こんにちは、依紗です。
おとぎ話作りたくなったので
懲りずに2作目です。
1作目に飽きたとかではないです。
嘘です。ちょっと飽きてます。
けど、ちゃんと更新します。……いつか。
http://ha10.net/novel/1535214281.html
○注意
このお話はおとぎ話もどきです。
1時間ぐらいで思いつきました。
へんてこです。
グロテスク表現とかあります。
あと多量の絶叫シーンがあります。
気に障る方はあの……見たくなくても目に入ると思いますけど、
見て見ぬふりをして下さい。お願いします……。
あるところに、それはそれは恐ろしいバケモノの住む森がありました。
森に立ち入った人間を喰らい、血も肉も残さぬほどにむさぼり食うバケモノ。そんな身の毛もよだつ怪物の住まうその森を周囲の村人たちは恐れ、数十年も前にその森には誰も足を踏み入れなくなりました。
けれどバケモノだって何の理由もなく人間を食べているわけではありません。そのバケモノにとって森に住む動植物よりも人間の方が美味で、栄養があったのです。
「あーあ……」
そんなわけで今日も今日とて好きでもないネズミや木の実を食べつつ、バケモノは思います。あぁ、ニンゲンの子供が食べたい。と
バケモノは子供を食べたことがありませんでした。
というか会ったことすらありません。
大人達のしつけがきちんとしているのか危険な森に入ってきてくれないのです。本当に残念です。
「じゅるり……」
ニンゲンの子供は柔らかく、肉質が良いと聞きます。
きっと食べたらおいしいんだろうなぁ……。
そう考えるたび、バケモノのお腹がぎゅるると鳴り、妄想が膨らんでゆきます。
あぁ、もし子供が来たらどう食らってやろうか。
足先、指先、鼻先、毛先、ありとあらゆる先端から少しずつちぎって、恐れおののく様子を見てやろうか。それともまず血を絞り出して、肉の方は干してから食おうか……あぁ、悩む。
子供の味を想像して、ヒトリで悶(もだ)えるバケモノ。
しかし、舌に残るのは数十年前に食べた老人の味……。
「あぁもう、虚しいなぁ……」
冷静に考えればココに来るのは世を捨てた老人か女か、自分を勇敢にも倒しに来る筋肉質の男だけ……。別に美味しくないわけではないものの、それでも子供への食欲を抑えられません。とはいえ、
「もうやめよう。豪華なメシを想像すると普通のメシがまずくなる……」
そしてコイツらはもっとマズくなる。そう考えながらネズミを10mはある身体に放り込むバケモノ。
と、その時。バケモノの鼻がひくりと動きました。
『ニンゲンだ!』
火の匂い、木の匂い、穀物の匂い。それらが全部合わさったニンゲンの匂いが、バケモノの鼻をついたのです。バケモノは大興奮で野を駆けます。
久しぶりのメシだ! ちゃんとしたメシだ!
草をなぎ倒し、花をなぎ倒し、大きな木までなぎ倒しながら進む中。
バケモノはさらに驚くべきことに気付きます。
『女の子の鳴き声だ。歌が聞こえる……!!』
今まで遠くの村からしか聞こえなかった声。少女の歌声が森のなかで響いているのです!
バケモノは地をつかむ四肢が震えるのを感じました。
食べれる……。ニンゲンのコドモが食べれる……。食べたい。食べたい。タベタイ、クライツクシタイ!!
バケモノは地を駆けることを辞め、その場に立ち止まります。
タノシミタイ。ただ食べるだけじゃ満足できない。もっと、モット、モット……。
そう思った時には、バケモノはニンゲンの姿になっていました。ニンゲンの姿と言っても形だけで、ニンゲンの形をした手先や足先からは、ハミ出た黒い体がべちゃり、べちゃりと流れ落ち、地面に黒い線を描きます。
それでもバケモノは興奮を抑えきれません。にじり寄るようにして少女に近づくと、気づかれぬよう耳元にこう囁(ささや)きました。
「どうしたのかな? お嬢ちゃん。ここがどこか、お母さんやお父さんから聞いていないのォォ……?」
わざと恐怖を覚えるように囁き、恐怖する顔を見ながら、じわじわと食う。それがバケモノの作戦でした。すでに地面にこびりついたバケモノの体は少女の周りを取り囲み、うねうねと蠢(うごめ)いています。
どう逃げても無駄。
もちろん、そんな状況で弱々しい少女が刃向かえるハズもなく。少女はバケモノと目を合わせた瞬間、恐怖の表情を――
「う゛ぅぅぅわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「……え?」
――見せることなく。
顔をぐっしゃぐしゃにして絶叫する少女。
「おかぁひゃぁ、おかぁ……おがぁひゃ、がッ。おがぁああひゃぁああああああ!! ぅぅううぁあああああああああああああああああ!!」
「ちょっと、あの……」
あまりの剣幕にビビったバケモノがもう一度近付こうとするも、始終母親を求めて叫ぶ女児。
しまいには腰が抜けて立てないのに、ズルズルとスカートを引きずりながらばたばた後退し始めます。
「いぃぃぃぃやぁダッ!!」
両手とアタマをブンブンと振り回しながら、尻を引きずって後ずさりする女児。
「いやちょっと。お話を聞いてくれると……」
それを遠慮がちに追うバケモノ。しかしそれが女児を刺激したのか、少女はとてつもない大声でバケモノを怒鳴りつけます。
「いイぃ! ヤぁ! だぁって! いってるのにぃぃぃ゛!! ぅぅうぁあああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁ!!」
泣く、泣く、とにかく、泣く。
何を言っても泣いて怒る女児に対し、バケモノは思いました。
食べにくッ……。と。
バケモノが食べてきた大人達は皆、死の直前に自らの無力を知り絶望しながら食われて行きました。
声一つ出さず、硬直するニンゲンしかバケモノは知らなかったのです。
「どうしたものか……」
未だ大声を上げ、泣きわめく女児。
簡単に皮を引き裂けるはずの相手を前にして、しかしバケモノはその体を優しく持ち上げると無言のまま、近くの切り株の上に降ろし、自分は木の影に身を隠しました。
姿が見えなければ少しは泣き止むだろうと考えたのです。
「えっと……大丈夫。か?」
木の裏からバケモノは少女に声をかけます。
「だ、だいじょうぶ。……でっ」
少女はまだ泣いていましたが、しゃくり上げながらも呼びかけに応えてくれました。
ホッと胸を撫で下ろすバケモノ。
「そうか、うんまぁその……いきなり出てきて悪かったというか」
初めから怖がらせたのがいかなかったと深く反省しつつ、先程のことについて弁明しようとして……。
「あの゛……おがっ、おがあさんがね?」
「あ、うーん!」
なんかいきなり語り出したので強引に話を合わせるバケモノ。
「おがあさんが……びょうき? で、ベッドからでてこないの……。だから、いけないっていわれてたんだけど、でも、おくすりになるくさがあるから、とりにいかないとで、おいしゃさん? がなおらないって、でも、おがあさん、うごけないから、さっきそこのみちからはいったの……」
母親が病気で薬草を取りに来たわけか。
支離滅裂な文からとりあえず要点をつかんだバケモノはひとり木陰でうなずきつつ、
同時にこれは使えるとほくそ笑みます。
森を案内すると囁けば、所詮(しょせん)ただの子供、喜んで付いて来るに違いない。
その道中でゆっくりと味見することにしよう。