コアラさんがいる。
アリさんもいる。
アリさんが、コアラさんにたかる。
コアラさんは、払いのけようとしたのに、
アリさんは1000匹くらいいるから、
きりがなかった。
「いて、いてててて」
アリさんは、コアラさんを食べるつもりだった。
ガジガジ、かぶりついた。
「こりゃ、たまらん!」
コアラさんは、遠くで未開人が焚き火しているのを見つけて、
息を止めて、その煙の中に入った。
「げほっげほっ」
「リカちゃんっ!げほっげほっ!」
アリさんたちは、みんな煙で死んだ。
コアラさんは、煙から脱出して、深呼吸。
「すうううううううう、はあああああああ。
ああ、呼吸ができるって、いいこと。
太陽キラキラ、嬉しいな」
ふと、未開人が、槍でコアラさんを突き殺した。
そして、あの焚き火の炎で焼いて、未開人たちで
その肉を分けて食べた。
さっきから、コアラのことをじっと観察していた未開人の子供が言った。
「ねえ、これを食べたら、僕も、ひどい目にあうような気がする」
大人たちが口々に言った。
「でも、食べないと、死んじゃうよ」
「弱肉強食、弱肉強食」
「生まれた時点で、もうひどいのさ」
未開人の子供は、
「う、うん……」
とうなずいた。
子供は、元気なさげに、そこから離れた。
いちもくさんに走って、山に登り、そのてっぺんで、
「うがああああああああああああああああああああああっ!!!」
と叫んだ。その声は島中に響き渡った。
「ホロー」
と、自分の名前を呼ばれた子供は、思わず振り向いた。
「どうしたの?突然叫んで」
それは、同じ未開人の女の子シュリーだった。ホローを心配して、追いかけてきたのだった。
「シュリー」ホローは言った。「どうもしないさ」
「どうもしないなんて嘘」
「僕、生まれてこなかった方が良かったのかな……」
「バカじゃないの?」
「だって、怖い……」
「誰だって怖いわ」
「怖いなら、ダメだ」
「バカ!」
シュリーは、ホローの頬をばしんと叩いた。
「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!!!」
と、泣きながら行ってしまった。
ホローは一人で、大地に頭をつけて、泣いていた。