あなたは、すぐ側にいる人を信用できますか?
あなたは、すぐ側にいる人を人間だと信じていますか?
もしかしたらその人は、
人間の姿をしたモンスターかもしれません。
1
初めて見る校舎。
新しい買ってもらった制服に身を包み、少女はそれをじっと見つめた。
そこには「獣中学校」と書かれていた。変わった名前だ。
校舎は前の学校より小さく、人数の少なさを想像させた。
友達たくさんできますように。
少女はそう願って、校舎内に足を踏み入れた。
教室に入り、目線は一斉に少女に向けられた。
「じゃあ、自己紹介をお願いします」
先生に言われ、少女は慌てて自己紹介をした。
「黒崎華留(くろさきはる)です。よろしくお願いします…」
品定めされているような感じだ。早く席に着きたい。
小学校から転校を繰り返していても、やはりこの空気は苦手だ。
少女はクラスメイトの顔を一人ずつ見ていった。ニコニコしている人もいたが、大半は真顔だ。
中にはひそひそ話をしている女子もいた。
絶対悪口言われてる…。
友達はできそうにない。諦めようとした瞬間だった。
「よろしくね!」
さっきひそひそ話をしていた女子の一人がそう言った。
もう一人は少女を見て微笑んでいた。
てっきり悪口を言われていたのかと思ったが、勘違いだったようだ。
「よろ…しく」
返事はぎこちなくなってしまったが、声をかけてくれた人がいる事実は嬉しかった。
気づくと、さっきまで真顔だったクラスメイトは全員少女を受け入れたような表情に変わっていた。これならクラスの皆と仲良くなれそうだ。
席はさっき話しかけてくれた子の隣になった。
「うちは灰田三奈」
ひそひそ話の女子の一人が自己紹介をしてきた。
「あたしは八木嘉穂子。よろしくね黒崎さん」
続いてもう一人も自己紹介してくれた。
「うん、よろしく」
三奈と嘉穂子という新しい友達ができたことで、少女の気分はすっかり上がっていた。