皆は私の顔が嫌い。だから、
私は私の顔が嫌い。性格が嫌い。この『見えない右目』が嫌い。
【私初の恋愛系です!下手かもですが、見てくれると嬉しいです!】
【書き込みは自由です。下手なら、下手、と言ってください】
【キャラ画像はあげられたらあげようかと思ってます】
中学2年生の夏、中学や小学校の同級生とは会わないように、私は一人遠い高校へ行こうと決めた。
私は生まれた時から病気で、右目の視力が弱く、ほとんど見えなかった。
その為、目を傷つけないよう、いつも必ず包帯を巻いていた。最初は嫌じゃなかったし、仕方ないと思っていた。
でも、小学5年生の時、周りからヒソヒソと何か聞こえるようになった。私の悪口だった。私は、
右目の視力が嘘のように左目の視力は人並みにあったため、嘘つきだとか、中二病だとも言われた。
それがエスカレートし、ついにいじめになった。水をかけられるのは日常茶飯事だった。
それでも、中学に上がると、私をいじめていたグループは、別の小学校からきた別のグループと手を組み、
2倍も3倍も辛い目に合わせた。
私は必要以上に傷付くなんて馬鹿なことはしたくなかった。だから、私は私を傷つける人達とは別れることにした。
もちろん、周りの人からみれば、弱虫と非難するだろうし、意気地無しと言う人も居るだろう。
でも、「周りなんてもうどうでもいい」、最近、そう思う事が増えた。
そう思う度に自分は、人の事を考える事のできない人間なんだ。と自分が嫌になる。
あぁ、私はまたこんな事を考えているのか…折角の高校の入学式なのに。
4月10日、そう、今日は入学式。新しい制服は紺のセーラー服で、何だか少し恥ずかしいと思った。
家を出る時、新しいローファーを履いて、新しいバッグを持って、全てが新しくて楽しかった。
カッ、カッ、と私にしては軽快な足音が足元から聞こえてくる。あの人達とも別れる事ができた。
電車を使い、片道30分と、多少遠いがそんなことはどうでもいい。私が高校の門を通るとどの学年かは分からない、
先生達がプリントを配っていた。私は、黙ってプリントをもらい、頭だけを下げて、靴箱へ行った。
プリントにはクラスや、次の日の持ち物、必要なもの、校歌が書かれていた。私はクラスだけを確認し、
さっとプリントをカバンにいれた。下駄箱に着くと、靴を履き替え、荷物の少なく、軽いバッグから上履きを取り出し、
壁に手をつきながら上履きを履いた。その瞬間、高校生になるんだと、改めて実感した。
少しの感動を胸に、私はプリントに書かれていたクラス、1-2に入って行く。
テンションが上がっているとはいえ、さすがに一抹の不安は心に残っていた。
教室に入り、片目に映ったのは、
黒板に書かれた『入学おめでとう!!』の文字。
上級生が書いたのだろうか、所々はみ出していたりと、手書き感を感じさせていた。
と、もちろん、黒板アートもなのだが、そうではなく、みんなの驚いた顔だ。
仕方のないことだとはわかっていたし、今更どう思われようがどうでも良かった。後ろの黒板には、
出席番号順の席が書いてあった。私はしいな
【変なとこで区切ってすいません!】
私は 椎名 梨苑。つまり、窓側では無い。席は廊下側からみて二番目に近い列の一番後ろだった。
私は157cmで、とてもでは無いが、ここからは黒板がみにくいだろう。
これも、運だと仕方なく思うのだが。それにしても先程からクラスメートの視線が痛い。その視線は突き刺さる様に私の体を刺す。こんな空気に耐えているだけで息も詰まりそうで、だんだん呼吸が苦しくなる。
私は自分の息が荒くなったのを感じ、深呼吸をする。2、3回ほどしただろうか、私は自分の席を再度確認し、その席に座った。
座ってもまだ聞こえるのは、私を見てびっくりするみんなの声。
いいわよ…好きなだけ噂していて気が済むならば…それで済むなら…
私の右目はもう、完全に視力がなく、使い物にならない。それを悪化させないため、未だに包帯を巻いている。
それは重々承知だし、ここで包帯をしなければもっとひどくなるのも知ってる。だけど、たまにそれが辛くなる。仕方のないことだと、分かっているの。
わかっているのに、嫌だと思ってしまう。
席について本を静かに読むと、前の席の人がきていないことに気がついた。
休みなのかな。そう思った。すると同時に、中学校でも聞いた、『キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン』
と言う、チャイムが聞こえ、ガラッ、と扉が開いた。
入ってきたのは先生、かと思えば学ランをきている…生徒か…その男子は、背がとても高く、小さめの私にとっては
巨人と思わざるを得ないような人だった。黒い髪には少しパーマがかかっていて、気だる気な顔をしていた。恐らく…
というのも、マスクをしていて、目しか見えなかったからだ。
あれ、この教室で、空いてるのは前の席だけ。てことは…
前じゃん…私の…こんなのが私の前の席で平気なんだろうか?
とてもでは無いが黒板が見えない、と言った。が、これはとてもだ。
チビな私がどうにかできる問題では無い。これは運がなさすぎるんじゃないだろうか?
と言っても、もうチャイムもなっている。
うん、目の前は背の高い、入学式早々遅刻して来る天パ男子、別にこいつ以外は私の障害物にはならなそう。
何故かって?そうね、
じゃあ、問おう、場は運動会、障害物競走。あなたの目の前にはとても大きな障害物。とても超えられそうではない。
ならどうすれば良いか?答えは一つ。己の持てる知識を総動員し、何がベストか考える。
なんて物は時間の無駄。そんな障害物は避ければいいだけ。そう。自ら避けるの。
そうすれば何か問題の起こることも無いし、変に悩む必要が無い。無駄に傷付く事も、何も無い。
そんな自問自答を繰り返す日々がここ数日続いている。周りからみれば、変な人だと思うだろうけど…
最近はそれが一番落ち着く。中学校の頃、何も知らず、何も対策のできなかった私ではない。そう、
外の世界を知らずに鳥かごの中を彷徨っていた小鳥は空へと飛び立った。
私は、大丈夫。
…なはず。本当にこの障害物だけ避ければ。すると先生が入ってきた。田中先生と言うらしい。
多少痩せていて、眼鏡をかけたよくいる普通の先生だった。いや、別に先生に何か期待していたわけではない。
寧ろ、こっちとしてはこう言うノーマルな先生の方が嬉しい。
先生は口を開くと、よくある、お祝いの言葉や、プリントに書いてある事を話した。
すると、とても嫌な言葉が聞こえた。
「じゃあ、自己紹介してもらうから。」
いや、無理です。どうしよう。すると先生は、
「まぁ、何だ、いきなりそう言われても困るよなぁ。だから、好きな物、名前、出身中学とか言ってくれるだけでいいぞ」
一応、条件があるならましかな…でも、出身中学なんて言いたくない。言えない気がする。何となく、
心の中でドス黒く、ドロドロとした何かが渦巻く感じがした。またきた…中学でも感じた、
私のストレスの元になっていた引き金は、ずっとこの"何か"だった。分からない。けれど嫌いだった。
とは言え、拒めるわけもなく、どんどんと順番が近づく。それに連れて、ストレスの元がどんどんと
膨れ上がる感じがしてやまなかった。
すると、何時の間にか、前の人の番になっていた。
そして、前の人が口を開いた。
「あ、俺の番?あ、そう。」
そう言った彼の声は、とても低くて、びっくりした。いや、まぁ、私が男のみならず、周りの人の声を拒絶し、
遮断していたせいでもあるのだろうが。
とは言え、彼からは全く持って緊張感というものが感じられなかった。
何?最近は入学式とか皆どうでもいいの?
少し戸惑っていると彼が口を開いた。
(さとうちいおり)
「えーと、里内伊織でーす。出身中学は南第一中でーす。好きなものはー…あ、甘いものと女の子。」
クラスはクスクスと笑っていた。かっこ良くない?とか、タイプ〜とかいう声が溢れていた。
私は変な人で、本当に障害物でしかないと思った。
なんて思ってる暇は無く私の番。
(しいなりおん
「し、椎名梨苑です。好きなものは、読書、です。」
私が座ろうとすると、先生は止め、出身中学を言うよう、促した。
私は仕方がなく、ゆっくりと立ち上がり、
「ひ、東…」もう無理だ、そう感じた瞬間、目の前が暗くなった。
目を開けると、背の高い里内君が私を見つめていた。そして、
「東って、東第二中?そこってかわいい子いっぱいいるとこだよね。俺そこ行きたかったんだよねー。」
借りが作られたのだろうか、しかし私はそれを無視し、
「そ、そうです。」
そう言って、ガタンと座った。
里内フラれたー!えー俺人生で初めてフられたわーとか、自分勝手な話題が飛び交った。
途切れ途切れではあった。でも、私としてはまあまあな出来だろう。
私の目標は当たり障りなく誰ともかかわらずに生きてゆくこと。
そう、できるだけ。
何人かが自己紹介してゆき、やがて、一番最後の列、の所迄きた。そして、先生に合図を送られ、
スッと立った少女はとても華奢であるが、決して小さいわけではなく、寧ろ高い。そして、とても整った顔をしていた。
彼女が立った瞬間、クラスはざわめいた。
「綿原朱莉で〜す!好きなものっていうか、人なんですけど、モデルの舞花ちゃんが大好きで、私もモデルの卵してるので、応援して欲しいです!あ、出身中学は、そこの万年発情期天パくんと同じで、 南でーす!」
彼女は、髪の一部を三つ編みにし、右斜めの所で巻いて、お団子、残りの髪はパーマを当て、金髪に見える茶髪。
手は絶対萌え袖という女子の武器を完全装備し、何をすればモテるのかを完全に知っていた。
一日ではあるが、今年の入学式はかなり疲れた。
私は貰ったプリントやら何やらをバッグに詰め、挨拶をすると、即座に扉を開け、下駄箱に行った。
靴を履き替えると、門を出て、家へ向かった。
家のドアを引いて玄関に進むと、そこには…
「お姉ちゃん!」
私は思わず叫んだ。
結婚して家を出たお姉ちゃんがいた。
「お姉ちゃん。帰って来たなら連絡してくれたっていいじゃない。」
私は姉がお土産に持ってきた茶葉で紅茶をいれ、姉に差し出した。
「あぁ、どうせ家に帰るんだし?会うからいいかなーて」
そう言って姉は私がいれた紅茶を飲んだ。
私は、お姉ちゃんと二人でテーブルを囲い、聞いた。
姉は自由奔放で、高校卒今日をしたあと、留学をすると急にいいだし、一ヶ月後、カナダへ飛び立った。
のも束の間、1年と半年後、二十歳になったのもきっかけに戻ってきたかと思えば、付き合った彼と婚約したと言った。
元々事後報告の多い姉だったとは思う。でも、私が落ち込んだ時、ずっとそばにいてくれたりした、大好きな姉なのだ。
価値観は全く合わないけれど。それに、義理兄さんもいい人だし。
「でも、お姉ちゃん、何で急に帰ってきたのよ?」
「あ、あんたには言ってなかったけどね、私、おめでたでね、お母さんになるの。ハーフだからきっと可愛いよ。」
自由奔放、事後報告は当たり前。そんな姉ももう、21歳になった。そう、
そんな姉も21歳。落ち着いたのかと思ったら出産のための里帰りだとか…
慌ただしい人だとは思うけど、でも、とても毎日が輝いてはいるだろう。
私は姉と話している時だけ、笑顔になれる気がした。話題が全て楽で、楽しいからなんだろうが。
そして、姉に似た様な人人といえば自己紹介で何も考えていなかったであろう、里内くん。
「聞いてよ、お姉ちゃん、今日前の席の人がすごく変な人だったのよ?」
すると姉は急に興味心身という顔をして話を聞いてきた。
「なになに?イケメンくん? 」
私は変な妄想をする姉をよそに今日あったことを話した。
すると、
「別にいいんじゃ無い?私の時はさ、クラスメートなんでみーんなもっさりしててさ。」
「イケメンが好きだっから海外飛び出しちゃった。ま、楽しかったけどね、私は」
そう言って、姉は語り始めた。こうなった姉は止まらない。私は気付かれないように逃げるのだった。
すると、家のドアが慌ただしく、ガチャガチャ、と開いた。
お母さんだった。母は、ハァ、ハァ、吐息を荒くしている。
「お母さん?」
どうしたの?と上記に付け足すと、母は我に帰ったのか、ハッとこちらを向いた。
そして、母は興奮しているんだと気づいた。
母は興奮するといつもこうなる。良いことでも、歩いことでも、息をするのを忘れて、
子供のように走っていく。
いい意味でも、悪い意味でも、そんな子供っぽい人なのだ。
今日はどちらだろうか、すると、母が話した。
「…」
悪い方なのか。そう思った。
母は無言で、台所へ向かった。私たちも無言で、その母の背中を追った。
夜7時、久しぶりの姉を入り混ぜての夕食だった。
さっきまでは覇気のなかった母も笑顔で姉と話している。
この空気を壊したくは無い。でも、きっと私のことだから、
聞かなければいけない。母の人生を壊したから。
私も姉もまだ小学生だった頃、父はみんなと同じように私を嫌っていて、
ウザがっていた。そんな時、私の右目が近い未来、完全に視力を失うと言われた。
その宣告を聞いた父は急に暴力的になり、私や、私を擁護する母や姉に手を上げ始めた。
そんな状況に耐えられなくなった母が、家を出ていく。そう宣言し、母に連れられるまま、家を出た。
私は恐る恐る聞いた。
「お母さん。私のことなんでしょう?話して。」
すごく強い口調になっていた気がするけれど。母はとぼけたのか、本気なのか、聞き返してきた。
「何のこと?」
「さっき、何か言おうとしてたじゃない。」
「それは…」
「ずっと、お世話になってた先生いるでしょう?今日、あなたの最近のことを報告しに行ってたんだけど、
「完全に右目をとってしまおう」って言われたの。先生もとるときは目だけにしてくれるって言ってたんだけど、
だけど、やっぱりあなたとしても…ね?」
確かに今でこそ完全に見えずただついているだけのような目であるが、それでも確かに15年間わたしの顔についていたんだ。もちろん、
バッサリ「じゃあ、とりましょう。」とは言う気にはなれない。けれど、このままついているだけの右目をつけている理由があるのか? 特にはない。わたしはキュッと口を真一文字に結ぶと、
「もう少し考えたい。」そう言った。
そう言うと私は階段を上がり部屋に向かった。
楽しかった夕食は去り、私の階段を上がる音だけが聞こえてきた。
私は耐えきれずベッドで泣いた。できるだけ音の出ないようにしていたつもりだが、
小さいころからなぜか姉にだけは嘘がつけなかった。嘘をついてもすぐにばれてしまう。
そんな姉だからこそ、今私がないていることにも気がついて私の背中をさすりにきてくれた。
「お姉ちゃん、もう平気。」
私がそう言うと姉は
「そう。よくわかんないけどさ、多分私でも簡単に目は取れないだろうし…相談はしてよ。」
そう言うと部屋を出た。すると、母の声が聞こえた。ボソボソと言っていたので良く聞こえなかった。でも、私を心配してくれていることはわかった。
ありがとう、お姉ちゃんとお母さんがいなければ、私はとっくにどうにかなっていただろう。
もちろん、最悪のケースも多いに可能性がある。
私はその日、そのまま眠ってしまっていた。