美しい飾りがなされた、城。
そこに私は居た。
次の瞬間。
パーン!
ドカン!
ガッシャーン!
たくさんの物音と共に、銃声。
「姫様、お逃げください!」
誰かが私を突き飛ばし、そして──────
「いや────────────!」
慟哭が、私を襲った。
私、クレン・ドール・フェルス・エブルムが国を───城を失ったのは、二年前。
私に残されたのは、クレン・ドール・フェルス・エブルムと言う、長い名だけだ。
亡国の姫君が、処刑されないと言う事は、決してない。
私に出された、処刑。
それは、ヴァンパイア騎士団に血を分け与える事。
私の国を滅亡させた敵国、レゼェン国では、人よりも毒に耐性ある、ヴァンパイアを使っている。
勿論そこに、ヴァンパイア権は、あるらしいが。
ヴァンパイア騎士団に血を分け与える??
この亡国の姫君の汚らわしい血を?
取り敢えず、レゼェン国での私の安全は確保された。
お父様も、お母様も生きているのか、分からない中────────────。
でも、すぐにお母様たちは無事だと私は知ることになるの。
私は、ヴァンパイア騎士団と会うことになったの。
貪欲で、国に仕えることしかできない、無力な連中とね。
私の考えは、間違っていると思う────?
いえ、貴女の考えを聞きたいだけでしてよ?
フフフ……。
まだ、姫だった時の言葉が付いているの。
話がずれたわね。
私の考えは違っていたの。
下女たちにヴァンパイア騎士団の待っている部屋に連れて行かれてね。
ドアを開けたら、居たのよ。
12人の、ヴァンパイアたちがね…。
中でも、白銀の髪を持つヴァンパイアの顔立ちはとても綺麗で、私思わずこう言ってたわ。
「貴男、とても綺麗じゃない」
そのヴァンパイアは、フッと笑って、片膝をついて、片手を胸にあてて、小さく頭を垂れたわ。
かなり、礼儀作法がなっていた、ヴァンパイアだったのね。
「そう言ってくれて、光栄です、クレン姫」
私ったら、頬がカッと熱くなったの。
フフフ…。
今じゃ、信じられないでしょうけど。
それでね、そのヴァンパイア───名は、アクラス。
アクラスは、他の11人のヴァンパイアたちを紹介してくれたわ。
でも、めんどくさいでしょ?
後々出てくるときに、言うわね。
取り敢えず、ヴァンパイアたちと紹介して、早速吸血させてあげたの。
意外と、痛くなかったわ。
麻酔のような効果もあったのかもしれないわね。
勿論、順番に吸血させてあげたわ。
不思議と、心地よかったのよ。
特に、アクラスかしら…。
ジュッジュッと、部屋に吸血の音が響くの。
どこか、ゾクゾクしたわ。
その後は、何も無かったわ。
けど、アクラスの言葉が、耳に残ってたのよ。
「俺たちは、貴女を守る。───貴女が、地を分け与えてくれるならば」
そうなると、12人と契約しなきゃいけない。
私、それだけは嫌だったわ。
地を ではなく、血を でした。
6:リノン◆J.:2017/07/28(金) 18:40 だからね、私はアクラスと契約を結ぶ事にしたのよ。
契約と言っても、11人のヴァンパイアより血をさらに分け与える事だったのね。
アクラスはどう思っていたか、分からなかったけれど、私は幸せだったわ。
その頃からね、きっと。
アクラスに対して、私は特別な感情───貴女が言うなれば、好きというモノ──を抱き始めたの。