「何年かかっても、この恋を叶えたい。」
そんな願いは、君に届くかな____。
ふと靴元を見ると、散った桜の花弁が降り積もっていた。
私は無意識につま先をトントンと地面にたたき、花弁を地面へ戻す。
意識してしまうブレザーの制服は着ているだけで落ち着いていられない。
たまにクルッと回ってプリーツスカートを風に踊らせると気分がいい。
「おはよ!」
隣へと駆け寄った先にいる彼にそう言った後すぐ、胸の鼓動がうるさくなる。
「おぉぉ、びっくりした、陽葵か」
「もう私達も中学生だね」
「…そだね〜」
「いつしか聞いた言葉だなおい」
何気ない会話を続けながら校門へと歩いた。
私は、朝日奈陽葵(あさひなひまり)。
上代中学校の新一年生だ。
好きなことはイラストを描くこと。
昔からの特技でもある。
そして隣にいる男子、一ノ瀬翔(いちのせかける)は、同小の同級生。
アシンメトリーの髪がどこか爽やかだ。
ネクタイを縛ったブレザー姿も様になっている。
私は翔に6年間片想いをしている。
6年間とは、もちろん小学1年生から。
「翔、私たちのクラスって何組だっけ?」
「2組に決まってんだろ」
翔は「ハハハ」と軽く笑いながら言う。
そうなのだ。
私と翔は奇跡的に同じクラスだった。
仲のいい友達とはクラスが分かれてしまったが、それ以上に嬉しい。
(嬉しいの、顔に出てないかな)
「おはよう、瀬奈〜〜!」
「陽葵おはよう!どうよ、一ノ瀬くんと?」
そう言っていたずらっぽくニヤつく女の子は、成未瀬奈(なるみせな)。
小学校2年生の頃に仲良くなった友達だ。
瀬奈は4組でクラスが分かれてしまった。
でも、お昼休みは瀬奈と同小の女子と集まっている。
ネットで見たサイト曰く、入学した直後あるあるらしい。
登場人物の詳細
朝日奈 陽葵 (あさひな ひまり)
1年2組。
誕生日は8月22日。
髪型はハーフアップ。(たまにポニーテール)
趣味はイラストを描くこと。
好きな食べ物はタピオカミルクティー(流行りのウェーブに乗ってみた)。
最近は太るからと言って自分の中で禁止しているらしい。
得意科目は英語。苦手科目は保健体育。(運動がダントツ無理)
翔に6年間片想いをしている。瀬奈の友達。
一ノ瀬 翔 (いちのせ かける)
1年2組。
誕生日は11月17日。
髪型はアシンメトリー。
趣味は映画鑑賞。
好きな食べ物はカレーライス。
福神漬けをつけるのがこだわり。
得意科目は歴史。苦手科目は科学。(特別頭がいいわけではない。)
陽葵と瀬奈の友達。
成未 瀬奈 (なるみ せな)
1年4組。
誕生日は6月4日。
髪型はショートとミディアムの中間あたり。
趣味は料理。
好きな食べ物はスコーン。
チョコ入りが好き。
得意科目は家庭科。苦手科目は数学。
陽葵と翔の友達。
「翔って部活、何部入るの?」
5時間目の授業が終わり、部活見学の時間だ。
2組は野球部を見終わり、卓球部を見学している。
ピンポンが奏でるカコンと言う音は、どこか気分が落ち着く。
「俺はー…とりあえず運動部のどこか」
「へぇー」
「陽葵は?」
「私は…吹奏楽部かな〜。美術部と演劇部とも迷ってる」
「陽葵は吹奏楽で決まりかなと思ってた」
「やっぱり絵を描くのも好きだし!演劇部も楽しそうだから、ほんとに迷ってるんだ〜。
あ、瀬奈は調理部だって!調理部も楽しそうだよね」
「俺的には部活でやるんだったらスポーツ。やりがいあるし」
「あーね?」
翔は特別運動できると言う訳でもないが、私よりはできる方だ。
むしろ私が出来なすぎるということである。
部活は3年間続ける上で本当に悩みどころだ。
私は運動が無理だから、親も文化部は賛成している。
文化部は吹奏楽部、美術部、演劇部、調理部がある。
ちなみにスポーツ部は野球部、サッカー部、バレーボール部、バスケ部、バドミントン部、テニス部、卓球部がある。
上代中は部活動が盛んで、沢山の部活があるのだ。
(本当に迷いどころだよなぁ〜…)
小学校の時より少し重いザックを背負い、部活リュックを肩にかけると、スマホが鳴った。
瀬奈からのLINEだった。
基本的にこの学校は、授業や部活以外でのところでは、スマホOKとされている。
『陽葵やっほう!部活見学楽しかった?4組はバスケ部と演劇部見たよ〜
ところでさ、明日休みだから昼の9時くらいからうちで映画見ない?親が仕事でいないんだ〜
ちなみに泣ける映画いっぱいあるから、ハンカチ持ってこいよ☆』
瀬奈は本当に気さくで優しくて面白い。そんな瀬奈が大好きだ。
LINEもちょくちょく交わしている。
『お疲れ〜!2組は野球部と卓球部見たよ!どの部活も楽しそうだよね〜!
映画!?いいの?!おっけい行く☆
ハンカチね、多分忘れないwあと前借りてた漫画も読み終わったから持ってくね〜!』
確定。送信。
「おっは〜!早めにきちゃったけど大丈夫?」
「陽葵のことだから早めに来ると思っておやつ用意しといたよ!
最近レシピ覚えたフロランタン作ったから食べよ☆どうぞどうぞ〜」
「お邪魔しま〜す!」
今日は瀬奈の家に遊びに来た。
壁にかけられている『Welcome』と書いてあるボードが可愛い。
ドライフラワーが貼られていて、華やかだ。
瀬奈の手作りらしい。
瀬奈はものづくりがすごく上手で、自分で服なんかも作ったことがある。
そしてお菓子作りが趣味で、完成するとうちにおすそ分けに来てくれる。
この間なんかは自分で作ったジンジャークッキーを持ってきてくれたことがあった。
(こういうのが、女子力が高いっていうのかな〜…)
「なんの映画みよっか〜」
そういって瀬奈は、机の上に映画のDVDを並べる。
「私オススメがあって。君の膵臓をたべたいとか泣いたよ〜あとはそうだな…天気の子もいいな〜」
「瀬奈って映画に詳しいよね〜」
「結構一ノ瀬くんと貸し借りしてるから!」
「なるほど」
瀬奈は翔とよく映画のDVDを貸し借りする仲で、映画に詳しくなったのだ。
私は翔の家に遊びに行くと大体は映画を見ているかゲームをしている。
「じゃあ、君の膵臓をたべたいにしようかな!」
最近私情により浮上出来ていなくてごめんなさい😞
これからはなるべく更新出来るように頑張ります٩( 'ω' )و
(期末テストが近くなったら浮上出来ないかもしれません💦)
「うぅぅぅ、泣いた……」
私は桜色のハンカチを手にして溢れ出る涙を溢れないように一生懸命拭く。
こすり過ぎて目が痛いくらいだ。
「陽葵泣き過ぎだよ〜!」
そう言い私の肩を優しく撫でる。
潤んだ視界で瀬奈の顔を除くと、「にひひっ」と言っているかのような可愛らしい笑顔だった。
よく見るとまつ毛は長く、八重歯がやり過ぎなくらい可愛い。
「だってさぁ…桜良と春樹の気持ちを考えたらさぁぁあああぁっ」
さらに感情が高まってしまい、涙が目から溢れでる。
それからしばらく瀬奈は肩をさすってくれていた。
十分ほどしたら私はすっかり涙の跡も消えていた。
今は瀬奈手作りのフロランタンを頬張っている。
「ん〜!フロランタンおいひい!」
「本当?よかったぁ」
「瀬奈ふごいね、どうやって作ったの?もぐもぐ」
「ちょ、陽葵一回ごっくんしなさいごっくん!」
「ん、ごっくん」
「正直でよろしい!」
頭を撫でてくれる。
「んふふふふ…」
まるで撫でられている子犬のような気分だ。
子犬の気持ちが今はよくわかる。
「っでさ!一ノ瀬くんとはどうなのよ??」
「か、翔!?別にどうってことはないけども…」
「クラス同じになって、どう?」
「ん〜、特に何かがあるというわけではないと言うか…
って、まるで私が翔のこと好き前提みたいになってんじゃん!」
ベシッと瀬奈の肩を叩く。
「いった!」と笑いながら言う。