新たに3年。残りも3年。

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1: 柄紗 ◆YNk:2018/11/21(水) 15:58

2作目です、!

この話は今の私の話です、。そのためノンフィクションとなっております、。

恋愛的要素はないと思います。初心者ですがよろしくお願いします。

2: 柄紗 ◆YNk:2018/11/21(水) 16:23

*登場人物*

凪原 椿 (なぎはら つばき)/中1/女子
運動神経は人より自信がある。勉強は平均より少し上。
生まれつき、喘息をもっている。そのため休みがち。ドがつくS。

田中 悠茄 (たなか ゆうな)
明るい性格で面白い。椿と仲が良く、小学校1年からの友達。
学級委員などを進んでやるしっかり者でもある。

戸森 灯南 (ともり ひな)
言いたいことは言う、嘘がつけない人。冷たいところもあるが
友達大好き。外国に住んでいたこともあるため日本人離れしている所も。
悠茄と椿と仲が良い。

河本 星李 (かわもと せり)
穏やかそうだけど、椿と並ぶドS。根は優しい。悠茄と椿と灯南と仲が良く
椿大好き。椿が欠席すると相当落ち込むらしい。

3: 柄紗 ◆YNk:2018/11/21(水) 16:53


「う〜、、、。寒すぎ!もう、凍るし!本当に10月?」

ある日の朝。
3人は10月とは思えない寒さに体を縮めながら歩いていた。

「悠茄、うるさい!寒いって言うと余計寒くなるじゃん。」
「寒いのは本当でしょ?灯南は寒くないの?」
「は?これで寒くない人なんていないっての!」

今日もいつものように悠茄と灯南のコント(?)のような喧嘩のような何かが
始まっている。だがいつもと違うところは.....、

「二人ともうるさい。今日は椿、休みなんだから。」

そう、椿が休みだということ。

「あ〜、やっぱ椿居たほうが盛り上がるね〜...。」
「毒めっちゃ吐くけどねー。まあ、それは星李もか。」
「灯南、一言余計。いや、めっちゃ余計。」
「え〜?そう?事実でしょ。でもやっぱ寂しいよね〜!」

3人はそんな会話をしながらゆっくり体を慣らすようにしながら学校に向かう。一人いないだけでも会話の盛り上がりはいつもよりない。

「椿、今日病院らしいね。」
「うん。なんか、心臓のあたりが痛いって言ってた。大丈夫なのかな?」
「まあ、うちらは普通にしてよう。心配されすぎるの、椿嫌いだし。」
「だね〜。」

悠茄の一言を最後に会話が途切れた。

そして3人は学校に遅れないよう、足を早めた。

4: 柄紗 ◆YNk:2018/11/21(水) 16:54

ノンフィクションと書きましたが少し変えています

5: 柄紗 ◆YNk:2018/11/22(木) 10:40

*椿目線*

心臓のあたりが痛い。

そう感じたときから悪い予感はしてた。

信じたくなかっただけで。

私が13年間生きてきた中で一番ショックだった言葉は

今さっき、病院の先生が言った言葉だった。


――ガンですね――

は?ガン?

ガンなんて、他人事だった。

まさか自分がなるなんて。しかもまだ子供。

もう何をやっても無駄らしい。

状況が飲み込めない私と母に、先生のとどめの一言。


――あと、3年です。もう少し早く見つかれば良かったのですが――


あと3年ってなにがですか?

まさか、生きられる時間が?

あんた医者でしょ。

助けてよ。

まだ何も

何もしてない。

6: 柄紗 ◆YNk:2018/11/22(木) 15:09


 ―次の日―

「ふ〜...。今日も寒いね〜...。」

今日も悠茄のこの一言から会話は始まる。

「だねー。寒すぎるんやて、バーカ。」
「灯南、誰に言ってんの?笑」
「えー?誰にとかなくない?」

3人が盛り上がる中、椿は一言も話さない。

昨日、医師に余命宣告をされたばかりだと知らない3人は
疑問を持ち始めた。

「今日、椿元気ないね?どーしたの?」

星李が椿に声をかける。

しかし椿の返事はない。

「おーい。椿?だいじょぶー?」

次は星李に代わり灯南が声をかけた。

「え、あ、うん。ちょっと考えてることがあって。」
「え!椿大丈夫ー?」
「うん。大した事ないから。」

そう。大した事ない。

でも本当は大した事ありあり。

大した事はあるんだけど自分が信じたくないだけ。

「何かあったら相談する。」

椿がそう呟くように言うと、3人は深堀せずゆっくり頷いた。

7: 柄紗 ◆YNk:2018/11/23(金) 11:48


 友達に病気のことは後々話す予定。

ていうか、話さなかったらやばいし。

いきなり死ぬとか意味分かんないじゃん。

あ、本題はそれじゃなくて!

友達より問題なのは、妹。

自分で言うのも何だけど、本当にお姉ちゃん子な優しい子。

あと3年で私が死ぬなんて言ったら、なんて言うのかな

やっぱ、泣いちゃうのかな。

言いたくないな

でも言いなきゃな

やばい、涙出そう。

登校中に泣くとか何考えてんの

灯南が私ならバーカって真顔で言うなあ

みんなが私ならどうするんだろう

わたしが皆ならどうやって慰めるんだろう

妹がわたしだったらどうするんだろう

わたしが妹だったらどうするんだろう

もう考えるのはやめよう

考えたって考えなくたって

死ぬもんは死ぬの


こんな重大なこと、

登校中に考えることじゃないよね、ホント

8: 柄紗 ◆YNk:2018/11/23(金) 15:26


 感想とかあったら下さい、!

9: 柄紗 ◆YNk:2019/01/20(日) 14:27


そんなことを考えていると涙がでてきた。

引っ込めたいのに引っ込まない。

「うわっ!?椿どーした!?」

「悠茄うるせーわ!椿どうしたのー?もしや、、腹痛いの!?」

「ちょっと灯南!冗談言わんといて。椿、大丈夫?」

星李に支えられながら道を歩く。
情けないなぁ、、、。迷惑かけて。

そして、通学路の途中にある公園のベンチに座った。
皆は私が落ち着くまで何も聞かなかった。

「椿、話せる?どうしたの?」

星李が背中をさすりながら聞く。

「学校まではあと5分くらいやし、大丈夫やよ?」

「そうそう。門が閉まるまであと30分はあるし、
今話せそうなら、話してみてよ。」

皆の優しさにまた涙が出そうになる。

もう全て話してしまおう。

そう決心した。


「実はさ、、、」


これが第2の人生の幕開けだった。

10: 美蓮 ◆YNk:2019/02/02(土) 16:47

星李目線

理解できない。

椿が丁寧に、涙を流しながら説明してくれた。

でも理解できない。

というか、受け入れたくない。

「え、、。あと3年って、マジ?」

「ちょ、ちょっと椿ー!そんな冗談笑えんよ、?」

灯南と悠茄は明らかに動揺している。

当たり前のことだけど。

「冗談じゃないよ。本当なの。昨日医者に言われた。」

「その医者、嘘ついとるやろ、、?よし、今からうちが
殴りこみに行ったげるわ。」

灯南はそんな強気なことを言いながら泣いていた。
悠茄は、もうすでに号泣していたけど。

それにつられて椿もまた泣きはじめた。

「皆、泣かんといてよ、、、。
あと3年でしょ、、?色々、楽しいことしようよ。
先生の愚痴言い合って、遊びに行く計画立てて、買い物言って、
カラオケ行って、、、。皆で女優さんになるんでしょ!?」

私は泣かない。

だって椿を、不安にさせるから。

「そう、だね。」

皆で抱き合って笑った。

これからも一緒に居よう、そう誓った。

今までの思い出、全て思い出した。



だからきっと、

私は泣いちゃったんだ。

11: 美蓮 ◆YNk:2019/02/03(日) 14:45

椿目線

(やっと言えた。

皆に、事実を。

昨日は皆で泣いちゃったなぁ。

学校に着いたときには皆目が赤くて、、。

先生をビックリさせちゃった。)


昼休み。

そんなことを考えていた。

「あれ?凪原さんどうしたの?」

ぼーっとしていた私に話しかけてきたのは

私の初恋の相手。道田賢斗(みちだ けんと)

もう今は好きじゃないんだけど。

「別に何でもない。道田くんから話し掛けて
くるとか珍しいねー。そんなに気になった?」

冗談っぽく答える。

だけど彼は笑ってはくれなかった。

いつもは天然でとても優しくて、常に笑顔だ。

どうしたのだろう。

「凪原さんさ、今日、元気ないね。」

「え、そうかな?」

こういうとき、彼の勘は鋭い。

そして、

正しい。

「何か、嫌なことあった?」

「そんなことないよー!いつも通り、!」

彼の勘は間違っていない。

「いや、絶対何かあったでしょ?
今日、第一活動室に来てよ。僕も話したいことあるし
凪原さんの話聞くよ。」

「え、、うん。」

うん。はい。YES。

そう答えなければいけない気がした。

お調子者の

優しい、

面白い、

いつもの彼じゃ、

ない気がした。


―続く―

12: 美蓮 ◆YNk:2019/02/03(日) 14:45


ノンフィクションじゃなくなってきてます、、、。
気軽にコメントお願いします、!

13: 美蓮 ◆YNk:2019/02/04(月) 12:58

椿side

放課後。

道田くんに呼び出された第一活動室へ向かった。

話ってなんなんだろう。

机に座って待っていると、

「凪原さん。」

声をかけられた。

「ごめんね、僕から呼び出したのに。」

「いいよいいよ!
それで、、話って何、?」

道田くんは話す内容を整理して
いるのか返事がなく黙り込んだ。

「あのさ、、、話してくれないかな。」

「何を?」

「何か、あったんだよね?」

『違う』

『何もない』

そう言えば良かったのかもしれない。

でも道田くんには

本当のことを知ってもらいたかった。

だから、話そうとした。

でも、話せなかった。

涙が出てきたから。

「凪原さん、、、辛いことを思い出させて
しまったなら本当にごめん。でも、教えてほしい。」

「道田くん、長くなるけど、良い?」

「うん。」

道田くんは優しく頷いた。

そして私は、ゆっくり話した。


「―――ってことがあったの。」

「、、、、残りが3年って、、本当なの?」

「うん。」

「、、、凪原さん、僕の話も聞いてくれる?」

次は私が頷き、

道田くんが、ゆっくりと話し出した。

「3年後ってあっという間だよね。
でも、今から3年は楽しんでも、普通にしててもやってくる。
だったら、楽しんで3年過ごした方が良いと思うんだ。
河本さんや戸森さん、田中さんと楽しい思い出を沢山つくってほしい。」

「.......。」

「3年後、色々なことを思い出すと思うんだ。
その凪原さんの思い出の中に、、僕が居たい。」

「、、、え、、?」

「僕、ずーっと凪原さんのことが好きだったんだ。」

私はこのとき気がついた。

まだ私は、

道田くんのことが好きだったんだと。

「だからね、、えっと、、、」

「うん、、」

「凪原さん、必ず幸せにする。
僕と、付き合ってくれませんか?」

「、、何それ、、プロポーズみたい、。」

そう言って彼にハグした。

でも、天然の彼じゃこの意味が分からないだろうから
耳元で言ってあげた。


「こちらこそよろしくお願いします。」


3年しかないけど

死ぬまであなたと居たい。

そう思った。

―続く―

14:匿名:2019/02/04(月) 14:24

泣けます...。面白いです。がんばって下さい

15: 希々花 ◆YNk:2019/02/10(日) 12:19

>>14ありがとうございます、!頑張ります、。

16: 希々花 ◆YNk:2019/02/13(水) 17:10

灯南side

馬鹿みたいに寒い帰り道。

、、、、、、、、。

おかしい。

絶対におかしい。

なんで椿こんなにニコニコしてんの?

寒いのに笑っとるとか理解できん、、。

しかも色々あったはずなのに。

よし、聞こう。

「椿ー、なんか良いことあった?」

3人がこちらに振り返る。

「あ、灯南ちゃん分かっちゃったー?」

「椿、「ちゃん」付けやめて、きもい。」

「こら、灯南。」

星李のつっこみが聞こえたけどまあ無視。

「聞きたい?」

椿が笑顔で言った

―続く―

17:firo◆gU:2019/02/13(水) 23:54

すれ違いながらも日常を歩んでいくキャラクターと
ドキドキするストーリーが大好きです。
応援してます!

18: 希々花 ◆YNk:2019/02/14(木) 14:32

>>17
読んで下さりありがとうございます、!嬉しいです*

19: 希々花 ◆YNk:2019/02/14(木) 14:49

灯南side

「聞きたいっ!」

真っ先に反応したのは悠茄。

「私も気になる、!」

星李も手を挙げて言う。

「灯南は?」

椿がニヤニヤしながらこちらを見ている。
私が「何かあったの?」って聞いたんやけどな、。

「聞きたくない訳ない!」

「よーし、じゃあ言うね!」

こんなにドキドキするのは久しぶり。

大したことないと思ってたけど、

椿がこんなに表情に出るのは珍しい。

「道田くん知ってるよね?」

「知らなかったらやばいよー!
だって同じクラスだよ?」

「椿がこの間まで好きだった子でしょ?」

「あの天然くんがどーかしたの?」

椿は私たちの目を見て目を細めた。

「告白されたの。」

「なーんだ、告白さr、、、え!?!?」

「え、椿それ本当!?」

「で、で、返事は?」

2人が驚く中、私は椿の返事を聞いた。

なぜかって?

それは、、、

気になったから笑

「『お願いします。』って、、。」


このあと私たちは黄色い歓声(?)

をあげ、恋話を永遠にしていました


―続く―

20: 希々花 ◆YNk:2019/02/15(金) 17:24

道田賢斗side

あー、まだかなぁ、、。

早く来ないかなぁ、、。

問題!僕は今、何を待っているでしょーか?

給食?

早く食べたいけど違う。

お母さん?

いえ、お母さんは家です。

正解は、椿。

早く登校して来ないかなーってさっきから

思ってるんだけど、好き過ぎ?

そのとき教室の入り口が勢いよくガラッと開いた。

『おはよー!』

そんな声が聞こえると思ったんだけど実際は違う。


「天然くん!椿が!!」


そう叫ぶ、戸森さんの目には涙が溜まっている。

僕には理解できなかった。

今、何が起きているのか。

でも、一つ確実だったのは、

椿の身に何かが起きているということ。

理解できていない僕の手を戸森さんがひっぱる。

僕が戸森さんに連れて行かれた場所は保健室。


ベットに寝ていた椿が目を開いた。

「椿!」

「大丈夫!?」

「良かった、、心配したよ、、!」

「椿、、、大丈夫か、、?」


椿はそっと体を起こす。

そしてこう言った。



「あなた達、誰?」

21: 希々花 ◆YNk:2019/02/16(土) 16:54

賢斗side

椿は救急車に乗せられ、病院に。

それから椿のお母さんもみえた。

僕達4人は放課後、椿のいる病院に行った。

でも

椿の記憶は、戻っていなかった。

椿のお母さんによると、少しずつ色んなことを

忘れるようになっていくようだ。

僕達のことはまたすぐに思い出すと言っていた。

が、

3年後、椿が亡くなる頃には

恐らく、誰のことも覚えていないらしい。


夜6時、皆が売店に行っている間、記憶の戻っていない

椿と2人で話をした。

「僕のこと、分かる?」

「、、、、私の、弟?あ、お兄ちゃん?」

「んー、違うなぁ、、。」

そう言って笑ってみるけどすごく辛い。

泣きたくなる。

「僕は道田賢斗。」

「道田くんかぁ、、、私と同じ学校?」

「うん、そうだよ。隣の席。」

「隣の席なんだ!だから病院に来てくれたんだね。」

「、、、、、うん、、。」

それに君の彼氏だから、とは言えなかった。

椿だけど、椿じゃない。


「初対面で言うのもあれなんだけどね、、、。」

「どうしたの?」

「私、きみのことすごく好きかも。」

「、、、、、椿、、、、、。」

「ごめんね、初対面なのにさ、、。
君、カッコいいんだから彼女とかいるよね、ごめん。」


僕の告白を受けたときと同じように

椿は、困ったように笑った。

椿だけど椿じゃない。

でも椿は椿。

記憶がなくなっても椿。

僕の彼女だ。

色々な感情が混ざってしまったから僕は

泣いてしまったのだ。

そしてその涙を隠すように

椿をそっと抱きしめた。

22: 希々花 ◆YNk:2019/03/30(土) 15:57


抱きしめた感じで分かる。

椿は明らかに動揺していると。

そりゃあそうか。

記憶がないということは、

椿からしたら僕は初めて会った人。


「み、道田くん、どうしたの...?」

椿が恐る恐る聞いてくる。

彼氏だと、言った方が良いのだろうか。

迷っていると椿が言った。

「もしかして...、彼氏、とか?」

驚いて椿の顔を見ると、真っ赤。

あ、

可愛い。

ちょ、椿に惚れてる場合じゃない!

「.....な、どうして、分かったの...?」

「やっぱり彼氏なんだ。」

僕の質問には答えず、にこっと笑った。

「嫌じゃないの...?」

「嫌なわけないよ!道田君、かっこいいもん。
あ、私、男見る目あるの。こう見えてね!笑」


安心した。

もしかしたら、

別れてって言われるかもって思ってた。

安心したら、

また涙が出てきた。

僕泣きすぎ?

23: 希々花 ◆YNk:2019/03/31(日) 15:32


椿のお母さんは相当ショックだったみたいで、

倒れそうなくらいにふらふらになっていた。

その為、椿の妹を病院に送ってきた椿のお婆ちゃんが

家に連れて帰った。

7時30分。

椿のお父さんが来てくれるのが8時。

あと30分は椿と居られる。

まあ、椿は薬の副作用で寝ちゃったんだけど。


「おねえちゃん!」

綺麗な顔のまま寝る椿を眺めていると、

そんな声が部屋中に響いた。

驚いて入り口に目をやると一人の女の子が立っていた。

お姉ちゃん、ということは...、

椿の妹?

確かに似てる。


「こんばんは。椿の妹さん?」

「はい、お姉ちゃんは...!?」

「落ち着いてるよ。椿はさっき寝たんだ。」

「そうですか...。あ、私、椿の妹の
奏(かなで)です。えっと....、あなたは..?」

「僕は、道田賢人。
聞いてるかもしれないけど、椿の、その、えっとー...。」

「あ...。もしかして...、彼氏さんですか!?」

「え、あ、うん。」

「話は姉から聞いてます!
家で、すっごいカッコいいし優しいってずっと言ってるんですよ。」

「な、なんか照れちゃうなぁ...。」

「これからも、姉のことよろしくお願いします!」

「もちろんだよ!僕の方がお願いしたいぐらい。」

「えへへ。早くお姉ちゃん起きないかなぁ。
私も、いろいろ話したいことあるんです。」

「そうだね。」


奏ちゃんの笑顔を見たとき思った。

奏ちゃんは、椿の病気のことを、

知っているのか、と。

もしかしたら、


知らないのかな。

24: 希々花 ◆YNk:2019/04/01(月) 16:27


奏ちゃんと他愛のない話をしていると、

椿のお父さんがやって来た。

30代後半くらいだろうか。

優しそうで、男の僕から見てもカッコいい。


「こんばんは。僕、椿さんの、」

「ああ、話は聞いてるよ。賢斗くんだよね?
いつも椿がお世話になってます。」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


力一杯頭を下げると、お父さんは優しく微笑んだ。

彼女のお父さんと会うのは緊張していたけど、

優しそうな方で良かったな。


そんなことを思っていると、お父さんは

急に真剣な顔になって言った。


「奏、ちょっと話があるんだ。」

「何、どうしたの?」

「いや、ここでは話せない。
外で話そう。賢斗くん、もう少しだけここに居てもらっていいかな?」

「分かったけど...。」

「はい、分かりました。」


緊張した空気を病室に残したまま

椿のお父さんと奏ちゃんは出て行った。

多分、

椿の病気のことを話すのだろう。

もし、僕にお姉ちゃんがいたとして、

そのお姉ちゃんが病気で死ぬと知らされたら、

僕はどうするだろう。


奏ちゃんは、

椿が死んだら、


立ち直ることができるのだろうか。


 

25: 希々花 ◆YNk:2019/04/04(木) 10:44


20分ほどすると、2人が戻ってきた。

奏ちゃんの目はうっすらと赤い。


「ちょっとお母さんに電話してくるよ。
奏、賢斗くん、もう少し待っててくれ。」

「はい。」

「......」


椿のお父さんが出て行くとしばらくの沈黙。

点滴の液がポタポタと落ちる音だけが聞こえる。

やっぱり奏ちゃんは、

椿の病気のことを今知らされたんだ。


「賢斗さん...、」

「何?」

「あなたは、、知ってたんですか?お姉ちゃんのこと。」

「......うん、知ってた。」

「....記憶がないっていうのは?」

「それも、今日知った。」


僕が答えると奏ちゃんのすすり泣きが聞こえてきた。

僕は何も言えない。

奏ちゃんを慰めることなんて僕にはできない。

慰めたところで、

奏ちゃんの悲しい気持ちはなくならないだろう。


「....――して、」

「えっ?」

「...どうして、、」

「.....うん....。」

「お姉ちゃんは、」

「.....うん....。」


「私に、病気のことを、言って、、くれなかったんだろう、」


声をあげて泣く奏ちゃんに、

僕は声をかけることができなかった。


 

26: 希々花 ◆YNk:2019/04/05(金) 10:47


泣き止まない奏ちゃんを、

椿のお父さんは、連れて帰った。

あれから、奏ちゃんに何も声をかけられなかったのが

とても悔しい。


二人が帰って、ふと時計に目をやると

もう9時を過ぎていた。

帰りたくないけど、帰らなければ。

できればこのまま泊まっていきたい。

だけど、泊まるとなると、色々まずい。

だから大人しく母に電話した。

母は椿のことを気に入っていて、

椿が倒れたと言ったときは、自分の子の事のように心配していた。

椿は礼儀正しいし、いつも笑顔だから皆に好かれている。


そういえば、、、。


僕に、病気のことを話すときも、

椿は、

笑っていた。

なぜ、あんなに笑っていられるのだろう。


考えようとしたけど、

なぜか涙が出そうになったから


僕は考えるのをやめた。


 


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