体温が上がるのか、顔がぽっと赤っぽくなる。この時の赤理が一番好きだ。
二人とも、わたしを助けてくれた。おかげで、一ヶ月後には、ちゃんとクラスに、学校に馴染むことができた。ところが、二人に同時に恋心を抱くことによって、わたしの中に、ぼくの中に、迷いが生じていた。
3
わたしの中の葉蔵が、赤理に恋をしたのだ。わたしの中の葉子が、光一に恋をしたのだ。
わたしが学校に馴染むに連れ、二人とも、助けてくれなくなった。その代わり、自然に話しかける権利ができた。
蒸し暑い6月の休み時間に、下敷きをパタパタやっている光一に、恐る恐る話しかけて見た。
「光一くん」
「どうした?葉子」
「……」
話しかけることがなくて、困ってしまった。好きだと言いたい。だけど、単純な好きではないのだ。伝えるには、ゆっくりした時間が必要だ。
その時、
「ハローエブリワン」
と、さっきの英語の授業の影響で、一時的に思考回路が帰国子女っぽくなってしまった赤理も来た。
「ヒャハハ、ハロー、くぁwせdrftgy不二子lp;@:「」!」
光一が面白がって、英語っぽく何か喋る。しかし何言ってるのかよくわからない。
わたしは、ぼくは、この時、二人の恋人に挟まれて嬉しくて、心臓が爆発しそうになっていた。
「?どうしたんだ、葉子。顔が赤いぞ」
「本当ね。大丈夫?」
ここはひとつ、ただの友達のふりをして、さそい出そう。
「ねえ、三人で今度遊びに行かない?わたし、学校のことは教えてもらったわ。だけど、この街のこと、あまりよく知らないのよ」
笑顔でーーー友情の笑顔に見せかけた、恋の笑顔。
4
X駅前に、私たちは集まった。
「X町ツアーへようこそ。えっと……まずは、腹減ったな」
光一がお腹をさすりながら言った。私たちはマクドナルドに行った。初めてハンバーガーを食べる。右側に赤理が座っていた。
「どう?」
「美味しい!」
左側には、光一。嬉しくなって笑ってしまう。
「んふふふふふ……」
「どんな笑い方だよ!」
それから、私たちは、X城跡に行く。
「ここは、江戸時代、殿様のーーー」
神妙な顔つきで、光一が説明する。赤理が遮る。
「嘘教えちゃダメよ。殿様はーーー」
赤理が訂正した。わたしは思わず笑ってしまった。
「わかったね、葉子ちゃん」
と、人差し指を立てて、ウインクする赤理が、たまらなくキュートだった。
5
それからゲームセンターに行く。
ここは、X中の溜まり場らしくて、クラスメートも何人かいた。
光一がメダルを入れると、吐き出すようにドバドバメダルが返ってくる。一方赤理は、あまりゲームをやらないみたいで、メダルが少なくなってきて、ムッとしている。
わたしは悲しくなった。一人の女として、一人の男を愛すとか、一人の男として、一人の女を愛すとか、そんな風なら、今すぐにでも好きな人に抱きつくのに。
わたしのメダルは、すぐになくなった。私が退屈そうにフラフラしていると、光一と、赤理が一枚ずつくれた。
「ありがとう!」
そして、そのメダルもすぐになくなった。
メダルを買ってもしょうがないーーーわたしは、最後にクレーンゲームをすることにした。
ガンダムのプラモデルがある。欲しくなった。
初めてのクレーンゲーム。すごく緊張した。奇跡的に、一発で取れた。
「やった!」
いつのまにか、横にいた赤理が言った。
「へえ、ガンダムとか好きなの」
しまった、と思った。女なのに、ガンダムが好きだと、変な子だと思われてしまわないか。
「いや、いとこの男の子が……好きなの」
とっさに嘘をついてしまった。
「そうなんだ。優しいね」
わたしは、ぼくは、赤理の笑顔を捏造してしまったことが、たまらなく苦しかった。わたしは、ぼくは、これから今みたいに嘘ばかりつく人間になってしまいやしないだろうか。
6
別れる時、勇気を出して、二人に手紙を出した。そこには、わたしが、ぼくが、もともと男で、後から女になったことについて、書いてある。本当は、隠して生きて行くつもりだったけど、恋をしてしまったから、打ち明けずにはいられなくなったのだ、と。大好きです、付き合ってください、と。両方の手紙には同じことが書いてある。
7
次の日、放課後に、光一と赤理から、屋上に呼び出された。
緊張して言ってみると、二人とも気楽そうにそこに立って笑っていたから、わたしはホッと、安心した。
「それで、返事は……?」
「お前、気持ち悪い」
と、光一が言った。そのまま、行ってしまった。心臓がヒヤリとして、体の力が抜けて、そのまま倒れそうになった。
赤理がわたしを支えた。泣きそうになりながら、
「赤理ちゃんは……?」
「光一なんて、気にすることないわ。偏見よ。そこまでの男よ……そして、わたしは」
赤理は、両手でわたしの顔を掴んで、熱いキスをしてくれた。
「偏見の見えないところでだけ、わたしもあなたが好き」
そのまま赤理は行った。
わたしは一人屋上に座り込んで、放心していた。空で、風に逆らい、カラスが夕日に突っ込んだ。だんだん暗くなる。人の声、自動車の音。真っ暗になった。音も止んだ。
終わり
って、なんかパッとしないなあ
そもそも、百合かどうかも微妙……
(ぼくは普通に女の子が好きだったはずなのに、こんなのばかり書いていると、怪しくなってくる……?いやいや、
ないない……)
またまた面白いのありがとっ!
書くの上手だねぇ
すれ主さん自身は小説書かんのん?
25:すれ主:2017/06/11(日) 20:03いやぁ、自分は読む専門やからな(・ω・`)
26:視点:リナ◆ZM sage:2017/06/13(火) 18:43 |_ ̄)スレ主さん、読み専、了解しました。
なんか思いついたのでスペースお借りします。
題:先輩と私/リナちーとあたし
作:レス番>>24
四月。高校入学して間もなくの新入生歓迎ライブ。
とある洋楽のコピーバンドが、私の印象に強く残りました。
元になったバンド名も曲名も知らなかったけど、
大音量にも関わらず、とても聴き心地が良かったのを覚えています。
そして、ポニーテールに結い上げた長い髪をなびかせて、
楽しそうにドラムを叩く女性の姿に、私は目を奪われました。
かっこよくて綺麗な、二年生の先輩。
ライブの後、私は「素敵な演奏でした」と伝えに行き……
先輩は少し驚いたような、照れ混じりの笑顔で
「ありがとう」と答えてくれて……
私は、軽音楽部への入部を決めました。
「リナちー、『ゲイン』って書いてあるツマミは真ん中に合わせてね。
ゼロだと音が出ないけど、大きすぎると音が割れちゃうよ」
「はいっ、先輩!」
入部してから音響機材の使い方を教えてくれたのも、
私に『リナちー』という愛称をくれたのも先輩でした。
軽音楽部は創設から十年も経っていない、若いクラブで、
その頃に流行っていた『軽音女子が題材のアニメ』の影響を受けたとか受けないとか。
当時の先輩達が、部員集めや顧問の先生を探すのに、
涙ぐましい努力をした話が脈々と伝わっているとか。
先輩はそんな裏話まで、面白おかしく聞かせてくれました。
学校生活にも、部活動にも慣れてきたある日…
「リナちー。今度の日曜日さ、あたしの家に遊びに来ない?」
思いがけない先輩のお誘いに、私は驚きと喜びを抑えて、頷きました。
期待の一年生……リナちーは、小学生の頃にピアノを習っていたらしく、
バンドではキーボードを担当している。
高校生にしては小柄で童顔…ぶっちゃけ、ランドセルを背負わせたら、
今でも小学生で通じそうだっていうのは、本人には言わないでおこう。
ついつい頭を撫でたくなっちゃうリナちーだけど、
いざ演奏となると、あたしに難なくついて来てくれる。
向上心があって真面目だし、いい子だ。
話を聞くと、どうやらお家も近いらしく、じゃあせっかくだから、と家に呼んでみた。
「お、お邪魔します、先輩」
あたしの部屋に足を踏み入れながら、リナちーはキョロキョロと周囲を見回した。
ふんわりとしたショートボブの髪が揺れる。
リスとか子猫とか、小動物を思わせる仕草……なんとも可愛らしい。
「肩の力抜いて、楽にしてってよリナちー。あんまし女らしくない部屋だけどさっ」
「そんなことないですっ!素敵ですよ!」
ぐっ、と両拳を胸元で握りしめるリナちー。
緊張をほぐす為にも、まずは座ってもらって、お茶とお菓子でもてなす。
市販のクッキーに、ティーバッグの紅茶でご容赦願いたい。
手作りのお菓子やら優雅なティーポットなんて、あたしの柄じゃないんだ。
ちなみにリナちーは時々お菓子を作るみたい。
部活の時に、みんなに振る舞ってくれた事もある。
手作りのチョコクッキーは、サックサクでめっちゃ美味しかった。
うーん、女子力高いねリナちー。
まぁ服装にしたって、リナちーが女子らしい水色ワンピで、
あたしはタンクトップにジーンズなんて男みたいなカッコだから、
女子力うんぬんは今更だけどさ。
改めてあたしは、一応綺麗に片づけたつもりの自室を見回した。
リナちーは素敵だとお世辞を言ってくれたけど、
女の部屋にしては不愛想だよなぁ、と自分でも思う。
部屋の隅には練習用の電子ドラムセット。
本棚にはドラム教本と、楽譜がズラーッと並んでいる。
で、壁には洋楽バンドのポスターが貼ってある。
クラスメート達が好きなアイドルグループより二回りぐらい年上の、
渋いオッチャン達が腕を組んで立ってる、暑苦しいポスターだ。
いいでしょ別に。あたしが好きでポスター貼ってんだから。
聴いてみると格好いいんだぞ?ハードロックとか、ヘヴィメタルとか。
そんな訳で、あたしの部屋で女の子らしいものなんて……あ、一つあった。
「あっ、くまさんのぬいぐるみ!」
リナちーが、ベッドの枕元にある『それ』を見つけた。
「クラスの友達で、学校帰りにゲームセンターによく行く子がいてさ。
取ってきてくれたんだ、ナントカキャッチャーで」
「かわいい!あの、先輩!この子、抱きしめてもいいですかっ!?」
「あはは。いいよ、ご自由に」
律儀に許可を取るリナちーに、あたしは苦笑した。
ガサツなあたしを見かねて、なかば押しつけるように熊さん人形を渡した我が友よ。
残念だったな。あたしよりも、もっと絵になる子が熊さんを抱いてるぞ。
「えへへー、くまさん、ふわふわだぁ……」
気持ちよさそうに熊のぬいぐるみに頬ずりするリナちー。
下手に可愛さアピールを狙ってやろうものなら、あざとすぎてドン引きだけど、
この娘は見た目が見た目だし、天然だからなぁ……。バッチリ似合ってる。
ふふふ、ぬいぐるみ諸共抱き寄せて、お姉さんが頭をなでなでしてくれよう。
「もぉー可愛いなぁリナちーはっ!あたしの所に嫁に来いっ!」
「ふゅっ!?」
リナちーが不思議な声を上げた。
「ふゅ」て。なんだよ、「ふゅ」て。
なにこの娘、超かわいいぞ、おい。
「……およめに、もらってくれますか?せんぱい?」
不意に、甘ったるい舌足らずな声が、あたしの耳をくすぐる。
ぽーっと上気した顔で、リナちーの黒目勝ちな大きい瞳が、
あたしを上目づかいに見つめる。
ちょ、ちょっと、リナちー?顔、近いよ?ねぇ、近いよ?
うわ、めちゃくちゃ良い匂い。なにこれ、シャンプー?
「リ、リナちー?『かわいい』とか『結婚しよ』とかさ、
あの、女の子同士じゃ、挨拶みたいな、もんでしょ?
べつに、深い意味があるわけじゃ……」
「ふふっ、慌てちゃって、『かわいい』です。
先輩、『結婚しましょ』?」
鈴を鳴らすみたいな笑い声。返された『挨拶』。
リナちーの童顔が、その時は凄く大人っぽく見えて……
次の瞬間。あたしは、唇を塞がれていた。
「んんっ!?」
「んー……」
あたしは目を見開いたままで……
至近距離のリナちーは、祈るように目を閉じていて……
理解が追い付かない。キス、しちゃってる?
誰が?あたしと、リナちーが?
密着した互いの身体の間で、むにゅ、と柔らかいものが形を変えた。
そういえばリナちーって、顔に似合わず、結構、『ある』んだったな……。
あぁ、ヤバい……思考が、まとまらない……。
『もぉー可愛いなぁリナちーはっ!あたしの所に嫁に来いっ!』
いつもみたいに軽い……
けれど優しい口調で紡がれた言葉に、
私は、自分を抑えられなくなりました。
いいえ、実際は先輩の言葉通り、
『かわいい』とか『嫁に来い』という『愛の言葉』は、
気軽なガールズトークの内だったのでしょう。
日本の法律では同性婚は出来ず、
せいぜい限られた自治体で『結婚と同じ扱い』があるだけ……
だからちょっと考えれば冗談だと解るし、普通はそれで済みます。
けれど私は、あえてその言葉を『自分に都合よく』受け取りました。
体温を重ねていたのは、どのくらいだったのでしょう?
数秒だった気もすれば、1分以上だった気もします。
互い、息つぎをするように離れて……
「リナちー?」
愛称を呼ばれて、私はハッとしました。
(キスしちゃった。無理矢理。先輩の意思も無視して)
先輩は赤味が残った、どこか困ったような表情で私を見つめました。
嫌われたらどうしよう。気持ち悪いって思われたらどうしよう。
思考が渦を巻き、後悔に満たされます。涙が、止まりませんでした。
「ごめんなさい……わたしっ……ごめ……なさ……せんぱ……ぃっ……」
「あー、泣かないでリナちー。ビックリはしたけどさ。その、嫌じゃ、なかったから」
「え……?」
おそるおそる顔を上げてみると、
先輩は視線を斜め上にさまよわせて、首筋を掻いていました。
「あたし達、女同士だし、正直、まだ混乱してるけどさ!
今は、細かい事を考えないことにしたっ!
こんな可愛い後輩泣かせたら、女が廃-すた-るもんなっ!
ほらっ、おいで、リナちー!」
「わ、ひゃっ!?」
先輩は吹っ切れたように笑うと、私の顔を胸に抱き寄せてました。
シャツが涙で濡れるのも構わず、私の頭を撫でてくれます。
ドラムで鍛えられた、引き締まった上腕。
けれど女性らしいしなやかさも合わせ持った、優しい手。
あったかくて、近くで心臓の音が聞こえて……
私は、すがりつくように先輩の背に手を回しました。けれど、力が入りません。
キーボードを弾く時みたいな、丁寧な指使いも出来ないくらいに……。
「リナちー。リナちー。かわいい。大好きだよ。リナちー」
耳元で心を揺さぶる、ストレートで飾らない囁き。
吐息の暖かさまで感じられる距離です。
何度も呼んでくれる『リナちー』は、貴女がつけてくれた愛称……。
「先輩、先輩っ!私、わたしもっ、大好きです!
幸せで、溶けちゃいそうですっ……」
「いいよ、溶けちゃえリナちー。あたしが、全部受け止めてあげるから」
「ふぁ……!」
嬉しくて、安心して……私の意識は、遠のいていきました……。
「って、おーい?」
リナちーは、すぅすぅと可愛い寝息を立てていた。
心が高ぶりすぎて失神ってやつ?
ホントにあるんだね、こういうの。
「つーか、メチャクチャ恥ずかしいこと言っちゃった!
なんだよ『全部受け止めてあげる』とか、何様だよあたし!」
う わ ぁ ぁ ぁ ぁ 。
あたしは、頭抱えてうずくまった。
その前は、あたし何言ってたっけ?
あぁやだやだ、思い出したくない。
恥ずかしくて死にたくなる。恥ずか死ぬ。
けれど、それを言う原因になったリナちーを責める気にはならなかった。
可愛いって思ったのも、好きって思ったのも、あたしの本心だもんな。
起こすのもかわいそうだけど、確かリナちーは門限あった。
このまま放っておく訳にも行かない。玄関まで背負っていこう。
母さんに頼んで、車でリナちーの家まで送ってもらう事にする。
「あらあら、リナちゃん寝ちゃったのね。
ふふっ、王子様はエスコートかしら?」
「誰が王子様だ。あなたの娘ですよ。
母親が年頃の我が子に、そういう事言うかね?」
「女の子として見て欲しかったら、少しはリナちゃんを見習ってみなさい?」
「へいへい」
ごもっともですお母様。正論に生返事する。
親子仲は悪くないけど、時々変な方向であたしをいじるからな、この母。
街灯が灯り始めた夕暮れの道。
母さんはリナちーを気づかって、静かに車を走らせる。
あたしは飽きることなく、車の中でリナちーの寝顔を眺めていた。
-END-
|_ ̄)お目汚し失礼致しました。
葉っぱ天国の規約上、過激なのはNGとの事ですが、
服着たままだし、キス+アルファ程度だし多分大丈夫…だよね?
読んで頂き、ありがとうございました。
>>30
よきかな〜
この世の外ならどこへでも
人生は一つの病院である。そこに居る患者はみんな寝台を換へようと夢中になつている。
或るものはどうせ苦しむにしても、せめて煖爐の側でと思つている。
また或るものは窓際へ行けばきつとよくなると信じている。
私はどこか他の処へ行つたらいつも幸福でいらそさうな気がする。この転居の問題こそ、私が年中、同棲中のりこちゃんと談し合つて居る問題の一つなのである。
「ねえ、りこちゃん、リスボンに住んだらどうかな?あそこはきっと暖かいからりこちゃんは蜥蜴みたいに元気になるよ。あの町は海岸うみぎしで、家は大理石造りだそうだ。それからあの町の人は植物が大嫌いで、木はみんな引き抜いてしまうそうだ。あそこへ行けば、お前のお好みの景色があるよ、光と鉱物で出来上つた景色だ、それが映る水もあるしね。」
りこちゃんは答えない。
「りこちゃんは活動しているものを見ながら静かにしているのが好きなんだから、オランダへ――あの幸福な国へ行って住もうとは思はないかい。画堂にある絵で見てよくほめていたあの国へ行ったら、きっと気が晴々するよ。ロツテルダムはどう?何しろりこちゃんは檣マストの林と、家の際に舫もやってある船が大好きなんだから。」
りこちゃんはやっぱり黙っている。
「バタビヤの方がもっと気に入るかも知れない。その上あそこには熱帯の美と結婚したヨーロツパの美があるよ。」
一言も言はない。――りこちゃんは死んでいるのだろうか?
「じゃありこちゃんは患っていなければ面白くないような麻痺状態になつてしまったの?そんなになっているのなら、『死』にそっくりな国へ逃げて行こう――万事私が呑み込んでいるよ、かわいそうなりこちゃん!トルネオ行きの支度をしよう。いやもっと遠くへ――バルチク海のはてまで行こう。出来るなら人間の居ないところまで行こう。北極に住もう。そこでは太陽の光はただ斜に地球をかすって行くだけなのよ。昼と夜とののろい交替が変化を無くしてしまう、そして単調を――虚無の此の半分を増すの。そこでは長いこと闇に浸っていられる。北極光は私たちを楽しませようと思って、時々地獄の花火の反射のように薔薇色の花束を送ってくれるわきっと。」
遂に、突然、りこちゃんは口を切った。
そして賢くもこう叫んだ。
「どこでもいいわ、この世の外なら!」
良いね(・ω・`)
面白いよ。
あげ
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