もしも、私と“貴方”が出逢ったことに意味があるのならば────
注意!
荒らしとなりすまし、中傷は厳禁です
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主の自己満にならないよう、気をつけますねゝ(●´∀`●)
決別の秋は深まりて…
「大嫌い」
吐き出すように、私は言った。
何でだろうか。
もう我慢ができなかった。
今までの彩美の言動に耐えられなかった。
───馬鹿みたい。
彩美が小さくつぶやいたのが聞こえた。
本当、私ったら馬鹿。
大切な親友を傷つけたりして…
彩美は明るくて溌剌してる美少女で、私と同じテニス部。
「これじゃもう部活行けないや…」
彩美の味方はたくさんいて、団結力が固い。
私には味方なんて───。
「遙香の親友はあたしだよ」
そう言ってくれた彩美に絶交とか言っちゃって。
アホだ。
馬鹿だ。
もういっそ、消えてしまおう。
乾いた唇でそう口にした。
それだけで気楽になってしまう自分が腹立たしかった。
いつも逃げてばかりだ、私───。
「でも、疲れたの…」
言い訳だろうが私には必要なの。
消えたい。
私は、決心した。
新任の教師に鍵を借り、私は屋上へ出た。
涼しい風が私の顔を撫でた。
乱れた髪が私の鼻を擽る。
「 両親へ
最期までごめんね。
大好きだった。 」
それだけ書いて、メールした。
やっぱり私は愛してたんだ、親のこと。
今更ね…。
さぁ、もう逝こう。
疲れた身体を癒したい。
逃げてばかりでも疲れたのに。
「ばいばい」
誰にも聞こえない声量でサヨナラした。
私はフェンスを乗り越え、飛び降りた。
重力が私を包む。
目をつぶったハズなのに、鮮やかな花火が見えた。
赤、青、緑。
幻想的な色だ。
最期に見る景色がこれなのかな。
パチンと小さな音が耳を掠った。
【時は駆け巡る】
花火が消えた直後、私は背中から叩きつけられた。
痛いな。
私、命が絶えたのか…?
でもこうやって考えることができてるから、死んではない。
目を開けて、あたりをうかがう。
あたりを見回し、私は驚いた。
「な、何…侍!?」
侍と思しき刀を差した青年が、私に近付いてきた。
悪い夢だったら良いのに。
死のうとしたくせに、私はそう願っていた。
「大丈夫ですか?」
優しそうな彼は、そう言った。
私が何者かを問わずに。
「えっ…はい」
自分でも驚くほど小さな声で答える。
青年は、私の手をふわりと取った。
その仕草に下心とか下世話な感じはまったくなかった。
不思議…。
私、今までこんな風に男の人に優しくされたこと、なかった…。
急に鼓動がはやくなる。
顔も熱を帯びて─────。
「こんな所にいたら大変だろうから、とりあえず屯所に来てくれますか?」
青年が私の顔をのぞき込んだ。
「体調は大丈夫ですか?」
“屯所”に行く途中、青年が問いかけてきた。
ニコニコと優しそうな笑顔が眩しくて、思わず顔を背ける。
「大丈夫…です…」
─────なんでこんなに醜い私に優しくしてくれるの?
訊きたかった。
だけど、怖かった。
「なら良かった。名前、訊いてもいいですかね?」
青年が私に向き直る。
「宇田川遙香です」
青年の優しさがとても嬉しかった。
なんでこんなとこにいたのか、等訊かない優しさが。
「遙香、と呼んでいいですか?」
心が震えた。
こんな優しい美青年に呼ばれるなんて────。
「は、はい。貴方の名前は───?」
恐る恐る訊いてしまう。
もっと貴方が知りたいの────。
「私は山南です。気軽に呼んでください」
青年───山南さんは優しく微笑んだ。
こんな、友達も傷つけた馬鹿な私になんで優しくしてくれるの?
嬉しい反面、怖かった。
「屯所では女中として過ごしてくれますか?」
私の気持ちを知ってか、知らずか山南さんは私の顔をのぞき込む。
女中でも何でもいい。
────この人の側にいられるのなら。
こんな気持ちは初めてだ。
優しくされたから、とかではなくて。
この人の側で、尽くしたい。
そう、強く思った。