短編集のようなもの。温度差の激しい兄弟の話です。
ディプレッション……兄。17歳。大体の時間は「ゴミのように眠っている」らしい。常にローテンション。
マニック……弟。15歳。いつも目が冴えているので眠っていない。目の下にクマができている。常にハイテンション。
OPEN&CLOSE
「ディップ!」
「なぁにマニー……」
「俺、今日空を飛ぼうと思うんだが!」
「流石に無理でしょ……」
ごろん、と転がされた死体。のような俺の兄は俺に背を向けたままひらひらと手を振った。その仕草すら力が抜けて枯れ草のように頼りない。普段であればここで口論が起こるが、何も俺だって本気で空を飛ぼうとしていた訳では無い。ちょっとしたジョークだ。
「冗談だよ!……ケホッ。ホコリ!ホコリが!おいディップ!ひどいホコリだ!窓開けるぞ!」
「君、さっきも同じこと言って窓を閉めたじゃないか……。そんなに開け閉め繰り返されたら僕の目が潰れてしまうよ……」
「オープン、ザ、ウィンドー!」
ディップを飛び越え、勢い任せに窓を開ける。鍵をかけていなかったらしい窓は銃のような音を立てて、ディップの部屋と外界とを繋いだ。サラサラと陽の光が入り込んでくる。
「この爽快感、レモン級!」
「ああ……。溶けちゃう……。溶けちゃう……」
「深呼吸!……ケホッ。ホコリ!風でホコリが!おいディップ!ひどいホコリだ!窓閉めるぞ!」
「もう好きにして……」
「クローズ、ザ、ウィンドー!」
ドラムのような音を立てて、ディップの部屋と外界とが遮断される。カーテンも閉めて、元の薄暗い部屋に戻った。ふと思い立ち、白いミノムシのようになっているディップを蹴る。
「ディップ!」
「なぁにマニー……」
「俺、今日空を飛ぼうと思うんだが!」
「流石に無理でしょ……」
ごろん、と転がされた死体。のような俺の兄は俺に背を向けたままひらひらと手を振った。その仕草すら力が抜けて枯れ草のように頼りない。
「飛べるさ!ライト兄弟は空を飛んだじゃないか!」
「彼等は飛行機を作って飛んだだけだよ……」
「飛行機を作ろう!ディップ!」
「無理でしょ……。やるんならマニー1人でやりなよ……」
「そう冷たいことを言うな!……ケホッ。ホコリ!ホコリが!おいディップ!ひどいホコリだ!窓開けるぞ!」
「君、さっきも同じこと言って窓を閉めたじゃないか……。そんなに開け閉め繰り返されたら僕の目が潰れてしまうよ……」
「オープン、ザ、ウィンドー!」