透明小説_。

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1:yurin.:2020/05/07(木) 18:40

読み切りの小説を書いていく「透明小説」です。
透明感ある爽やかな小説から、
人間のブラックな部分を描いた小説まで、
様々なジャンルの小説を投稿していこうと思います。

短編小説多めです。

感想など書いていただけると喜びます。
アドバイス大歓迎です。

悪口、荒らし行為、迷惑行為などはお控えください。

yurinと呼んでください。英語表記でなくても大丈夫です!
よろしくお願いします。

2:yurin.:2020/05/07(木) 19:00

「5月7日」
作 yurin.

・「…ねえ、橘くん」

・・「ん?」

夕焼けに染まる教室
2人だけの世界

・「今日、何の日か知ってる?」

・・「…今日?」

今日は5月7日
今日は何かある日だったか、と頭の中を探る
彼女の誕生日だろうか

・・「誕生日?」

・「ブー」

彼女はやけに楽しそうだ
楽しそうな姿を見て、自分も笑顔になる

・・「え、何?」

笑いながら聞いてみる

・「ヒント。私の気持ち」

・・「気持ち…?」

・「…んまあ、分かるわけないかっ」

そう言って彼女は、窓から景色を眺めた
何も言わずに。

・「答えは…」


”一年前、君を好きになった日です”

3:yurin.:2020/05/07(木) 21:58

「君に言わない。」
作 yurin.

太一「…高野?」

美和「ん…あ、ごめんぼーっとしてた…」

太一「最近大丈夫かー?
ずっとぽけーってしてんぞ」

彼が心配そうに顔を覗き込む
私は顔を伏せた

美和「大丈夫だよ」

太一「嘘だな。絶対お前なんかあっただろ」

美和「…なんで分かったの」

太一「テンションおかしいじゃん。
普段のお前はもっとテンション高い」

美和「はあ…っ」

深く溜息をつく

太一「何があったんだよ」

美和「いいよ…言わない」

言ったら君がいなくなってしまいそうで
言いたくないの

太一「なあ」

美和「……」

太一「なあってば」

美和「…死んだの」

太一「死んだ?」

美和「大切な人が…死んだの
好きだった人が死んだの…」

太一「そっかぁ…
…まあ元気出せよ」

太一「誰とは聞かないからさ」

美和「…ありがと」

これでいいの
誰が死んだなんて言わない
言わないから


……君が死んだなんて、言わない。
君が、自分が死んだことに気付いてないのも
君が好きだったのも
君が大切だったのも…


──全部、言わない。

4:yurin.:2020/05/08(金) 11:10

「充電5%」
作 yurin.

陽斗「なあ今お前充電何%?」

春樹「5%」

陽斗「めっちゃ少ないじゃん」

春樹「そうだね」

陽斗「充電してあげよっか?」

春樹「大丈夫」

陽斗「そうだ、アイス食う?
…って、お前食えないのか」

春樹「ははは」

ピーーーーーーー

「ジュウデンギレデス、ジュウデンギレデス」
「イマスグ ハルトサンヲ ジュウデンシテクダサイ」

陽斗「あー、充電切れだ。充電しなきゃな」

全く動かなくなった友人を担いで
俺はアイスを食べながら歩いた


…これは友人、と言うのだろうか

END

5:yurin.:2020/05/08(金) 17:37

「春夏秋冬」
作 yurin.

「…好きなの」
真っ直ぐに見つめてみる

私の春夏秋冬の、一年間の全ての想いが
伝わりますように。


─ 一年前 ─

優里「陽香やったね!同じクラスじゃん」

陽香(主人公)「え、本当!?」

優里「今年はエンジョイするぞ〜
来年は受験生だし!」

陽香「そうだね〜」

桜がよく咲いてた
新しいクラスも文句なしで
空も気持ちも晴れていたような気がする

新しい教室に行ったら、君は隣の席で
初めて同じクラスになった君と話せなくて
ずっと窓を眺めてた
話せない気まずさを
窓を眺めて紛らわしていたんだと思う

6月になると席替えして、私と君は離れた


本格的な夏になり
席替えをすると君がまた隣。
しかも窓際で…。
「まただ」って嫌になった

…けど。
窓からプールの水面を眺めてた時、
君から「眩しくないの?」って話し掛けてきて。
何その質問って思ったけど
確かに私、ずっと外を見てた
頬杖ついて、窓の方向に顔を向けて
話し掛けられた直後は上手く喋れなかったなあって

…懐かしい。


夏休みは、勇気を出してみんなを遊びに誘った
クラスメイト10人ぐらいで、手持ち花火で遊んだ
線香花火が落ちる時まで
ずーっと話してたな
あの時は気付けなかったけど、あれが私の青春だった


秋になって暑さが落ち着いてきた頃
なぜか席替えが長い間なくて、周りは飽き飽きしてたけど
心の中で喜んでる自分がいた
ずっと君と話してたの
窓からの紅葉なんて気にせずに、窓からの景色を眺めずに。
窓からの景色を久しぶりに眺めたのは
君が休んでしまった日
君のいない空っぽの席と、窓からの景色を交互に眺めて
「寂しい。」と、誰にも聞こえない声でポツリ。


冬になり、私と君はまた隣
「運命かよ」って笑い合った
…本当に運命かって思ったよ。

窓際じゃなかったけど
雪よ降れ、と強く願った
降ったらクラス中大騒ぎ。…結局は積もらないんだけど。

でも、私には君がいれば十分だった
例え雪が降らなくても、積もらなくても
すぐ隣に君がいて、話せただけで

ただただ幸せだったの




─そうしてすぐに春は訪れる
中学二年生の一年が終わる
視界に映る景色はもう春で、「ああ終わるんだ」って
強く願って瞬きしたら、一年前に戻れるかなって
馬鹿みたいに思ってたな

春休み中も何度も遊んだ
クラスのみんなと、そして君と。

二人で会ってこれからのこと話して
受験頑張ろうねって応援し合って


…それから
それから……



「まだそういうの…よく分かんない
ごめんな」

陽香「…そっか」

ああ、終わった
中学二年生の一年が、
…私の恋が、終わった。

あっさりと。
未練タラタラのまま。


優里「陽香…
あいつのこと忘れた?大丈夫?」

陽香「うん、ちゃんとね」

…違う
ごめん、嘘ついた

まだ忘れられてない
諦めてすらない
どこかで私のことが好きなんじゃないかって
あっちは恥ずかしがってたんじゃないの?って
都合よく解釈してさ。

…分かってる
分かってるよ…。
前に進まないといけないってこと

…でもさ


簡単なことじゃないの。

END


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