青春を全力で!
>>2
「絢利ちゃんって、なんで感情を殺.すことができるの?」
えっ、と声をなんとなく発した、気がする。
表情が、貼り付いた笑みが、ストンと抜けていくことがわかった。
気付いたら、いつも口角を上げていた。
面白くもなんともない。不快なことを言われる。
それでも、なぜか笑っていた気がする。
笑うしか、無かったのか。
「 無愛想、もっと笑いなさい 」
「 顔、怖いよ〜 」
「 常に笑顔でいられたら素敵ですね 」
――――――ああもう、めんどくさいや。
私は感情に蓋をできた。
すごく面白い、笑いが止まらないようなことが起きた。
でも、『大したこと無いよね』『面白くもなんともない……』そうやって心のどこかに蓋をして、スイッチを切って。
すると、フッと何にも感じなくなる。表情も気持ちも、何もかもが抜け落ちた。
これは、誰にでも出来ることなんだ。今までは、そう思っていたのに。
そんなことは無いらしい、十三歳にして気付いた。
――正直、悔しくはない。
音楽に勝ち負けを付ける方が納得行かない。
合唱コンクールは、クラスの団結力等を高めるためのものであるから、勝敗なんておまけみたいなもの。
私はそれに需要を感じない。
最後までみんなで走りきったという事実があるんだから、それで良いよ。
パートリーダーの言葉として、クラスに向けて発した。
嘘偽りの無い私の気持ちだ。私の、気持ち。
なのに――――――――――――
「なんで、感情に蓋をできるの?」
再度純粋な笑みで問いかけてきた指揮者ちゃんは、自然に首をかしげた。
――なんで、だろうねぇ……
「んー、そう? なんでだろーね、分かんないや」
とりあえず戻った表情で言ってみた。
いつも通り、軽く、ゆるく……
笑えって言っただろ。それは、それは――偽りを無理強いした、あなたたちの――――――――
「本当は、」
掠れた声を発すると、目から汗が絞り出された。
悔しかった、優勝したかった、そうしたら……届いたんだって、物理的に証明できるから。
本当は、本当は…………『悔しいね、って、みんなと一緒に泣きたかった』