プロローグ
良家の子息子女が集まる名門私立・城下宗麟学園で6年間いじめを受けてきた貧乏主人公デブス(真美)は遂に学園を牛耳る2つの勢力を相手に強いメンタルで立ち向かう
敵とのゲームから生き残り真美は無事学園を卒業出来るのか?
第1話「城下宗麟学園」
「やーだーっ、朝からデブスと目が合うとか今日の運勢最悪〜」
「やっぱり私もパパに頼んで寮を申し込もうかなぁ」
「デブスって?」
「嘘知らないの?」
「この豚が登校時間ずらしてよ!目障り!!」
そう言って女の子が缶を1人の女の子に投げつける
「おおっ、原田さいこーー!」
みんながそんなことを言っていると缶を投げられた女の子は缶を拾い投げてきた女の子に投げ返した
そうして
「なめんなオラァ!」
そう言って思いっきり投げた
「ひゃっ!!!!!め、眼鏡に当たったらどーすんのよ!!!!進学祝いにママが買ってくれた限定デザインなのよ!弁償も出来ないくせに!!!」
「はっ」
「あいつ鼻で笑った!!!!!」
城下宗麟学園 〜高等部エリア〜
通称「城宗」
ここは日本中の金持ちとかどうでもいい著名人の子供なんかも通う
幼稚部から大学まで一貫する名門校
いや、元・名門校ってのが適当かも
世間のイメージは金持ちばっかの気高い生徒様に、芸能人や人気アイドルなんかも通うまさに夢の学園そのもの
テレビに取り上げられるのは華々しい話題やここを卒業した大御所タレント達が語る城宗のメリット
マスメディアを通してみたこの学園はそれはそれは眩しくキラキラ映るだろう
ここに来るまで私もそうだったし
けどさっきのを思い出して欲しい
『目障り!!』
これが現実
元々ここの生徒の殆どが幼稚部からの内部進学生その上望めば贅沢な寮生活を送れるため学生寮を希望する生徒が多く
親よりも長く時間を共に過ごしてきた生徒達には変に強い結束力がある
城宗はそんな生徒が多く集まる金持ちの為の楽園
「きゃあーーーーー!」
それとこの学園には2つの勢力が存在する
1つが「クロ派」の存在
あの勢力に目つけられたら本当に終わる
気にくわない生徒を「ターゲット」と呼び
自主退学するまで徹底的にいじめ抜くゲームらしく
降状を拒む者はここを去るしかない
幸いにも私はクロ派とは接点のないまま今日まで生きて来れたけど……
「菊池が居る限り安心して過ごせないからな」
その時
「あーら莉愛羅に何か用?」
出た、美少女3人組
「この学園にデブスが安心して過ごせる場所なんて無いよ?」
あ、デブスってのは私の事
「本当に今日も醜いねぇ……この学園の制服を着る資格なんてデブスには無いんだよ?寄付してないのはあんたの家だけなんだし……貧乏人にいつまでも居座られて本当に迷惑だよねぇみんな?」
「そーよそーよ!」
で、この可愛い猫娘が2つ目の勢力「菊池派」のトップ、菊池莉愛羅
この学園の理事長の娘で
主に女子生徒の中心
菊池は昔から父親の権力を武器に生徒を脅しては
自分に逆らう者を学園から追い出してきた
こんだけ美人なのに3人とも性格に問題ありで本当に勿体ない
私はこの学園に来た時からこの子のくだらない嫉妬で目を付けられている
「ルックスの悪い人間って目障りだし本当に迷惑、その上貧しいなんて生きてる意味があるの?あんたも少しは真奈を見習いなさいよ、そうだよねぇ、真奈?」
あ、そうそう、菊池が支持される理由の1つに
最近めっちゃ注目されてるモデルタレントの春日真奈っていうのがこの勢力に居るからって言うのもあるよね
「真奈ちゃんさぁ、中等部の時に菊池の勢力に加わったらしいけど芸能人がいじめグループに居るなんてバレたら大事だよ?自分の為にも____」
真美が喋っていると真奈が
「話しかけないで」
そう言い放った
「きゃはは真奈ちゃん最高ー!」
「とことん恥ずかしいわね」
ちっ
「いつも言ってるけどあんたなんか明日磨に頼まなくたってパパに言えばいつでも退学に出来るんだよ?莉愛羅が生かしてあげてるの感謝しなよね、デブスは自分の事で手一杯のようだから知らないと思うけどあんたがターゲットになった初等部の頃、他にも莉愛羅のターゲットだった生徒もいたの、なのに今じゃデブスだけだよいつまでも莉愛羅に従わないのは____」
「従う理由がないからね、つべこべ言う暇あるんだったら親父にでも言って退学させたら?授業料は滞納した事ないし寄付金以上の代償は払ってるはずだよ」
なんだかんだ私をいじめるのが楽しくて追い出す気は無いんだろう
その気ならとっくに実行してる女だからな
この学園で生き残る方法は2つ____
媚びるか、戦うか
ここに来て6年流石に慣れた
真美が教室に入っていくと莉愛羅達は
「莉愛羅ちゃん、最近デブスに何言っても手応え無くない?ノーダメージって感じで逆にむかつくんだけど……」
「確かにこれじゃつまんないよねぇ……明日磨が全くデブスに興味持たないの、クロ派が加われば学園全体が盛り上がるのに……」
「明日磨君、蓮君の件があってからもう新しいターゲットを作る気にならないのかな……」
「……んー……そうよ……明日磨はデブスに興味ないんだよね……ふふんっ、ばかねデブス……中等部の頃と同じだと思ってんだ、甘いねあの調子じゃ、まだまだ物足りないようだし、もう少し莉愛羅の怖さを思い知らせてあげたほうが良さそうだね」
「どうするのっ?」
「デブスの弱点なら知ってるわ」
13:まなみ:2020/04/25(土) 14:39 第2話「あの日の約束」
真美の家にて
「ねぇお姉ちゃーん、俺本当にそろそろスマホ欲しいんだけど……もー中2だよ?周りで持ってないやつ居ないんだけど……」
「太陽あんたそれお父さんに言っちゃダメだよ、お父さんも持ってないのになんであんたが持つんだよ、これ以上悩み増やしてまた倒れたらどーすんの」
「んもーっ、なんで俺らこんな貧乏なんだよ、金もないのにお姉ちゃんが城宗なんか通ってるから余計苦しいんだよ」
「そりゃ私だってバイトしてちょっとでも家計の足しにしたいけどさ、城宗は面目を保つ為かなんか知らないけどバイト禁止なの」
「でも城宗って芸能人いるじゃん、それも仕事じゃん」
「私に言われても知らないわ、ごちゃごちゃ言うんだったらお母さんの所戻れば?お母さんならスマホでもパソコンでも何でも買ってくれるでしょ」
「……それは嫌ですぅー、なんで俺が父さんのところ戻ってきたか知ってるだろ、母さんと暮らしてても俺より新しい旦那ばっか優先してたんだよ」
「……自分が腹痛めて産んだ娘捨ててまで他人の男選ぶような人なんだから当たり前でしょ」
「お姉ちゃん、まだ母さんのこと恨んでんだなぁ」
「……そりゃね、それ覚悟でしょ、あんたはお父さんの泣いてる所も見てないじゃん、多分一生許さないよ」
「一生か」
「ま、お父さんが幸せになってくれたら許せるかも、かもだよ」
ガチャガチャ
「あ、父さん帰ってきた」
「さっきのスマホの話黙っときな?」
「あいあい」
「おかえり」
「おうただいま、あーしんど……」
「父さん汗臭っ!」
「今日は一日中動きっぱなしだ」
「お疲れさん」
「だから太陽もこんな仕事したくなかったらちゃんと勉強していい会社に入らなきゃいけないって言ってんだよ」
「説得力あるわぁ……」
「だろ?」
「はい……」
お父さんだいぶ痩せたな
顔もやつれた
1日中外で働いて日焼けして会社ではあんまり人間関係もうまく行ってないらしい
それでも私と太陽をたった1人で育ててくれてる
誰がなんと言おうと私らにとっては立派なお父さんだよ
あの日の約束____
『……私は……お父さんと一緒に居たい、お母さんはたまに会ってたけどお父さんはずっと一緒だったもん、髪の毛結んでくれるのも毎日ご飯作ってくれるのも運動会来てくれるのもお父さんだけじゃん……私お父さんと離れるほうが嫌!お父さんの事こんなに泣かせて絶対お母さんもおじいちゃんも許さない!!』
『……真美、いいか、お前は城宗に通え、あんな所誰でも入れる学園じゃないしお父さんと一緒に居てもこんなチャンスはもう絶対無い、辛くても頑張って大学卒業して立派な会社で働くんだ、それで見返してやれ、お前を捨てたお母さんを!大人になって幸せな姿見せつけてやれ!真美が幸せになってくれたらそれで良い……もう……本当に……それだけだ……』
『分かった、もう泣かないで良いって……私とお父さんの約束ね』
あれから6年
あの約束のためだけにあの学園に通ってる
「あ、そうだ真美、高校生になって学校どう?」
「めっちゃ楽しいよ!もう新しい友達もできたしね!早いでしょ〜」
「城宗いいな〜、お姉ちゃんだけずるいわ」
まさか学園でのけものにされて友達もいないなんて絶対言えない
「そうか、ならよかった、金持ちの学校に金のないもんが通ってたらいじめとか浮いたりするだろうからな、やっぱみんな育ちがいいんだな、さすがしっかりした名門校は違うな、心配だったけどお前は明るいし優しいから周りから自然と人が寄ってくるよな、安心した」
「大丈夫大丈夫、なーんも心配しないで良いよ、あと10分くらいでカレー出来るよ」
「なら今のうちに風呂入ってくるか」
「太陽机の上片付けて」
「へーへー」
ごめんね
そうやってお父さんが安心してくれるんだったら
私はいくらでもこんな嘘つくよ
次の日
「うわっ!デブス!」
「早速見ちゃった最悪だわ〜……」
その言葉を聞き真美は
「ごきげんよう」
ばかにしているようにそう言う
「うっぜえぇ!!!」
あぁ、毎朝この大階段きついわ……
そんなことを思っていると後ろから登校した子たちに
「それにしてもみるみる太ったよなぁ!」
「ここに初めて来た時のデブスの姿もう思い出せねーもん!」
「で〜ぶ、で〜ぶ、で〜ぶす〜!」
鏡見て言えや
まぁ……でもそうだな
確かに太ったわ、それは否めない
元々真美達家族3人は社宅で暮らしていた
城宗でのいじめがどんどんエスカレートして行って
それを誰にも打ち明けられないストレスは食べる事で解消してたけど
去年____
『あのなぁ……お前らに話さなきゃいけない事があるんだ……最近会社が上手いこといってないみたいでな……社宅出ないと行けないんだ』
『え!?』
『一応新しいアパートは今の学校に歩いて通えるところだ、ここより狭いし古いけどそんなこと言ってられない、そんで……給料も前より減るから……その……ちょっと食べるものとかも節約しないとな……』
『た……確かに、分かった、控える』
『ごめんなぁ苦労かけて』
『いやいや』
あのドカ食いはまずかったよな
あれさえ無かったら【デブス】のブスはあってもデブは付いてなかったかも
次の日下駄箱にて
「おい知ってるか?あの1年靴箱に靴入れないで何でもあのカバンに入れてるらしいぜ、ああやってスリッパもわざわざ家に持ち帰ってんだってさ」
「はぁ?何で?」
「捨てられるからだよっ」
「ぎゃははははっ、靴箱鍵ついてんじゃん」
「莉愛羅さん相手に鍵なんか意味ねぇよ」
「うけるわぁ」
何がおもろいんすか、先輩方……
スリッパはともかく靴なんか何回も買う余裕無いんだ
そう思いながら教室の自分の席に行くと周りの子達がニヤニヤしているのに気づく
……?
不思議に思いながら自分の席の椅子を見ると
……針椅子な
祝20回目だ
暇すぎだろ……てか全部上向いてるわ
そう思いながらカバンを机の上に置くと誰かにばっとカバンを取られ
「よし!ゲット!!!」
「ちょっ……何してんの返して!」
「莉愛羅さん成功です!どうぞ!」
「やだあ!そんな汚いもの莉愛羅に近づけないでよ!病気になっちゃう!まりえに渡して!」
真美は莉愛羅達を睨みながら
「……菊池どういうつもりよ、怪我する前に大人しく返した方がいいよ」
「ふふん!ねぇデブス、莉愛羅とゲームしない?」
「は?」
「ルールは簡単!ここに泥水が入ったバケツを用意させたわ、制限時間内にあんたが莉愛羅に一度でもその泥水をかけることが出来ればバッグはすぐに返してあげるし二度と私物に手を出さない、どう?簡単でしょ?」
「……授業は?」
「授業?そんなもの莉愛羅が言えば何とでもなるわよ、制限時間は10分、ただ逃げるだけじゃつまらないから莉愛羅はこの水鉄砲でデブスを倒すわ!」
「莉愛羅ちゃん頑張って!」
「……何企んでんのよ」
「一々疑わないで、やるの?やらないの?」
絶対何かの罠だ……
まんまと乗ったら多分後悔するのは自分
真美が黙っていると莉愛羅が
「……本当つまんないわね、現実を受け入れなさいよ、あんたの場合たとえその醜い姿が奇跡的に良くなったとしても貧家である限り現状は変わらないのよ?今更何をしても嫌われ者じゃない、ここの生徒はあんた以外みんなお利口よ?莉愛羅を敵に回すと生きづらくなる事を知ってるもの、まりえ」
「はーいっ、じゃあまずはこの汚らしいペンケースから〜!」
そう言ってまりえは窓から真美のペンケースを投げ出す
「おおーーーっ」
「次は汚い財布〜!」
「あほ!何してんの!」
「ふふん!あんたが親に買ってもらったものを大事にしている事は知ってるわ、だけど大丈夫よ、死に物狂いで働くパパにまた買って貰えばいいじゃな〜い」
周りで笑いが起こる
「ねぇみんなデブスのパパのお仕事知ってる?1年中汗水垂らして外働きの上、出世した年下にこき使われているそうよ、なのに人並みの稼ぎしか得られないんだから庶民って怖いわよねぇ〜」
「こわ〜い」
「ありえない〜」
「ここへの寄付金も最初のうちは別れた母親の親が支払っていたんですってぇ、だけどデブスのためなんかにお金を捨てるのがきっとばかばかしく感じたのね、支払いがあったのは初等部のうちだけよ、パパに情報を聞いた時驚いたわ……本当にデブスのパパと莉愛羅のパパは何もかも違うわね、まず価値が違うもの!ゴミの親も所詮ゴミでしか無いのよ」
「……ざけんなよさっきから!!!」
私が怒っても莉愛羅はまるでばかにしたようにこう言う
「や〜ん、誰か〜」
「莉愛羅さん俺が守ります!」
「俺も!」
「おい!待てデブス!」
「何だよちびが!!!」
「っ……、ルールはこれだろ!」
バケツを指差して男子生徒は言う
「は〜いじゃあゲームスタートするよー!制限時間は10分で〜す!デブスが勝てば二度と私物には手を出しませ〜ん」
まりえがそういうと真美は
「それ絶対守れよ!!!」
そう言われてもまりえは首を傾げてばかにしたような顔で真美を見る
そしてゲームが始まる
くっそ、あの女ペラペラ言いたい放題言いやがって、絶対許さん!
どこ行った!
探し回ってるだけで時間減るじゃん!
これが狙いか
しばらく走り回る
はーはー……
「どこだよ!私を倒すんでしょ!!隠れてないでさっさと出てこ____いいいぃ!!」
菊池に水鉄砲の泥水をぶっかけられた
「ねぇ駒井!今の見た!?莉愛羅の命中率!」
「もちろん!さすが莉愛羅さん!何をされても完璧です!」
「意外と楽しいわ!」
「莉愛羅さんが楽しそうで何よりです〜」
……
クリーニングなんか出す余裕ないのに……
ブチ切れたわ……
1回でもあいつに泥水ぶっ放したら私の勝ちなんだな
そう思い菊池が油断してる間に準備をするが駒井に気づかれ
「莉、莉愛羅さん逃げた方が!この距離だと届くかもしれません!」
「逃すかあぁ!」
菊池を追いかけようとした時後ろからまりえの声がする
「デブスこっちよ!」
「あ!?」