_____彼の言う「緋憐色」とは果たして本当にあるのだろうか。
こんにちは。嘉多(かた) めろと申します。
この小説はパッと思い付きで考えた物です。少し文がおかしい所が
あるやも知れません。ご了承ください。
等作品は、作者めろの自己満足と小説の好みの塊です。
「あっ…合わないな」と思ったら閲覧を止めるのを推奨します。
日常9非日常1くらいの割合で物語は進行しますので
それでも良いと言うかたは是非、感想批評(上から目線でも構いません)
宜しくお願いします。
《第一滴目》
狩野隆平 38歳。 彼は思い悩んでいた。
24歳の時様々な美しい作品達を世の中に送り出し、一世を風靡した天才画家。
そんな彼は、時が経つと共に自分の感性の衰えを感じていた。
昔は筆も持つとすらすらと様々な曲線を描き、たちまち美しくもどこか儚さを感じる作品が出来上がった物だが…
今は筆を持ってもイメージが湧かない。昔は沸々と沸き上がっていたイメージが…
きっと私の中の物は全て出尽くしてしまったんだと悟った彼は
後、一つだけ描いた後、画家を辞めようと思い至った。
どうせ子供も無く、老後の金はたんまりある…
浪費癖の無い彼は画家として稼いだ金は全て貯金していたのだ。
彼はふと絵の具だらけのエプロンを脱ぎ捨て、アトリエを見渡した。
所狭しと置かれている画材の数々、部屋に香る絵の具の匂い…
ここで仕事をするのも、もう後少しか…と感傷に浸っていると
突然、机の上の携帯電話が鳴り響いた。画面には「吾月 礼司」の文字。
また、掃除の手伝いでもやらされるのか…と溜め息を付きながら
手早く着替えを済まし、顔に付いた絵の具を拭いながら
彼はアトリエを後にした。
きっとここから回り始めたのだ。彼を取り巻く、この物語の歯車は。
《第二滴目》
「随分、遅かったじゃないか。勤勉な隆平くんが珍しいな?」
吾月礼司(ワガツキ レイジ)78歳。隆平の師匠であり彼も有名な油絵を描く画家である。
その繊細かつ、記憶に残る独特なタッチは大勢の人間の心を掴み、10年前に画家を辞めた今でも
熱烈なファンがいる程だ。
「すいません、吾月先生…して今回は一体どのようなご用件で?」
「あぁ…大したことじゃあないんだが…隆平くん。最近あまり筆が進んでないと聞いたが…」
一体、何処からの情報だろうか…最近はアトリエに篭りがちだった誰とも会っていない隆平は不思議に思った。
吾月礼司は時々、隆平の心を見透かしたように澄んだ目で彼に問うて来る時がある。
隆平はそんな師を時々恐ろしく思う時が何度かあった。自分の全てを見透かされているような気して…
「まぁ、別に気を病む事は無い。スランプは誰にでもどんな職業にでもある。それを克服するのが
一つの試練…それを乗り越えて人間は一つ強くなると思っている…持論だがね」
「あ…あの先生!僕はスランプとかでは無く…本当に何も無い状態になってしまったんです…!」
隆平は必死に師に訴えた。スランプは一時的な物だ。何時かは終わりが来る。だが今の隆平の状態は
思いっきり絞った雑巾のように、水が一滴も出ない…アイデアが湧かない…そんな状況になってしまったのだ。
天才の彼だからこそ分かる自分の限界…もう今までのように沢山の作品を描く事は出来ないだろう。
「なるほど……それでもう絵を描くのは辞めるのか?」
「はい…この後、一作だけ描いてそれでもう終わりにしようと思っています…」
吾月礼司もまた天才だ。弟子の言っている事とその決意の固さを理解したのだろう。
「わかった。無理に止める事はしない。しかし、これだけは約束しなさい。ちゃんと後一作描きあげる事。分かったね?」
「分かりました!」
隆平は意気込み、ほんの少しだけまた昔の気力が戻って来たような気がした。師の言葉のおかげだろうか。
何だかんだ言って師は自分の事を考えてくれている…!と思い、早速次作に取り掛かろうと師の部屋を立ち去ろうとした時…
「あぁ…隆平くん、大事な事をいい忘れていたよ」
「何ですか?」
「部屋の掃除を手伝ってくれないかい?」
「…………」
前言撤回。やはりこの人は吾月礼司だ。
《第二.五滴目》(番外編みたいな物なので2.5にする事にします)
隆平は最後の作品は何にしようかと愛車でドライブをしながら思い悩んでいた。
在り来たりな物では、自分の最後を飾る作品にはなり得ない…海岸線の道路に車を走らせながら
物思いに耽っていた彼は、ふと思い付いた。
確かに今描こうと思っている作品は自分の最後の作品だ。だが
それは「画家 狩野隆平」としての最後であり、自分が完全に終わった訳ではない。
寧ろこれは始まりなのだ。新しい自分…もう画家では無くなるものの、狩野隆平は終わってはいない。
ただ新しくなるだけなのだ。…其処でイメージが浮かんできた。
「画家 狩野隆平」の最後の作品は新しい自分を象徴した物にしよう…と。
なんだか頓珍漢な気もするが、良く思えば若くして画家デビューし、好き放題絵を描きまくっていた
自分に相応しい最後だろうと納得した。
そうなるとどんどん絵のイメージが沸いてくる。彼は大急ぎでUターンし
画材も調達すると家路を急いだ。