たとえ君が僕のことを忘れても、僕は君を忘れない。
生まれ変わっても、必ず君を見つけ出す。
何度でも、君を愛し続ける。
もう、最初で、何度目のキスだろうか。
おやすみ、ジュリエット。
続きが気になるよ😆
3:雅:2018/02/17(土) 20:13 >>2
ありがとう。
彼女は、城の一角に位置する白いバルコニーから顔を覗かせた。
ここから見える景色は、幾年立っても本当に変わらない。見上げれば、漆黒色に塗り潰された夜空にくっきりと彫られたような月が浮かんでいる。
幼い頃から月を眺めることが何より好きだった。成長しても、それは変わっていない。
変わったことと言えば持っているものが、金髪のフレードル人形からワインが注がれたグラスに変わったことぐらいだろう。
彼女はグラスを唇に近付けた。
芳醇な果実の香りが鼻孔をくすぐる。ワインはその色も香りも、月によく合う。
紅い色のワインを喉に追いやり、一度だけ大きく息を吐く。
まるで黄金のように威風堂々と輝く月。
その下に広がる大地には、ここレスタルト地方にしか華を開かないという薄い桃色の華が咲き乱れている。
少しだけ冷たい風が流れ、美しい金髪を嫉妬するように揺らした。
彼女はゆっくりとバルコニーを後にする。擦れた絹のドレスが小さく音を立てる。
ギイイ…と軋む扉を開くと、そこには一人の老紳士が立っていた。
凄い上手いって思うけど、二人は何歳ぐらいの設定ですか?
6:雅:2018/02/24(土) 17:07 >>5
ロミオは17歳、ジュリエットは16歳という年齢設定です。
ちょっとネタバレになりますが、二人共はじめは13歳という設定でした。
>>6
ありがとうございます
「ここにおられましたか、ジュリエット様」
その老紳士は優しく微笑み、琥珀色の瞳を細めた。
きっちりと着こなされたスーツに朱色のネクタイを結び、右腕に緑色の勲章を付けている。
「やはり、月を見ておられましたね。ああ、今宵は満月でしたか…」
老紳士も月を見上げる。瞳にうっすらと金色が混じる。
ジュリエットと呼ばれた少女は、安心したように目を伏せた。
「皮肉なものだわ。目に映る月は輝きを失っていないのに、そこから降り注ぐ魔力だけが減少して
いるなんて。やはり超現象の威力は月までもを食い潰してしまったのね」
「先代の女王様も、国王陛下と共に月を眺めるのがお好きなようでした。特に、紅月と蒼月の日には必ず宴を開いておりましたよ。私がまだ召使いだった頃の話ですが…」
紅月と蒼月というのは、月に何度か見られる現象のことだ。
瞬く星の欠片が超現象によって月に寄せられることで発生し、色が変化する。
その時の色が血のように赤いときを「紅月」海のように青いときを「蒼月」という。
紅月が空に浮かんだときは、女性を敬う日。蒼月が浮かんだときは男性を敬う日だとされている。
「…お母様とお父様は、一度だけ紫月を見たことがあると仰っていたわ。ルトー、貴方は紫月を見たことがある?」
ジュリエットは老紳士に尋ねる。
召し使いだったの?
10:雅:2018/02/25(日) 16:44 >>9
ルトーはジュリエットの母親に仕えていた召使いです。現在はジュリエットに仕えています。
紫月というのは、紅月と蒼月が交わったときに見られる途轍もなく珍しい現象だ。
数十年、数百年…運が悪ければ数千年以上見ることは無いとされる紫月。
それが夜空に浮かんだとき、「【紫月】の下で愛する人と誓いを交わすと、その二人は地の果てにおいても結ばれる」とも言われている程だ。
ただ、実際に紫月を見た者が圧倒的に少ないため、噂といて扱われることが多いのだが。
ジュリエットの問いに、ルトーは首を振った。
「いいえ、私は見ておりませんよ。お二人が見られたというのならば、屋敷の使用人も見たことがあると思うのですが…」
「ええ、そうよね。どうしてお母様とお父様はあんなことを仰っていたのかしら」
仮に紫月が夜空に浮かんだのならば、その日は国をあげての宴となるだろう。それほどまでに珍しい現象なのだから、二人しか知らなかったというのは何とも奇妙なことだ。
ジュリエットは深く息を吐いた。そしてもう一度、黄金の月を眺めた。
やがて、彼女は何かを決心したように目を開く。
「ルトー。私は明日、城下町に出かけるわ。それから、教会と森に行ってくるからお留守番をよろしくね。
あっ、それから…他の使用人にも伝えてほしいのだけれど、木苺のジャムがもう無いから、買い出しを兼ねて隣村まで行ってほしいの」
「はい、承知致しました。ジャムに関しては…そうですね。ちょうど隣村にロザネが向かっているので、彼女に行かせるとしましょう。文をお届けいたしますので、後にサインをお願い致します」
ロザネは寛大な心の持ち主であるから、これくらいの仕事は快く引き受けてくれるだろう。
今から手紙を書けば、明日にはもう届いているはずだ。
ジュリエットは柔らかい笑みを浮かべた。
「ええ、よろしくね。隣村から帰ってきたら、ロザネにはとびきりのアフタヌーンティーをサービスしてあげてね。きっと疲れているだろうから」
その使用人までもを気遣う姿は、何よりも先代の女王に似ているとルトーは密かに思っていた。
決して手を抜かない責任感の強さ、堂々たる威勢、何事にも屈しない心。
どれをとっても女王にふさわしいと言える。
それは先代の女王だけではなく、もちろん歴代女王にも匹敵するということだ。つまり…完璧な「女王」を名乗ることに問題は無い。
少なくとも、この若さでこれ程までに大人びた女王をルトーは知らない。
彼女と同年齢の町娘達はもっと年相応で、無邪気だった。
だからこそーー長年に渡り先代女王に仕えていたからこそ、上位に立つ人間を見てきたからこそ、ルトーは分からないのだ。
なぜ、目の前に佇むこのお方は。
自らを「女王」と名乗らないのか。
どうして、いつまでも母親の地位を授かろうとしないのか。
ルトーには分からない。
どれだけ考えても、本人に聞こうとしても、何か繊細な問題のように思えてきて分からなくなるのだ。
あるいは、封じられた禁断の箱を開ける直前のように。
「はい、承知致しました。ジュリエット様」
ルトーは考えることを止め、ジュリエットという主に丁寧な礼をした。
気になる
ジュリエットはカッコイイよ
>>13
ありがとう、ちょこちょこ書いてくよ。
「…じゃあ、行ってくるわ」
ジュリエットは藍色のマントを纏い、ルトーに挨拶をする。
昨晩に降った雨のせいか、いつもより景色が鮮やかに見える。足元に咲き乱れる桃色の華には朝露が光っており、ジュリエットを一層美しく見せた。
「はい、いってらっしゃいませ。くれぐれも道中はお気を付けて下さいね」
「ふふっ…もう、本当に心配性なんだから。大丈夫よ、いつもの城下町ですもの」
「しかしジュリエット様は身元も明確にされておりますし、盗賊団にでも見つかったら大変なことになりますぞ」
半分ほど冗談で、ルトーは言った。当たり前のことだが、ジュリエットを狙う盗賊はまずいないだろう。
ジュリエットの遠い家計は古くからレスタルト地方に貢献しており、人々にからの信頼も厚いのだ。
まだ人間に「魔力」という不思議な力が宿っていたころの話では、貧相の子供達を屋敷に招いて食事会を開いたり、高齢者が困っていれば救いの手を差し伸べ、怪我をした人間に魔力を総動員して治癒をする、という優しさを持っていたという。
つまり、現在でも----妖精や一部の人間しか魔力を持つものは居なくなってしまったが----子孫であるジュリエットは優しさの象徴なのだ。
ジュリエットもそんな先祖を敬っていたからか、困っている人には手を差し伸べるという優しさを持っている。
彼女は皆に愛され、彼女も皆を愛している。幼い頃から愛を授かった少女は、母親のように強く美しい娘へと成長している。
「盗賊団、ねぇ…?」
ジュリエットは妖しげな微笑を浮かべ、赤い瞳を細目にした。
口元に片手を当て、まるで母親が困ったように呟く。こんな時はからかうときの姿勢だ。
「い、いえ…何も! その、失礼致しました。どうかお許し下さい、ジュリエット様」
ルトーも慌てる「フリ」をして跪く。
こんなやり取りは、もう何年も続けてきた。
「あはははっ! 冗談よ、冗談。大丈夫…ふふ、行ってきます」
ジュリエットはいつもの様に微笑み、いつもの様にマントをなびかせて歩いていった。
彼女が道を歩めば、枯れた華々はたちまち生命の輝きを取り戻し、彼女の為に華を咲かせる。
彼女が思いを込めて唄い舞えば、不毛の大地は豊かなる自然で満ち溢れてゆくだろう。
ジュリエットは、美しかった。
ルトーは屋敷に戻った。主が居ない屋敷はどこかくすんでいるようにも見える。
絢爛豪華な美術品も、数々の高価な宝石も、朝に摘んできたばかりの一輪の薔薇でさえ、どこか安物に見えてくる。
ルトーは血を吸ったような真紅の薔薇に水をやり、屋敷の窓を開けた。
あとは、部屋と廊下の掃除をし、使用人達に労いの言葉を掛けつつジャムやナッツ類の残量確認をし、使用人にほつれたドレスとメイド服、紳士服の手入れを頼み、
庭に植えている木苺と林檎を収穫し、窓ガラスと調度品を丁寧に磨き上げ、使用人と共に過ごした後に華に水をやり、残った洗濯を終え、足りない日用品のメモを取り、夜の為に赤ワインを一本取り、ジュリエットのベッドメイクを終え、届けられた文を整理し、お昼ご飯を使用人と共に食べ、古い書庫から何冊か本を取り出し、
必要があれば手紙を書き、来客が来ればもてなし、使用人の剣技訓練を眺めつつ読書を楽しみ、終わったらティータイムを使用人と共に終え、保存食を作り、
ジュリエットが帰宅するまで読書をし、ジュリエットに夕食を準備し、お風呂の用意をし、ジュリエットの勉強後にワインを開け、お風呂に入り、眠るだけだ。
ジュリエットは、ジュードス王国の城下町「ドルト」の商店街を歩いていた。
今日の買い物は泡を固めて作った特別な石けんと、黒花弁を絞って作ったインク、ロザネにプレゼントする
宝石をあしらったブローチだ。
「…ああ、なんていい香り。きっとこれは焼きたてのパイの香りだわ」
広場には微かにパイの焼ける香ばしい香りが充満しており、道行く人々の表情を柔らかくさせていた。
ジュリエットは商店街の店を覗き込みながら、石けん屋を探す。泡を固めて作った石けんは、洗い心地が良く
滑らかで使いやすいのだ。
「あっ、見つけた! えーと、すみません。泡石けんを四つ下さいな」
店員であろう黒髪の女性に声を掛けると、女性は「ジュリエット様!? お久しぶりでございます!」と嬉しそうに微笑んだ。
城下町で買い物を済ませ、教会に出かける。
教会で火の女王エキドナレアに出会う。二人で祈りを捧げる。
会話をしてから森に出かける。
「星屑の森」
古代、流れ星が落ちてきた森とされている。特別な月が見られたときには不思議な癒しの空間が広がるという。
中心部には、巨大な大樹がそびえ立っておりときどき妖精や天使が遊びに来るようだ。
森で木の実を拾った後、自分の元に帰る。
ジュリエットは、ジュードス王国の城下町「ドルト」の商店街を歩いていた。
今日の買い物は泡を固めて作った特別な石けんと、黒花弁を絞って作ったインク、ロザネにプレゼントする
宝石をあしらったブローチだ。
「…ああ、なんていい香り。きっとこれは焼きたてのパイの香りだわ」
広場には微かにパイの焼ける香ばしい香りが充満しており、道行く人々の表情を柔らかくさせていた。
ジュリエットは商店街の店を覗き込みながら、石けん屋を探す。泡を固めて作った石けんは、洗い心地が良く
滑らかで使いやすいのだ。
「あっ、見つけた! えーと、すみません。泡石けんを四つ下さいな」
店員であろう黒髪の女性に声を掛けると、女性は「ジュリエット様!? お久しぶりでございます!」と嬉しそうに微笑んだ。
ジュリエットは店の奥にて、紅茶をご馳走になっていた。
あの店員の女性が「久しぶりですし、せめてお茶だけでも」と用意してくれたらしいのだ。
フルーティーな果実がブレンドされた紅茶は、店員が自分でブレンドしたという。爽やかな香りと
すっきりした味わいが何とも上品で、正にお手本のような美味しさだった。
「ジュリエット様」
黒髪の女性がひょっこりと顔を出す。どうやら仕事が一息ついたらしい。
右手には石けんが入った袋が握られていた。
「お久しぶりね、最近の調子はどう?」
ジュリエットは紅茶を飲みながら尋ねた。
「うーん、まあまあですかね。石けんの売れ具合も微妙ですし、今週中で良く売れたのは
商人に大量購入された鉱石くらいです」
ここの石けん屋は、商人との交流も行っており不思議な商品が出ることも多い。ガラスのオブジェや綺麗な
布地、さらには鉱石の管理者でもあるらしい。
最近では紅茶の茶葉売りを始めたそうだ。それは良く売れるだろうなとジュリエットは思った。
「だけど、この紅茶はとても美味しいわよ。買っていこうかしら」
「本当ですか? 良かった…実は上手くできたか不安だったんですよ。あ、買っていかれますか?」
この紅茶を朝に飲めば…いや、優雅な午後のティータイムにみんなで飲みたい。そして、使用人のなかでもお
茶を淹れるのが特に上手なメリルに頼めばいい。
「ええ、買うわ。とりあえず一つ、追加でお願いできるかしら?」
店員の女性は微笑んだ。
そして、はいと大きく返事をして店に戻っていく。
「またお越しくださいませ、ジュリエット様」
「次は屋敷でご馳走するわ」
ジュリエットは茶葉と石けんが詰まった袋を受け取り、挨拶を告げて店を後にした。
街外れの古びた屋敷を裏手に周り、壊れた柵の隙間へと体を器用に通す。
この道を通るのはかなり久しぶりだ。ドレスが裂けないように細心の注意を払いながら柵を超えてゆく。
この屋敷の名は通称「月夫人の館」という。
かつて月をも魅了すると言われた美しい娘が、伯爵に結婚を申し込まれ幸せな生活を送ったという。その
夫人の美しさから娘は「月夫人」と呼ばれていたらしい。
その月夫人が、愛する公爵と生涯を過ごした館がここなのだ。
今では古びた屋敷跡となり、枯れ果てた花園と錆びたテーブルが虚しく転がっているだけだ。
かつては色鮮やかな花々が咲き乱れ、テーブルには美味しい紅茶と月夫人の微笑みが儚く佇んでいたのだろう。
柵を越えると、そこには星屑の森へと続く小道がある。
森林の青々とした若葉が一枚、ひらりと優しく風に吹かれて、月夫人の館になびいていった。
その教会は、かつて聖なる五芒星の加護を受けたとされる女魔導士リフェータが、星に祈りを捧げるためにつくったのだという。
当時は教会に華が添えられ泉の水が湧き出る美しい教会だったのだが、今では人々に忘れ去られ、こうして
たまにジュリエットが祈りにくる程度だ。
だが、今日は少し違った。
礼拝堂の中心、割れたステンドグラスの光を浴びて輝く深紅の色。しなやかでありつつも豊潤な肉体。
強気な態度が現れたような、赤と橙のドレス。
その者はジュリエットに気付き、祈りを中断して微笑んだ。
「おや、珍しくも可愛い客が来たと思えば、そなたは王女、ジュリエットではないか」
彼女の名は、恐れ多くも偉大なる赤き火の女王、エキドナレア。
この世界における属性の一つ、「火」の均衡を保つ女王だ。別名は「獄炎の女神インフェリニア」
また、定期的に精霊達と接触し、体内の魔力を活性化させるという役目がある
「エキドナレア様、お久しぶりでございます」
ジュリエットはドレスの裾を摘まんでお辞儀をする。
エキドナレアも扇子を取り出して、ジュリエットに礼をした。
「ふふふ、わらわも運が良いようじゃな。ジュリエットは祈りに来たのか?」
「そうですわ。最近は多忙な日々が続きまして、お祈りが出来なかったのです」
「はあ…こんなにも愛おしく小さき少女に国の面倒事を押し付けるとは、大臣共の狂気が知れぬな。
わらわのジュリエットに精兵の出撃命令など…全く、神が許すというならばわらわが代わりに命令を下したい
ぐらいじゃ」
面倒事というのは大抵ルトーがやってくれるのだが、ジュリエットはあえて言わなかった。
代わりに久しぶりに出会えたエキドナレアとの会話を楽しもう、と心に決める。
「エキドナレア様はどんな時でも、気高くお優しいですわ。さすが火の女王ですわね。そう言えば、エキドナレア様はご用件があって教会におられるのですか?」
「わらわは火の精霊達に会いにきたのじゃが、どうやら眠り姫の効果が発動しているようなのじゃ。
精霊は眠りについておるし、祈りだけ捧げておこうとな」