(小説書きます)
8時頃教室のドアを開けると、自分の机に花瓶が置いてあることに気づいた。教室に入って自分の席に近づいてみると、透明で小さめの、半分くらいまで水が入っている、名前はわからない薄ピンクの花が一本活けられている花瓶が、机の真ん中の辺りに置かれていた。
「拓、花なんて持ってくるなんて優しいよなぁ」
「だって今日、紗希が亡くなって半年じゃん?うちでちょうどシクラメン育ててたから、どうせなら持ってこようと思って」
花言葉も紗希にぴったりだし、と私の机に向かって小さく微笑むと拓は自分の席に着いた。そうか、半年前の今日に私はこの世を去ったはずなのだ。
家族3人でドライブに行ったあの日。よく晴れていて少し暑い日。呆気なく車が事故に遭ってしまった。どのような事故だったかはよく覚えていないけれど、その事故で両親がなくなった。全ては一瞬で、気づけば私は"幽霊"と化していた。
私も自分の席に着く。机の上の花に目を落とす。拓はやっぱり優しいなぁと思いながら、拓のほうを見つめ、ありがと、嬉しいよと呟いてみる。君は気づかないってこと分かってるけど。