×荒らし
×乱入
○感想
のんびり更新、暇つぶしに読んでって
「どわぁあっ」
俺は吹っ飛ばされて地面を転がった。
「はい、勝負あり! ナユタの負け!」
無慈悲に響く審判の声。
くっそー、また負けた。
「ほんとナユタって勝てないよな」
俺を吹っ飛ばした張本人、ユウキが練習用の剣をしまいながら言った。
真実なので俺は何も言えず、服についた土を払いながら立ち上がった。
「……次は勝つし」
「ナユタ君の諦めの悪いところだけは誰にも負けないよね」
審判をしていたアミはよく冷えたタオルを投げてくれた。
あー、傷にしみるぜ。
俺はナユタ。魔戦術訓練学校に通う1学生だ。年は16歳、男。
この学校では魔物達と戦えるようになるべく、魔法や剣を習いに全国から若者達が集まってきていた。
魔法を習うか剣などの物理攻撃を習うかは生まれ持ったスキルによる。
みんな生まれつきスキルを持っていて、それはとても強力だ。
たとえば、炎を発生させるスキルなら魔法を習って火力を強化できる。
スキルを生かす戦術を学ぶことで、俺たち人間は魔物とも戦えるようになるってことだ。
だけど、俺、ナユタは……
「ええーー!! まだ俺のスキル分からないんすかーー!!」
「そうなのよ〜、おかしいわね〜〜」
スキル不明のまま16歳になってしまっていた。
訓練場から出たら、俺はいつも研究室に行く。
研究室では先生たちが生徒たちのスキルを研究している。
さっきから俺の戦闘中のビデオやらデータを見ているネムカ先生は、昨日と同じように首を横に振った。
「さっぱり分からないわ〜。不可視の能力かなぁとは思うのだけど、何かに影響を与えたりとかも特にしてないのよね〜」
ネムカ先生は眠そうな目をメガネの細める。いつも眠そうな先生だけど、本校一番の有能研究者らしい。
あと胸がデカい。
「まさか、スキル、なし……とか??」
びくびくしながら、俺は先生に聞いた。
「それはないわ。誰しもスキルを持って生まれるの〜。スキルがないなんて、心臓が動いてないのと一緒よ〜」
「そうなんすね。うーん、どうして俺のスキルだけ分からないんだー!」
思わず先生の前でなげく俺。このままじゃいつまで経っても誰にも勝てないじゃないかー!
がんばれー
6:ナナイ:2019/10/10(木) 12:19 「まー、そのうち解明するつもりだから、気楽にね〜」
「はい……」
「それより次の時間は体力測定でしょ? 有用なデータ待ってるわね〜」
研究の邪魔だと言うように、ネムカ先生はひらひらと手を振って俺を追い出した。
どうしたものか……。
俺は測定室に向かいながらあれこれ考える。
魔法みたいに直接見ることができないスキルを持っている奴を思い浮かべた。
筋力上昇、未来予知、読心、超回復……
考えてるうちにもやもやしてくる。
くそ、みんなはこんなすごいスキルを持ってるというのに、なんで俺だけ……
いや、もう体力測定の時間だ。心を切り替えないとな。
体力測定は唯一俺が『勝てる』ことだ。
だから俺は体力測定がそこそこ好きだ。
「来たぞー!」
元気よく扉を開けると、でかいメガネをかけたガリガリの研究員、カジカ先生が起きる。
カジカは測定室に人があまり来ないことをいいことに、よくマットの上で寝ている。
「よく来たねぇ。あれ他の生徒のミナサンは?」
「スキル練が終わったら来る」
「アア、そうか、君はスキル練できないもんねェ」
「うるさい、さっさと測定しろ」
「はあい」
俺が容赦なく言うとふざけたようなだらけたような態度で、カジカはいつものように測定道具を用意し始めた。