S君の事を好きになれたら、どんなに良いだろう。明るくて面白くて、でも根はしっかりしてて。ルックスも悪くないし、背だって結構高い。「えるあー?次体育だよ、早く行こ。」ぼんやりと教科書を捲っていたら、雀ちゃんに肩を叩かれた。「あっ・・・ごめん、ぼーっとしてた。」いつのまにか授業は終わっていて、周りの皆は早々と動き出していた。「今日、いつにもまして顔白いけど大夫?」更衣室で体操服に着替えながら、雀ちゃんに顔を覗き込まれた。「全然平気、それより・・・」私は生まれつき色が白く、貧血でも無いのに血色が悪い。「テスト前だからって無理しないでね、また2人で息抜きしよう。」雀ちゃんはギャルっぽい派手な外見をしているが、優しくていつもお世話になってばかりだ。「今日もこの前に引き続き、ソフトボールをします。」いかにも体育会系という体育担当の先生の指示に、野球部は異様な盛り上がりを見せる。「ソフトボール久しぶりー」野球経験のある雀ちゃんは、嬉しそうに飛び跳ねている。「じゃあまず、2人組でキャッチボールな。」意気揚々とグローブをはめ、思いっきりボールを投げる雀ちゃん。案の定ボールは私の頭上をかすめ、男子コート目がけて一直線に飛んで行った。
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