ショートショートとは、簡潔にいうと短編中の短編小説です。このスレは、小説書き初心者の私が2・3レスぐらいを目処に、ショートショートを書いていこう、というものです。では早速
その小太りの主婦は、地域の商店街へ買い出しに出かけていた。
今時は便利なショッピングモールやコンビニが近くにあるので、わざわざ商店街を利用しなくても良いのだが、比較的コスパが良いのと、健康のためにより多く歩けるようにするため、意識してこちらで買い物をするようにしていた。
目当てのものを買い終え、少し商店街でブラついていると、見慣れない看板が目についた。
“贅肉屋”
そう掲げてある店は、やけに古めかしく、商店街にしては珍しく扉がついており、閉鎖的で怪しげな雰囲気が感じとれた。
こんなお店あったかしら?それにしてもおかしな店名ね、そう不思議に思った彼女は、その好奇心から店の扉のノブに手をかけていた。
扉を開け、店内に入ったとたん独特の生臭さが彼女の鼻に入った。思わず彼女が鼻を押さえたときに、暖簾のかかった奥の部屋から店主が姿を現した。その姿は“肉屋”と冠した店には似つかわしくないもので、異常なほど細く、ガレていた。
「お客さんは、この店は初めてだね?」
そう言った店主は不気味な笑みを浮かべていた。主婦はその表情を不審に思いつつも、ええ、と返した。
「ここは、お客さんの贅肉を取るサロンであり、それをご自身で召し上がっていただく食事処さ」
自分の贅肉を取って、それを食べる?聞いたことのない話だ、怪しすぎる。しかし……主婦は自分のだらしないお腹に視線を移した。この贅肉を取ることができるなら……それは彼女が何度も夢見てきたことだった。
「それじゃあ、いただこうかしら」
毎度あり、と店主はまた不気味に笑い、主婦を暖簾のかかった奥の部屋へ連れていった。部屋は病院の手術室によく似ていた。主婦は手術台のようなところへ寝かされ、麻酔を打たれる。やがてだんだんと瞼が重くなってきた。
「お客さん、ご注文の料理ができましたよ」
そんな枯れた声で目が覚めると、未だニヤついている店主の顔が視界を占領する。と同時に、独特の匂いが彼女の鼻孔を刺激した。これが人肉の匂いなのね、と考えた後、主婦は思い出したように自分のお腹を見た。そこに、今まで彼女を蝕み続けていた脂肪の塊はなかった。彼女は思わず目を見開き、これ以上ないほどに口角をつり上げた。
彼女は、店主に連れられるがままに、さらに奥にある食事スペースへ来た。座らせられたテーブルには、既に料理が置かれていた。見た目は普通の、牛肉のステーキといったところだろうか。それを普段のようにカトラリーで切り分け、口に含む。噛んだ瞬間、グニョ、とした食感に、若干羊肉のような風味が広がり、異常な量の肉汁と脂が溢れる。想像していたよりかは美味であったそれを、主婦は黙々と食べ続けた。しかし、やはり贅肉である分そのしつこい程の脂っこさは気になっていた。
「お味は如何でしたか」
また例の笑いを浮かべ、店主は主婦に聞いた。
「美味しかったわ。でも少し脂がきつかったかしら」
店主はその言葉に一瞬顔を歪めた後、また元の表情に戻って、
「では他の、こちらの部位もお召し上がりになりますか?」
そういって店主が差し出したのはメニュー。彼女はそれにザッと目を通す。ロース、ヒレ、モツ……よくステーキだとか焼き肉屋で見る名前ね、彼女はそう考えた後、ふと自分の好物である部位を思い出し、こう言った。
「それじゃあ、タンを頂けますか」
店主は苦笑した。
といったところです。オチの意味理解してもらえましたかね……。
余談ですがたまにどの部位がいわゆる体のどこであるか知らない人がたまにいますよね。ちなみにスレ主は小説内で陳列した三つの部位がどこか分からない状態で挙げてしまっています。どこなんでしょうか。
批評・感想並びにそれらの部位についての解説(ggrks)お願いします。
うわぁってなりました
7:274:2018/03/31(土) 16:20 >>6さん
ご感想ありがとうございます!
その様子ならオチは理解していただけたようですね、一安心。
何に対してうわぁなのか気になるところですが、私自身はこういうブラックなのが好きなのです
『待ち合わせ』
混雑した朝の駅の構内にて、青年が一人、電工掲示板の下で佇んでいる。年齢は学生ほどといったところだろうか。彼は友人と待ち合わせをしているのだが、この人波の中だから中々見つからない。あっちも自分を探しているだろうと思い、青年は友人に電話をかけた。
青年と友人の通話
「もしもし」
「あーお前か」
「そうオレ。ところでさっきから全然お前が見つからんのだが」
「あ、そうそう。俺リーマンの波の中でも目立てるように女装してきてるんだけどさぁ」
「どうりで。お前アホすぎだろ絶対似合わねえじゃん、てかお前どこにいるんだよ」
「お前こそどこ?人多すぎワロス」
「ここは……何て言えば良いんだ、あっ今めちゃくちゃ可愛い子通った」
「いや分かんねえよ」
「あっ立ち止まった。正直後ろ向いてて顔は分かんねぇけど、目印にはなるくらいのオーラあるわ」
「おう、お前に場所きいたのが間違いだったな」
「いやマジでさ。まだ止まってるから今のうちに探してくれよ」
「いや良い、こっちの場所教えるから来い。目印は……そうだなぁ、電工掲示板と……」
「あっ今可愛い子が辺り見回して……、あっこっち見たこっち!」
「おお、オマエそこにいるじゃん」
可愛い子が、こちらに向かって手をふっていた。
2皿目完結。まさかの1レスほどの短さ。そして1皿目とは反対にオチが分かりやすすぎるというか読めてしまいますね。
余談ですがスレ主は関西人なので、この話では自然体の標準語が最大の難関でした。
1・2皿目共に批評・感想お願いします。
ちなみに1皿目の題名は『贅肉屋』です(後付け)。