初めまして。
『ここは明確スイーツ研究部!』
『1%の叶わない恋』
『類木川小学校児童会』
作者の、元モンブラン、莉愛、絵菜。
今はまいです!
一度も聞いたこと(あったらコメント等お願いします)ないですよね。
この物語は、レインボーハッピーというアイドルグループの物語。
では、どうぞ。
7.突然の電話
何をすることも出来なかった。
レイハピメンバーとしてダメ〜!
プルルルルプルルルル
「藍出てー」
ママがキッチンから声を上げ、わたしは受話器を取る。
美音ちゃんからだった。
「藍ちゃん今大丈夫?」
「うん、オーケー」
美音ちゃんと約束して、近所の公園へ行く。
ちょっと長くなるらしい。
久しぶりにブランコに乗りながら美音ちゃんを待つ。
「あ、金宮さん」
この呼び方と言えば!
ストレートのロングヘアー。
高くて透き通ったような声。
身長も高くてカッコいい美少女。
リリー!?
この辺りに住んでたの!?
美音ちゃんがリリーと会うとまずいので、とりあえず家に帰ってもらう。
それから、訪問することにした。
「すぐそこの家。宇野って表札あるから」
リリーは引き返して、白い、一際目立つ家に入った。
さすがリリー。
小さい時から働いているだけあって、儲かってる!
家もめちゃめちゃ大きいもん。
「あれ、藍ちゃん!」
美音ちゃんが別の入り口から入ってきた。
リリー見られてないよね。
反応はしてなかったのでホッっとしつつも、リリーの家をながめた。
「ベンチ座ろ」
美音ちゃんが指差したベンチには、気付かなかったけど、陽菜ちゃん、琴ちゃん、千尋ちゃんがいた。
「みんな!」
わたしはベンチに駆け寄る。
久しぶりに会ったかもだよね。
琴ちゃんが、千尋ちゃんと身を乗り出した。
「何か美しくなったね!」
「へっ?」
千尋ちゃんの、唐突な誉め言葉に照れつつも、陽菜ちゃんのヘアピンに目を止めた。
「ヘアピン変えた?」
「藍ちゃん気付いてくれたぁ!ありがとう。これ、ママが買ってくれたの」
買ってくれたってワードで思い出したけど、わたしお金返してない。
東京旅行の。
わたしが貯めてるお金で余裕に返せるけど。
「美を研究してる子みたい」
琴ちゃんがにっこり笑う。
研究なんかしてないよ。
ただ、ゆっちを真似してるだけだもん。美しくなった…。
うんん。
美しいのは、ゆっちだよ。
普通の女の子のわたしは、うっすりため息をついた。
8.みんなの支え
千尋ちゃんは、心配そうに顔を覗き込んだ。
「大変そうだけど、大丈夫?リリーが抜けるとか何とか」
もうバレてるんだ。
世間に出るのって本当に早いんだな。
思わずビックリしつつ、うなずく。
「リリーのブログに書いてあった。青空キラリに戻るって」
「レイハピ欠けるの早いよ〜」
美音ちゃんと陽菜ちゃんが悲しそうにつぶやいた。
確かに早い。
結成2ヶ月とか聞いたことないもん。
「すごい大変だと思ったから、ちょっと呼んだの。来るのだけでも疲れたかもだよね」
「うんん、ありがと」
琴ちゃんに背中をさすられて、ちょっと冷静になれた気がする。
リリーはそう言ってる。
だったら仕方ないんだ。
レイハピに戻る気はないんだから。
なら、青空キラリよりレイハピって思えるようにしなくちゃ。
「どう、落ち着いた?」
美音ちゃんに聞かれて、わたしは肩の力、いろんな力が抜けたのに気付いた。
「みんな、ありがとう」
わたしは立ち上がって、みんなを見回す。
夕暮れの公園。
みんなはホッっとした顔で解散した。
名前変えました。
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9.レイハピの華
みんなと別れた後、わたしはこっそりリリーの家へ向かった。
確かに、宇野さん家だね。
ドアフォンを鳴らすと、リリーの声が聞こえた。
「入ってちょうだい。ドアを開けて、入ったらすぐ閉めて」
そうだね。
特定されたら本当に大変。
リリーなんかはねえ。
わたしなんかより人気だし。
「お邪魔します」
言われた通り、ドアをすぐ閉める。
リリーが立っていて、リリーの部屋に案内された。
「うわっ、リリーの部屋カワイイ」
「そう?普通でしょ。あとさ、宇都って呼んでくれる?」
とうとう名字呼び!?
でも、ここで反論して話が聞けないなんてダメだ。
ここは我慢我慢。
「宇都、で、いい?」
「ええ」
さんも付けずに呼ぶと、リリー…宇都も金宮と呼んできた。
なんか、ヘンなかーんじ。
「金宮、わたしが青空キラリ戻ったらどうなると思う?」
わたしは、うーん?と考える。
宇都がいなくなったら、結構変わると思う。
だから、一番大きなことを考えていると、宇都はつぶやいた。
「一瞬で出ないくらい、わたしの存在って小さいのよ」
「そんなことない、だって…」
「金宮にわたしの何が分かってそんなこと言えるの!?青空キラリから抜けてから、普通のところにブログ立ててやってるけど、抜けたこと書いたわよ」
もうあっという間に拡散されてる、ってことだよね。
宇都は、天井を仰ぐ。
悲しそうな目で。
「わたしはね、宇都がいなくなると、レイハピの華がなくなると思う」
わたしの言葉に、宇都は息を漏らした。
トリップも変えました。
証拠に前のトリップ。
今のが↑。
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11.届いた気持ち
宇都に見つめられて、ちょっとたじろぐ。
だけど、体勢を立て直す。
「そりゃあね、わたしやゆめりんは、スカウトだから初めてだよ。宇都みたいな、元からやってる子とは違うのは仕方なくない?」
「だからよ!なのに、わたしばっかり指摘する。それだけ邪魔なのよ」
「違うってば。宇都が元からやっててわたしたちと違うから、伸びて欲しいんだよ。指摘ってそういうことだよ。伸びてほしくない人に教えない」
我ながらいいこと言った!
そんなことを思いつつ、宇都を見る。
宇都はにっこり笑った。
「ありがとう。あいぴー。やっぱり、あなたはいい子ね。だからスカウトされたのかも」
あいぴーって呼んでくれた!
宇都…うんん、リリーは、スマホに向かって何か打ち付けている。
それが終わって、見せてもらう。
『タイトル やっぱり戻るのです!
内容
わたしは恵まれてるね〜♪
みんなが応援してくれてるし、あいぴーって仲間が。
レイハピって仲間がいるから。
戻るね…!
迷惑かけてごめんなさい。
わたしはレイハピが大好き!』
伝わった!
この思い。
わたしはリリーと微笑みを交わして、家へ帰った。
すみません。
トリップ変えるの忘れてました。
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12.ゆっちだけがいない
今日は個人ロケ!
東京ガールズ事務所へ向かう途中、優ちゃんとおしゃべりしていた。
たまたま会ったんだよね。
「頑張ってね、藍ちゃん!」
「優ちゃんもね!」
別れると、事務所へダッシュ。
そのまま階段を駆け上がる。
すると、リリーがスタイリストの人に髪の毛をアレンジしてもらっていた。
いるじゃん、リリー。
「おはおは〜。リリーじゃん!ブログ見たよ。あいぴーナイッス」
ゆめりんがピースする。
わたしもし返した。
楽屋でレイハピTシャツに着替え、レッスン室へ。
まずは朝礼みたいなのから。
「今日は、佐山さんが撮影で一泊二日の日程でいません。個人ロケを行います。前に行ったロケは、それで放送。第2回の個人ロケです」
小保さんが説明する間、あくびが止まらなかった。
今日が個人ロケって聞いて、めちゃめちゃ練習してたもん。
「ちょっと、藍?あくび禁止」
「すんません」
小保さんににらまれて、ドッっと笑いが起こる。
ちょっとみんな!
ここ、笑うタイミングじゃないでしょうよ!
「今着ている黒のレイハピTシャツで行います。以上」
朝礼が終わり、スタイリストさんにセットしてもらう。
ゆっちがいないと寂しいな。
いつもだいたいふたりだし。
アイドルって、メンバー決まってるから、誰かとだけ特別な関係とかダメなんだけど。
「藍ちゃんは髪型どうする?」
「編み混みしてください」
スタイリストさんが編み混みしてくれているとき、すごく思った。
わたし、個人ロケ大丈夫かなって。
だって眠いもん。
今のがこれ。
分かっていただけましたでしょうか。
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13.ようかんの食リポ
オーケー、レッツゴー!
スタッフさんたちも引き連れて、『日本が誇るスイーツ広場』へ。
人気メニュー、ようかんと大福をチェックします!
カンペに、『笑顔で周りの人に話しかけて!』と書いてある。
その通りに話しかけていく。
「おはようございま〜す」
「あ、あいぴー!」
「レインボーハッピーの子よ!」
「テレビで見たことある〜」
わぁー、結構有名じゃん。
もうこんなにいけてんだね。
ブレイク早い…。
「ありがとうございま〜す」
みんながわたしたちを取り囲む。
スタッフさんたちが、みんなをもうちょっと離れるように指示。
かわいそうに。
別にいいのにさ。
「はーい!ここは、東京都にある、日本が誇るスイーツ広場でーす!」
わたしが声を張り上げる。
みんなにお辞儀しながらお店に入る。
「失礼しま〜す。わたしは、レインボーハッピーのあいぴーこと藍。ようかんと大福をチェックしに来ました!」
「いらっしゃあい!」
一番大きな個室へ案内してもらい、スタッフさんと話す。
リリーとかは、多分スタッフさんと友達になってるんだろうな〜。
「あいぴーはようかん好き?」
「食べたことないんですよ〜。だからめっちゃ楽しみです!」
これはマジね。
本当にようかんって食べたことない。
大福はあるけど。
よーし、逆に聞いてみよ。
「スタッフさんは好きなんですか?」
「ま、まあ…」
「嫌いそっ」
わたしが突っ込むと、辺りが笑いに包まれた。
こんな感じでいいかな〜。
すると、店員さんがようかんを持ってやって来た。
「こちらが、本店人気のようかんになります!」
「ありがとうございまーす。わぁっ、カワイイ〜!美味しそ〜う」
この形カワイ〜イ。
フォークで小さな塊にして、パクリ。
店員さんもわたしを見ている。
「ん〜!」
めちゃめちゃうまい!
何このスイーツ。
こんなものが存在してたの!?
「めちゃくちゃうまいです。超絶美味しい!柔らかいし、甘さがちょうどいい感じで」
ようかんをあっという間に平らげると、次は大福がきた。
イチゴが乗っかった、真っ白な。
まるで透けるくらい。
14.アイドルリポーター
すぐに大福も来て、わたしの目はさっき以上に輝いた。
すごいいい香り!
落ち着くんだよね、大福の香り。
よく食べてるからかなあ。
「美味しそ〜う!じゃあ早速食べてみたいと思います。いただきます!」
大福を、一口小さく。
中に何が入っているのか分かるようにするためだよ。
カメラが、大福の中を撮す。
「うわぁっ!美味し〜い。今まで食べたことないくらい美味しいです!」
大福を、また一口と食べていく。
食リポも忘れずにね。
「すごく濃厚で、口いっぱいに大福の甘さが広がります!いちごも甘酸っぱくて最高です」
大福も、ようかんと同じように平らげると、最後にお店の人に質問。
これが結構大事らしい。
「大福って1日どれくらい売れるんですか?」
「そうですね。多い日ですと、50個くらい売れますね」
「多い〜!売り切れちゃいますね!」
カンペを見ると、『作ってるところ見ます』と書いてある。
見れちゃうの〜?
私、大福の作ってるところは見たことない。
見る機会もなかったし。
レイハピやってて見れるなんて!
「なんとですね!大福の作ってる工程を見せていただくことになりました」
ひとりでカメラに向かって拍手する。
席を立ち、厨房へ向かう。
大福の香りがもっとする!
「いい匂いめちゃめちゃするんだけど!ヤバイ!」
カメラで伝わらない香り。
これはめちゃめちゃ伝える!
厨房の中で、クルリと一周して、カット。
ここで、エプロンを着るの。
厨房で働いてる人と同じエプロン。
着ると、また同じところでクルリ。
ここから撮影がスタート。
「厨房で働く、金宮でーす!厨房の様子をリポートします」
まずは、店長さんが作ってるようかんの様子からリポートする。
「私がさっき食べたようかんでーす!こんなに手間かけて作ってまーす」
ようかんコーナーを終わり、次に大福を作ってるところへ。
リポーターも楽しいな。
アナウンサーになれば出来るかも。
ちょっとニヤニヤしながらリポーターとしてリポートしたのだった。
15.書道教室でロケ!
お店を出ると、早速カンペに何か書いてある。
『読んでください。』と。
読み終わると、カンペがめくられる。
「え〜、今度は、今までスイーツとか食べてたんですけど、日本の和を知るために、書道教室へ行ってみたいと思いまーす!」
ひとりで手を叩くと、すかさずスタッフからつっこみ。
「カンペ丸読み…」
「ちょっ、思っても言わないでくださいよ〜!」
ちょっと歩き、ロケ車に乗って書道教室へ向かう。
わたし、字下手なんだよね…。
ちょっとゆううつかも。
ロケがイヤなんて言えないけど。
スタイリストの人たちに格好を直してもらい、ロケ車は停車。
「降りてくださーい」
降りた時点で、カメラは回る。
ロケ車を降りるとき、「着いた〜」とつぶやいてみた。
とりあえず話すことって大切だよね!?
「その書道教室。こちらになります」
スタッフが指差してカメラが向けられた建物。
いかにも和ってイメージ。
それをそのままつぶやきながら、足を傾ける。
「すごいね、ここ。カッコいい」
すると、カンペに大きな字で『ワープジャンプ』と書いてあるのに気付いた。ワープジャンプとは、レイハピロケで決めた言葉。
ジャンプしたら移動してるとか、変わってるみたいな加工の仕方の撮影法。
「では!」
あれっ?
またカンペに書いてある。
『着替えまーす、せーのって言って』って、そのまま〜!?
「ちょーっと着替えたいと思います!せえのっ!」
カメラが切られ、着替え。
私服だったけど、書道教室の一角で和服、袴を着る。
まだ生徒さんと会っていない。
こっそり、音を立てないように。
「せーのっ、だんっ!袴、着替えましたよ〜。和服って聞いてたんですけど、レイハピあいぴーって洋服のデザインでーす」
さ〜、サプライズみたいな感じで、生徒さんを喜ばしちゃうよ!
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名前変えました。
16.みんなとLet's 書道!
「失礼しま〜す!わたしは、レインボーハッピー略してレイハピのあいぴーこと金宮藍です!よろしくお願いします!」
生徒さんは、口をあんぐり開けていて、ビックリしている。
結構有名になってきたかな…。
「みんなわたしのこと知ってるかな?あ、書道頑張ってね、ごめんね」
書道の先生、峰音先生から物の名前を教わる。
墨とか硯とか文鎮とか、ムズイ!
だけど、頑張って覚えること30分。
やっと筆を握ります!
「藍って大きく書いてみてください」
真っ白な半紙にのびのびと書かれた峰音先生の『藍』。
わたしの前にある真っ白な半紙に、真っ黒な墨を浸した筆を近付ける。
「のびのびしてていいですよ!」
わたし上手いっ?
最後の止めを書き終わる、と。
峰音先生はうーんと腕を組む。
「あいぴーはのびのびしてますから、もっと上手くなります」
ウソ!
もう無理かと思ってた。
わたしは、峰音先生にもっと教わって、ロケも忘れてみんなと仲良く藍の字を書いた。
17.素のままのわたし
カットがかかる。
休憩時間だ。
レイハピの事務所の方で用意していた飲み物をちょうど教室に来ていた生徒さんや峰音生徒に配る。
「藍、ちょっと」
スタッフさんに呼ばれて、書道教室から出る。
怒られるのかな…。
ドクンとしつつ、スタッフさんの口元をずっと見つめる。
「すごく、途中から楽しそうにやってて、良かったんだけど…。初めが固かったわ」
「すみません」
スタッフさんは「いいのいいの」と言って背中を押した。
「どうして藍がスカウトされたかっていうと、お姉さんが断ったからって思ってない?」
「思っています」
スタッフさんは微笑んだ。
そして、一枚の紙を取り出した。
「小保が書いてた紙。藍は、素のままで笑っていけるって言ってたわ。出来てる?」
出来てないかも。
すると、またスタッフさんは口を開いた。
「視聴者さんが見たいものって何?藍がスカウトされる前、どんなテレビが好きだった?」
「えっと、好きな芸能人が出てるテレビ、ドッキリ、ホラー…」
「これはドッキリやホラー企画じゃないでしょ?藍が、好きな芸能人になればいいのよ。そのためには、どうしたらいいと思う?藍の好きな芸能人は誰なの?」
好きな芸能人は、夢歌ちゃん。
それから〜、菊音ちゃんも大好き!
それをスタッフさんに言う。
「夢歌ちゃんや菊音ちゃんのどんなところが好き?」
「う〜ん。いつも楽しそうにしてるところや、飛び抜けた欠点があるところです。面白いから」
スタッフさんは、わたしの両肩をガシッっと掴んだ。
「それを真似してみたら?きっと大好きな芸能人になれるわ。わたしは藍を信じてる」
書道教室にスタッフさんと入る。
何でこんなこと知ってるんだろう。
「そろそろいいですかね〜?」
誰かがそう言って、わたしは定位置である席に座った。
18.初サイン
出来上がった『藍』。
我ながら上出来〜!
峰音先生は、はなまるを朱液で書いてくださった。
「ありがとうございまーす!」
最後に、書道の片付けまでやらせていただく。
墨の香り、忘れないようにしなきゃ!
めちゃめちゃいい香りだもん。
筆をペットボトルの中で洗い、書道教室の貸し筆ボックスに返却する。
「藍、上手かったね」
うったんこと内海さんが親指を上に立てる。
良かったって意味。
良かった〜。
自信なかったもん。
「来ていただいてありがとうございました!またお越しください」
峰音先生がお辞儀する。
わたしをはじめとするスタッフさんもお辞儀した。
うったんが小さな声でわたしを呼ぶ。
カンペに何か書いてある!
これを読めばいいの?
「ここに、レイハピの藍が来た記念にサイン書いてもいいですか?」
「もちろんです。お願いします」
うったんが差し出した色紙に、ゆっちが考えてくれたサインを書く。
慣れてきたかも。
前、めちゃめちゃ練習したから。
「ありがとうございました!失礼しました!」
書道教室のドアを開け、生徒のみんなに手を振った。
「バイバ〜イ!」
いい思い出!
カンペに書いてあるのは、『企画終了まで1分前。早くなるの大丈夫』。
そろそろ締めくくりね!
「はい、ということで、和菓子と日本の文化を紹介すると共に身につけていきました!これからもどんどん身につけていきたいと思いま〜す!」
拍手して、終わりだけど〜と困ったところに、カンペを読むという指示が。
ふむふむ、そういうことね!
「レイハピガール!」
カットがかかり、ロケが終わった。
ロケ車に乗って事務所に帰る。
は〜、疲れた。
わたしはロケ車でゆっくり寝た。
19.レイハピらしく
翌日の朝。
久しぶりに全員がそろった。
「なんか久しぶりだね、リリー」
ゆっちが、ちょっとヘンな感じだけどつぶやいた。
相変わらず、ゆっちとリリーってヘンな空気なんだよね。
「ねえねえ、明日ついに初ミニアルバムが売られるよ!何か明日したくない!?わたしやりたい!」
ゆめりんが声を上げた。
中では一番ゆめりんと仲良しのリリーがそれに乗った。
「そうね…。青空キラリだった時は、アルバムが…」
「ねえ、リリー。もうやめない?」
ゆめりんが突然リリーに言う。
どうしたことかと静まった。
みんな、ゆめりんを見つめる。
「青空キラリは、青空キラリはって言うの。わたしたちはレイハピだから、レイハピらしくやろうよ!」
小保さんがちょうど着ていて、ゆめりんの話を聞いていたみたい。
リリーが話し出そうとしたのに、小保さんがなぜか口を開く。
「さすが夢乃。レイハピメンバーで考えたらいいと思うわ」
こちらも相変わらず語尾に『わ』が付いていて、ちょっと気持ちわ…。
続きは言わない言わない。
もう慣れてきたしね!
「じゃあ、こんなのどうかな!朝早くちょっと地味な格好で売り場に行き、一番初めに買ってくれた人に一曲歌ってあげるの!」
わたしの案に、ゆめりんはすぐ賛成。
ゆっちも「いいね」と言ってくれた。
小保さんも、「やってみよう」と言い、すぐ売り場へ電話をかけた。
「あいぴー、あの時は本当にありがとね。戻してくれて。救われたわ」
「うんん」
わたしは、明日が待ち遠しかった。
20.ついに発売日
とうとう発売日がやって来た。
事務所のとなりのショッピングモールの一角、CDショップへ入る。
この近くにステージを作ってもらい、ここでひとり買ってもらった時点で一曲歌うことになった。
衣装は、レイハピ練習着。
新しいTシャツ作ったんだって。
「そのTシャツの上に、暑いけどもう一枚Tシャツ着て。下は、メンバーカラーのスカートね」
小保さんがハンガーにかかったTシャツとスカートを指差した。
カワイイスカート。
ロケ車の合間をぬってショッピングモールへ向かう。
CDショップ〜!
レイハピコーナーが出来ていて、大量のミニアルバムが置かれていた。
「昨日、ミニミニミニミニ〜ライブの練習したでしょ?中学生戦隊レインボーハッピーの。頑張るよ!」
「あっ、開店だ」
お客さんは、続々と入ってくる。
バレないように、頑張るぞ。
21.初ミニミニミニ〜ライブ!
おっ、手に取った!
ミニアルバムを10枚くらい持ち、レジへ向かう。
他のお客さんもミニアルバムをどんどん購入してゆく。
「みんな、みんな!」
ゆめりんが呼びかけ、ひとり目の人がレジを通り過ぎると共に、みんなでドドドッっとつっこむ。
「せーのっ!」
ゆめりんが声をかけ、みんなで地味な服を脱いで、練習着に!
「お買い上げいただき、」
『ありがとうございましたーーっ!』
周りでスマホを手にしている人たちがたくさんいる。
ファンの方だよね!
「じゃあ、ちょっとこっちに来てください!」
一番初めの方を、小さなステージに案内する。
人だかりがそのまま来て、噂などを聞き付けた人たちも来た。
「皆さん、集まっていただき、」
『ありがとうございまーーーす!』
みんな「わーわー!」と盛り上がっていき、どんどん人は増えていく。
自己紹介からだよね。
「では、自己紹介したいと思います!あいぴー」
「はーい。では、わたしの自己紹介やっていきます。レイハピガール!を見ていない人も、真似してください」
自己紹介が一通り終わる。
ゆめりんまでいってもまだまだ人は増えていくばかり。
「では、わたしたちの初めてのミニアルバム初日発売をもちまして、ミニミニミニ〜ライブをします!聴いてください、中学生戦隊レインボーハッピーです!」
ゆめりんが言い終わると、曲が流れ始める。
マイクを握り、前を見る。
そして、にっこり!
「わたしっ、初代リーダーゆめりん」
「わたしっ…」
『レインボーハッピー!!!』
中学生戦隊レインボーハッピーの曲が終わった。
「ありがとうございまーす!これで、残念ですが、お別れになります」
ゆめりんの言葉に、みんなは「えーーーーーーー」と声を張り上げた。
メンバーからコメントの時間。
「まずわたしから!レイハピのリーダーやってて、こんなにまとまれたことはないって思ったし、感動したことはないって思いました。こんな気持ちをさせてくれて、ありがとーーー!次はリリー」
「はい!わたしは、元青空キラリメンバーで、全然レイハピと違うなって思いました。個性的なメンバーがそろっているレイハピが大好きです!次はゆっち!」
「初めてミニアルバムを出させていただいて、本当に本当に感謝です!これからもレイハピ活動続けていきますので、応援よろしくお願いします!最後はあいぴー」
「本当は泣くつもりじゃなかったんですけど、泣いちゃいましたーっ!…でも、みんなに会えて嬉しいからだと思いますので!本当にありがとう!」
みんなのコメントが終わり、本当にお別れした。
わたしは、嬉しさと悲しさの涙がポロポロ流れてきた。
(つづく)
あとがき
こんばんは!
『*レインボーハッピー*』の作者、相原梨子です。
3巻はいかがですか?
なかなかいろいろありましたね。
私も、どんなことが起こるんだって不思議でした。
初ライブで涙の藍ちゃん。
皆さんは感動して泣いたことありますか?
私はあります。
小説を読んで泣きました。
私が書いている小説で、涙を流してくれる人がいてくださったら嬉しいです。泣いたら、報告お願いします!
最後になりましたが、コメントをくださった方々、読んでくださった方々、本当にありがとうございます!
これからもどうぞよろしくお願いします!
初ライブが嬉しい相原梨子
次回予告
ついにライブ本格始動!
初めての本格ライブにレイハピはどう動く!?
アルバムも、ライブに合わせて大量に出ます!
『*レインボーハッピー* 4』
人物紹介
*金子 藍*
メンバーカラーはピンク。
スカウトされて芸能界へ。
愛称はあいぴー。
特技はピアノ。
*見水 夢乃*
メンバーカラーはライトブルー。
レイハピのリーダーで愛称はゆめりん。スカウトされて芸能界へ。
夢歌の妹。
*佐山 結奈*
メンバーカラーはイエロー。
元モデルからアイドルへ。
愛称はゆっち。
特技は英語。
*宇都 りりか*
メンバーカラーはパープル。
元青空キラリメンバー。
愛称はリリー。
特技は写真撮影。
1.わたし、藍!
今日も撮影。
現場に入り、指定された椅子に座る。
次回から現場がリニューアルされるので、この現場とはおさらば。
最後の撮影になるんだ。
「あいぴー、楽しみだねっ!」
あいぴーとは、わたしのこと。
本名は、金子藍。
芸名は、金宮藍です!
どうして芸能界に入ったかって?
それはスカウトされたから。
本当はお姉ちゃんをスカウトしたんだけど、断ったの。
お母さんが、わたしとお姉ちゃんは似るって言ったから、芸能界に入ったってわけで。
今では、国民的アイドル、レインボーハッピーのメンバーです!
「おーい、あいぴー?」
「はいぃぃぃ!」
呼んできたのは、ゆっちこと佐山結奈ちゃん。
元モデルで、同じレインボーハッピーメンバーなの。
特に仲良しの友達だよ!
「その服で撮影するの?」
わたしは、さっきまで初シングルを出すので、その練習をしていて、練習着のままだということに気付いた。
一番初めにもらった黒いTシャツ。
「ありがとう、ゆっち!」
ちょうど担当の小保さんがいなくて、ほっとしたのもつかのま。
楽屋の私服にすぐ着替えた。
レインボーハッピー、略してレイハピの番組は、レイハピガール!
その撮影は、基本私服で行う。
「急いで、あいぴー!始まるって!」
ウソ!
わたしは、急いで着替えたのだった。
2.撮影開始!
撮影の司会は、リーダーのゆめりんこと見水夢乃ちゃん。
しっかり者で、わたしの憧れの見水夢歌ちゃんの妹なの!
「今日は、ゆっちが一泊二日で行ってきたミニ旅と、あいぴーの視野世界、前編をお届けしま〜す!」
「イェーイ!」
すると、大画面にゆっちが映し出された。
VTRだ。
「レイハピガーーール!イェーーイ、やって来ました、ここはどこだと思いますか?」
スタッフさんが「ダダダダダダ」と効果音を付けている。
ゆっちが「ダン!」と声を上げる。
「都内にある、和歩旅館です!ここ、和歩旅館に来た理由は、中に行けば分かるということですので、早速行ってみたいと思いま〜す!」
ゆっちが和歩旅館のドアを開ける。
すると、懐かしの峰音先生が着ていたような着物を着ているおかみさん。
「いらっしゃいませ!」
おかみさんや、若おかみさん、大おかみさん一同が頭を下げる。
皆さんが顔を上げると、ゆっちが息を大きく吸った。
「わたしは、レインボーハッピーの、ゆっちこと佐山結奈です!よろしくお願いしま〜す!」
若おかみさんに案内されて、えっと…極楽の間に向かったみたい。
ここで、コンピュータの文字で『この時、結奈は知らなかった。極楽の間が怖いことを。』と書いてあるのが見えた。
「ヤバかったんだよね、これ」
ゆっちがつぶやく。
それと同時に、VTRも一時停止。
おしゃべりしてくださいの時間だ。
「気になるね、怖いってどういうことなの?オバケ〜?」
わたしがゆっちに尋ねる。
ゆっちは「まだ、言えないな〜」とつぶやいた。
そして、またVTRがスタートする。
「お人形さんいっぱいいますね、ここの部屋。なんかすご〜い」
もしかして、これがオバケ!?
たまにあるよね、ホラー番組で。
お人形さんがいっぱいいる旅館に泊まって、リアクションとか、深夜のカメラ見る番組!
それやったのかな、ゆっち。
「佐山さん、いいですか?」
「はいはい!」
ゆっちは、荷物を置いて、ざぶとんの上に正座する。
スタッフさんはその前のざぶとんに腰かけて、カメラを回している。
「この企画ですが、内容分かりましたかね?」
「あの…ホ、ラー…です、か?」
「アタリです!」
うわっ、やっぱり。
ゆっちかわいそっ!
VTRの中で、小さくゆっちが泣いている姿があった。
3.担当マネージャー
夜に時間が飛ぶ。
ゆっちが、スタッフさんとくつろいでいるところが映っている。
仲良くおしゃべりしていた。
「結奈はどう?ホラー」
「絶対無理なんだってば!本当に怖いし。みったん来てよ〜」
みったんは愛称で、内海美津子マネージャー。
ゆっちの担当マネージャーなの。
ちなみにわたしの担当マネージャーさんは、おなじみのうったん。
ゆめりんは、こったんこと、内海琴美マネージャー。
リリーは、りったんこと、内海律子マネージャー。
みんな姉妹なんだって。
「そろそろ出るね」
「待ってよ、みったーん」
みったんは、ゆっちのお願いも無視して、別室で部屋を覗いている。
なんだかかわいそうなんだけど。
「まあ、いいや。何かあっても起きなければいいんだよね?」
ゆっちが言い聞かせるようにつぶやいて、カメラに向かって手を振る。
そして、早送りでスマホをいじっている様子が映り出され、早送りが止まった。
「何か、すみません。この時、怖くてラインしてました」
スタジオでゆっちが言う。
ゆめりんが「しょうがないでしょ。怖いもん」と励ます。
ゆっちもにっこりしたところで、VTRが再生。
「じゃあ、おやすみなさ〜い」
そうして、またも早送り。
深夜の2時になった。
ゆっちは起きていない。
「何かあったの?」
スタジオでゆっちが声を上げる。
文字で『まだこの時の映像を結奈は見ていなかった。』と書いてある。
コンピュータだね。
VTRが流れる。
すると。
「わわわわっ!」
別室にいるみったんが叫ぶ。
おもちゃが、ひとりでに動いた!
小さな音が聞こえてくる。
ゆっち、気付かないの!?
「待って待って待って。こんなことがあったの!?」
ゆっちが叫ぶ。
確かにビックリだよね。
リリーがうなずいた。
あんまり、リリーがゆっちに絡むことってないから、新鮮。
「ヤバイですよ、ヤバイですよ!」
みったんがひとりではしゃいでいる。
文字で書かれている言葉。
これに思わず吹いてしまった。
だって『ひとりでにはしゃいでいるマネージャー』と書かれている。
みったんを、微妙なおもちゃ扱いってことでしょ!?
スタッフさんの間でも笑いが広まる。
めちゃめちゃウケるんだけど!
4.視野世界で行くか!?
もう何もなかったのか、朝に時間が飛んだ。
メイクをしていない、スッピンのゆっちが映し出されている。
「わたしめっちゃブスなんだけど!」
ゆっちがスタジオで叫ぶ。
やっと起床したゆっち。
『おもちゃにも触れず、黙々とメイクをする結奈』と書かれている。
面白いな、この文字。
いつものゆっちの顔になり、みったんが部屋に入ってきた。
「おはよう、結奈」
「ねえ、みったん。何かあった?」
多分ゆっちは、みったんの目の下のクマに着目したのだろう。
だけど、みったんはスルー。
コンビニのおにぎりとお茶を出して食べ始めた。
もう、カメラは回っている。
「無視するのひどくない!?みったん!答えてよ〜」
甘えゆっちが炸裂。
だけど、ふたりとも会話ひとつなしで黙々と食べている。
『※会話はないですが、どうぞお楽しみください。グダグタです。』と書かれている。
めちゃめちゃ面白いんだけど!
「待って待って待って!ゆっちアイドルでしょう?しゃべりなよ!」
リリーが、ゆっちのことをちゃんと呼んだよ、ゆっちって。
いつも本当に絡まないのに。
「仕方ないよ〜。寝起き悪いもん」
ちょっとした会話が生まれ、すぐに会話が途切れる。
VTRがスタートした。
また、黙々と食べている。
『※お楽しみいただけないだろう。早送りします。』
とのことで、かなり早送りされる。
そして、数秒後。
「ごちそうさまでしたー!はい、何があったかはよく分からないんですけど、楽しんでいただけたでしょうか!?では、行きまーす。レインボーハッピー!」
ここでVTRが終わりだ。
カンペに書いてあるのは『三分フリートーク』。
「みんなどうだった〜?」
ゆっちがみんなに尋ねる。
早速、わたしも声を出した。
「すごかったね。だけど、あれ何なんだろうね」
「さあ〜。じゃあ今度は、あいぴーが視野を広げるために行ってみる?」
ゆめりんがニヤニヤしてからかう。
ちょっと〜。
わたしの視野世界がヘンに伸びちゃうんじゃないの〜?
「無理無理。もう観たら行けないってば!ゆめりんが一緒ならいいよ」
わたしも、ゆめりんにニヤニヤ笑って言い返す。
やっぱりと思ったけど、ゆめりんもイヤイヤと断ってきた。
『あと10秒で藍のVTR』。
「さあ、ということで、あいぴーの視野世界前編、どうぞ!」
ゆめりんの司会で、わたしのロケの様子が流れてくる。
前編は、食リポとアイドルリポーターだけらしい。
ようかんに大福!
あ〜、また食べたいっ!
よだれが出るのを我慢して、VTRの続きを見た。
5.みんなでレイハピ
ようかんを初めて食べる様子。
それから、スタジオでわたしたちがしゃべる様子が映っている。
ここはリビング。
録画してあるレイハピガールを、お菓子を頬張りながら観る。
「すごいね、テレビって」
今まで録画してたまっていたレイハピガールを全部観たところ、文字があちらこちらに入っていたり、記号が入っていたりして面白かった。
スタジオ収録、それから、ただの個人コーナーが流れて、スタジオで観るものがないもの。
いろいろあった。
だけど、ひとつひとつによさがあってすごかった。
「あいぴーとして頑張っている藍がいるから、成り立ってるのよ。夢乃ちゃんだって、結奈ちゃんだって、りりかちゃんも一緒よ」
お母さんがキッチンから声を出す。
そうだよね…。
みんながいるから、レイハピなんだ。
すごいね、なんかこういうの。
風が涼しい。
7月となると、本当に暑い。
「おーい、あいぴー!」
向こうから駆けてきたのはゆっち。
今日は、双子コーデでお出掛け。
もちろんメンバー全員で。
ゆめりんは、リリーとふたりで双子コーデをしてるらしいけど…。
「あいぴーとゆっち、こっちこっち」
ゆめりんとリリーが手を振っている。
メンバーカラーのワンピース、色違いを着ているふたり。
とても似合っていて、カワイイ。
「みんなで集まるなんて楽しいね!」
ゆめりんが言い、東京ガールズ事務所の隣のショッピングモールへ。
ウキウキが止まらないよ!
6.ライブ開催か!?
まずはカフェへ。
みんなで、これからのレイハピでどうしたいか考えるために遊ぶので、ちょっと話し合いをする。
「みんな、騒ぎにならないように、個室を予約しといたから」
ゆめりんがガッツポーズする。
あとのわたしをふくめた3人は、ゆめりんにグッドサイン。
ありがたや〜、感謝だよっ!
個室に入ると、早速注文。
「チョコレートワッフルよっつ、えーと、何がいい?」
ゆめりんがみんなを見回す。
わたしは、ちょっと恥ずかしいけどオレンジジュース。
ゆめりんはカフェ・オレ。
ゆっちはコーヒー!?
リリーはカフェ・ラテを頼んだ。
「みんなみんな!この間の、ゆっちのミニ旅とあいぴーの前編見た?」
ゆめりんが身を乗り出した。
もちろん、見た。
ちょうど昨日ね。
わたしとゆっちがうなずく。
「ごめんなさい。わたし、見てない。女優のお仕事が入って、会議が多かったから」
そっか。
仕方ない、仕方ない。
そう思ったけど、ゆっちはリリーに指摘した。
「どんなに忙しくても、ちゃんと観なきゃ。絶対だよ、これは」
リリーはシュンとうなだれる。
だけど、ゆめりんが励まして、その場はとりあえず収まった。
「あれ観て思ったんだけど、もうちょっとソロでも頑張らなきゃって。ゆっちは、たまにカメラを無視しちゃってたでしょ?寝起きだったけど。あと、あいぴーはちょっと固かったし」
そう見えるか〜。
うったんに言われて、反省したけど。
途中から和らいできて、指摘された感が増したってうったんに言われた。
確かに、そうだよね〜。
「だけどさ、やっぱり初めはみんなで活動して、慣れてからの方がいいと思う。青空キラリでもそうだった」
リリーが口を挟む。
ゆめりんも、うーんと考える。
リリーの言うことも一理あるけど、企画を考えたりするのは小保さんだからな〜。
ソロやグループみんな。
何の活動をするのかさえも任せているので、わたしたちが考えても変わらないのかもしれない。
「いいこと考えたよ!ファンの人が見ている中で、ソロもグループも活動できる方法」
ゆめりんが声を張り上げる。
みんな、ゆめりんに注目した。
息を大きく吸う。
「ライブをやればいいんだ!ソロパートやグループパート。それに、フリートークや自己紹介。ひとりでやることもいっぱいあるでしょ!?」
みんなが顔を輝かせる。
うっ、嬉しい!
きっと喜んでくれるに違いない!
早速、ゆっちが小保さんに電話する。
プルルルルプルルルル ピッ
「もしもし、小保よ」
「佐山結奈ですけど、いいですか?」
小保さんは「もちろん」と言う。
さすが、小保さん。
語尾の最後がオネエ炸裂。
もう慣れてきたけど。
「わたしたち、グループみんなでお出掛けしてるんですけど、話し合いで、ライブやりたいって話してて。レイハピの成長にもつながると思います」
「ライブ!?いいけど、曲の数が少ないと、どうしようもないわ」
わたしたちはちょっと考え込み、ゆめりんの案で、アルバムをたくさん出すと言う考えを伝えた。
「覚悟してる?」
「もちろんです!」
みんなで声をそろえる。
やがて、小保さんはちょっとため息をついた。
「あなたたちには着いていく方ね。いいわ、やってみましょう」
やったあ!
「だけど!」と前置き。
「決して楽じゃないから。いい?」
「はい!」
小保さんとの電話を切る。
わたしたちレイハピ、ついにライブができるんだーっ!
7.凰架さん
ひとつ目のミニアルバムは『中学生戦隊レインボーハッピー』。
アルバムを出すんだ。
曲は15曲。
『四色のパレット』というアルバム名らしい。
「いいかしら。曲の作詞作曲は、四色のパレットのアルバムは全て、凰架さんが作成してくれたわ」
凰架さんと言えば…!
国民的アイドル『アフターヌーン娘』の曲を多く担当している人!
「凰架さん、お願いします」
ドアを開けて入ってきたのは、あの有名な凰架さん!
みんなを見回し、凰架さんはにこり。
「レイハピの皆さん、レイハピ関係者の皆さん、よろしくお願いします」
早速、歌の練習に入る。
レイハピガールで流すため、カメラも回している。
「まずは、四色のパレットね。歌詞がこれよ。受け取って」
歌詞が書かれている紙、音程が書かれている紙、曲の雰囲気が書かれている紙が一気にいただく。
凰架さんはコホンとせきばらい。
「とりあえず今日は、四色のパレットと、ふたつ目のvary goodを、歌詞の紙を見ないで歌えるようにすること。いいね?」
「はいっ!」
ひぇっ〜!
1日に二曲も覚えるなんて大変。
そう思ったけど、ライブをやらせてもらうんだ。
これくらいの覚悟はしたはず。
「まずは、四色のパレットを聴いて。わたしが歌ってみたから、ちょっと掴んでくれる?」
CDも配られて、事務所用のCDをラジカセの中に投入する。
ちょっと雑音が紛れ、楽器の音が聴こえてきた。
「絵の具をたっぷり混ぜたパレット」
凰架さんの綺麗な音色が響く。
すっ、すごく上手い。
わたしもこれくらい上手くなれたら、いいんだけど…。
「ちょっと止めて。…藍さん!」
突然指名されてビクリ。
怒られるのかな?
ヤバイかも。
「紙をちゃんと見なさい。雰囲気はともかく、音程や歌詞。歌詞は目で追って見ること。いいね!?」
「は、はい!」
ちょっと恐い、凰架さん。
だけど、アフターヌーン娘は、これを乗り越えて国民的アイドルになったんだよね。
わたしも頑張ろ!
初めから流してもらい、歌詞を必死で目で追う。
もっと覚悟が必要だったっ!
そう思いながら、歌詞を目で追った。
岬!おっと、つい前のハンネで呼んじゃった。
名前、可愛いね!梨子でいいかな?
あ、久しぶり。薫です!
覚えてくれてるかな……?
詳しいいきさつはガルトの方に書いたんだけど、いろいろあって、スマホ使えなくて、葉っぱ来れなかったんだ。
次いつ来れるか分かんないから、ご挨拶ということで!
また、小説も応援してるから、頑張って!
わぁー、かっ、薫ちゃん!
お久しぶり!
会えてめちゃめちゃ嬉しいっ!
ガルトね、見るね♪
応援してくれてありがとう。
薫ちゃんは受験だよね?
私は受験を応援します!
8.共通する言葉
何度かみんなで通すと、凰架さんは腕時計をチラッっと確認する。
そして、全ての紙がまとめられた冊子みたいになってる本を、机にバンッっと叩きつけた。
「どうしたんですか、凰架さん」
リリーが本を取り上げた。
凰架さんは、ちょっとリリーに甘い。
青空キラリでもお世話になったのかもしれない…。
「ご、ごめんなさい。りりかは気にしないで」
どうかしたのかな?
時間を気にしてたけど、タイムリミットがそろそろ来たのかな?
そう思っていると、凰架さんがパンッっと手を叩いた。
「じゃあ歌ってみて。CDはカラオケでセットして。歌詞は見ないでね」
マジですか…。
わたし、記憶力だけは本当にダメなんですよ〜。
そう思っていても、もちろん凰架さんは気にも止めない。
「はい、スタート」
うったんがラジカセをカチャカチャいじっている。
音が妙に大きく聞こえる。
イヤだな〜、もう。
そう思いながら歌う。
わたしのパートが終わった瞬間。
「ちょっと、藍!やる気あるわけ!?その気持ちのこもっていない歌は何!?」
ヤバイ。
そんなに出てた?
でも、時すでに遅し。
うったんに呼び出されてしまった。
「藍、どうしてそんな態度取るの?やる気がないなら、ライブも出来ない。覚悟していないの?」
「それは…」
した…つもり。
わたしだって、楽しんで、一生懸命やりたいんだけど…。
「何か言いたいことがあるの?」
「中学生戦隊レインボーハッピーの時もそうでしたけど、全然覚えられないんです。どうしても覚えられなくて」
すると、うったんは両手でわたしのほっぺたを挟むようにして叩いた。
どうして叩くの?
うったん、大好きだったのに…。
「そんなのを曲にぶつけていいと思ってるの?…普通、ダメでしょ。いい?曲を聴くファンはどうして聴いてるのか考えたことある?」
それ、は…。
心の慰めとか、楽しみたい、とか?
全然分かんない。
どうして責められるのか。
わたしの苦手なこと、無理矢理押し付けられてるみたいで!
「ちょっと、すみません…」
楽屋に戻って、今あったことを整理してみる。
これって、逃げって言うの?
こういうの、絶対良くない。
やだやだ。
こんなことしたくない。
楽屋を出て、練習室に戻る。
「すみません。もう一度やらせてください!」
凰架さんは、ちょっとため息をつき、うったんに再生をうながした。
凰架さんを怒らせると怖いかも。
そう思いながら、歌い出すタイミングをねらう。
気持ちを切り替えなきゃ!
凰架さんは手を叩いた。
練習室に、拍手の音が響く。
誉めてくれたって解釈していいの?
「やれば出来るじゃない、藍」
「はいっ、ありがとうございます!」
これ、美代子さんにも言われた。
振り付け師の方。
上手く出来なかったわたしに言ってくれた言葉。
凰架さんの話も、一緒!
「休憩よ。次はタイムリミットってタイトル」
タイムリミットか〜。
なんか、語呂が好きかも。
そう思いながら楽屋へ走った。
9.東京ガールズ事務所の代表!?
休憩で、わたしがCMまで担当した月刊漫画、にゃおを読む。
周りは目に入らず、ずっと漫画のページをめくっていると。
「ちょっと、藍っ?」
ドアを猛スピードで開けるうったん。
壊れるってくらいだよ〜。
にゃおにしおりを挟んで、うったんを見る。
「今の休憩で、藍は会議室に来てって言ったでしょ?時間守って!」
楽屋の隅に張られたスケジュール表に書いてある…。
5分遅刻しちゃってるじゃん!
あわてて、にゃおを本棚に戻す。
「すみません!今すぐっ!」
うったんはため息をついて、先に会議室へ行ってしまう。
失敗、多いなあ、わたし。
責任感がないのかもしれない。
「遅れて本当にすみませんっ!」
会議室に入ると、うったん、小保さん、知らない人たちがズラリ…!
ヤバイかも…っ!
「小保さん。東京ガールズ事務所は、教育が甘すぎるんじゃない?この子はお断りね!」
わたしのせいで、東京ガールズ事務所のイメージが下がっちゃうってこと!?
こういう時だけ、責任感強すぎー!
「すみません!どうか、藍を採用していただけませんかっ?」
小保さん、土下座してる…!
土下座された人は、ちょっとニヤッっと笑った。
「小保さんがそこまでやるなんて、藍ちゃん。中々ね」
いつもはやらないの?
わたしのために、土下座してくれた?
そんなに出来た小かも!
なんちゃってっ!
「じゃあ、藍ちゃんはそこの席に座ってくれるかしら。小保さんの隣」
小保さんの隣の空いた席を指差してその人は言った。
ササッっと椅子に座る。
知らない人たちは、みんな名刺を差し出してきた。
「わたくしたちは、東京ボーイズ事務所の者です」
ガールズに対して、ボーイズもあるんだ。
初めて聞いた事務所。
そう思いながら、名刺を丁寧にまとめる。
「このたび、東京ボーイズ事務所と東京ガールズ事務所のコラボを企画しています。藍ちゃんが、小保さん曰く、東京ガールズ事務所の代表です」
わたしが、こんなにいっぱいいる東京ガールズ事務所の代表!?
途中、ずっとポカンとしてしまった。
10.ゆっちの魅力
「東京ボーイズ事務所の代表は、橋塚冬矢くんです」
ハシヅカトウヤくん?
誰ですか、それ…。
有名なアイドルさん?
俳優さんってこともある…?
「もしかして、あの冬矢くんを知らないなんて言わないわよね?」
こっそり隣の小保さんがささやく。
わたしは、小さくコクコクッ!
すると、小保さんは小さくため息をついて教えてくれた。
「橋塚冬矢くんって言ったら、月曜日の9時からやってるドラマに出てる超イケメンで有名な子よ!俳優!」
月9出てるイケメン!?
それなら、美音ちゃんたちが絶対知ってるよね。
次に学校行けたら聞こっと。
「で、いいかしら?小保さんと話してるけど」
「はいっ!すみません」
一冊の冊子をカバンの中から取りだし、こちらに出してくる。
『ガールズ&ボーイズコラボ企画』と書かれた表紙。
「それは藍ちゃん用にあげるから」
冊子のページをペラペラめくってみる。
企画の内容が主に書かれていた。
「今日聞きたいのは、藍ちゃんが引き受けてくれるかどうかです。無理なら、結奈に頼もうと思って」
あれ、ゆっちのこと呼び捨て?
モデル関係の仕事してたのかな?
そもそも、ずっと前から活動していたゆっちだもん。
わたしより、もっともっと幅が広いに決まってるよね。
「やってくれる?藍ちゃん」
「はいっ!やらせてくださいっ!」
担当の人ーーー戸部さんが微笑む。
戸部さんは、待ってましたと言わんばかりにプリントの束を差し出してきた。
「これは、その企画の仕事日程についてです。基本、企画したボーイズ事務所でやるから、こちらに来てね」
プリントの説明を大まかにされた。
そして、そろそろ休憩終了の時間。
切りがいいところで、小保さんとうったん、戸部さんたちの話し合いの時間になった。
「藍は練習に入って」
会議室から出ると、ほっと一安心。
仕事も入ったし、なんとかなったから。
それにしても、有名な俳優さんと、わたしなんかが共演していいの!?
「あいぴー!」
「あっ、ゆっち!」
廊下の向こうからゆっちが手を振っている。
楽屋にプリントの束を置いて、そのまま練習室へ走る。
「何の会議だったの?」
「ガールズ事務所とボーイズ事務所のコラボについてだよ。わたしが、ガールズ事務所の代表になったの」
「すごい!」と手を叩くゆっち。
すっごく嬉しい!
わたしの次に候補だったけど、それを知らないゆっち。
それだけの実力を持っているし、誰が考えても、わたしよりゆっちの方が魅力がいっぱいなのに。
わたしが嬉しいことを誉めてくれて、喜んでくれる。
「ありがとうっ!」
「凰架さんも、ゆめりんやリリーも待ってるよ!」
ゆっちに手を引かれて練習室へ行く。
まだ、胸のトキメキが収まらなかった。
11.4色のパレットのテスト
練習室へ行くと、凰架さんとゆめりんはvery goodの練習をしていた。
早いなぁ…。
机に置いてあるvery goodの歌詞を見ると、ゆめりんのパートが多い。
リーダーだと大変。
「藍、帰ってきたのね。さあ、レッスン始めますよ!」
CDを止めて、凰架さんはvery goodの歌詞の紙をみんなに配る。
「4色のパレットをテストして、このvery goodを練習します。とりあえず聞いてみて」
CDにvery goodをセットして流す。
4色のパレットとは違って、ちょっと静かめの曲だった。
合成でゆめりんの声っぽい声が、ゆめりんのパート。
わたしのパートもいくつかあった。
「はい、これがvery good。じゃあ、4色のパレットのテストね。ソロテストとみんなのふたつ。まずはりりか、あなたからよ」
リリーが個別視聴覚室に呼ばれる。
ソロテストって、わたしのパートとサビのところだけをテストするわけだから、下手だと目立つよね…。
ちょっぴり冷や汗が流れる。
「あいぴー、大丈夫だって。4色のパレット練習する?」
ゆっちが顔を覗き込む。
わたしのこと心配してくれた?
すると、真夏で汗びっしょりの小保さんがやって来る。
「藍、さっき言ってたやつだけど、明後日冬也くんと面会ね」
冬也くんというワードに反応したゆっちとゆめりんが声を上げる。
「とっ、とっ、冬也くんと共演するの!?あいぴー、マジッ?」
俳優さんアイドルが何か?
でも逢えたら嬉しいってことだよね?
12.まさかの自体
「私服で来なさい」って言われたけど、ここどこっ?
東京ガールズ事務所と東京ボーイズ事務所って兄弟事務所でしょ?
なのに、雰囲気全然違う!
いつもは、隣にショッピングモールがあって、駅も近くて都会。
だけどここは、東京でも田舎っぽくて、事務所がポツンとある。
なぜか周りは小さな書店やコンビニが立ち並んでいるだけだった。
「ああっ、藍!こっちこっち!」
東京ボーイズ事務所の中から、小保さんが手を振っている。
男の子じゃないけど、そろりそろりと事務所に入った。
すると、さっきとは打って変わってオシャレな雰囲気だった。
「さあ、こちらよ。冬也くんが待っているわ」
相変わらずの話し方。
初めて会った時は、何っ?
って思ってたけど慣れちゃった…。
面会室に足を運ぶと、テレビで見たことがある顔、冬也くんがいた。
「はっ、初めまして!東京ガールズ事務所から来ました。金宮藍です。よろしくお願いします!」
ペコリと頭を下げると、冬也くんはテレビスマイルを見せた。
これに落とされるんだよね…?
わたし、こんなので大丈夫だよね…。
「座って座って。俺は橋塚冬也。藍ちゃんと共演できて嬉しいよ」
あ、藍ちゃんって呼ばれたっ!
初めて会ったのに…。
こんな有名な冬也くんに知られていることがとても嬉しい。
「共演は、レイハピガールの番組のみんなの企画と藍ちゃんの特別企画。それから、俺たち俳優の集いって特別番組に出てもらうんだよね」
俳優の集いっ?
男の子ばっかりのところに女の子のわたしが出演するんだね…。
コクリとうなずいて冬也くんを見る。
「じゃあ、とりあえず慣れたいから、私服で来てもらったし、デートしよ!いいでしょっ?」
で、で、デート!?
冬也くんとデートするのっ?
>>182
コメントありがとうございます!
逢えたら嬉しいってことです。
13.家デートぉ!?
冬也くんが連れてきてくれたここ。
すっごく広くて豪邸。
お金持ちの人が住む家だった。
「ここが俺の家。家デートってよくあるじゃん?プールもあるし、テニスコートやサッカー、バスケも出来る」
そんなに豪華な家なのっ?
門扉が音を鳴らして開くところから、家デートは始まった。
まず、冬也くんの両親に会いに行くことになったんだけど…。
これって本当のカレカノみたい!
「冬也!もう帰ってきたの?」
冬也くんのお母さんが玄関へ走ってくる。
ふわふわのスリッパ。
いきなりシャンデリア。
まさしくお金持ちの家だった。
「紹介する…」
「冬也って彼女いたの〜?ねえ、あなたっ!ついに冬也が彼女を連れてきたわよっ!」
キョトンとするわたしたち。
冬也くんのお母さん、勘違いしてない?
リビングと思われる方から、冬也くんの両親と兄弟が顔を見せた。
「アイドルの彼女かぁっ!カワイイ女の子をもらっていいのか?」
「いやいや、彼女じゃないから。今日だけってゆーか、数日彼女だけど」
誤解を招くこと言わないでっ!
そう思ったけど、家族みんなでキャーキャー騒いで興奮状態。
冬也くんが苦笑いしてつぶやいた。
「ごめん。お母さんとお父さんと姉。庭を案内するよ。コートとかいっぱいあるからやりたいの選んでね」
玄関をガチャンと閉めて、すぐ出前に位置するテニスコートを見せた。
ラケットが清潔にしてあり、整頓してしまってあった。
「ここがテニスコート。一応、中学校ではテニス部なんだ。気が向いたらここで練習してる」
気が向いたら練習するっていうのが羨ましいなぁ。
やりたかったらすぐやれる環境。
わたしもここに産まれたかったっ!
「で、こっちがサッカーコート。お父さんの趣味なんだ」
趣味でコート作れないでしょっ!
そう思いながら、順番にバスケコートとバレーコート、プールを見た。
どこも決まった長さのコート。
やっぱりお金持ちとしか言いようがない作りになっていた。
「どこがいい?」
「えっと…暑いしプール入りたいかな。でも水着持ってない…」
「姉ちゃんの借りればいいって」
引っ張られてきたここはお姉さんの部屋だった。
フリルが散りばめられている。
めちゃめちゃヤバイ!
事務所が兄妹だったとは驚き😲‼
187:相原梨子◆x.:2018/02/18(日) 09:23 コメントありがとうございます!
兄妹関係にしてみました!
タメで話してもいいですか?
14.初デート完結っ!
「あいぴー連れてきて興奮したーっ!あの、サインと握手、写真いいですか?」
冬也くんのお姉さんが興味津々と言ったように身を乗り出す。
サイン、全然考えたことなかったんだよな〜。
そう思いつつ、瞬時に考えたサインを色紙に書いて飾らせてもらった。
「中学生戦隊レインボーハッピーのミニアルバム買いました!初ライブも行くし…。あいぴー推しです!」
目の前にわたしのファンがいる。
初ライブに来てくれるファンがいる。
そのことがすごく嬉しかった。
「家デートが終わったらここに来てください。よろしくお願いします!」
お姉さんはニコニコ笑いながら部屋を後にしていった。
日焼け防止の長袖の水着を借りる。
ペタペタとビーチサンダルを借りてプールへ歩いていく。
「あ、藍ちゃん!カワイイね」
か、カワイイっ?
いつも言われない言葉に動揺する。
アイドルだもんね。
これくらい普通のこと。
リリーだって、キュートとかプリンセスって言ってるもんねっ!
「ありがとうっ」
ふたりで向かったプール。
池みたいに弧を描いている形。
25メートルや50メートルのプールではなく、プライベートって感じ。
「どうぞ入って。浮き輪を膨らませておいたから」
すみに置いてある浮き輪。
その中の一番小さい浮き輪を借りた。
プールに入ると、冷たくて気持ちいい夏の醍醐味を味わった。
「よっしゃ!」
綺麗に飛び込んだ冬也くん。
水しぶきがパアッっと上がった。
男の子とふたりきりで、家のプールに入るとかヤバイよ・・・!
「楽しい?」
「すごく楽しいです!」
冬也くんはにっこり笑って、その場で一回転して見せる。
わたしにはとうてい無理なこと。
ちょっとゆるくやらせてくれてる?
そう思うと、胸がくすぐったくなった。
「ありがとうございました」
冬也くんの家の門が閉まる音がして、冬也くんとふたり並んで事務所へ帰った。
ガールズ事務所に送ってくれるって言うから、男前!って思ってね。
「今日は楽しい時間をありがとう。本番もよろしくね」
「はいっ!」
ガールズ事務所に着くと、ゆっちとゆめりんが待っててくれた。
ゆっちは相変わらず冷静。
ゆめりんはキャーキャー言っていた。
「じゃあね、藍ちゃん!」
「ありがとうございました。さようなら!」
冬也くんが駅へ歩いていって見えなくなると、ゆっちの冷静さが一転。
急にキャーキャーし始めた。
「いいな〜、あいぴー。冬也くんとデートなんて」
ホント、夢みたい・・・。
15.ここにもファンが
そして一週間後。
ライブを明明後日に迎える。
そんな中、久しぶりに学校に行ける。
家を飛び出すと、みんながチラチラこちらを見ているのが分かる。
「あれ、あいぴーじゃない?ヤバ、会えたんだけどーっ!」
「ウチ、めっちゃレアじゃん。あんまり学校行けてないほど忙しいって!」
「あの冬也様と共演もするらしいよ」
こ、こんなに噂は広まるんだ・・・。
ある意味感心していると、美音ちゃんたちみんなが交差点で話している姿が見えた。
「おーーーい、みんなーっ!」
わたしの大声に振り向くみんな。
そして、野次馬や通りすがりの人。
結構写真撮られてる・・・。
「藍ちゃんじゃん!おひさ〜!」
両手をいっぱいに降っている千尋ちゃん。
そんな千尋ちゃんを目立つため、ちょっと押さえる琴ちゃん・・・。
いつものみんながいるっ!
「ちょっと待って〜」
横断歩道を素早く渡り、みんなの元へ走っていく。
美音ちゃんが手を広げて待っていた。
ギュッっと抱き締めてくれる。
「本当にお疲れ!今日はちょっとでもゆっくり出来るようにしよっ!」
涙がにじみそうだけど、あわてて引っ込めて笑う。
こんなこと全然ないもんね。
みんなで中学校へ向かう途中も、いろんな人から写真を撮られ、話しかけられた。
だけど、みんなを琴ちゃんが丸く収めてくれた。
「金子!久しぶりだな!」
担任の先生が校門で挨拶運動をしながらハハッっと笑った。
ペコッっとお辞儀して下駄箱へ行く。
こんな楽しいことってないよ・・・!
「陽菜ちゃん、あれ話してあげてよ」
美音ちゃんがふふっと笑いながら、陽菜ちゃんに視線を向ける。
何かすごいことでも起きた?
付き合ってたりして・・・。
「わたし、陽菜は、レイハピのファンクラブに入り、初ライブに行くことになりましたっ!」
「ありがとーっ!」
ここにもわたしのファンがっ!
陽菜ちゃんは「もちろん藍ちゃん推しだからね」と付け加える。
すると、みんなはどこから出したのか、ファンクラブカードを出した。
「みんなで入ったの!陽菜ちゃんしかライブは当たらなかったけど。藍ちゃん推しは統一だよ!」
千尋ちゃんがニカッっと笑う。
本当に、みんな応援してくれてるんだね・・・!
・・・・
「ライブ楽しみにしてるよ、あいぴー」
陽菜ちゃんがカードをギュッっと握って言った。
絶対、成功させる。
ライブに外れちゃった・・・それだっ!
16.全国生配信!
明日が初ライブ。
スタジアムにセットを組んでもらい、大きなステージに楽器を運ぶスタッフさんの姿が目に浮かぶ。
「小保さんっ!ちょっといいですか?話したいことがあるんです」
小保さんは額に浮かぶ汗をぬぐいながら聞いてくれた。
わたしの考えはこう。
陽菜ちゃんしか来れないライブ。
ライブに外れちゃった人でも楽しめる方法は、全国生配信!
「いいじゃない。東京ガールズTVに相談してみるわ」
小保さんは早速スマホを取り出して、事務所と相談を始める。
これで楽しめるよね、みんなも。
「藍ー?リハ始めるよー!」
うったんがステージ下で呼ぶ。
大きな声で返事をして、ステージ上にマイクを持ってスタンバイ。
『絶対成功!』この文字が胸の中にきらめいていた・・・。
「終わりーっ!今日は帰りません。ホテルね、いいですねー?」
小保さんの相方、大久保さんが指示を出していく。
照明は落とされ、いつものロケ車に乗って最寄りのホテルに向かった。
「メンバーは4人で1部屋ね」
小保さんが、ゆめりんにキーを渡す。
子供だけでお泊まりって楽しみ!
そう思いながらロケ車を降りる。
「ちゃんと早く寝ること。クマは許さないからねっ!」
小保さんが前置きする。
分かってます、そんなことー。
早速、みんなでエレベーターに乗り込み、部屋へレッツゴー!
「すごいリアルに楽しみー!」
ゆめりんがふふっと興奮している。
リリーは何でもないと言ったような冷静な顔ぶりを見せている。
さすが、リリー。
何度も経験してるもんね。
「全国生配信の話聞いた?」
「え、マジ!?めっちゃ楽しみ!」
「生配信って燃えるね!」
みんなもそう言ってくれて良かった。
部屋に着くと、荷物は綺麗に整頓されており、クローゼットに練習着がかけてあった。
「とりあえずは練習着。最終リハが終わり次第衣装だから」
リリーが淡々と話して聞かせる。
初ライブ・・・。
絶対寝れないじゃん!
17.差し入れの山!
「ぃ、ぴー、いぴー、あいぴー!」
ゆっちがわたしを揺すった。
目を開けると、サンサンと辺りを照らす太陽が見えた。
ちょっと遠く、スタジアムが見える。
大きな旗のようなものもある。
レイハピがやるっていう表しかも。
「クマがないかチェックするよ!あったらヤバイから!」
リリーとゆっちを中心にクマチェックを行った。
青空キラリでは、クマチェックは欠かさないことみたいで。
「みんなオーケー。練習着に着替えたら小保さんの部屋に電話!」
パジャマを脱いで、初日にもらった黒色のTシャツを着る。
今日がライブだなんて、全然想像出来ないくらい。
こんな幸せな瞬間ないもん!
「ゆめりんが電話して!」
リリーが受話器をゆめりんに差し出す。
ゆめりんは受け取り、番号をポチポチと押して耳元に当てた。
プルルルと数回鳴り、ピッっと音がすると、小保さんの声が聞こえた。
「こちら小保よ」
電話の出方、個性的・・・。
ゆめりんとちょっと話して電話を切ると、わたしたちの部屋に小保さんがご飯を持ってやって来た。
「おはよう、みんな。今日は全力で頑張ってね!」
ロケ弁ことロケ弁当を配られる。
ごくごく普通のだったけど。
あとちょっとで本番。
すると、ゆめりんがふふっと笑いながらつぶやいた。
「本番まで時間があるでしょ?その時間は、たくさん差し入れ食べるの!」
そっかあ、差し入れがあるのか・・・。
わたしも思い浮かべた。
机いっぱいに広がる食べ物。
それらを頬張るわたしとゆめりん。
夢みたいだねえ、それはぁ〜。
「ちょっと、あいぴーまでっ!」
ゆっちが肩をツンツンとつっついてくる。
わたしって、食べ物に目がない子だったっけ〜?
そう思うと、グウッっとお腹が鳴った。
18.本番数時間前の差し入れ!
最終リハーサルが終わった。
外ということもあり、汗をたっぷりかいたわたしたちはシャワーを使う。
汗が流れて気持ちいい。
今ごろ、スタジアムの外ではファンの人たちがいるはず。
パフォーマンスもやってるし。
「あいぴーまだ〜?」
「ごめんごめん、今出る!」
今回のライブで売られるTシャツ。
わたしのメンバーカラーのTシャツを着た。
デザインも凝っていてカワイイ。
「このTシャツホントカワイイよね。お気に入りだわ〜」
ゆっちが自分のメンバーカラーのTシャツを握って言った。
わたしもお気に入りだよ〜。
世界にひとつだけ。
しかも、わたしたち、わたしのイメージのTシャツなんだもん!
「あいぴー!差し入れあるよー!」
ゆめりんが顔を覗かせる。
差し入れ差し入れっ!
ご飯、お味噌汁、サラダなどのご飯ものもあるし、お菓子もある。
「とりあえずぅ、ご飯を食べたらデザートを食べてお菓子を食べてぇ〜」
「ゆめりん、食べ過ぎじゃない?」
「えへへ、いいのぉ〜」
リリーはヘルシー思考らしく、野菜をメインに盛り付けていた。
わたしは〜・・・。
まあ、いいよね!
ドンと食べたいものを食べてやる!
「ご飯大盛り、お味噌汁と生姜焼き、ハンバーグ食べまぁす!」
「いやいや、あいぴーもめっちゃ食べてんじゃん・・・」
いいのいいの!
めっちゃ食べて、ライブに臨もーっとー!
わたしに差し入れとか、アイドルじゃなかったら絶対ないもんね〜!
19.ライブスタートッ!
ジャジャジャジャーーーンッ!
ジャジャジャジャーーーンッ!
スタジアムに楽器の音が鳴り響く。
本番のスタートだ。
ファンの重なった声が聞こえた。
「イェーーーイ!レイハピガールズ!ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」
小保さんが統一で流してくれたファンの盛り上がり方。
もうみんな見てくれて、バッチリ重なってるじゃん!
「緊張するけど頑張るのよ」
分かってるよ、小保さん!
わたしは間違わずに出来るかが心配しているところなの!
スーハースーハー・・・。
「スタンバイお願いしまーす!」
今、行くんだっ!
ステージと裏とを上下する床に立つ。
グウーンと上に上がった。
完全に上がりきると、ファンの声が絶頂までにマックスになる。
一歩踏み出すと、楽器が重なり合い、中学生戦隊レインボーハッピーの曲が始まった・・・!
♪わたしの心も繋いでいた♪
♪いつも側にいてくれて♪
♪ありがとうって言えなくて♪
♪ずっと知っていても♪
♪強くなれるンだよって♪
♪シャイニーシャイニー♪
歌い続けること3時間。
いろんなファンの皆さんと出会って。
最高の思い出が・・・。
「ありがとうございましたっ!」
一応、終わり。
もしアンコールがあれば・・・。
「るっ、こーるっ、んこーるっ、アンコールッ!」
「アンコールに応えられる人!」
小保さんに言われて手を挙げる。
新しい衣装に着替えて、もう一度ステージへ。
その時の歓声は感無量だった。
20.最後の発表
アンコールから5曲。
これで、本当に終わりだ。
各メンバーからのメッセージ。
かと、思いきや・・・。
「あれっ?あそこに誰かいる!」
ゆめりんが指差した先に、チョーゼツ有名な芸能人、桂慶一郎さんがっ!
何で桂さんがいるのっ?
「レイハピは・・・!」
ゴックン。
何を言うの・・・?
桂さんは大きく息を吸った。
「レイハピが、なんとアルバムツアーを行いますっ!」
えーーーーーーーーーーーっ!
ツアーやっちゃうのぉーーーーーっ?
ゆめりんとわたしは大号泣。
こんな幸せないよぉ・・・。
「ありがとおございますう・・・」
ゆめりんが泣きながら言う。
最後の最後にメッセージ。
まずはわたしから。
「わたしたちの初ライブ、本当にありがとうございました。ツアーも決まり、すごく楽しい時間になりました。最高の思い出に出来ていたら嬉しいと思います。ありがとーっ!」
みんなもメッセージを言い、さっきの床に立ってステージを降りた。
本当にあっという間。
わたし、どうしよう、嬉しすぎる!
「あいびー!」
ゆめりんが抱きついてくる。
あふれる涙。
前がにじんで何も見えない。
本当にどうしよお・・・。
「ツアーも頑張ろうねっ!」
うん、もちろんだよおっ!
すると、小保さんがやって来た。
涙がピタッっと止む。
「今日から、レイハピのブログを始めたいと思います。りりかと結奈は今のブログを消したから、レイハピの方のグループブログに書いてね」
スマホを開くと、何も書かれていないホームページがあった。
アプリとしてレイハピブログと作られてあった。
「ブログのタイトルを決めて、今すぐ更新してちょうだい」
スマホにアドレスやIDを打ち込む。
そして、ブログを更新。
コメントが次々に入ってきた。
「お疲れー」
「楽しかったよ、ありがとう!陽菜」
陽菜ちゃんも書いてくれた!
そして、小保さんがうったんたちに向けても言った。
「これからは、担当マネにメールで送ること。担当マネがブログ更新するから。いいわね?」
はーい!
ブログも書ける・・・。
これからが楽しみだなあっ!
21.今日もレイハピ!
学校に着くと、ライブやブログの話で持ちきりだった。
陽菜ちゃんも感想を言ってくれたし、美音ちゃんたちも全国生配信を喜んで話してくれた。
良かった、いいこと出来て。
「見たよ〜、生配信!」
「レイハピファンになったー!」
「お疲れ様ーっ!」
今も感無量なんだけど。
今日もブログ更新してみよっと。
美音ちゃんは、ポンと手を打って声を上げた。
「放課後空いてる?」
「ごめん、ツアーが決まったから練習があるんだ。新曲の」
すると、たちまちのうちにみんな「大変だねー」とつぶやく。
確かに大変だよぉ。
昨日、ライブしたばっかりなのに。
事務所に着くと、ゆっちとリリーがふたりで話していた。
何かと思えば、仲直り!
今まであんまり仲良くなかった感じだったから。
「何かごめんね、ゆっち」
「こっちこそ・・・」
レイハピもどんどん進化をとげてる。
そう思うと、嬉しくてたまらなかった。
きっと、これからもずっと。
そう思いながらブログの内容をうったんにメールで送った。
明日もレイハピ、明後日もレイハピ。
明明後日も、ずっと・・・。
(つづく)
あとがき
こんにちはー!
『*レインボーハッピー*』略してレイハピ、作者の相原梨子です。
今回の4巻はいかがですか?
熱をガンガン伝えてみました。
皆さんにお知らせです。
レイハピは、8巻で完結させることを決めました。
ここまでもコメントをくださった方、本当にありがとうございました。
これからも完結までよろしくお願いします。
完結したら、感想やオリジナルのレイハピ小説を書いてください。
ちょこちょこ見て、皆さんのオリジナルも読みたいです!
ということで、完結後もよろしく!
先程も言いましたが、コメントしてくれた皆さん、ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。
完結が近いと思う相原梨子
ー次回予告ー
メンバーひとりが脱退!?
そんな中、冬也くんとの企画は着々と進む・・・。
『*レインボーハッピー 5*』
主な登場人物
*金子 藍*
ピアノが得意なレイハピガール。
メンバーカラーはピンクで愛称はあいぴー。
スカウトされて芸能界入りした。
*見水 夢乃*
レイハピのリーダー。
メンバーカラーはライトブルーで、愛称はゆめりん。
スカウトされて芸能界入りした。
*佐山 結奈*
レイハピが誰よりも好き。
メンバーカラーはイエローで、愛称はゆっち。
モデルからアイドルへ移った。
*宇都 りりか*
写真撮影が得意な冷静少女。
メンバーカラーはパープルで、愛称はリリー。
元青空キラリメンバーだったが、レイハピメンバーに移った。
1.わたし、藍!
スマホの送信ボタンを押して、ブログのホームページを開く。
ちょっとすると『あいぴーの愛日記録所』というタイトルのブログに一件のブログが書き込まれる。
うったん、お疲れ様でーす!
わたし、金子藍!
レインボーハッピーのアイドル。
金宮藍って名前でやってるよ。
愛称はあいぴー。
最近ブログを始めたんだ!
すると、コメントがポンポンと飛ぶように走ってくる。
今日は日曜日。
夏休みも終わって始業式。
久しぶりに制服着たよって報告するために、制服を着てブログ更新!
ちなみに、ブログを更新してくれるのは、うったんこと内海さん。
わたしの担当マネージャーさん。
「あいぴーの制服姿カワイイ!」
「衣装着てても制服着てても着こなせるってカッケー!」
「今日もおつでーす」
コメントを見ながらニヤニヤしていると、お姉ちゃんの桃が来た。
わたしの顔を見て、顔をしかめる。
「最近仕事がないからって浮かれて。中学校あんまり登校してないんだから勉強しなさいよ」
成績優秀なお姉ちゃん。
お姉ちゃんより優秀でもない。
可愛くもない、わたし。
じゃあ、どうしてわたしがスカウトされたかって?
答えは簡単。
お姉ちゃんが断ったから。
わたしがはっきりスカウトされたわけじゃないってゆーか・・・。
まあ、お姉ちゃんのおかげで仲間と会えたんだけどねっ!
2.初めてのLINE
その日の夜。
初めてLINEを始めた。
ゆっちから招待されたんだ。
今まで、ずっとLINEでいじめがあるって聞いてて怖かったけど、ゆっちとなら大丈夫。
『ハロー!結奈だよ。起きてるー?』
スマホ画面に目を落とすと、ゆっちとわたしのふたりのLINEトークにコメントがポチッっと飛んでくる。
それに続き、カワイイスタンプも飛んできた。
『招待ありがとう!藍だよ!』
わたしもスタンプをポンッっと押してみる。
カワイイ、クマがペコッってお辞儀してるスタンプ。
すぐに返信がきた。
『このLINEトークの名前、レイハピ仲良しメンバー、いいでしょ!』
自慢げに胸を張っているうさぎのスタンプも押してくれる。
ゆっちらしい・・・。
ベッドに寝っ転がって返信する。
返信が早いゆっちに向けて、どんどんスタンプや返信を送っていく。
時間はあっという間に過ぎていく。
「藍?早く寝なさいよ」
お母さんがドア越しに言う。
仕切りのカーテンを開けてみると、お姉ちゃんがスヤスヤ眠っていた。
わたしも寝た方がいいかな?
そう思っているうちに、どんどんコメントが飛んできている。
『あいぴーいないのー?』
『寝ちゃったー?』
『お〜い』
スタンプで悲しげなうさぎが表されている。
わーっ、ヤバイヤバイ!
急いでポンッっとスタンプを押す。
どれでもいいと思ったわたしがバカだったよお・・・。
押してしまったスタンプは、うさぎがショックを受けているもの。
誤解しないで〜。
そう思い、ポチポチと打ち込んで送信した。
こんにちは。
いろいろなスレでこうしてあいさつをしていますが、私は葉っぱ卒業を決めました。
ですから、レイハピは今回で完結することになります。
今まで本当にありがとうございます。
詳細は他スレを見てください。