やさしいギロチン

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1:匿名:2017/07/08(土) 02:39

 僕は恋をした。
 恋なんて馬鹿げてるとずっと思っていたが、やっぱりそれは正しかった。
 僕は、自分が馬鹿げていると感じる。でも、どうしようもないのだ。
 心は彼女の方へ行ってしまうのに、体はベッドの上で、動くこともできないでいるから、
引き裂かれそうだ。 

2:匿名:2017/07/08(土) 02:47

 彼女は今日子という名前だ。明日香という、ほとんどそっくりな姉がいる。
 すると、昨日子という妹がいそうなものだが、それはいない。
 しかし、インターフォンがなって、出てみると、そこには今日子が立っていて、
「Kくん、大好きっ!」
とだきついて来た。
 僕は、突然、何の脈絡もなく、妙な気がしたが、顔が真っ赤になる程嬉しかった。
 部屋に入れた。
「でも、今日子ちゃん、どうしてーー」
 彼女は少し怒ったような顔をして言った。
「私、今日子お姉ちゃんじゃなくて、昨日子よ」
「えーー昨日子ちゃんって、いたの?」
「いたわよ!」昨日子は泣き始めた。「私のこと、何でもないと思っているの?」
「いや、そんなことないよ」
と僕は抱きしめた。今日子でなくていいやーー今日子と昨日子は、こんなにもそっくりなのだから。
 匂いまで同じだ。
 

3:匿名:2017/07/08(土) 02:55

 昨日子は言った。
「私、自殺するのよ」
 僕は泣いてしまいそうになりながら聞いた。
「え、どうして。僕たち、愛し合っているんじゃなかったの」
「愛してる!誰よりも、世界で一番、宇宙くらい愛してる!でもね」昨日子は、
目を伏せて言った。「どうしても、私、自殺しなければいけない気がするの。人生には絶望してない。
Kくんと、こんな風になれて、むしろ生きてるって、素晴らしいと感じる。だけど、どうしても自殺しなければ
いけないような気がする」
「じゃ、じゃあ!」僕は決心して言った。「僕もその時、一緒に死ぬよ!」
 昨日子は、僕の顔を優しく撫でて、
「嬉しい…!」
と言った。

4:匿名:2017/07/08(土) 03:00

 日曜日に、僕たちはその約束をした。
 そして昨日子は帰った。
 昨日子がいなくなると、途端に悲しくなった。
 しばらくして妹がテニス部から帰って来て、
「にいちゃん、お腹すいた!」
と呼んだ。
 母は仕事でいつも遅い。置いてある1000円で、適当に何か買って食べなければならない。
「待ってて、今買ってくる」
と言って、僕は外に出た。

5:匿名:2017/07/08(土) 03:05

 途中で胡散臭い占い師に声をかけられた。
「お、お前さん!ちょっと、待ちなさい!」
 僕は無視して行こうと思ったが、占い師の方から寄って来て、
「恐ろしい!こんな相を見るのは初めてだ!」
と言って来た。
 僕は少し気になったが、そうやって占い料をぼったくる気なのだろうと思って、
そのまま行こうとした。それでもついてくる。
「いや、お金はいらんよ。ただ、気をつけなさい。これは心配で言ってるのだ。
お前さん、近いうちに死ぬかもしれん」
 そりゃ、今度の日曜日に自殺する気だから、当然でしょ、とは言わなかった。
「そりゃどうも」
 僕はお弁当を買って、帰った。

6:匿名:2017/07/08(土) 03:13

 それから毎日、昨日子は遊びに来た。そして夜が来ると帰った。
 そんな風にして、とうとう日曜日が来てしまった。
 僕たちは遊園地で待ち合わせをしていた。遅れていくと、
「あ、Kくん!遅いよ」
と、昨日子は、嬉しそうにカバンの中から、包丁をチラッと見せた。
「う、うん…」
と、僕は、曖昧に頷いてしまった。死ぬつもりが、本当はないから、曖昧になってしまうのか。
これではいけない、昨日子と死ぬことは幸せなことなんだぞ、と僕は自分に何度も言い聞かせていると、
「行こっ」
と昨日子は僕の腕をぐいぐい引っ張った。

7:匿名:2017/07/08(土) 03:20

 観覧車、メリーゴーランド、ジェットコースター。
 時間の流れはあっという間で、すでに夕日は傾いていた。
「海とかで死のっ」
と昨日子は言った。
「う、うん…」
 昨日子はまた、僕の腕をぐいぐい引っ張って、海辺に連れて来た。
 夜になっていた。
 僕たちは、砂浜の上で裸足になって、しばらく歩いた。昨日子は突然立ち止まって、
「さあ…」
と、言って包丁を出した。そして
「本当は同時に逝きたかったけど、包丁は一個しかないから、しょうがないね。じゃあ、じゃんけんで勝った方から、先に死ぬ。
いいね?」
「う、うん…」

8:匿名:2017/07/08(土) 03:23

「最初はぐー」
 僕の心臓は、ばくばくしていた。
「じゃん」
 目がよく見えない。足がガクガク震える。
「けん」
 逃げ出したい。だけど、金縛りのように、体が動かせない。
「ぽんっ!」
 昨日子はパー。僕はグー。
「じゃあ、私が先に死ぬのねーー私、Kくんに殺されたいな」
「う、うん…」 
 昨日子は、僕に包丁を手渡した。

9:匿名:2017/07/08(土) 03:26

「嬉しいな、嬉しいな」
と、昨日子は言った。
「…」
「…さ、早く」
「うわあああああああああああああああああっ!!!」
 僕が昨日子を突き刺すと、その瞬間、昨日子と、包丁は、砂になって、砂浜に崩れ落ちた。
 静かになった。
 海がざあざあ言っている。風の音もする。
 月が出ている。星もある。

10:匿名:2017/07/08(土) 03:27

ま、「雨月物語」のパクリだな。
絶望するな。
グッド・バイ!


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