【登場人物】
佐藤奏
中学2年生
宮坂優菜
中学2年生
【出会い】
出会いは、入学式の1日前。
クラス発表の日だ。
私はその日、もしかしたら最後になる小6の頃の友達とゲームをしていた。
16時46分
友達が新しいクラスのLINEグループに私を招待した。
予想以上に早くて驚きながらも同時刻、参加した。
17時4分
友達追加された。あの子に。
名前も顔もわからない人に自分から追加するなんて
きっと中心組女子の人だろう。
そう思い自分も追加したのだ。
「○○小学校出身の宮坂優菜です!よろしく!」
おお、早い。
さすが中心組予備軍。
「△△小学校出身の佐藤奏です。こちらこそよろしく!」
こう返した。
【入学式】
着慣れない制服を着て私は外へ出た。
入学式。
ついに来てしまった。
小学校6年間とはまるで違う生活が待っているのだ。
ため息をついていると、待ち合わせ場所に友達が来た。
「あ、佐藤!ごめんね遅れちゃって!」
その友達は未來。
最終装備を生まれついた時から持っているチート野郎。
「だいじょぶだよー。行こーぜ」
私達は小5の時からのクラスメイト。
趣味が合うからすぐ仲良くなれた。
「もうほんとリゼロのラム可愛くて!!!」
「リゼロよく知らんけどキャラめっちゃ可愛いよな」
「めぐみんも可愛くて!!!」
「わかりみが深い」
そんなオタク丸出しの話をしているうちに、学校に着いた。
まだ昇降口は開いていない。
人がどんどん集まってくる。
「お、奏じゃん!教室まで一緒に行こ〜」
声をかけてくれたのは同じ小学校で同じクラスの千尋。
「あっ昇降口開いたぁ!」
誰かの声にみんなが昇降口の方を向く。
必死に名前を探してやっと自分の下駄箱を見つける。
そして押し込まれそうになりながらも階段を上る。
「隣の席は……なーんだ。榎木か」
同じ小学校出身の榎木だった。
部活と住んでいるマンション団地が同じだから一応顔見知りだ。
よかった。
先生が話し出した。_もちろん内容はさっぱり覚えていない_
ぼーっとしながら前の席の人とその隣の席の人の名前を見る。
野咲航
のざきこう…?知らんなあ…
その隣は…?
宮坂優菜
みやさかゆうn…あっ!あの中心組予備軍女子か。
「_なので出席番号順で並びましょう。」
先生のその声だけはちゃんと聞こえた。
宮坂優菜ちゃんは立ち上がり振り向いた。
美少女…
そう思った。その美少女_優菜ちゃんは教室の後ろに並んで行った。
あ、私も行かなきゃ。
私は優菜ちゃんの後ろに並んだ。
入学式というものはものすごく暇である。
呼名以外は出番がない。主役なのになあ…
そう考えていたらもう退場。
そのあと教室に戻り、またいろいろ先生の話を右から左へと聞き流し写真を撮る時間になった。
私の家族は誰も来ない。
別にそれは苦痛ではない。もう慣れた。
運動会_弁当を食べる時は少し悲しかったが_も
音楽会_合唱の伴奏をやった時は悲しかったが_も
もう慣れた。
1番の苦痛はぼっちである。
同じ小学校出身の人はみんな出席番号順が前の方。
私は後ろの方だからだ。
あー悲し
そう考えていると声をかけられた。
「奏ちゃん?だよね。あたし優菜。宮坂優菜!」
「あ、うん。」
沈黙
沈黙の末、優菜ちゃんは同じ小学校出身の人と話し出した。
そりゃそうだわ。
その後も話さないままだった。
【友達】
入学式の翌日。友達が1人もできなかったことに大きなため息をつく。
「おはーざいまーす」
小6の頃はそう言って教室に入ったがもうそんなことすらできない。
友達作り…できたらええなあ…
そう考える。
「あ、あのさ奏ちゃん!わたし、LINE追加した梨緒です!なんて呼べばいいかな?」
突然話しかけられた。そういやLINE追加した人まだおったわ。
林梨緒ちゃん。目ぇでっか女子オーラやっば中心組予備軍か?
「えーと、普通に奏でいいよ!」
「そっか!わたしはなんでもいいよ!あ、りっちゃんって呼ばれてたよ〜」
「じゃあ…その…よろしくね!」
「うん!あ、2分前だ。座らなきゃ」
こんな会話初めてかもなあ。
席に座りそう思った。
キーンコーンカーンコーン
「あ、号令係いないな…那月、お前号令かけろ。起立、気をつけ、礼、だ。言ってみろ」
「きりーつ気をつけーれーい」
「ありがとうございましたー」
あ、いつものくせで「あじゃじゃました」って言ってたわ。
休み時間何をすればいいのかわからなくて座っていたら同じ小学校出身の千尋、美央、菜々美が来た。
そして優菜ちゃんと依亜ちゃん、りっちゃんも来た。
「ねえねえ!土曜日このメンバーで遊ぼうよ!イオンで!」
そう言ったのは美央だった。
すげえ!コミュ力ぱねえ!
「いいよ〜」
みんな予定が空いていたらしい。
みんなで遊ぶことになった。
ん?遊ぶってつまり…“友達”ってこと_?
そう考えると嬉しくなった。
【タピオカ】
『手でハートを作ろう!3、2、1!』パシャッ
聞き慣れない声が聞こえる。
土曜日。7人でプリクラを撮っている。
プリクラなんて何年ぶりだろう。
女子力皆無だから上手く撮れないなあ…
『左側のらくがきブースに行ってね』
指示通りにブースに行く。
7人もいるから私と優菜ちゃんは外に押し出されてしまった。
「5人にらくがき任せよっかー」
「だ、だね!」
コミュ障を拗らせているせいかうまく喋れない。
「あとでタピオカ飲もうよ!マンゴーとかミルクティーのおすすめだよ!」
「そうなんだ!」
「ねえUFOキャッチャーって難しくない?」
「わかるー!」
「ふふ。」
突然優菜ちゃんが笑う。
どうしたの?と問う前に自ら言ってくれた。
「笑ってくれた。」
少女漫画のワンシーンのように優菜ちゃんは優しい笑顔で言う。
「そ…そりゃ笑うよ!」
あ、顔赤くなってるかも。いや、真っ赤だ。わかる。
少し目を逸らす。
すると優菜ちゃんは私に目線を合わせてくる。
2人で大笑いしているうちにらくがきは終わっていた。
「タピオカ何飲む?」
「私はマンゴーかなぁ」
「私も〜」
「私も!」
千尋、美央、菜々美が言う。
「私は…キャラメルミルクティーかな」
「私はココナッツ〜!」
依亜ちゃんとりっちゃんが続けて言う。
「私はミルクティーかな」
優菜ちゃんが言う。
「あ…あれ?あーっ!!私、金がないわ!!」
思わず大声で言ってしまった。
これじゃあ、タピオカ飲めないじゃないか。
「ありゃりゃー、じゃあ奏ちゃんはまた今度、一緒に飲もう」
依亜ちゃんが言う。
「そだね」
そう言って財布をしまう。
みんながタピオカを飲む中、私はスマホをいじりながら話に参加していた。
「キャンスタはやだなぁ、やるならアオハルでしょ」
「白雪は?」
「白雪ってあんまり好きじゃないわー」
「機種とかはみんなにまかせるねー」
呪文を唱えているかのようだ。わたしにはよく理解できない。
「ねえ奏ちゃん」
「んー?」
優菜ちゃんが声をかける
スッと私の口の中にストローが入る。
「タピオカのおすそ分け〜」
そう言って私がタピオカを一個食べたのを確認し、優菜ちゃんはまた同じストローを使い飲む。
【おうち】
優菜{明日遊べるひといる?]
[遊べるよ}
菜々美{私も〜]
梨緒{遊べる!]
美央{明日は無理…]
依亜{わたしも遊べる]
金曜日。暇な土曜日だと思っていたら誘いが来た。
よかった。ずっとパソコンとにらめっこしていたら片頭痛になる。
[土曜日]
学校前で待ち合わせてりっちゃんの家…だよね?
早く来すぎたかな〜
服、地味だなぁ…みんなおしゃれなのに…
髪型二つ結びなんだよね…ダサいかなあ…
「お、奏ちゃん!早いね。私も早く来たと思ったんだけど」
「あ、優菜ちゃん。やっほー」
「髪型!!!!!」
優菜ちゃんが指をさして大声で言う。
「お菓子持ってないからそこのコンビニで買ってきていい?あ、まだ他来てないから一緒に行こ!」
「うん!いいよー!」
[コンビニ]
「うすしお!うすしおがいい!」
「いいね!私もうすしお好き」
お菓子を買って学校前まで戻る。まだ人は来ていない。
「まだ来ないね〜」
「りっちゃんはピアノ終わってからって言ってたからね、りっちゃんが行ってるピアノ教室時間オーバーは当たり前だし」
「そうなんだ」
時間オーバーは当たり前なんてすごいとこやな。
「あ、ねえねえ!奏ちゃん好きな人いる?」
にやにやしながら私に問う。
が、残念ながらいない。
「いないよ。」
キッパリと言う。
「えぇ〜つっまんないよ!」
つまらなそうに優菜ちゃんが言う。
「残念ながらいないんだよねw」
「私はね「ごめんねー!遅れちゃった!!」
「あ、依亜ちゃんと千尋ちゃん!」
優菜ちゃんの言葉はさえぎられてしまった。
「りっちゃんの家もう来ていいって!ついてきて〜」
依亜ちゃんについて行って、大きな家に着いた。
「「でかっ」」
初めて来た私と菜々美は驚く。