西暦2035年。
急激な人口爆発により、食糧不足や資源の欠乏が問題となった未来の世界。
日本政府は資源を確保するべく、使えない人材を切り捨てるために"人類間引き計画"を強行。
テストで点数を稼がなければ上位には入れない。
そして学年下位5名になれば"殺される"。
そんな残虐非道な政策の中、とある中学に一人の歴史ヲタクが転入する──。
>>02 登場人物
以前書いていたスレがありましたが、設定の見直しや構成の大幅な変更に伴って再度ゼロからやり直すことにしました。
よろしくお願いしますm(_ _)m
[国立王井学院中等部]
[3-δ(3年デルタ)]クラス…特定の科目のみ優秀な生徒を集めたクラス。
【虎威 康貴(とらい やすき)】♂ 15歳
何らかの目的を成し遂げるためにδクラスへ入ってきた転入生。
社会科が得意で、特に歴史が大好きな歴史バカだがその他の科目は壊滅的。
双子の兄がいたらしいが……。
日本刀を模したマーカーペンで解魔に挑む。
【伊賀 理零(いが りれい)】♀ 14歳
歴史のテストは常に最下位だが理科が得意な少女。
自分に自信がなく臆病で引っ込み思案。
武器は駒込ピペット型のクナイ。
【赤染 萌李(あかぞめ もえり)】♀ 15歳
京都のヤクザ、赤染組の首領の娘。
普段は京言葉で気さくに接するが、たまに口が悪くなることも。
国語、特に古典が得意だが理数系が苦手。
筆型の槍を武器とする。
【バンジョー・バターリン】♀ 14歳
オーストラリアから留学生としてやってきた少女。
英語は学年トップレベルだがまだ日本語に不自由があり、歴史や国語が不得意。
世界的に有名な企業の会長を父に持つ。
ホストファミリー先の家庭の子の影響で、ギャル語を話し、原宿系ファッションを好む。
羽根ペン型の武器を使用。
【礼門 晴人(れいもん はると)】♂ 15歳
元々Sクラスに在籍していたが、カンニングの疑いでδクラスに移籍した青年。
元Sクラスなため全科目優秀だが、特に数学を得意とする。
カンニングに陥れた犯人を探している。
冷静沈着でクール。
定規型の剣や分度器の盾で戦う。
【有久 律兎(ゆうく りつと)】♂ 35歳
3-δクラスの担任。以前は最高成績者が集まるSクラスの担任だったが、ある理由から2年間教壇を降りていた過去を持つ。
担当は数学。名前の由来はユークリッド(エウクレイデス)。
[3年Sクラス]王井学院内で成績優秀者を集めたクラス
【城戸 孝司(きど たかし)】♂ 14歳
OUIジャーナル(王井学院新聞部)で記者を務める。
成績良好なためSクラスに在籍しているが、Sクラスの雰囲気に馴染めずδクラスへ顔を出している。
広い人脈と情報収集能力から新聞部でも一目置かている。
現代社会が得意。
使用武器は単語帳を模した手裏剣。
【江猿 音楼(えさる ねろう)】♂ 15歳
王井学院生徒会長として君臨した男。
常に成績トップで学年一位に輝き、歴史のテストでは満点以外をとったことがない。
実家はかなりのセレブで、 康貴からは無駄遣いを疎まれている。
キザでナルシストだが、顔立ちは整っているという。
シャーペン型の剣を持って戦う。
【鳥飛 数我(とりひ すうが)】♂ 15歳
生徒会会計を務める男子。
数学が得意で、コンパスをモチーフにした武器で戦う。
城戸孝司とは入学当初からの親友。
口数が少なく表情も乏しく、友達は少ない。
【樋口 葉香(ひぐち ようか)】♀ 14歳
生徒会書記を務める少女。
国語、特に現代文を得意としており、万年筆型の槍を使用。
生徒会長に対する忠誠は異常な程で、生徒会長に心酔している。
[その他]
【徳上】
かつて康貴がバイトしていた歴史博物館の館長。
康貴を歴史ヲタクにした張本人。
【理事長 ???】
学院の理事長を務める。
普段表に出ることはなく、生徒や教師ですら対面したことがない謎多き人物。
前のスレは、もう更新しないのですか?
4:もやもヤシ (=゚ω゚)ノ ―===≡≡≡ :2019/01/14(月) 21:49 >>03
しっかりした結末も決めず行き当たりばったりで書いていたので、ちゃんと筋が通るよう全体の構想を変えて書き直すことにしました
前スレの更新の予定は今のところありません><
分かりました!
この新しい小説楽しみです(*^^*)
頑張って下さい。応援してます!
キター!♪───O(≧∇≦)O────♪
楽しみに待ってます!
ありがとうございます!m(_ _)m
8:もやもヤシ ホィ(ノ゚∀゚)ノ ⌒:2019/01/22(火) 08:29 【Prolog】
──怖い、怖い、怖い!
声帯を通して声になることはないけれど、少女の心は恐怖の声で埋め尽くされていた。
つい二日前まで少女にとってはただのクラスメートだった人達は、今や自身を狙うハイエナと化している。
「伊賀さん、歴史苦手だもんねぇ」
ねっとりと耳に絡みつくような女子生徒の声に畏怖を覚え、一歩、また一歩と後ずさる。
とん、とき背に教室の壁がぶつかった時、少女は絶望と諦めの入り混じった感情に飲み込まれた。
もう、逃げ道がない。
「私、何も出来ずに……終わっちゃうのかな……」
震える涙声で紡いだ言葉は、誰にも届かない。
「おい理零ぃー! まだ校内戦始まったばっかだろおぉぉ〜!」
と、少女は思っていた。
【1話 try康貴】
時は2035年。
急激な人口爆発と、それに伴う資源の枯渇が進む激動の時代。
残された資源を有効的に活用するため、世界は人類を選別するようになった。
有能な者は富を肥やし、無能とみなされた者は馬車馬の如く働く低所得労働階級──いわば奴隷となる。
芸術面やスポーツ面の才能も持たない凡人達が抗える手段は、有名大学への入学のみ。
そして成績下位は使えない人材として抹殺。
文字通りの、命懸けの受験戦争が始まっていた。
「突然だが伊賀、お前は明日からδ(デルタ)クラスに移籍することになった」
「ゑ」
放課後職員室前まで、と放送で呼び出され、ビクビクしながら職員室へ入った伊賀理零(いが りれい)に告げられたのは、クラスを移動しろとのことだった。
「ちょっと待ってください、クラス変更は定期テストの結果次第で決まるんじゃなかったんですか!?」
少女、伊賀理零の在籍する王井学院は中高一貫の国立学院なのだが、国から指定された『学力強化システム実施校』ということで少々特殊だった。
クラス編成はランダムではなく、"定期テスト"の結果で左右される。
上から順にS、A、B、C、そしてD。
女子は制服のリボン、男子はバッジがクラスの色ごとに分けられ、Sは紫、Aは青……と、冠位十二階に準じて区別されている。
そして階級通り、所属するクラスによって待遇も天地の差がある。
「δクラスなんてクラス聞いたことありません! 私、Dクラスなんですけど……」
彼女が所属するDクラスは学院内で最も成績の悪い落ちこぼれが集うクラスで、図書室や自習室の利用はできない上に放課後は掃除などの雑務を行う必要がある。
そのため、勉強時間も僅かで、Dクラスに落ちた時点で成績の向上は見込めない。
「まぁ落ち着けって」
ぐるぐる考えあぐねている理零を宥め、呼び出した男性教師は分厚い茶封筒を取り出した。
「δクラスってのは今年度から創設されることになったDクラスの派生クラスだ」
「それでギリシャ文字のDにあたるδ(デルタ)……」
理零は幾分か落ち着きを取り戻し、納得したように呟いた。
「Dクラスは成績不振者の巣窟とされているが、その中でも特定の教科では学年トップに食い込む者がいる。お前みたいにな」
教師は採点を終えたテストの山から1枚抜きとると、理零の小テストを掲げてみせた。
「理科の天文分野の小テスト満点、定期テストでも理科は毎度学年上位。このままDクラスにしておくにはもったいないとのことで、理科枠として移籍させることになった」
「でも私その他の教科ほとんど最下位で……」
「だからδクラスが創設されたんだ。得意科目が違う者同士で協力し、成績の向上を目指す。お前は理科のサポートだ」
突然すぎる移動に心の整理が追いついておらず、はい、とも言えず、言い訳ばかりが脳内を埋めていく。
不安要素が拭いきれない。
教師は追い打ちをかけるように茶封筒を渡した。
「放課後の雑務は免除だぞ」
「でもサポートって一体……」
「詳しいことは渡した封筒見とけ。まぁとにかくお前は明日から、5月1日からは俺の担任じゃない。寮も移動だ。そういうわけでDクラスのリボンを引渡してもらう」
教師は理零に質問を許さないかのように強引に話を締めた。
理零は不審に思いながらも、セーラー服から黒いリボンを外して担任に渡した。
冠位十二階で最低の階級である黒のリボンを。
職員室から出た後は、19時まで校内の掃除や雑務をすることになっているため、掃除場所へ向かう。
図書室を担当している理零は、図書室のゴミ箱が満杯になったとのことでゴミ捨てを命じられた。
言われた通り指定場所までゴミを運び終えると、ふと横脇に抱えた茶封筒の存在を思い出す。
普段掃除をサボらず真面目に行う理零だが、この日ばかりは茶封筒の中身が気になってもどかしくなり、立ち止まって封を開けた。
「"特定科目強化クラス"……δクラス……」
小さな活字がずらりと並び読む気が失せるが、さっと目を通す。
2035年5月1日から施行されるクラスで、特定の科目のみ優秀なDクラスの生徒を対象としている。
教科書は引き続き同じものを使用するが、副教材を追加する。
クラスカラーはないため、リボンやバッジの着用は義務付けない。
放課後の雑務は課さないため、これまで以上に勉学に励むこと。
5月1日までにDクラスの寮からδクラス専用寮『銀竹荘(ぎんちくそう)』に荷物を運ぶこと。
「授業内容については全然書いてない……なんなんだろ、δクラスって」
理零は釈然としないまま、茶封筒の封を閉めた。
図書室に戻って残りの清掃をするため、理零は早足で渡り廊下を進む。
4月下旬の18時は結構薄暗い。
「今日は早く帰っても荷造りで終わっちゃうかな……歴史の復習したかったけど」
理科の成績が優秀にも関わらずDクラスに在籍している一番の原因とも言えるのが、社会科だ。
特に歴史が嫌いで、人物名や事件名の暗記に手を焼いている。
理数以外の成績も良くない上に、歴史がボロボロなせいで定期テストでも最下位ギリギリになってしまい、危うく間引き対象者となるところだった。
成績下位5名を殺してしまう"間引き"。
日本の少ない資源に対応するために生まれた政策。
伸びない芽を摘むように、伸びない生徒は摘まれる。
「δクラスになったからには頑張らない、と……」
急ぎ足で進んでいた理零は、目の前の光景に足を止めた。
「職員室どこだよおぉぉ!」
絶望にまみれたような声で叫んでいたのは、一人の少年だった。
学ランから覗いている明るいオレンジ色のパーカーが目立つ。
「あの……職員室なら2階ですけど……」
理零がおずおずと話しかけると、少年はゆっくりと後ろを振り返った。
その姿に一瞬、呼吸を忘れた。
女の子と言っても差し支えないような可愛らしい顔立ちと、ヘアゴムで無造作にくくったオレンジの髪。
中学生男子にしては少し低い背丈と相まって、女子生徒かと勘違いをしそうになった。
「よかったら案内しますよ」
「……マジで? 案内してくれるのか!?」
元々大きく澄んだ目が大きく開かれ、涙で濡れていた瞳は蛍光灯の光でさらに輝く。
「……マジです……」
「ゔぅぅおお゛ぉ! ありがとぉ゛お! 」
理零は無駄に元気で騒々しい少年のテンションに追いつけず混乱した。
声をかけなきゃよかったと後悔するも後の祭りで、とりあえず階段をゆっくり上がった。