私が小説を書くだけのスレです
荒しや暴言等は控えて頂くよう、お願い致します
書き忘れましたがアドバイス、感想を頂けると嬉しいです
3:シマネー◆8M:2018/05/27(日) 21:57 皆の「コワい」ものって何?
幽霊?妖怪?モンスター?それとも怒った時のお母さん?
「コワい」ものって、人それぞれ。
「えー、最初に言っておくが漫画やアニメに出てくるような美少女幽霊やイケメン吸血鬼は存在しない。……本物の妖怪やモンスター等というのは皆等しく“みにくい”のだ」
しんと静まり返っている室内の校長の声が響く。目の見えない厚いレンズ、ぼさぼさとした長い髪、手入れのされていない髭、顔が歪みそうになる程の薬品の匂いがする服。
マッドサイエンティストみたい。
私は思った。
ここはとある国にある学校。ここには限られた者、もとい選ばれた人しか入学できない。それは受験とかそういうものではなく、ある日突然、ポストに合格通知が入っていたら、ということ。
これは何も無作為に選ばれているわけではなくて、ちゃんと機関の人が何年か調査する。それで、素質のありそうな子を見付けては合格通知を送るという話。しかし合格か不合格かの判定はかなり曖昧なので毎年三分の一の生徒がこの学校をやめていく。
この学校に正式な名前は無い。いつ潰れても可笑しくないからだ。というのもこの学校は世界で唯一の妖怪やモンスターの倒し方や対話の仕方等を教えているからである。
何故この学校が出来たのかは、数十年前に遡る。
当時は科学が発達していたのもあり、大昔のように『未知のもの』を崇める事がなくなったせいか、妖怪やモンスター等の存在を否定する人々が多くいた。「幽霊は錯覚」「映像は加工」「それは幻聴だ」と皆口を揃えて言っていた。そのせいもあって、最初は『未知』は存在すると叫んでいた者達も姿を消し、しだいに『未知』は存在しない、ということがその当時の常識になった。
しかしある日、一人の女性が帰り道に何モノかに襲われたことからその常識はひっくり返された。
警察や民衆は当初、直ぐに犯人は見付かるものだと信じこんでいた。否、思いあがっていたのだ。科学が大幅に発達し、犯罪者の逮捕率も大幅に増えた今の世界に。
一ヶ月経った。犯人は捕まらない。
五ヶ月経った。犯人は捕まらない。
十ヶ月経った。やっぱり犯人は捕まらない。
そしてきっかり十二ヶ月目。また同じ事件が起こった。人々は捕まるだろうと確信していたし、前回との繋がりを考える者はいなかった。
一ヶ月経った。犯人は捕まらない。
五ヶ月経った。犯人は捕まらない。
十ヶ月経った。やっぱり犯人は捕まらない。
そしてきっかり十二ヶ月目。また同じ事件が起こった。
人々は戦慄した。そして誰かが気付いた。
これは何か、『未知』が関係していると。
誰かが思った通り、事件は解決せず、また同じ事件が起こった。それと同時に人々の前に『未知』が現れるようになった。『未知』はどれも非常に醜く、中には美しき人間に化けて人間を襲う『未知』も出てきていた。
人々は助けを求めた。『未知』には対人間用の武器や薬品はほとんど効かなかったからである。
そんな人間とは裏腹に『未知』は人間を襲い続けた。何年も何年も。
そしてある年の十二月。突然に『未知』は去っていった。
人々は安心を覚えたと同時に不思議がり、不安がった。何故唐突に消えてしまったのか。また現れやしないか、と。そこで建てられたのがこの学校、という事。
……って説明するとなんて長いんだろう。いくら校長の話が退屈だからってこんなこと思いだしてちゃ駄目だよね。細かいことはいいや。どうせ自分自身に聞かせてただけだし。
……あ。終わっちゃった。
「ねー、校長の話長くなかったー?」
「わかる。めっちゃ不潔だったしさー。見た? 靴に蚯蚓の……うぇっ……とにかく、何かヤバそうな人だよねー」
「私、途中で眠ってました……ごめんなさい起こして貰っちゃって」
「いーって。それより、タメで話してよ。何か距離が遠い感じがするじゃん」
入学式が終わり、がやがやと騒がしくなる寄宿舎。この学校は全寮制で、何でも秘密を外に漏らさないように、とのこと。夏休み時期に誰かが喋るとかは考えなかったみたいだけど。
とにかく、そういうワケで寮は凄く騒がしい。まあ、一年生で一杯だもんね……。私も同じ一年生だけど、あんな風にまるで小中学生のように振る舞えない。私は今日から、高校生なんだから。
「あっ、そうそう。ねぇ、貴女、名前教えて貰ってないよね? アタシ、マリアって言うの。こっちはアイシャ」
「あ、えっと、私、は……その、ユキ、ユキって言うの」
とっさに偽名を言った。この学校では、本名が何かなんて、全然気にされてないみたいだから。今日初めてこっちに来た時なんて最初は「カイ」って名乗ってた癖に一時間後には「シャルル」って名乗り始めてた人がいた位だから。
少なくとも、皆、好きな名前で自分を名乗ってる。だから私もそうしただけ。
「ユキ! それって本当? 嘘? ま、どっちでもいいわよね。今日はもう自由時間らしいから、午後になったら、一緒に遊ばない?」
「う、うん。いいよ、全然。部屋番号は……」
「A-28! 来てね!」
「う、うん」
反射的に頷いた私はアイシャがマリアに引っ張られていくのをじっと見守るしかなかった。私はA-14。マリア達とは別の階だ。階段を上がり、自分の部屋を見付けると鍵を取りだし、開けた。私のルームメイトって、どんな人なんだろうって、思いながら。
「失礼しまーす……」
ガシャン!と大きな音をたてて何かが壊れる音がした。
「……!」
思わず心臓が跳ねあがる。恐る恐る顔をあげ、視界に入ったのは……。
「え……っと」
恐ろしさを閉じ込めたような瞳をした男の子だった。
……ちょっと、待って。確か男女一緒になることは無いって、校長先生が言ってた筈……あ、でも数が合わなかったら男女一緒にすることもあるって言ってた気がする……いやでもなんでこの部屋?最後らへんの部屋じゃ駄目なの?ああ、もう。女の子が良かったのに。というか、普通なら女の子だったんだよ。う……そもそも何で男女別の寮じゃないのよ。や、やだ、私、何か泣きそう……。
「突っ立ってないで、何か言ったら?」
その男の子は凍りつくような目で言った。ああ、やっぱり嫌い……大嫌い。
「えっと、ここ、あの……A-14ですよね」
「何当たり前の事言ってるの? 僕は何で貴方がここに来たかって聞いてるんだけど」
そんなこと、聞いてなかったじゃん、という言葉を必死に飲み込んで私は淡々と話した。すると凍りつくような瞳が途端に溶けたようになり。
「……ああ。何だ。また女の子が遊びに来たのかと。今日からよろしくね。僕は……」
「そ、それより、その、花瓶。大丈夫、なんですか……」
私は無惨にも砕け散った薔薇柄の花瓶に目をやった。良かった。悪い人ではなさそうだ。
でも何処か信用できないけれど。
「ああ、大丈夫だよ。やっぱり、安いものは駄目だね」
一瞬、花瓶に軽蔑したような目を向けるとあっという間に片付けてしまった。この人、掃除とか……好きなのかな。だとしたら私とは正反対だ。人の部屋の掃除とかは、何か楽しいんだけど。
「えっ。男と一緒!?」
「うん」
マリアは吃驚したように私を見つめた。アイシャは全くどうでもいいのか何も言ってこない。
「えーっ。アタシだったら絶対嫌だなぁ。だって、好きでもない人と一緒に、ましてや異性だもの」
「……でも格好よかったらいいんでしょ、どうせ」
アイシャがマリアをじろりと睨む。マリアはぱっと顔を赤くしてそんなことない、と言わんばかりに頭をふった。ま、そのお陰でマリアの長い髪が無事に私に当たったんですけど。アイシャとマリアって幼馴染みなのかな。だとしたらアイシャのこの言い様も頷ける。
「あ、アタシは違うの!」
「でも、また新しい好きな人出来たんでしょ。馬鹿みたい」
「酷い……ねぇユキ、こんな奴の言う事、信じちゃ駄目だからね!」
「……ユキ、こんな人の言う事、信じちゃ駄目」
二人同時に私の瞳を見つめた。えぇ……どうしよう。取り敢えず適当に頷いとこう。
「あ、はは……」
「で、名前は何だったの?」
目をきらきらさせて瞳を覗き込んでくるマリアにアイシャはまたじろりと睨みつけた。そこで私はようやく、マリアとアイシャがとても可愛くて綺麗なことに気付いた。マリアはカールした一部ピンクに染まった金髪、澄みきったようなブルーの瞳。アイシャは美しい長さの揃った黒髪とマグマが宝石に変わったような瞳。不意に私は、こんな美しい子達の隣にいるのがとても恥ずかしくなってきた。
ああ、もう。絶対笑われてる……。アイツだけレベル違うよなー、よく恥ずかしくならないよねーって。
分かってるもの。自分の器量がそんなに良くないことは。いやでも何とか漫画に出演できる位の器量だと思ってるし、って、あぁ、私思い上がりすぎ……。
「ねぇ、ユキ? おーい? ちょっと大丈夫?」
はっとしてマリアの顔を見るとさっきより眉が少し下がっている。
「ごめん。確か、エドって呼んでって言ってたと思う」
「エド? エド、エド、エド……」
しだいにマリアの目がハートに変わっていくのが見てとれた。あと、頬が赤くなるのも。
「知ってるんだね」
私がそう言うとマリアの代わりにアイシャがこくりと頷いてくれた。
「そう。マリアの新しい好きな人……。その人、どうも人気があるみたいで」
と言ったところでアイシャが親指で後ろの方を指した。
見ると確かにさっきのルームメイトが男子数人と体を震わせて笑っていた。周りには気のせいか女子が集まり、彼等をちらりと見ては顔を伏せて話しているようだ。
「わー……本当っぽいね」
アイシャはまた頷いた。
訂正
澄みきった青空のような
少し書いたのであげ
12:シマネー◆8M hoge:2018/05/30(水) 18:29 「馬鹿みたいでしょ……」
「ひ、ひどーい! アタシ、本気なのに!」
「で? 一体何人『本気の人』を作るつもりなの? いい加減その脳みそを働かせたらどえなの?」
「え、その……」
うわっ。キツいこというなぁ。アイシャって性格悪い?いやいやそんなこと考えちゃ駄目。きっとマリアのことを心配しているだけだろうし、人を一面だけで判断するのは良くないって、本にも書いてあった……っけ?
「じゃあ、また明日教室でね!」
「うん。おやすみ」
時刻は九時。消灯時間は十時半なんだけど、明日の為に色々あるから、今日はもうお開き。夕食の時もマリア達と喋るのがとっても楽しくって、アイシャに言われるまで、私は食事にまともに手をつけなかった位。会ってまだ一日目なのに、こんなに仲良く出来た人って初めて。昨日まで私は独りだったから、何か不思議。もしかして私達って親友に成れる可能性がある?それともこれが普通?
とにかくさっさとシャワー浴びて明日の準備しなくちゃ。この学校の寮って二人一部屋なんだけど各部屋にちゃんとバスルームが付いていて、気分はさながらホテル。一人で入りたい私にとっては最高……というかラッキー。
鍵を回して部屋に入るとやっぱりルームメイトのエドが居た。この人とも友だちになれたりしないかな。あれ、今の言葉可笑しい?
一方のエドは一瞬彼女を視界に入れたが嫌なものでも見たかのように顔をしかめ、うつむいて高そうな花瓶に花を飾り始めた。嫌われたのか?と一瞬不安になった彼女は急いで着替えを取り出すとバスルームにそそくさと入ってしまった。
身体中に当たる水滴。じっと目を瞑っていれば今にも自宅の光景が易々と浮かぶ。まだ一日目だというのに、いや、正確には三日目だというのに、私の記憶はもうホームシックらしい。
母の優しい言葉、従姉妹の意地悪な笑顔、父の厳しそうな瞳、大好きなペットのマチのはしゃぐ姿……。
寂しい。
私はふいにそう思った。そして瞼を上げればいつもの我が家のバスルームがあるような気がして私は目をあけた。見えたのは曇りのない鏡と少々大きな湯船(湯船って最初はなかったみたい。何でも一部の生徒の強い希望で出来たとか)、その他綺麗な壁等々、どう頑張っても私の家のバスルームには見えなかった。
バスルームを出ると、さっきと位置も表情も変わっていないように見えるエドがいた。